2026/02/21 15:00

音楽と付き合い続けるための、距離の取り方

見汐:これは何度も言ってるけど、私は髙城くんのソロ、パラボタの曲がすごく好きなんだよね。特に「ミッドナイト・ランデヴー」が好きで、初めて聴いたときに、南佳孝の「スローなブギにしてくれ」とか「モンロー・ウォーク」みたいな、洗練と無骨の間のような絶妙なメロディ、1980年代前後、あの時代の空気感もちょっと感じるというか。ceroではやらないようなメロディだから、「こういうのもやるんだ」って最初に聴いたときは新鮮で。いい感じに歳を経てきた初老の男がロッキングチェアに座って静かに読書している後ろ姿が浮かぶイメージ。『Triptych』のジャケットもいいですよね。

Shohei Takagi Parallela Botanica / ミッドナイト・ランデヴー 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
Shohei Takagi Parallela Botanica / ミッドナイト・ランデヴー 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

髙城:ロッキングチェアはだいぶ気取ってる気がするけど(笑)。でも、たしかにceroと比べてソロのほうがそういう雰囲気に近いかもしれない。

見汐:コンセプチュアルな世界観、テーマがあって、物語が用意されている感じ。ソロは髙城くん個人が日頃から考えていること、好きな音色、リズムとか比較的ストレートに出ているのかなって。アルバムとしても好きです。

髙城:ありがとう。ceroは高校生時代から一緒にやってるから、集まると当時と変わらない空気感になっちゃって、3人でいると歳を取れないんだよね。最近はそれも特別なことだと思うようになったんだけど、それとは別で、自分の年齢にふさわしくて、一緒に歳を重ねていけるような音楽もやりたいと思うようになって。それがソロをはじめるひとつのきっかけだった。

見汐:それはすごく明確な線引きだね。

髙城:そうだね。ceroは実年齢を気にせず、その時々でやりたいことや流行を軽やかに取り込める場所であってほしいし、それはそれで絶対に必要なんだよね。ceroとソロ、両方あるのがちょうどいい。

ただ、本当は並行してやれたら理想なんだけど、それがなかなか難しくて。不思議なもので、ceroを着手しはじめるとパラボタに意識が向かなくなるし、その逆もあって。

ceroをやってるときは、ジャンル関係なくいろいろ聴いて刺激を受けるけど、そういう時期にパラボタみたいな音楽を聴くと、渋すぎると感じちゃう。でも逆に、パラボタのモードに入ると、ceroがリファレンスにしてる音楽がチャラチャラして聴こえたりして。そのスイッチをうまく切り替えられたら、もっとコンスタントに曲を出せるんだろうけど……それは今後の課題だね。

見汐:その感覚は私も、エッセイやらの原稿を書いていると、曲は一際作らなくなってしまう。逆にレコーディングが始まると書き仕事が捗らなくなったりする。その自分の中でスイッチがハッキリ切り替わること、行き来そのものが自分には必要なことであり大事なんだろうなって。

髙城:その塩梅を自分なりにうまくわかっていかないとね。

見汐:そうだね。髙城くんは、将来の自分がどうなってるかとか考えたりする?

髙城:結構考えるかな。こないだも、あるミュージシャンの人と話してたときに、その人が「最近は音楽を嫌いにならないようにしてる」って言ってて。作曲以外のこともいろいろ忙しくやってる人なんだけど、「これで音楽嫌いになっちゃったら何もできなくなるから、そこを意識して調整してる」って言葉に、すごく共感したんだよね。

これまで自分がやってきたことを踏まえて、今後どんな活動をしていくかを考えると、少し肩肘張っちゃうところもある。でも「音楽を嫌いにならないようにする」くらいのハードルなら、ちょうどいいのかもしれないなって。べつに音楽を嫌いになりそうな訳ではないんだけど、俺にとっては“読書とかほかにも好きなことがあるなかでの音楽”、という位置づけなんだよね。

音楽に対して絶対的な執着がない自分を「それってどうなんだろう」と思う時期もあったけど、少なくとも今、音楽を嫌いではない状態を持続させることに集中するくらいでもいいのかなって最近は思いはじめてる。

見汐:私も髙城くんのスタンスに近いかも。ライフワークのひとつとして音楽があるというか。自分が好きでやっていることなんだから気負う必要なんかないよなって。あと、やっぱり楽しいんだよね。音楽を聴いているあのなんともいえない時間はさ、平和だよ、とっても。嫌な気持ちになることそうないもん。

