90年代USグランジ難破船が辿り着いた先は──新時代を告げる“ニトロデイ”という名の大型船が出港

新時代の到来だ。昨年の12月に〈RO69JACK 2016 for COUNTDOWN JAPAN〉で他のバンドとは明らかな異彩を放ち優勝を果たしたロック・バンド、ニトロデイ。結成わずか1年足らずでの優勝という実績からもバンドの非凡な才能がひしひしと感じられる。なによりもこのバンドの最大の特徴はその若さと、いまの時代や流行を無視した音楽性だ。メンバーは現役高校生が主で、その高校生たちが鳴らす音楽は90年代のUSオルタナをルーツにした、いわゆるグランジである。現役高校生がグランジというだけでも興味を持っていただけるはずだが、インタヴューを通じてバンドの頭脳であるヴォーカル、小室ぺいのルーツや現況が見えてきた。大型新人、ニトロデイのインタヴューをぜひお楽しみください。

Nirvana meets NUMBER GIRLな国産グランジ!


ニトロデイ / 青年ナイフEP

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 250円(税込) / アルバム 600円(税込)

【収録曲】
1. 青年ナイフ
2. 最低
3. アルカホリデー
4. 月曜日


ニトロデイ / 青年ナイフ


INTERVIEW : ニトロデイ

左から松島早紀(Ba.) / 小室ぺい(Vo.&Gt.) / 岩方ロクロー(Dr.) / やぎひろみ(Gt.)

2017年6月18日(日)に渋谷で開催された〈YATSUI FESTIVAL! (以下、やついフェス)〉にて、渋谷Gladでのライヴのトリを務めるなど、早くも注目を集めつつあるニトロデイ。OTOTOYではこの〈やついフェス〉でのライヴ終了後、ヴォーカルの小室ぺいにインタヴューを敢行した。この時代にグランジという音楽を武器に音楽をはじめるに至った背景から、自身のルーツまで告白してくれた。ライヴでは耳をつんざくほどの轟音をかき鳴らし、気怠そうに歌っていた彼も、インタヴューをしてみると秘めた野心も。まるで“燃える氷”メタンハイドレートのような心に、どこか当時のグランジ・アーティストの精神が受け継いでいる気がしてならない。小室ぺい以外のメンバーも、高校生とは思えないギークな趣味を持つ個性的で頼もしいメンバーが集っている。これほど今後のブレイクとスケールを期待してしまう新人はなかなか出てこないだろう。このインタヴューを読めば、きっとあなたもそう思うはず。

インタヴュー : 飯田仁一郎
構成 : 高橋秀実
写真 : 大橋祐希

あんまりいまのメインストリームの音楽が好きじゃない

小室ぺい(Vo.&Gt.)

──まだ現役の高校生なんですね! バンドの結成はいつですか?

小室ぺい(Vo.&Gt.)(以下、ぺい) : 2016年の3月です。高1の終わりですね。

──結成までの経緯を教えてください。

ぺい : 以前はいまよりもっとポップなバンドを組んでたんです。そのバンドでライヴを重ねるうちに、ライヴハウスでドラムの(岩方)ロクローくんとギターのやぎ(ひろみ)と知り合って。それでバンドがいまの形になるときに誘いました。音楽性が前のバンドとニトロデイでかなり変わったことで、2人が興味を示してくれて。ベースの松島は同じ部活でやっていて、うまいのも分かってたので、声をかけました。

──ニトロデイの音楽性はグランジに属すると思うんですけど、90年代に隆盛したこのジャンルを、2017年にやろうと思ったきっかけは?

ぺい : もともとこのバンドではグランジをやろうと思っていたんです。きっかけはNirvanaの『Nevermind』ですね。高1のときに初めて聴いたんですけど、めちゃくちゃかっこよくて! すぐバンドをやろうと決めました。それくらい衝撃が大きかったですね。

──他にも、好きなバンドにNUMBER GIRLなど挙げていて、こういった音楽を聴きはじめたきっかけはありますか?

ぺい : Nirvanaを聴く前に、最初にかっこいいなと思ったのはNUMBER GIRL。学校も部活も同じベースの松島からNUMBER GIRLの「タッチ」を教えてもらって。それを聴いた瞬間衝撃を受けて。あとからそれがいわゆるオルタナってジャンルだと知って。そのジャンルを辿っていったら、気づいたら90年代のアメリカのグランジ全体が好きになってたんです。

やぎひろみ(Gt.)

──ぺいくんにとって、80年代後半〜90年代のグランジの魅力は?

ぺい : ムーヴメントを産み出したところですね。実はあんまりいまのメインストリームの音楽が好きじゃないんです。でも、メインストリームだった音楽を押し退けて、グランジがメインストリームになった時期があることを知って。やりたいことをやって、新しいムーヴメントをつくるのはすごくかっこいいし、僕らもそうなりたいです。

──Nirvana、NUMBER GIRLを知るまではどんな音楽を聴いてたんですか?

