夏フェスが始まる。どのラインナップも素晴らしいと思うんだけど、なぜか行く気がしない。音楽フェスティバルが氾濫し、独立したカルチャーとして動き出したために、毎日の現場=ライブ・ハウスやクラブで興っているリアリティとはほど遠く、退屈に感じてしまうから。

2008年4月26日、27日にKAIKOO meets REVOLUTIONというイベントが横浜のZAIMで行われた。レーベルPOPGROUPと横浜/湘南地区で活動するMEETS★REVOLUTIONの共同主催。アンダーグラウンドからオーバーグラウンド、ビートものから歌もの、EYE(from BOREDOMS)からNICE VIEWまで、TVでは決して目撃できない最新のミュージック・シーンのリアルが映し出しされた。チケットはソールド・アウト。6000人も集客したのだから、いかにリスナーがこのようなイベントを求めていたのかがわかる。またPOPGROUPを固める布陣は、DJ BAKUBLACK GANIONRUMIoak等の超個性派ぞろい。KAIKOO meets REVOLUTIONにどんなビッグ・アーティストが名を連ねようと、このイベントが彼ら主催であることがぶれることはなかった。

2009年。KAIKOOは、関東から飛び出し大阪〜名古屋へと驀進する。所属するアーティストしかり、このイベントしかり、首謀者である坂井田裕紀の時代を切り取る目の鋭さには感嘆するばかりだ。今回のレーベル特集は、『POPGROUPは何故REVOLUTIONを起こすのか!?』。彼の目に映っているものに迫ってみよう。

インタビュー&文 : JJ(Limited Express(has gone?))


INTERVIEW


山の中にいくつもりはないんです


—昨年行われたKAIKOO meets REVOLUTIONは、既存の音楽シーンにレボリューションを与えたのではないでしょうか?

坂井田裕紀(以下S) : ありがとうございます。集客は、最初は正直不安だったので、いっぱい来てくれて嬉しかったです。「これは、世の中もだいぶ変わってきたな」って思いました。2〜3年前だったらありえなかったんじゃないかな。

—今年も開催されるのを楽しみにしていた人も多かったと思うのですか、横浜のZAIMを使わず、大阪や名古屋に場所を移したのはどうしてですか?

S : ZAIMはもう使えないんですよ。揉めてるわけではないですよ。横浜市の持ち物なので、管理しているのが普通のおばちゃんだった(笑) だから去年あれだけ人が来て「管理しきれない」って言われてしまった。

今年に関しては、じゃぁ次のステップとして東京じゃないところを選んだってのが発端。まずは大阪と名古屋でやろうと。大阪や名古屋でこの規模をやるのは始めてなので、地元関西のKURANAKAさん(Zettai-mu)達にも協力してもらいながら作っています。

東京に情報を落とすことよりも、地方にどれだけ伝えていくかってことが大事。アルバムをリリースした時に、地方ではライブに行ったりCDをリリースしたときに反応がちゃんと伝わってきて、しっかり聴いてくれているなって感じるんです。だから、東京への発信だけじゃ駄目だなって強く思っています。もちろん東京は大切な世界一の場所ですけどね。その分消費文化が根付いている。

—去年横浜のZAIMを使ったのはなぜですか?

S : 僕は山の中にいくつもりはないんです。ロンドンにずっと住んでいたんですけど、その時近所の大きな公園でいきなりフリーでフェスティバルが開催された。出ているアーティストは、いわゆるフジ・ロックで言うグリーン・ステージ級のアーティスト。その光景にとても影響を受けていて、自分も生活の中に音楽がある状況を作りたいと思っています。

僕等が選ぶ感情を持った音楽を、気が向いたらいけるような場所でふらっと聴いた子供達は、そこで何かを感じてくれると思うし、その事がきっかけで、若者の感受性に刺激を与える事ができればと思っています。KAIKOOの出演者はとても感情的だし、音楽/アートに正直に向かい合っているアーティストばかりだから、ちょっとでもそこに触れてくれれば何かを感じると思います。でも別にまじめに音楽を聴いてくれとは言ってませんよ! 楽しんでくれればいいんです。自然に楽しくなってくる環境を作れていると思うし。極論、そういう場所で時間を過ごす事によって、メンタルの問題を解消をしたり、子供の育て方にヒントを得たり、いじめさえ減るんじゃないかな(笑) そういう大切な事を感じる時間/場所が作れればと思っています。 KAIKOOは、最終的にこういう事をしたいと思っていて、自分の活力になっています。

—横浜では、たくさんのバンドが出演していましたが、ぶっちゃけ採算は大丈夫だったのでしょうか?

