2022/04/10 17:00

優河 『言葉のない夜に』

魔法バンド(岡田拓郎、千葉広樹、神谷洵平、谷口雄)の面々と作り上げた4年ぶりのアルバム。冒頭の “やわらかな夜” と “WATER” のコーラス・ワークに惹き込まれる。テンポとアンビエンスに妙味があり、広々として幽玄なサウンドスケープの中で、存在感のある歌声がふわふわと浮遊したり、ドンと鎮座したり。前半はメンバーとの共作、後半は優河ひとりで作った曲が並び、ザ・バンドを思い出す “fifteen”、微かにトロピカルな “夏の窓”、スタンダードっぽいメロディの “loose”、ドラマ主題歌になった “灯火” など、ゆったりとした歌が荒れた心に染み入ってくる。随所に現れる夜明けのイメージが “夜明けを呼ぶように” に収斂していく様子も美しい。

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Lucky Kilimanjaro 『TOUGH PLAY』

ドゥーワップ+ハウスみたいな “I'm NOT dead” からインターヴァルなしでサンバ+トラップの “踊りの合図” につながるオープニングに耳をつかまれて、そのまま'80sポップに今っぽいブレイクを挿入したような “人生踊れば丸儲け” まで一気通貫で聴かされてしまう。ラストの “プレイ” はアウトロ的な位置づけで “I'm NOT dead” のメッセージを念押しする。めざましく成長した熊木幸丸の歌がいっそう強靭な軸をなし、カラダ(ダンス)とアタマ(メッセージ)を同時に撃つラッキリ・スタイルはさらに前進した感がある。バンド・メンバーのガヤが活躍する曲が多いのは、聴き手を放っておかない、むしろ巻き込みたい意思の表れだろう。

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ゆっきゅん 『DIVA YOU』

DIVA MEからDIVA YOUへ。DIVAを動詞として使った事例は世界初なのでは? 幕須介人、野有玄佑、木足利根曽、yellowsuburb、浜崎容子が共作に名を連ね、ウ山あまね、RYOKO2000、田島ハルコのリミックスも収録。R&B、ハウス、トランスなどちょっと懐かしいダンス・ミュージックに乗せた一大セルフ・アファーメーション絵巻。言葉選びのセンスは特筆もので、例えば “NG” は「了解、君は悪くない」の歌い出しから「こんなに似てる君が 他人なんて嬉しい」まで撃たれっぱなし。こんな粋な失恋ソングは初めて聴いた。「ワンルーム・ディーバ」らしい抑えた発声も味があるが、巨大なステージで天井知らずの大暴れも見てみたい。

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ゆいにしお『うつくしい日々』

2021年11月リリースだが前回うっかり忘れており、後追いで聴いてじわじわ染みたので、今回の落ち穂拾いは愛知県出身シンガー・ソングライターによる3rdミニ・アルバムでいきます。サウンド・プロダクションはシティ・ポップど真ん中だが、メイクアップをめぐる気分の移ろいを綴った “cheek&lip” や恋の気づきを言祝ぐ “息を吸う ここで吸う 生きてく” を筆頭に、地方から上京して東京というプールをひとり泳ぐ(“pool mood”)女性の実感が横溢する歌詞が秀逸で、はやりもので片づけるのは惜しい。“塩” の「諸般の事情はおいといて 塩をまく」の緩急の効いた爽快なラインや “tasty tasks” のスティーヴィー・ワンダー心も好ましい。

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この記事の筆者
高岡 洋詞

フリー編集者/ライター。 近年はインタヴュー仕事が多いです。 https://www.tapiocahiroshi.com/

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