“あえて踊らせない”はもういい──トリプルファイヤー、7年ぶり待望の新作『EXTRA』
癖のある世界観と雰囲気を纏い、シーンで異彩を放ち続けているバンド、トリプルファイヤー。近年はヴォーカル、吉田靖直が『タモリ倶楽部』などにも出演し話題を振り撒いてきましたが、匂わせ続けていた7年ぶりとなる新作『EXTRA』がついにリリースです! 今回OTOTOYでは、メンバー全員への取材を敢行…の予定だったのですが、新幹線の運休で東京に戻れないという事情により、急遽吉田靖直がリモート参加というこちらも想定外の“EXTRA”な形に。前作『FIRE』を経て、“楽しく踊れる音楽」を標榜した新作『EXTRA』はギター、鳥居真道のディレクションのもと、どのようにして完成したのか? アルバム購入者特典としてタイトル『EXTRA』にちなんだ『メンバー秘蔵の“余計な”私物』プレゼント企画も!
待望、7年ぶりのアルバム!
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■応募期間、方法
2024/7/31(水) ~ 2024/8/21 (水) 23:59まで
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・『EXTRA』を購入した際使用したアカウントの、メールアドレスもしくはTwitterアカウント名
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・お名前
・ご住所
・連絡先
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■対象ユーザー
OTOTOYにて、トリプルファイヤー『EXTRA』のハイレゾorロスレス音源をまとめ購入いただいたかた
※単曲購入は対象外となります。
■当選発表
ご当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。(プレゼント内容を選択することは出来ません)
INTERVIEW : トリプルファイヤー
7年ぶりの新作。そう聴いて驚いた。コロナ禍の数年を挟んだせいもある。しかし、時間は確かに経っていて、トリプルファイヤーにも変化が訪れていた。バンドの演奏から逸脱するかのように歌詞を自由に連ねていた吉田靖直が、メロディらしきものを“歌って”いる。その変化の兆しは前作『FIRE』(2017年)にもあったが、この7年でそれが明確化した。シマダボーイ(perc.)や沼澤成毅(key.)などサポート・メンバーを迎えるようになったサウンドはエッジーでありながら多彩化、かつダンサブルな要素を増し、吉田の歌う言葉も突き放すような笑いだけでなく、生活者として聴き手とのリンクを持ち始めている。そこには、時間をかけてなんとなく変わったというより、ある明確な意識があったのではないか。だとしたら、それは誰かの意図なのか、バンドの総意だったのか。メンバー4人が揃ったインタビューで、この変化の真相に迫った。
インタビュー&文 : 松永良平
撮影: 小原泰広
あえて踊らない、みたいなのはもういいや
──7年ぶりとなるニューアルバム『EXTRA』が7月31日にリリースされます。7年の月日が経ったんですね。
鳥居真道(以下、鳥居):自分もそう思いました(笑)。
山本慶幸(以下、山本):言い訳にしかならないんですけど、コロナで時間感覚が狂っちゃったような。
──資料には「2020年の11月末日にレコーディング開始」って書いてあるじゃないですか。たぶんその時期ってコロナが一瞬落ち着いた時期だと思うんですが、そこからでも3年半くらいかかってますよね。
鳥居:そうですね。全曲のオケは2021年に入るタイミングでできていました。そこからヴォーカルに関しては、もう少し歌詞を詰めたほうがいいということで時間がかかりました。
山本:歌詞とか歌いかたを吉田と鳥居の2人で詰める時期がありましたね。
──トリプルファイヤーの制作としては、吉田さんの歌詞などの部分はフリーフォームだと思っていたので、鳥居さんが関与して時間を割いて詰めていくというのは、あまりイメージがないです。
鳥居:いままではあまりタッチしちゃいけないという暗黙の了解があったんです。だけど、今回はそこがあまりうまくいっていなかった。
──吉田さんにもお聞きします。どういう経緯だったんでしょう?
吉田靖直(以下、吉田):曲は、ライヴでやりながら適宜変えていっていましたね。たしかにハマっていない部分はあって、自分だけで直しているとつらいので相談し合いつつ。
──鳥居さんからすると、そこに介入するのはどうかという思いはあった?
