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INTERVIEW : SPARK!!SOUND!!SHOW!!
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SPARK!!SOUND!!SHOW!!(以下、スサシ)の3枚目のフル・アルバム『音樂』。同作は2019年にリリースしたセカンド・フル・アルバム『NU BLACK』以降に突き動かされたバンドのやりたいこと、コロナ禍でなければトライしなかったこと、世の中を見つめるなかで生まれた喜怒哀楽や自身の哲学や美学が表れた、充実の内容だ。直感性や衝動性、冷静でシニカルな視点といった対極の成分がない交ぜになった楽曲群は、彼らの生き方そのものと言っていいかもしれない。タナカユーキ(Vo/Gt)とチヨ(Ba/Cho)はインタビュー中に自分たちのことをアホのふりをしている「ファッションアホ」と笑っていたが、意味が詰まっているからこそスサシの音楽は聴き手の心の奥深くに入り込むし、アホゆえに振り回して「楽しい」という感情を湧き上がらせるのだろう。タナカとチヨの言葉から、『音樂』の実態を探っていった。
インタヴュー・文 : 沖さやこ
写真 : 作永裕範
「やりたい放題やってくぞ」というマインドを「音樂」に集約している
──サード・フル・アルバム『音樂』は、スサシの作りたい音楽の変遷や変わらないポリシー、2020年代に渦巻く問題と1990年代の文化といった時代性も感じる作品になっていると感じました。『NU BLACK』からここまでの約3年半は、かなり大きな動きがあったのではないでしょうか。
チヨ(Ba / Cho):ほんといろんなことがありましたね。『NU BLACK』を出したあたりからいろんなフェスに呼ばれたり、動員もいい感じになってきていて、サポートしてくれている会社がついて、そんなところにコロナ禍へ突入して。その会社とも2021年の終わりにお別れをしたりもして。
──2022年2月から開催された〈akuma tour 2022.02-04〉を境に、新しいチームで動くようになったそうですね。
チヨ:今は主に手伝ってくれている方がふたりいて、また自主で動いてます。はじめて会社とタッグを組むことを選択して、もちろん感謝もしてますし、いろいろ思うこともあるし。でもその時期に得たいろんな経験があるからこそ、いま見えるものがたくさんあるし、メンバー同士で話し合う機会が増えて意思統一ができたことでさらに信頼できる存在になったし、バンドは自分で動いていく力がないとダメなことを再確認できた期間でした。長いものに巻かれたほうがいいこともあるけど、バンド自体がちゃんとしてないと巻かれたまま潰れちゃうし、先につなげることもできない。
タナカユーキ(以下、ユーキ)(Vo / Gt):『NU BLACK』をリリースした頃にもいいメンバーが揃ったなと思ったけど、この3年半でいろんな人と関わったり離れたりすることで、さらにメンバーの結束を強めることができましたね。振り返ってみると、コロナ禍でやってきたことや選択がいまの自分たちの体力になっている。撒いた種がちゃんと芽吹いてきたからこそ余計に加速できた気がしますね。
チヨ:コロナ禍がなかったら、アナログ人間のユーキはいまもパソコンを買ってないと思いますしね。DTMをやってみるというスキルアップや、ライヴができないぶんじっくり制作に取り組んだり、アーティストとして成長できた期間ではあります。
──その間にも死をテーマにした『スサ死 e.p.』、EP『akuma』、ブックレット仕様のシングルCD『HAPPY BIRTH DIE』などコンセプチュアルな作品をリリースしていますが、その時期に作っていた楽曲を『音樂』という作品にコンパイルするまでにはどんな着想があったのでしょうか。
ユーキ:本当はもっと早い段階──それこそ会社と関わっていた頃に全然違うサード・フル・アルバムを作ろうとしていたんですよ。でも会社の人たちも「コロナ禍でバンド全体が失速しているタイミングで3枚目を出すのはもったいないよね」と言ってくれたので、作った曲たちはデジタルリリースしたり、EPにしながら小出しにして。当初出す予定だったアルバムの状態にさらに曲を突っ込んだら、15曲になっちゃいましたね(笑)。
──足したのはどの曲ですか?
