本質的な自由って人類にフィットしてない気がするんです
──アルバムのリードトラック"自由"についても聞かせてください。たなかさん、「自由ってもう飽きたでしょ? やりたいことをやりたいようにやるだけじゃ満たされないって分かってきたよね そろそろ次行こう次」とポストしていましたよね。
たなか:はい。自由はオワコンですね。
──自由はオワコン……ホントに?
Ichika:そう思いますよね(笑)。
たなか:(笑)。もちろん過度に縛られている状態は良くないですけど、めっちゃ自由を手にしたときに、それを上手く使える、遊び倒せるだけの力が人類にはないんじゃないかってすげえ思うんですよ。
Ichika:身近なところでいうと、パーソナルカラー診断ってあるじゃないですか。目や肌の色、骨格とかで、その人に合うメイクや服の傾倒がわかるっていう。あれ、すごくラクですよね。
たなか:ある程度決めてもらえるからね。
Ichika:そう。全部決めてもらうんじゃなくて、1万から100に絞ってくれるだけでもだいぶ違うので。
たなか:選択肢が多すぎるんですよ。今日からアフリカに行ってもいいとか、"本当になにをしてもいい"ってなると、なにをすればいいかわからなくなると思うんです。あと、最近って"自由"がブームだった気がして。好きなことをして生きていく、みたいな。
──そうですね、確かに。働き方も自分で選ぶとか。
たなか:そうそう。その代表がYouTuberだったりすると思うんですけど、「じゃあ、上手くやってる人ってどれくらいるの?」って言えば、よくわからないじゃないですか。
Ichika:しかも全然自由じゃないからね。
たなか:結局、アナリティクスに左右されてるっていう。そうやって考えていくと、本質的な自由って人類にフィットしてない気がするんです。むしろ大事なのは、ある程度、縛られることなのかなと。制約のなかでちゃんと努力することが、いま、すげえ効いてくると思ったんですよね。
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Ichika:うん。最近、「あなたは生きているだけで偉い」という風潮もあるじゃないですか。主張としてはよくわかるんですけど、大事なのは、その先、どうするか。"&疾走"の歌詞はまさにそうだよね。"正しい姿勢で走れ"っていう。
たなか:正しいフォームは本当に大事。「生きてるだけで偉い」自体はまったく間違ってないし、当然そうなんだけど、そのうえで「次に行こうよ」という感じなんですよね。
Ichika:自分を正しい方向で活かして、努力することでしか得られないものがありますからね。
たなか:うん。仕事でも趣味でもなんでもいいんだけど、その人に合った姿勢、フォームが絶対にあるはずなんです。それを自分で見つけて、無限に練習することが強度を保つために必要不可欠なので。自由って、適当ってことじゃないと思うんですよ。
──"楽しむとラクは違う"って話に似てますね。なにをやるにしても、ある程度のレベルに達しないと楽しくないっていう。
たなか:そうですね。ポップスの役割もそうで、「一時的に気持ちよくなって、最終的にはなにも残ってない」ってドラッグと一緒じゃんって思うんですよ。そういうものを作る人はいっぱいるし、僕らがやる意味はない。Diosとしては──傲慢なんですけど──エデュケーショナル・ミュージック的であれたらいいなと思っていて。
──啓蒙的な音楽というか。
たなか:そうですね。押し付けがましくならず、ポップスとしての体裁を保ちつつ、そういうことがやれたらいいなと。
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