ぺい : 中学くらいまでは周りの友達と似たような音楽を聴いてました。小学校のときはYUIとか、中学では椎名林檎とか。それで高校のときにNirvanaやNUMBER GIRLに出会って、聴く音楽が変わっていって。その後は、向井秀徳さんが影響を受けている音楽を辿っていきました。PixiesやSonic Youth、Mudhoneyを聴きだしたり。でも正直に言ってしまうと、そういうバンドは作曲に活かすために聴いている音楽なんです。もちろん聴くのも好きなんですけど、普段聴いている音楽はまたちょっと違っていて。いまはヒップホップやテクノを聴いてます。

──意外ですね。ヒップホップやテクノではどんなものを?

ぺい : 1番好きなのはgroup_inouで、毎朝聴いてます。group_inouのcpこと威文橋さんの別バンド、uri gagarnも大好きです。テクノだとOrbitalとか。さっきたまたま〈やついフェス〉で(※このインタヴューは〈やついフェス〉出演後に行いました)、SEでOrbitalが流れてて、1人で勝手に盛り上がってました(笑)。両方に言えることなんですけど、自分たちにしか出せない音を突き詰めてやってるのは尊敬します。

表現するのが好きなんです。それは音楽に限ったことではなくて。

松島早紀(Ba.)

──ぺいくんが音楽をはじめたきっかけはなんですか?

ぺい : 表現するのが好きなんです。それは音楽に限ったことではなくて。例えば、短歌や小説、写真。この前は短歌甲子園があって岩手まで行きました。そのなかで1番自分が没頭できるのがたまたま音楽だったんです。

──言葉を文字にするのが好き?

ぺい : それもそうなんですけど、絵画も好きで観に行ったりします。非日常的な作品に出会うのが好きなんです。それが音楽をつくるうえでも活きていると思います。小説を読んで、物の見方を学んだり。オルタナだけじゃなく、表現全体からの影響は確実にありますね。

──小説で1番好きな作家さんは誰ですか?

ぺい : 1番好きなのは、金原ひとみの『星へ落ちる』。江國香織や川上未映子も好きです。女性作家さんをよく読みますね。

──ここまで表現全体に深い造詣があるとなると、ぺいくんと同じ趣味の友達は近くにいるんですか?

ぺい : たまにライヴハウスで会ったりしますけど、同じ学校にはいないですね。実は今日〈やついフェス〉の出番前に、高校の文化祭のライヴがあったんです。僕、軽音楽部に入っていて。そこではみんなワンオクとかSHISHAMO、AKBをやってました。僕はSyrup16gとART-SCHOOLとハヌマーンをやったんですけど、案の定めちゃくちゃ人少なかったです(笑)。

──同年代の友達はメインストリームの音楽をやってる一方、ぺいくんは踏み込んだドープなものをやってると。そういうメインストリームの音楽についてはどう思う?

ぺい : 否定はあんまりしないです。前まではすごい否定的でしたけど。いまはそういう音楽もあるんだな、と割り切ってます。みんなそれぞれやりたい音楽をやれば良いと思う。というか、みんなが好きだからその音楽がメインストリームになっていて、文化祭のライヴでもそういう音楽が多くなるのは当たり前だと思っています。でも、そのなかで好きな音楽をやることが大切だと思っていて。メインストリームじゃない音楽を周りに流されずにやれたのは嬉しかったですね。

──他のメンバーはどんな音楽を聴いてるんですか?

ぺい : ベースの松島はかなりの音楽好きで、邦楽洋楽問わず、80年代以降のポップスが好きです。L⇔RやGREAT3、Culture Clubとか。特に好きなのは岡村靖幸で、いつも聴いてるイメージがありますね。ギターのやぎは、ミツメとかのインディ・ロックが好きです。もともと僕とバンドをするまでは、空気公団、はっぴいえんど、スピッツだったりを聴いてて。バンドをはじめるにあたって、段々とグランジを好きになっていった感じです。あと、ギターの弾き方は田渕ひさ子さんとジョニー・グリーンウッドにすごい影響を受けてますね。ドラムのロクローくんは、andymori、銀杏BOYZ、エレカシ、RCサクセションみたいな日本のロックンロールが好きで、あんまり洋楽は聴かないみたいです。




























──音楽的な個性が豊かなメンバーとは普段どんな関係性ですか?

ぺい : 仲良いです。バンドをやってても、メンバー同士がよそよそしいバンドがときどきいるじゃないですか。それが嫌で、楽屋ではメンバーとふざけてます。人見知りなのもあるんですけど、仲良くなったらもっと喋ります(笑)。

岩方ロクロー(Dr.)

「内にあるものを表現する、吐き出す」みたいなことが性に合っている

──昨年の12月に〈RO69JACK 2016 for COUNTDOWN JAPAN〉で優勝したときはどんな心境でした?

ぺい : 個人的には2次審査が通っただけで嬉しかったですね。優勝発表会のときは優勝するとは全然考えてなくて。いざ優勝と聞いたときは信じられなかったですね。やっぱり評価をもらえたことは大きくて。「自分たちの音楽が間違ってなかったんだな」という自信になりました。メンバーの皆にプロになる意識を強く持たせてくれたのも〈COUNTDOWN JAPAN〉のおかげですし。

──グランジという、現代としてはかなりコアな音楽性で優勝を勝ち取ったわけですが、グランジのどこに影響を受けていますか?

