tofubeats 『REFLECTION』
タイトル通り「鏡」をテーマにした4年ぶりの新作は、前作『RUN』(2018年)とは対照的に多彩なゲストを迎え、そのほとんどで作詞を委ねている。他者の解釈を通して己を知るという実直な知的営為には好感あるのみ。呪い歌のような “Mirror” に “SMILE” 、Kotetsu Shoichiroの博覧強記と芸達者に舌を巻く “VIBRATION” 、ボサ・ノヴァのリズムにUG Noodleのオフビートな歌唱が映える “恋とミサイル” ほかポイントはいくつもあるが、“CITY2CITY” “SOMEBODY TORE MY P” “Okay!!” と、中村佳穂がドラムンベースに乗って躍動する “REFLECTION” に向けて盛り上がっていく終盤の流れは鳥肌もの。最終曲 “Mirai” が「背負ってるのは/誰だってそうだ」のリフレインで締めくくられる後味も格別だ。
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anzu 『Bedroom Pop』
春先ごろにSNSで流れてきた “YOLU” のMVを見て知った人。作詞、作曲、トラックメイキング(このEPはTakii da Beatsとの共同制作)に加え、ジャケットのアートワークやMVの制作まで手がける河合杏林のソロ・プロジェクトで、2016年から活動しているそうだ。曲調やイメージをベースに聴いていくと5曲でぐるりと円環するような構成で、フォークトロニカ、ドリームポップ、ローファイ・ヒップホップといったキーワードが脳内に明滅するが、BPM180ほどあるアップテンポの “DMN” が異色。とはいえチルな感触は変わらず、すみっコぐらしが全力疾走しているような不思議な味がある。YouTubeでホームメイド感全開のMVを見るといっそう楽しめるはず。タイトル通りのDIYポップで、これが徳間ジャパンからリリースされたのも面白い。
武田理沙 『魔術師の城/The Sorcerer's Castle
吉田達也、マニ・ノイマイヤー、坂田明らとの共演でも知られるドラマー / ピアニストが「執念と執念と執念と執念と執念と執念で作り上げた純度100%超絶多重録音サード・ソロ・アルバム」(本人のツイートから)。MIDIオーケストレーションを軸とした曲は1st、2ndにもあったが、今回はそれを全面展開、近現代音楽のスタイルでシンフォニック&エレクトロニックな一大組曲を作り上げた。たったひとりでこれだけ緻密な音世界を構築しながら、ライヴでは一転してアツい即興性を解放する両面性がこの人の魅力だ。プログレた思春期を過ごした者のひとりとして否応なく惹かれてしまうものがあるし、日本全国、いや世界中のどこにも少しずついる同好の士も感涙しているだろう。海外での活躍にも期待したい。