2022/04/21 17:00

beabadoobee 『Talk』

7月にリリースが決定しているセカンド・アルバム『Beatopia』から、先行公開された新曲がこちら。今や近年の90年代グランジ/オルタナのリバイバルを牽引する彼女は、ティーンにも受け入れられるポップさとエモさを加えて、現代的にアップデートしてみせた。豪快なファズギターとブリブリとした爆音のベースが轟くエモーショナルなロック・チューンは、往年のロックファンの心を確実に掴むことだろう。そして彼女の甘い歌声と、茶目っ気たっぷりの等身大なソングライティングはインパクト抜群で、一度耳にすると忘れられない中毒性を発揮する。夏にはレーベルメイトであるThe 1975と共にサマソニへの出演も決定しており、今年は彼女から目が離せない一年になりそう。

Arca 『Cayó』

BjorkやSia、坂本龍一など豪華ゲストを迎え、エレクトロニカ、ヒップホップ、インダストリアル、エクスペリメンタル、現代音楽まで縦横無尽に渡るカオティックな世界観を作り上げた『KiCk』シリーズは、この曲を以て完結する。アンビエント/ドローンの巨匠Tim Heckerとの共作で、アルトからファルセットまで生かした美しいハーモニーの背景では、ダーク・アンビエントがダブを経由して、ポスト・クラシカルへ接続されてゆく。神秘的で厳かな雰囲気が漂う傍ら、生々しいリップノイズと深みのあるダンサブルなリズムが、楽曲の根底にある艶めかしさを際立たせる。噎せ返るほどの色気と“異質”に宿る美と恐怖に満ちたMVも必見。

Cremation Lily 『Dreams Drenched in Static』

激しいノイズで満ちるほど、得も言われぬ心地良さと浮遊感に包まれる。そう教えてくれるのが、UKの現行カセットテープシーンを牽引するZen Zsigoのソロプロジェクトから生まれた本作である。作中では、ヘヴィー・アンビエントに始まり、シューゲイザー、パワー・エレクトロニクス、さらにはブラック・メタルといったさまざまなジャンルが邂逅。無数のトラックが複雑に交差する難解で奥深いサウンドメイクにAphex TwinやFenneszを彷彿とする強烈なグリッチ・ノイズを効かせ、全身を支配するように音の洪水が押し寄せてくるのがたまらない。あまりに暴力的で慄くほど美しい、ノイズ・ミュージックの醍醐味を詰め込んだ傑作だ。

この記事の筆者
宮谷 行美 (Pikumin)

音楽メディアにてライター/インタビュアーとして経験を重ね、現在はフリーランスで執筆活動を行う。坂本龍一『2020S』オフィシャル・ライターを務めたほか、書籍『シューゲイザー・ディスクガイドrevised edition』への寄稿、Real Sound、日刊サイゾーなどのWebメディアでの執筆、海外アーティストの国内盤CD解説などを担当。

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