ただがむしゃらに活動してるだけでダメなんだ
──大阪でもかなりのペースでライヴを開催しています。
ヤギヌマ:大阪はみんな優しくてノリが良いですね。対バンのライヴって15〜20分しか持ち時間がないので、ちょっとしか聞いてもらえないじゃないですか。でもオリジナル曲をいっぱい聞いてほしいなと思って、ちゃんとしたワンマンをやろうって思ったんですよ。
──なるほど。
ヤギヌマ:でもそんなに気軽に来てくれるかなという不安があって、無銭ワンマンをすることにしたんです。でももちろん無銭だと会場費が払えないので、アンケートを取って「ヤギヌマの顔がタイプだったらチケット代は無料、そうでなければチケット代が発生する」というシステムにしたんです。
──すごい企画ですね。
ヤギヌマ:もちろん目標は「全員ヤギヌマの顔がタイプ」で全員無料なんです。開催するごとに1000円ずつチケット代をあげているんでけど、なかなかそうはならないですね。
──それは、ヤギヌマさんのためにチケット代を出している優しい方なんじゃないですか(笑)?
ヤギヌマ:そうですね(笑)。大事にしなくちゃですね。

──2022年8月からは〈早起きワンマン〉というライヴもやられています。
ヤギヌマ:これは平日の朝6時45分からライヴしています。お客さんは結構スーツを着ていて、会社に行く前に来てくれるんです。ノリでやってみるかと思ってやったら、土日よりも人が集まっちゃって(笑)。
──思いつきでやってるように見えて、意外とそれが実を結んでいる感じがします。
ヤギヌマ:私、Spotify O-EASTでワンマンライヴをするのが夢なんです。以前、オリジナル曲が2曲しかないときにとあるコンテストに出たことがあって、そのときは全身タイツでカバー曲を歌ったりして票を集めに行ったんですよ。そのコンテストの決勝戦がO-EASTだったんですけど、私は敗者復活戦で一ポイント差で負けて出れなかったんです。その時にO-EASTでまたライヴがしたいなと思いましたね。
──そんな思い出が!
ヤギヌマ:そして、その後にO-EASTでの対バンライヴで呼んでもらったんですけど、その時はYouTubeで配信があったんですよ。当時私は全然知らなかったんですけど、権利の関係でYouTubeではカバー曲のオケが使えないらしいんですよね。だから、当日慌てて、めぇめぇさんっていうぬいぐるみを持って寸劇みたいなことをやったんですけど、めちゃくちゃスベってしまって…。それが悔しくて、大泣きして帰ったんですよ。そういう思い出をO-EASTをパンパンにしてワンマンライヴをして記憶を上書きしたいんです。
──リベンジですね。
ヤギヌマ:そうです。そこで「オリジナル曲がないと駄目なんだ」と思ったことがきっかけで曲をめちゃくちゃ作ったんです。
──なるほど!
ヤギヌマ:最初の頃はとにかくライヴをするみたいな感じだったけど、だんだんいろんなことに挑戦させてもらえるようになって物事の見え方も変わってきました。大きなライヴハウスでイベントをするためには、事務所の人が付いていたり、いろんな人が関わっているんだということがわかってきたんです。ただがむしゃらに活動してるだけでダメなんだって思いました。
──大きな変化ですね。
ヤギヌマ:それからは、ステージだけで完結するようなライヴもできるようにならなきゃいけないんだなと思って、振り付けもいっぱいつけて、ライヴのやり方も変えていきました。大きいところに出させてもらった時に、そこだけで完結できるライヴもできるようにしたり、いろんなことに対応できるようにしなきゃいけないんだなと思ったんです。
──株式会社ぬぬぬ、という会社を立ち上げたのも、そういう流れからなんでしょうか。
ヤギヌマ:そうですね。大きなライヴハウスに出るためには、会社に所属していた方がなにかと都合が良いなと。事務所に所属することも考えたんですけど、自分で会社を作った方が動きやすいなと思ってつくりました。

──8月16日には、初のベストアルバム『ヤギヌマ図鑑』がリリースされます。今作を作るのが何かきっかけがあってのことですか?
ヤギヌマ:今まで曲はいっぱい作ってきたんですけど、それをひとつにまとめたものがあればいいなと思っていたんです。最近知ってくれた人も増えましたし、いろんな場所で知ってくれた人たちが、これさえ聴けばライヴが楽しめるものがあるといいなと思って作りました。古くから応援し続けてくれる人も楽しめるように、今回は全部の曲を再録しています。
──楽曲はどのようにして作っていくんですか?
ヤギヌマ:自分で歌詞をつくるときは思い浮かんだ時にちょっとずつメモしていって、そのフレーズからこうしてつなげるみたいな感じです。「こんなイメージ作りたいです」って作曲家さんにお願いしています。
