2022/07/12 17:00

tofubeats 『REFLECTION』

タイトル通り「鏡」をテーマにした4年ぶりの新作は、前作『RUN』(2018年)とは対照的に多彩なゲストを迎え、そのほとんどで作詞を委ねている。他者の解釈を通して己を知るという実直な知的営為には好感あるのみ。呪い歌のような “Mirror” に “SMILE” 、Kotetsu Shoichiroの博覧強記と芸達者に舌を巻く “VIBRATION” 、ボサ・ノヴァのリズムにUG Noodleのオフビートな歌唱が映える “恋とミサイル” ほかポイントはいくつもあるが、“CITY2CITY” “SOMEBODY TORE MY P” “Okay!!” と、中村佳穂がドラムンベースに乗って躍動する “REFLECTION” に向けて盛り上がっていく終盤の流れは鳥肌もの。最終曲 “Mirai” が「背負ってるのは/誰だってそうだ」のリフレインで締めくくられる後味も格別だ。

OTOTOYでの配信購入(ハイレゾ版)はコチラへ
OTOTOYでの配信購入(ロスレス版)はコチラへ

anzu 『Bedroom Pop』

春先ごろにSNSで流れてきた “YOLU” のMVを見て知った人。作詞、作曲、トラックメイキング(このEPはTakii da Beatsとの共同制作)に加え、ジャケットのアートワークやMVの制作まで手がける河合杏林のソロ・プロジェクトで、2016年から活動しているそうだ。曲調やイメージをベースに聴いていくと5曲でぐるりと円環するような構成で、フォークトロニカ、ドリームポップ、ローファイ・ヒップホップといったキーワードが脳内に明滅するが、BPM180ほどあるアップテンポの “DMN” が異色。とはいえチルな感触は変わらず、すみっコぐらしが全力疾走しているような不思議な味がある。YouTubeでホームメイド感全開のMVを見るといっそう楽しめるはず。タイトル通りのDIYポップで、これが徳間ジャパンからリリースされたのも面白い。

OTOTOYでの配信購入(ロスレス版)はコチラへ

武田理沙 『魔術師の城/The Sorcerer's Castle

吉田達也、マニ・ノイマイヤー、坂田明らとの共演でも知られるドラマー / ピアニストが「執念と執念と執念と執念と執念と執念で作り上げた純度100%超絶多重録音サード・ソロ・アルバム」(本人のツイートから)。MIDIオーケストレーションを軸とした曲は1st、2ndにもあったが、今回はそれを全面展開、近現代音楽のスタイルでシンフォニック&エレクトロニックな一大組曲を作り上げた。たったひとりでこれだけ緻密な音世界を構築しながら、ライヴでは一転してアツい即興性を解放する両面性がこの人の魅力だ。プログレた思春期を過ごした者のひとりとして否応なく惹かれてしまうものがあるし、日本全国、いや世界中のどこにも少しずついる同好の士も感涙しているだろう。海外での活躍にも期待したい。

この記事の筆者
高岡 洋詞

フリー編集者/ライター。 近年はインタヴュー仕事が多いです。 https://www.tapiocahiroshi.com/

REVIEWS : 076 ポップ・ミュージック(2023年3月)──高岡洋詞

REVIEWS : 076 ポップ・ミュージック(2023年3月)──高岡洋詞

「図太い信念を持ったエンタメに勝るものはない」──小野武正(KEYTALK) × るいまる&パーミー(ビバラッシュ)

「図太い信念を持ったエンタメに勝るものはない」──小野武正(KEYTALK) × るいまる&パーミー(ビバラッシュ)