S : 大丈夫じゃないです(笑) もっと入場料等の予算組の細かい詰めが必要だったし、仕切りも甘かった。なので、もうひとつレベルを上げてシビアなプラン立てをしなければと思ったんです。横浜で色々学ばせてもらって、今は少しですが黒字を出せるようになりました。イベントが成功するかしないかは、いかに細かい部分を見つめられるかだと思いますよ。

—アンダーグラウンドで活躍するアーティストばかりのイベントで6000人集めたのは、凄いことですね。

S : 2年前にAXでやったときに、結構お客さんが入ったんですよ。アーティストも楽しいって言ってくれたし。すごく良かったんですが、何故か満足しない気持ちがあったんです。当時の自分にとってAXを埋める1200人ってとても大きくて、このイベントをちゃんと成功させれば、僕等がプッシュするアーティストに対する世の中の見方が変わって、もっと注目してもらえるって思ってたんですけど、何も変わらなかった。その時に一万人だなって思ったんです。それぐらいの人に共感してもらえないと全く力はないなと。しかも、ただ人を集めてもだめで、しっかり自分らの考えを発信していかないと、誰にも響かないって感じてしまったんです。

—AXの1200人とKAIKOOの6000人を比べると、広まり度は10倍くらい違ったと思います。

S : そうそう。人が多くなかったら、世の中の人は結局ロッキン・オン・ジャパンの3万人って数に動かされちゃう。あれが正しいとなってしまう。


人と人との繋がりですべては始まっている


POPGROUPの成り立ちを教えてください。

S : 2005年に“KAIKOO”っていうDVDを僕とBAKUで作ったんですよ。撮影から編集まで全作業を自分らでやって。それが結構な枚数売れたんですね。それが今に繋がっているんです。

フランスのBATOFARで、フランス人の女の子がキュレーターの日本人フェスティバルみたいなものがあったんです。ノイズからテクノ、当時アブストラクトと言われていたヒップホップの人、そして田中フミヤさん、HIKARUくん、NUMBさん... そこにBAKUやGOTH-TRADも出てて、彼らは特に凄かった。BAKUとは、そこで知り合ったんです。僕は海外のほうが面白いと思って日本を出たので、彼らのことをその時まで知らなかった。DJ KRUSHさんとかKEN ISHIIさんとかに影響を受けた新世代は、オリジナリティがあるし、海外のものまねでもないし、日本でしか鳴らせないサウンドをやっているなって驚いたんです。そこで、今このシーンで興っていることを、映像作品としてリリースしたいと思った。

そんなことを考えながら日本に帰ってBAKUに会ったら映像を撮りためてるって。だったら彼やその周りのアーティストをまとめたDVDを創ろうって言って“KAIKOO”は始まった。毎日何百本もあるテープを観て、追撮して、皆の家にいってインタビューをしていった。人の手を借りずに、自分達で撮って、自分達の感覚でまとめていったんです。それをリリースしたらオリコンに載った。まだレーベルの名前もなかったインディペンデントのDVDが、いきなり売れて「なんなんすかこれっ? 」って話題になったんですよ。1年前にdj KENTAROが優勝したり、GOTH-TRADがヨーロッパ・ツアーをしたり、ちょうどMSCが出てきたりとか、才能のあるミュージシャンがどんどん頭角を現した時期でタイミングも良かったんですね。

—いつPOPGROUPと名乗りだしたのですか?

S : “KAIKOO”のDVDの次にGOTH-TRADのアルバムを出した。そのときに、正式にこのレーベルをPOPGROUPとしたんです。その後、BAKUのアルバムを出して、KAIKOOというイベントをやり続けて、3年かけてここまできたって感じですね。

POPGROUPという名前の由来は?

S : あんまり重い、真面目な名前にしたくなかった。よく、僕等の音楽はアンダーグラウンドだと言われるけれど、そんなつもりはない。聞く前に、アンダーグラウンドって判断されるのは凄く嫌だった。だからせめて受ける印象だけでも、軽い感じにしたかったんですよね。

—では、KAIKOOという名前は?