ぺい : うまく言えないですけど、誰かのためじゃなくて、自分のなかにある“何か”を吐き出しているところですかね。個人的には“何か”を伝えたい、みたいなものはなくて、メッセージ性を持たせているわけじゃないんです。ただ「内にあるものを表現する、吐き出す」みたいなことが性に合っていると思います。でもそれは現状に不満があるわけでも、政治へのカウンターがしたいわけでもなくて。バンドの初期は抱えてるものもあったんですけど、いまは自分が歌いたいものを歌いたい。そっちのほうが自分にとってはリアルなので。

ニトロデイ

──今回リリースされる『青年ナイフ』で歌いたかった“内にあるもの”とは具体的にいうと?

ぺい : 歌詞は基本的にメロディが出来てから書くんです。メロディに沿ってこういうことを歌おうみたいなイメージが出来てくる。アルバムに関していえば、共通しているのはどうしようもない日常に対する諦めというか、やるせなさみたいなものを軸にしました。それをサウンドに落とし込むことで日常のなかの非日常みたいな描写ができていればな、と。ほとんどの曲で一人称で日常を歌っているのも、三人称よりも生々しいというか、リアルな日常感があるのでわざとそういった歌詞にしてます。

──歌詞のなかで”笑う”という言葉が気になったのですが、「最低」の〈笑いまくってる〉や「青年ナイフ」の〈笑いながら〉が、“嘲笑う”の意味合いで聴こえてくるんですけど、そういうドライな気持ちもある?

ぺい : 確かに普通の笑うとは意味合いは違うと思います。でも、嘲笑うでもなくて。可笑しい、ちょっと変、のほうが近いかもしれないです。なぜか勝手に笑えてくることあるじゃないですか。

──ぺいくんは音楽をやっていくうえでどんな人間になりたいですか?

ぺい : 有名になりたい。でも、視られる用の自分はつくりたくなくて。かっこつけたくないんです。ライヴのときもうるさくないと歌えない。音にかき消されるくらいが自分の声を意識しないで歌えてちょうど良くて。ありのままの自分で続けられればと思います。

──ではバンドとしては、今後こんなアーティストになりたい! みたいな目標はありますか?

ぺい : 大きいフェスにも出たいですし、CDもたくさん売れたら嬉しいです。現状はライヴにいっぱい人が来てほしいですね。7月22日に横浜BB STREETでレコ発のライヴもあるので。

──なかなかこんなバンド現れないと思っていますので、OTOTOYでもずっと応援しております。

ぺい : ありがとうございます!

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LIVE SCHEDULE

〈SEINEN KNIFE DAY〉
2017年7月22日(土)@横浜BB STREET
時間 : 開場 18:00 / 開演 18:30
出演 : ニトロデイ / 羊文学 / the twenties
チケット : 前売り 2,000円 / 当日 2,500円 / 高校生 1,800円(学生証提示の場合)※いずれもD代別
ご購入はこちらから
問い合わせ : 横浜BB STREET 045-681-8202

その他ライヴ
2017年8月6日(日)@稲毛野外音楽堂
時間 : 開場 11:00 / 開演 11:40
チケット : 入場無料
出演 : ニトロデイ / ユレニワ / Althea / MixoL'e / TRiFOLiUM / かたこと / みきなつみ

2017年8月25日(金)@下北沢THREE
時間 : 開場 18:00 / 開演 18:00
チケット : 前売り1,500円
出演 :
【LIVE】ニトロデイ / Tomato Ketchup Boys / SUNNY CAR WASH / No Buses
【DJ】JACKSON kaki / Koga Hirouchi / ツタヤくん / Kanzaki Satoshi

2017年8月27日(日)@横浜BB STREET
時間 : 開場 17:30 / 開演 18:00
チケット : 前売り2,000円
出演 : ニトロデイ / SEVENTEEN AGAiN / Ballon d'or / LINK / Dr.DOWNER / Steadys

詳細はこちら

PROFILE

ニトロデイ

小室ぺい 17歳(ギボ)
やぎひろみ 17歳(ジャズマスター)
松島早紀 18歳(ベイス オン ベイス)
岩方ロクロー 19歳(ドラムス)

Nirvana、ナンバーガール、Sonic Youth、Pavement、Pixiesなどに影響を受けた、ローファイな爆音グランジ・オルタナティヴを演奏する平均年齢18歳の横浜出身現役高校生バンド

ニトロデイ Official HP : http://artist.aremond.net/nitroday/

ニトロデイ Official Twitter : https://twitter.com/nitrodayrock

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インタヴュー

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by 鈴木 雄希
筆者について
J J (JJ)

パンク・バンドLimited Express (has gone?)のギター・ボーカル。BOROFESTAの主催者。ototoyのチーフ・プロデューサー。JUNK Lab Recordsのレーベル・オーナー。ライターやイベント・オーガナイズも多数。ototoyでは、リミエキのJJとして喋っている時は、JJ(Limited Express (has gone?))と記載しています。

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