2022/04/21 17:00

SASAMI 『Squeeze』

MitskiやJapanese Breakfastとアジア系女性SSWへの注目が集まる中、“USオルタナの新星”として登場したのがSASAMIである。インディー・ロックからベッドルーム・ポップ、シューゲイザーを包括した衝撃のデビュー作から2年、本作ではニュー・メタルを軸に、インダストリアル、ハードコアまで踏襲した過激なスタイルを披露。怒りやフラストレーションを叩きつけるように極悪なヘヴィー・ノイズを鳴らしたと思いきや、カントリーやフォークの要素を取り入れたオルタナ・サウンドを鳴らすなど、振り幅の広さが凄まじく、何通りもの楽しみが本作に詰まっている。コートニー・バーネットを彷彿とさせる、気怠げで艶のあるハスキーな歌声も最高。

Jack White 『Fear Of The Dawn』

4年ぶりとなる完全新作アルバムは、奇抜な音選びとロックンロールに傾倒するパワープレイが炸裂し、“21世紀のロックアイコン”としての圧倒的な威厳を放つ1枚に。タイトに打ち込むドラミングに、歪みに歪んだスリリングなギターソロ、そして衰えを一切感じさせないパッショナブルな歌声と独特な節回しは、快感の一言に尽きる。そしてガレージ・ブルース、ハード・ロック、ヒップホップなどさまざまな要素を盛り込んだ奇想天外な曲展開を見せる中、突如初音ミクの声が聴こえてくるなんて誰が想像しただろうか。彼は唯一無二のカリスマ性を発揮し、我々が求めていた“ジャック・ホワイト”を叶えるだけでなく、サプライズを添えて想像を超えてきたのだ。7月に発売される今年2枚目のアルバムにも期待も募るばかり。

Animal Collective 『Time Skiffs』

フリーク・フォークの旗手と謳われる彼らの6年ぶりの新作アルバム。2012年にリリースした『Centipede Hz』以来に全メンバーが揃うという本作では、オーガニックを追求した音作りにこだわり、バンドの原点に回帰する。制作はリモートを通じて行われたにも関わらず、まるで対面でセッションをしているかのような生々しさや躍動感があるのが何よりの魅力だ。甘くトロピカルなサウンドに心躍り、温かなサイケ感に癒される。柔らかなタッチで奏でられる9曲の至福のポップ・ミュージックは時の小舟となり、我々をユートピアへ誘う。20年以上活動を続けてもなお、彼らはフレッシュでみずみずしく、真っ白なキャンパスを抱えては新しい色を塗り続けるのだ。

この記事の筆者
宮谷 行美 (Pikumin)

音楽メディアにてライター/インタビュアーとして経験を重ね、現在はフリーランスで執筆活動を行う。坂本龍一『2020S』オフィシャル・ライターを務めたほか、書籍『シューゲイザー・ディスクガイドrevised edition』への寄稿、Real Sound、日刊サイゾーなどのWebメディアでの執筆、海外アーティストの国内盤CD解説などを担当。

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