S : BAKUが最初に出したミックス・テープのタイトルが「Kaikoo with scratch」。そのミックス・テープは、拾ったレコードをメインにして創られている。そんな風に、KAIKOOという単語には、人と人は偶然の繋がりですべてが始まっているっていうBAKUの強い思いがある。それは、僕等の基本理念なんです。POPGROUPの特徴って、ちゃんと繋がっていること。BAKURUMIのエンジニアはoakのベース三浦カオルがやっていたりとか、そういうことなんです。

POPGROUPを見ていると、アンダーグラウンドに近い音楽が、ちゃんとビジネスとして回転しているように思います。

S : まさに、回転しようとしているところ。POPGROUPは、リリースとイベントの二本柱で会社を回している。だからリリースものもイベントものも1回1回必ず成功しなくちゃいけないし、ちゃんと枚数売れなきゃいけない。生きるか死ぬかのギリギリでやっていますよ(笑)

でも、もう一回り大きくならないと駄目だと思っています。会社を回転させるためのリリースになっちゃうと、考え方が後ろ向きになっていく。アーティストに「売り上げをとりたいから、この時期に制作して欲しい」なんて言いたくないから、年間で予定を立てて、それに向かっていけるようにびっちり決めてやっています。


POPGROUPからは、アーティストとスタッフがちゃんと同じ方向を向いている印象を受けます。

S : 皆が一生懸命やるし、協力しあいますよ。やっぱり、レーベルもアーティストも人じゃないですか。 昔5枚CDを買っていた人が、今は1枚しか買わなくなっている。その一枚になれるかは、とてもシビア。それを考えると、僕が「すげー! 一緒にやりたい!」って感じて、向こうも同じくらい一緒にやろうよって思ってくれないと契約することはできないですね。アーティストと良いパートナー・シップがとれるかどうかはめちゃくちゃ大事。1+1=2じゃなくて、4とか5になるのが理想的なんです。


POPGROUPやKAIKOOの見え方って、音楽カルチャーの中でも異端。クラブっていう括りでもないし、ロックやHIP HOPだけってわけでもない。それでもたくさんの人間を注目させたっていうところがすごい。

S : 見え方は凄く気をつけていますよ。簡単にぐちゃぐちゃになる要素をもっているから。ジャンルは違うけれど、共通のアティチュードがあるってことを大事にしている。日本の人って、アティチュードで音楽を聴いてくれると思ってるから。例えば曽我部恵一さんがBAKUを好きって言ってくれたり、横浜のKAIKOOに出てくれたりした。音楽は全然違うのに、同じアティチュードをもっていると思った。だから、筋さえ通せれば、バンドのあとにHIP HOPがこようが、DJがこようが、お客さんはそこに居続けてくれるんです。


まだまだ、世の中おかしいですよね

—昨今はフェスティバル・ムーヴメントですね。KAIKOOは、フェスティバルなのでしょうか?

S : フェスって感じではないですね。わざわざ行くものにしたくないし、もっと都会的なものにしたい。音楽を忙しい中で、気軽に触れることが出来たら、もっと街や人がクリエイティブなものになるのかなって思います。野外のフェスティバルは気持ちいいし、僕も好きですけど、それは音楽や野外が好きだから楽しめるのであって。音楽って、もっと音楽好きだけではなく一般の人の生活にも意味があると思ってる。

さらに、もうちょっとアーティストを観てほしいと思っているかな・・・ ロッキン・オン・ジャパンみたいなフェスとKAIKOOでは、集客の数は違うけど、どっちがクリエイティブなのかな? って。あそこに出ていなくても、もしくは小さいステージに出ているようなアーティストでも、集客では無く音楽を中心に判断すれば、KAIKOOではトリに選ばれるくらい素晴らしいアーティストがいる。音楽に関わる僕等が、もっと音楽を中心にアーティストを判断して、ちゃんとパフォーマンスをやらせてあげて、お客さんが彼らを見て感激するって循環を創っていきたいんです。だからKAIKOOがフェスティバルかどうかはどうでもよくて、KAIKOOにしか出来ない事をやっていきます!!

—僕等が大学生の頃にワクワクしたようなアーティストがもっと知名度を持って欲しいですよね。

S : 本当にそう思う。まだまだ、世の中おかしいですよね(笑)

—今後の展望を教えてください。

S : 実は、KAIKOOは来年のどこかで、東京で1万人規模でやろうと思って動いています。今バラバラに点在しているクリエイティブなアーティストが、1年に1回位ぎゅっと集まってやることができれば、1万人なんてそんなに難しい数字じゃないと思うし、そういうことを横のつながりだけでやっていきたい。そしたらすごく力になるし、自分達のやっていることをちゃんと伝えることができると思う。さらに、アニメ上映とか、日本人監督のドキュメンタリー映画祭を同時期に敷地内でやってみたりもしたいんです。

