こんなにごちゃごちゃしている世の中ですから
──ここからはせっかくなので1曲ずつ楽曲について聴いていきます。まず“The Day”はアコギのサウンドで始まりますが、EPの全体的なムードを伝えるような印象を受けました。この曲は、King Gnuのベースである新井和輝さんがサポートとして参加していますが、制作はどうやって進んでいったんですか?
kiki vivi lily:アコギを弾いて淡々と歌うという構想がもともとあったんです。GUNZEさんからCMのご依頼をいただいたときにピッタリだなと思い、少し変更しました。最初のデモにはアコギがなかったんですけど、途中でMELRAWに弾いてもらってアレンジしました。それで私と荒田くんとMELRAWがアレンジを進めて、最終段階で新井さんとブライアンにお声がけしてレコーディングして、という流れです。
──新井さんとブライアンさんが参加したのはどういう経緯で?
kiki vivi lily:新井さんは、最近何度かライヴでご一緒したことがあって、荒田くんの助言を受けて今回お声がけしました。ブライアンはもともと知り合いだったんです。今回いろんな人に声をかけて、来てくれたのがブライアンでした。
──この曲でEPがはじまるのがすごく良いですよね。
kiki vivi lily:そうなんです。最近前奏がない曲が多いから、イントロがしっかりある曲にしようと思いました。他の曲は最初から歌う曲も多いんですけど、EPは前奏から始まる流れがいいなと思って。
──続いて、2曲目の“39 Minutes”。ファーストアルバム『vivid』がちょうど39分で、歌詞に「kiki viviのアルバムひと回りでリカバリー」と入っているのがおもしろいですよね。
kiki vivi lily:少しメタなんですよ。最初この歌詞を採用するつもりはなかったんですけど、聴かせた人みんながおもしろがってくれたので、入れることにしました。自分的には少し恥ずかしいんですけど(笑)。
──この曲のイメージは電車なんですよね。
kiki vivi lily:そうですね。『vivid』を聴き終わる39分くらいの間、電車に乗っているときの心情を歌っています。
──普段電車には乗る方ですか?
kiki vivi lily:結構乗るんですけど、全然好きじゃないです。でも音楽聴けるからいいかなって。
──この楽曲はどのように制作を進めたんですか?
kiki vivi lily:LAGHEADSの曲をレコーディングしているときに、「私のアルバムでも曲を作りませんか」とお誘いして、その場でだいたい制作しました。曲のテイストを伝えながら、みんなでワイワイして作りましたね。
──前作でもそういう制作方法はありましたか?
kiki vivi lily:いままでは絶対私が0から1を作っていたので、そういう部分を他の人と一緒に作るのは結構珍しかったですね。自分にはない引き出しがあるので新鮮でした。アルバムの中に変化があった方がいいかなと。
──この曲もミニマルな音作りですよね。
kiki vivi lily:そうですね。引き算的な考え方でシンプルにしました。
──シンプルにすることに不安はないんですか?
kiki vivi lily:不安はあります。こんなにごちゃごちゃしている世の中ですからね。ザ・バード・アンド・ザ・ビーというグループのカヴァーアルバムがすごくミニマルな作りで、好きなんです。そういう音作りをしたい気持ちがありました。
──ある種のカウンターですよね。ごちゃごちゃした作品が溢れている世の中だと、逆にこういう作品を聴きたくなる心情はあると思います。
kiki vivi lily:そういう人に届くといいなと思います。
