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INTERVIEW : Apes
Apesのファースト・フル・アルバム『PUR』が、4月12日にリリースされた。ギターのアプローチに対する強度を上げて、よりポストロック然とした作品に仕上がりつつも、「いまのApesだから歌えること」と真正面から向き合って、柔軟に成長を遂げた作品に仕上がっている。今回のインタビューでは、今作『PUR』についてじっくりと訊くべく、前回に引き続き、メンバー全員にインタビューを敢行。渾身のアートワークに関しても伺っているので、是非CDを手に取った状態で読んでみてほしい。
取材・文 : 峯岸利恵
写真 : 草場雄介
「アルバム1枚を通して1曲」と思えるくらいの統一感のある作品
──前回のインタビューで“Over ray”が今作『PUR』制作のきっかけになった曲であるとお話されていましたが、いつ頃出来た楽曲でしょうか。
坂井玲音(Vo・Gt)(以下、坂井):去年の年始に出来た曲なんですけど、その時に5,6曲出来た楽曲のうちの1曲です。というのも、2021年は何故か全く曲が書けなかったんですよ。なので、2022年は制作にめちゃくちゃ意欲的だったんです。そこから、このペースで作っていけばアルバムを作れるよね、という話にメンバー内でなって、今作を作るに至りました。そこから、“Imaginary Flight”と“Boying”を再録して、2022年のうちに出来た“Neighbor”、“Something gonna happen when we insist”も入れたいということになって、新曲をどんどん作っていきましたという流れです。
──でも、一昨年に全く作れなかったのにも関わらず、一気に年始に数曲出来たというのも凄い話ですね。
坂井:そのうちのほとんどがお蔵入りになってはいるんですけどね(笑)。
アラユ(Gt):曲自体は作れるけど、玲音くんのなかで納得のいくものが出なかったんだと思います。
──じゃあ、“Over ray”はその時点で跳び抜けていたんでしょうね。
坂井:Over rayと同時にメンバーに出した数曲のデモの中に、リード曲にしても良いのでは、と思う曲もあったけどアルバムを作るキッカケになったのはこの曲でした。
──今回の方向性や軸として考えていたのは、どのようなことでした?
坂井:ギターのアプローチがちゃんとできた、ポストロック的なアプローチが出来る作品にしたいね、という話はしていました。でも、レコーディングしていくなかで歌詞も統一性を持たせたりはしていった形でしたし、最初からコンセプトがあったというよりは、純粋に「バンドなんだからアルバムを作りたい」という衝動が制作のきっかけではあったと思います。
村尾ケイト(Ba)(以下、村尾):アルバムを作るならフルを作りたいという意志統一はしていたので、そこからどんどん曲を作って録っていくというのは大変ではありました。
坂井:でも、かなりいい作品が出来たよね。先ほどお話したような音楽的な方向性を最初に決めはしたんですけど、「アルバム1枚を通して1曲」と思えるくらいの統一感のある作品を作りたいと思ったし、それが出来たと思っています。なので、聴いてくれる人にも1曲目から通して聴いてほしいですね。
村尾:アルバムを作るためにこれまでの曲を搔き集めたというものではなく、この『PUR』のために1曲1曲しっかり作っていったので、メッセージ性のある1枚になっていると思います。
アラユ:これを聴いてこれを感じてほしい! というよりは、聴いた人がそれぞれ想像してみてほしいなという想いはあります。
──その「聴いた人の想像力に解釈を委ねる」という伝え方は、1曲ごとにその曲をテーマにした絵が歌詞カードに描かれて、全曲聴いた時に全ての絵が重なり「なにか」が分かるという今作のアートワークにも繋がる話だなと思いました。
坂井:作品性と同様に、歌詞カードも流れを汲んだ上で、最初から最後まで楽しめるものにできたらいいなと思って、そういう構造のものを作りました。それも前半のレコーディングが終わった時に詰めはじめたものですし、なんならタイトルよりも先にアートワークのイメージが出来たんです。そこからアラユとケイトに「俺がアートワーク決めたから、ふたりがタイトルを付けてよ!」っていう話をして、決めてもらいました(笑)。
村尾:キャンバスが白だったこともあって、“純粋“という言葉がいいという話になってから、あまり世の中には浸透していない『PUR』という言葉をアラユが持ってきてくれたんです。後付けではありましたけど、アートワークやタイトルが決まったからこそ、アルバムの理解度や信憑性が増した感覚はありました。その後に今作のリード曲である“Stay alive”も出来て、最後のピースがハマった感がありましたし、目に見えるものが決まったからこそ落ち着けた感じはあります。