あとSonerみたいに、ちゃんとメディアを絡めていきたいですね。日本の多くの企業はクリエイティブであることに価値を見い出していないように思う。クリエイティブであることってビジネスにもなるし、すごく大切なこと。例えばソニーのクリエイティブ・チームは、世界と比べてもすごいハイ・レベルの創造力を持っていると思うんです。そういうところと協力してKAIKOOをつくっていけたらなって思っています。最終的に、アジアのアーティストもたくさん招集して、ヨーロッパとかアメリカに対して、1年に1回この時期に日本に来たらとてもクリエイティブで面白いことがあると思われるまでになりたいですね。


POPGROUP カタログ・リスト



DJ BAKU

HIPHOPを基盤にしながらもターン・テーブルを操り常に新しいダンス・ミュージックを提案する、オルタナティヴDJ / トラック・メイカー。1999〜2004までの5年間のARTIST達との交流を描いた音楽ドキュメンタリー映画「KAIKOO/邂逅」を'05年4月に発表。自ら監修、音楽もつとめた。後日発売されたDVDは若者のバイブルとなる。



oak

三浦カオルにを中心にしたエレクトリック・オルタナティヴ・ロック・バンド。DJ BAKUなどのエンジニア・ワークで培ったROCK・HIPHOPなどの様々な音楽ジャンルが、ルーツであるブレイクビーツと叙情的で優しいメロディに絡み合い、味わい深い緊張感と高揚感を持つ異色のダンス・ミュージックを作り出す。ベース・シーケンス+ギター+ドラムの3人編成。ミキサーでライブ・エフェクトを加えたライブ・パフォーマンスでは、更に激しさが増幅する。

RUMI


グライム / ダブ・ステップ、そして歌謡曲の哀愁までも飲み込むフィメール・ラッパー。高校生の頃にMC般若とともにヒップホップ・ユニット"般若"を結成、ライブDJにDJ BAKUを迎え精力的な活動を行う。その後ソロに転身、葛藤した時期の自身を「さなぎ」に見立て自身のレーベル「SanagiRecordings」を立上げ、'04年に1stアルバム『HELL ME TIGHT』をリリース。それまでの女性のラップのイメージを大きく揺るがす感情剥き出しのヒステリックな女のラップはHIPHOPのみならず、他ジャンルからも大きな反響を呼んでいる。

YAS-KAZ


ジャズ・ドラマーとして坂田明、小杉武久、故阿部薫らとセッションを始める。その後、土方巽舞踏団の為に音楽を書き下ろしたり、山海塾とのコラボレーションとして、世界ツアーの為に作品を書き下ろすなど、異ジャンルとの積極的な活動とともに、84年『縄文頌』を皮切りにソロ作品のリリースも重ねる。そんな打楽器のオリジネイターが再始動! さらに世界各国でのライブや世界のアバンギャルド / 舞踏界で名前を残す表現者達との競演など、その幅広い活動は留まることなくさらに拡張し続けている。


BLUE FOUNDATION


2000年結成。イギリス・ベースのターン・テーブリストTatsuki、イギリス人ボーカリストScott(スコット)、そしてプロデューサーのBichi(ビッチ)からなるバンド。ファースト・シングルをイギリスのレーベルMOSHIMOSHIよりリリース。その後ファースト・アルバム『BlueFoundation』をヴァージン・ヨーロッパよりリリース。デンマーク・グラミーを受賞。ヨーロッパの数多くのフェスティバルにてメイン・ステージでの圧巻のステージングを披露。2006年には全世界で公開された映画"マイアミ・バイス"のサウンドトラックに楽曲「SWEEP」が使われるなど、アメリカにおいても高い評価を得る。また、メンバーのTATSUKIはDJ KRUSHのアルバム"寂"に参加。

V.A.



ストリート・カルチャーのバイブルとなったDVD『KAIKOO / 邂逅』、そしてハイブリッド・イベントとしてその影響力と活動範囲を急速に広げるイベント、KAIKOO。その強烈な磁場を持つKAIKOOの名を冠した初のCDリリースが、DJ BAKUのセカンド・アルバム『DHARMA DANCE』と同日に発売決定!!!


KAIKOO vol.12-大阪乱遊祭-



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インタヴュー

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筆者について
J J (JJ)

パンク・バンドLimited Express (has gone?)のギター・ボーカル。BOROFESTAの主催者。ototoyのチーフ・プロデューサー。JUNK Lab Recordsのレーベル・オーナー。ライターやイベント・オーガナイズも多数。ototoyでは、リミエキのJJとして喋っている時は、JJ(Limited Express (has gone?))と記載しています。

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