鳥居:そうですね。仕事増えるしなあ、という(笑)。1回タッチするとやることが無限に増えていくので、あまり触れたくなかったんです。曲自体はライヴでずっとやってきたので、オケのイメージは固まってたし、デモを作る時点で9割くらい決まっていました。ただ、さっきも言ったように、歌詞とオケがあまり一体感がなくて、そうすると吉田くんにしかフォーカスがいかないので我々の居場所がなくなるというか。なのでバンドとして手を取り合いたかった。
大垣翔(以下、大垣):そこまで明確に言語化したかは定かではないんですけど、「1対3は嫌だよね」という気持ちは持っていたと思います。
山本:そもそも吉田くんはずっとフワフワしている人なんですよ。でもオケはできているから早く出したかった。
吉田:ヴォーカルと演奏の乖離が面白いという見えかたがあると思うんですけど、ずっとそれだと変わっていかないってなったんでしょうね。そうは思っていたんですが、完成させるのを先延ばしにしていきたい気持ちもあったんです。完成したらもうそれで決まっちゃうじゃないですか。それが怖いというか、可能性を残しておきたいみたいな。でも、とりあえず作品に向き合わなきゃいけないなという感じになりました。
──つまり、みんなで話し合って制作を進めるという、バンドにとって大きな変化をしたんですね。
鳥居:お客さんを踊らせたいという欲求が、『EXTRA』を作っている最中に出てきて。吉田くんがとうとうと語るように歌うとお客さんが棒立ちになっちゃうので、もうちょっと歌っぽくリズムに乗って一体感を出していこうと話した記憶はあります。
──お客さんを踊らせたいというのは、全体の意見?
鳥居:私です。それをみんなに押し付けました(笑)。
山本:(以前は)突き放す感じだったよね。
大垣:サービスはしてなかった。
鳥居:若いころ、高速4つ打ちみたいなのが流行って、フェスとかで無理やり踊らせる文化があったんですけど、それに対するアンチテーゼで、踊らせるのがダセえという気持ちがあったんです。でもいまはそうじゃない。
大垣:あえて踊らない、みたいなのはもういいやというか。
鳥居:アルバムに入った新曲は、『FIRE』(2016年)の完成までillicit tsuboiさんのミックスを1年くらい待っていたので、実はそのころからやり始めていたんです。だからあんまり計画的に制作を進めていたわけではないですね。でも、今回の曲はダンスミュージックのつもりで全部作ってはいます。
──吉田さんは、その方向についてはどう思いましたか?
吉田:ダンスミュージックを歌詞とか歌でどうこうしようとは思っていなくて。鳥居くんがデモにメロディーをつけてくれたことで、歌詞が浮き上がらずにまとまりがあって踊りやすくなりましたね。
──あ、そうか。ガイドのメロディーがついたんですね。それで歌詞の書きかたは変わりましたか?
吉田:前は適当に歌ったりして、歌って気持ちいい箇所を採用していたんですけど、ある程度制限されていたほうが逆に作りやすいなとも思います。たとえば、“シルバースタッフ”は、メロディーから〈役に立って〉という歌詞が思い浮かんだ可能性があります。
──鳥居さんはメロディーをつける段階で、吉田さんにそういう制限を意図的に与えている意識はあったんですか?
鳥居:いままでもメロディーありのつもりで曲を作ってきたんですけど、割と字余りのパターンが多かった。なので、むしろそんなに制限にはなってないと思ってました。
吉田:いままではある程度変えてもいいと思っていたんですけど、思ったより忠実にしてほしそうだったので、前よりは守るようにしました。
大垣:そもそも勝手に変えるなよ(笑)。
──鳥居さんが、吉田さんに忠実にメロディーを守ってほしいと思ったきっかけは?
吉田:おとといフライデーの曲“私ほとんどスカイフィッシュ”(2016年)を、鳥居くん作曲、僕作詞で担当したことあったんですよ。そのとき「全然守ってないじゃん」って鳥居くんに言われたので。
鳥居:「小学生の替え歌」って言いかたをよくするんですけど、本当に字余りで言葉の流れに沿っていない感じがあったんです。別に書いた歌詞を無理やり乗っけていた印象があった。なので、それを変えてほしいと言ったことを気にしてるんだと思います(笑)。
──いやそれは作曲者としてはまっとうな意見だと思います(笑)。しかし、すでにこれだけキャリアを重ねて、初めて作曲と作詞が手を取り合うっていうのがトリプルファイヤーという稀有なバンドっぽさというか。
鳥居:たしかに。