REVIEWS : 071 ポップ・ミュージック(2023年12月)──高岡洋詞

REVIEWS : 071 ポップ・ミュージック(2023年12月)──高岡洋詞

誰もが“ゴールドマイン”を探し求めている──GLIM SPANKYの枯れない原動力

誰もが“ゴールドマイン”を探し求めている──GLIM SPANKYの枯れない原動力

REVIEWS : 066 ポップ・ミュージック(2023年09月)──高岡洋詞

REVIEWS : 066 ポップ・ミュージック(2023年09月)──高岡洋詞

志磨遼平 × 松田龍平 対談──僕らの青春を着色した、90年代のカルチャーを振り返る

志磨遼平 × 松田龍平 対談──僕らの青春を着色した、90年代のカルチャーを振り返る

REVIEWS : 061 ポップ・ミュージック(2023年06月)──高岡洋詞

REVIEWS : 061 ポップ・ミュージック(2023年06月)──高岡洋詞

REVIEWS : 056 ポップ・ミュージック(2023年03月)──高岡洋詞

REVIEWS : 056 ポップ・ミュージック(2023年03月)──高岡洋詞

視覚と聴覚を往来する、ヨルシカの音楽画集『幻燈』レビュー──2名の評者が魅せられた世界観とは

視覚と聴覚を往来する、ヨルシカの音楽画集『幻燈』レビュー──2名の評者が魅せられた世界観とは

わたしたちとおしゃべりしよ?──illiomoteが映す世の中の歓喜と悲哀

わたしたちとおしゃべりしよ?──illiomoteが映す世の中の歓喜と悲哀

REVIEWS : 053 ポップ・ミュージック(2022年12月)──高岡洋詞

REVIEWS : 053 ポップ・ミュージック(2022年12月)──高岡洋詞

世の中を静観し、様々な“世界”を旅したTWEEDEESが新作でみせたい夢

世の中を静観し、様々な“世界”を旅したTWEEDEESが新作でみせたい夢

ドレスコーズからすべての“頭の悪い”若者のために、愛を込めて──新作『戀愛大全』

ドレスコーズからすべての“頭の悪い”若者のために、愛を込めて──新作『戀愛大全』

REVIEWS : 051 ポップ・ミュージック(2022年9月)──高岡洋詞

REVIEWS : 051 ポップ・ミュージック(2022年9月)──高岡洋詞

”声優”ではなく、山村響という“人”が届ける音──メイン・ディッシュだらけの新作になった理由

”声優”ではなく、山村響という“人”が届ける音──メイン・ディッシュだらけの新作になった理由

バンド解散を乗り越え、ひとりで音楽と向き合うということ──歌心を愛おしむ、岩崎優也の初作

バンド解散を乗り越え、ひとりで音楽と向き合うということ──歌心を愛おしむ、岩崎優也の初作

さとうもかのポジティヴをあなたへ──素直になることで生まれたシングル「魔法」

さとうもかのポジティヴをあなたへ──素直になることで生まれたシングル「魔法」

REVIEWS : 046 ポップ・ミュージック(2022年6月)──高岡洋詞

REVIEWS : 046 ポップ・ミュージック(2022年6月)──高岡洋詞

こんな世の中だからこそ『gokigen』に──chelmico、2年ぶりのフル・アルバム

こんな世の中だからこそ『gokigen』に──chelmico、2年ぶりのフル・アルバム

これまでのイメージに囚われないで──“THEティバ”というなにかを目指す、ふたりの一歩

これまでのイメージに囚われないで──“THEティバ”というなにかを目指す、ふたりの一歩

REVIEWS : 042 ポップ・ミュージック(2022年3月)──高岡洋詞

REVIEWS : 042 ポップ・ミュージック(2022年3月)──高岡洋詞

まだまだ輝く、どこまでも輝くヒップホップ・ドリーム──サ上とロ吉、新作『Shuttle Loop』

まだまだ輝く、どこまでも輝くヒップホップ・ドリーム──サ上とロ吉、新作『Shuttle Loop』

前向きに解散をしたSUNNY CAR WASH ── 愛と敬意、軌跡を記録した最後のベスト作

前向きに解散をしたSUNNY CAR WASH ── 愛と敬意、軌跡を記録した最後のベスト作

REVIEWS : 039 ポップ・ミュージック(2021年12月)──高岡洋詞

REVIEWS : 039 ポップ・ミュージック(2021年12月)──高岡洋詞

キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

キュートだけじゃない! さとうもかの新作『WOOLLY』が描く、リアルでちょっとビターな共感

REVIEWS : 032 ポップ・ミュージック(2021年9月)──高岡洋詞

REVIEWS : 032 ポップ・ミュージック(2021年9月)──高岡洋詞

REVIEWS : 026 ポップ・ミュージック(2021年6月)──高岡洋詞

REVIEWS : 026 ポップ・ミュージック(2021年6月)──高岡洋詞

ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

ドレスコーズ志磨遼平がピアノで描く孤高と反抗──コンセプチュアルな新作『バイエル』に迫る

3つの視点のクロス・レヴューで迫る、BRADIOの魅力の正体

3つの視点のクロス・レヴューで迫る、BRADIOの魅力の正体

REVIEWS : 014 ポップ・ミュージック(2021年1月)──高岡洋詞

REVIEWS : 014 ポップ・ミュージック(2021年1月)──高岡洋詞

ヒナタとアシュリー、ボーナストラック付きEP『longing E.P.』配信開始&インタヴュー掲載

ヒナタとアシュリー、ボーナストラック付きEP『longing E.P.』配信開始&インタヴュー掲載

アイドルネッサンス、シングル3タイトルを独占ハイレゾ配信開始

アイドルネッサンス、シングル3タイトルを独占ハイレゾ配信開始

男女ツインボーカル、うたたねの1stミニ・アルバムをハイレゾ配信

男女ツインボーカル、うたたねの1stミニ・アルバムをハイレゾ配信

TOP