ユーキ:“悪魔降臨“と”むずかしいてれぱしい“、”憂うギャル“、”踊らない“、”奏葬“、あと『スサ死e.p.』の“DEATHTRUCTION”をアルバムに入れるにあたってフィーチャリングヴァージョンにしましたね。結果、過去最高に雑多なアルバムになりました(笑)。これが全部揃った後にタクマが「『音樂』というタイトルでいきたい」と言ってきて。それが去年の年末です。
チヨ:タクマが「こんな世の中だからこそ、いま一度音楽の大切さを伝えよう、ならもうタイトルは音楽でいいんじゃないか」と話していて。僕の気持ちやイメージともリンクしていたので、すごくいいなと思いましたね。というのも、スサシは前々から定期的にポップアップショップをやっているんですけど、実現できなかった2022年のポップアップのタイトルを「BREATH」にしたかったんですよ。世相を表した単語になるかなって。
──確かに「BREATH」という単語からは、マスクで遮られた「呼吸」や、生命活動という意味でも「生」をイメージさせます。
チヨ:あとは「息苦しさ」とか「ため息」みたいなうんざりした感じ、あとはくしゃみの時の「God Bless you」と掛けて「頑張っていこうよ」という意味も入れられるかなと思ったんです。結局僕の作業が遅くてポップアップは開催できなかったんですけど(苦笑)、アルバムのタイトルになったらいいなとはぼんやり思っていたんですよね。だから同じような意味を持った『音樂』という言葉はしっくりきたんです。
──スサシのファースト・フル・アルバムのタイトルはセルフ・タイトルの『火花音楽匯演』ですし、そもそもアーティストが自分の作品に「音楽」という言葉を掲げるのは覚悟も必要だと思います。いろんな観点からとても意味深だと感じました。
ユーキ:『音樂』が「樂」の字なのはファーストとの差別化と、書き順が多いぶんなにかを経た感じも伝わるかなって。タクマが「音樂」と提案した詳細な思いはわからないけど、スサシのイメージが世間にちょっとずつついてきたタイミングで「俺たちはやりたい放題やってくぞ」というマインドを「音樂」という言葉に集約してるのかなとも思うし、やっぱりコロナ禍は真っ先に音楽を含むアートが淘汰されたように感じたので、そういう意味でも『音樂』というタイトルはいいんじゃないかと思いましたね。シンプルすぎるタイトルだから超多角的に受け取れるし、メンバー4人それぞれの解釈を持っているので、聴いてくれるみんなもいろいろ勘ぐってくれたらおもしろいなと。
チヨ:このアルバムも“奏葬“という、『スサシ e.p』や『HAPPY BIRTH DIE』みたいな「死んで生まれ変わる」という意味合いの曲で終わるので、雑多なアルバムにはなりつつもこれまでとの一貫性はあるかなと思ってますね。バラードで締めくくるアルバムには憧れもあったので、それがやれたのも最高だなと思ってます。
──チヨさんはそれらを踏まえてジャケットのデザインを制作されたんですか?
チヨ:ジャケットは僕なりの『音樂』の解釈ですね。音楽が失われているような現状を表したくて、崩壊してる感じやカルト感を出しながら、セピアっぽい色味でディストピア風の質感にしました。サブスクやネットではわからないんですけど、実はこのジャケットとして出ているのは全体の一部分なんですよ。
──言われてみると、一部分を切り取ったようなアートワークです。
チヨ:CDジャケットの裏の歌詞カードまでアートワークが続いているので、盤を手に取った人はそこまで見てもらえたらなって。やっぱり昔のハードコアバンドの、歌詞カードがポスターになってるものとかに憧れがあるんですよね。今の時代、フィジカルはコレクターズアイテムみたいになっているから、音楽以外の価値も必要だと思うし。できる限りおもしろい仕掛けはしたいですね。
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