埋もれがちな気持ちを救い出したいという気持ちが大きい
──徐々に前向きになっていく、という陰から陽へのコントラストは、今作の曲順にも当てはまるように思いました。私が個人的に抱いた今作のイメージが、海底から差し込む光に向かって浮上していく、というものだったので。
ああ、確かに! その流れを狙って構築していた訳ではないんですけど、私のなかでも描いていた情景は同じですね。この7曲の曲順を決める時に、自分としても繋がりを意識して、違和感のない順番にしたんですけど、そういうことなんだと思います。
──その上で、“Minimize”は特に大事なポイントになっているようにも思いました。公開されている同曲のリリック・ビデオも、写真と動画が合わさることで生まれる静と動のコントラストが印象的ですし。
今回はデジタル・リリースなので、歌詞カードがないんですよ。タップしたら歌詞が出るので、それでもいいんですけど、やっぱり自分の世界観のなかで歌詞を目に入れてほしかったんです。あと、今回の写真を手掛けてくれたのがカメラマンのumihayatoくんなんですけど、長い付き合いになる彼が、自分がイメージしていたものをバッチリ収めてくれたんです。そのふたつが上手く合わさって出来上がった映像になったと思っています。
──猫田さんのなかでも、“Minimize”は大事な楽曲になっているのでしょうか?
そうですね。歌詞に「the aftermath」という言葉が出てくるんですけど、これは、戦争や災害、不運な出来事などを乗り越えた後に訪れる余波を表す単語なんです。大きな困難を乗り越えたら、周囲の意識は一度そこで落ち着いてしまうと思うんですけど、当事者は、その後にやってくる小さい波に悩まされ続ける訳じゃないですか? それは自分だけではなく、色んな人が経験するものだと思うんです。だから、誰しもがそうした波に飲み込まれることなく、変化を恐れず乗り越えていくことを諦めないでほしいという気持ちを歌っています。いまの世界情勢にリンクするところがあるので、これを聴いてくれる人に向けたエールになったらいいなと思いますし、想い入れは強いですね。
──その次の“入道雲“で、「小さなことが大きく変わる」と歌われているので、この2曲を続けて聴くことで、そうした励ましの気持ちがより強く感じられるなとも思いました。これは、アルバム作品だからこそ得られる体感だなと。
ありがとうございます。いま、音楽を聴く人って、シャッフルで聴くことが多いと聞いたことがあるんですよ。でも、いまおっしゃっていただいたような描写の推移にこだわりながら曲順を決めているので、是非アルバムを通して聴いてもらいたいなと思いますね。
──“Incarnation”でも、今作のテーマである「花束」という言葉が出てきますし、そうした繋がりを見つけるのも醍醐味ですよね。あと、この曲は特に歌詞が印象的で、ハッとさせられるところが多かったです。「誰かの悦び 花束に加えて“あげよう“」の部分も、ダブルミーニングになっていますし。
そうなんですよね。この曲は、輪廻転生が題材になっているんです。花を摘み取っている人間は、その花で誰かに悦びを与えているとしても、花の立場からすれば、摘み取られたことで悦びを失ってしまっている。そして、その人間が生まれ変わって、摘み取られる側の花になってしまっている、というストーリーを歌詞にしています。
──これはかなり心にずしんとくるストーリーですよね。自分の行いを顧みるという意味では、ラストの「あなたが主役」もまた、自分にとっての正しさを自問せずにはいられなくなる楽曲のように思います。
このアルバムには、いまの世界的な情勢を象徴する曲がいくつかあるんですよね。不穏な空気が蔓延るなかで、インターネット上では勝手な憶測が行き交っていたと思うんです。でも、人それぞれの環境があるからこそ、求める答えは人によって違う。だからこそ、先入観や固定概念を優先させて「あの時はこうだったから」とか「あの人が言っていたから」と判断するのは、怖いことだと思ったんです。なので、“Strange bouquet”での話にも通じますが、自分から向き合っていこうとする姿勢を忘れずにいてほしいというメッセージが込められています。エールであり、アラームでもありますね。
──励ましだけではなく、能動的に行動していくことの大切さに触れつつ、いまのままでいいのか?という自問を促す意味も色濃い作品になっているなと思いました。
聴いてくれる人の考えや悩みなど、埋もれがちな気持ちを救い出したいという気持ちが大きいですね。社会を生きるなかで、目立つ側の人と縁の下の力持ちに徹する人という2種類の役割があると思いがちなんですけど、あなたは、あなた自身の人生の主役なんだよ、ということを自覚しつつ、自信と責任を持って大切に生きていってほしいと思います。
──生きる上で、とても大事なことですね。6月11日(土)には、東京・高円寺U-hAにてリリース記念のワンマン・ライヴを行うとのことで、今作がライヴではどのように響くのか楽しみです。
はい! このライヴでは、アルバムの楽曲をアコースティック・バージョンに編曲したものをお届けするので、作品とはまた違う、新しい音を聴ける感覚で来ていただけたらと思います。楽しみにしていてください。
編集:梶野有希
猫田ねたこの初アルバムはこちらから!
LIVE INFORMATION
猫田ねたこ 1st Album “Strange bouquet” Release Party 『Acoustic』(with guest!)
日時:2022.6.11(土)
場所:東京・高円寺UhA
チケット:¥2500+1D
ご予約は公演名・お名前・枚数を明記の上、下記アドレス宛にメールをお願いたします。
contact.nekotanetako@gmail.com
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PROFILE : 猫田ねたこ
プログレッシブ・ポップ、オルタナティブ、ハードコア等の幅広いフィールドにて活動し、多数の海外公演を経て国内外への発信を続けるシンガーソングライター。プログレッシブ・ポップバンド「JYOCHO」、ピアノ・ロックバンド「heliotrope」ではボーカル/キーボードを担当。TSUTAYA企画のイベントVILLAGE VANGUARD製品へのCM曲を手掛ける等、楽曲提供も行っている。
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