髙城:うんうん。人生の主軸が完全に音楽にある人たちには自分はなれないけど、俺には俺なりの音楽との向き合い方があって、そういうスタンスだからこそできる音楽もあるんじゃないかなって、最近は思えるようになった。

見汐:髙城くんはきっと、おじいちゃんになっても音楽やってると思うな。いつかチャーリー・ヘイデンの『Rambling Boy』みたいなアルバムを髙城ファミリーで作ってほしい(笑)。

髙城:そんなのできたら最高だね。

対談を終えて

「最終回は馴染みのある方と気楽にお喋りできたら……」担当の石川女史にポツリ呟いたところ、今回の形と相成りました。放談というより雑談に近いです。普段の会話の中でも、髙城君が口にする言葉に刺々しさを感じることは殆どありません。それは心配りとも少し違っていて、きっと日々の思考によって取捨選択されてきた言葉だからこそ、どんな発言であったとて嫌味も雑味もないんじゃないかなと思いました。「誰が、それ(何)を言うか」同じ言葉や文言でも使われ方や話し方に為人(ひととなり)が如実にでるものなんだよなと改めて思うなどしました。

最後に。
全8回、お会いしてくださった皆様、企画・構成を担当してくださったOTOTOYの石川さん、ロケハンは抜かりなく、いつも素敵な場所を見つけては毎回の撮影を引き受けてくれた安仁さん、そしてOTOTOY「日めくりカレンダー」をご覧いただいた皆様、改めてありがとうございました。(見汐)

編集後記

全8回に渡りお届けしてきた『見汐麻衣の日めくりカレンダー』。次回の予定が今のところないだけで、私自身、終わってしまった実感はまだありません。

各回、ゲストの方たちが語ってくださった体験談はどれも素敵なものばかりでした。とくに印象的だったのは、当時の自分を振り返るときの語り口に、みなさん共通して漂う独特の空気感があったこと。そもそも、人が誰かのことを語るときには、その対象への距離感や感情が自然と表れるものだと思います。ゲストの方々が昔の自分について話すとき、どこか照れくさそうで、「昔からよく知っている腐れ縁のあいつ」のような、やるせなさを含みながらもどこか懐かしい、不思議な親密さを纏っていました。それはきっと、過去の自分が、ともに苦境を乗り越えた戦友のような存在になっているからなのかもしれません。生きていくなかでの大きな出来事のたびに、そうやって味方としての自分の分身を増やしていく。その積み重ねが、この方達のしなやかかつ寛大な人間性につながっているのではないか、そんなことを思いました。

私は自分自身、まだ魅力的な大人になれているとは思えません。ですが、ゲストの方たちのように、さまざまな出来事が起きたとき、その都度真剣に向き合い乗り越えようとすることで、少しでも理想の大人像に近づけるのかもしれない、そんなふうに励まされてもいました。そして、この連載を読んでくださった方にも、なにか少しでも発見があればこの上ないことです。

各回お越しいただいたゲストの方々、毎回真摯に対談ホストを務めてくださった見汐さん、チャーミングに現場を和ませながら素敵な写真を撮ってくださった安仁さん、いつも親身になって共に進行していただいたLemon House Inc.のみなさん、そして読者の方々、本当にありがとうございました。(石川)

PROFILE:髙城晶平

ceroのボーカル/ギター/フルート担当。2019年よりソロプロジェクト “Shohei Takagi Parallela Botanica”を始動。2020年に1st Album「Triptych」をリリースする。その他ソロ活動ではDJ、文筆など多岐に渡って活動している。ceroの近作は「e o」(2023)「Live O Rec」(2024)。

■cero HP : https://cero-web.jp/
■Instagram : https://www.instagram.com/takagikuns/
■X : https://x.com/takagikun

PROFILE:見汐麻衣

シンガー / ソングライター
2001年バンド「埋火(うずみび)」にて活動を開始、2014年解散。2010年よりmmm(ミーマイモー )とのデュオAniss&Lacanca、 2014年石原洋プロデュースによるソロプロジェクトMANNERSを始動、2017年にソロデビューアルバム『うそつきミシオ』を発売後、バンド「見汐麻衣 with Goodfellas」名義でライブ/レコーディングを行う。
ギタリストとしてMO'SOME TONEBENDER百々和宏ソロプロジェクト、百々和宏とテープエコーズ、石原洋with Friendsなど様々なライブ/レコーディングに参加。また、CMナレーションや楽曲提供、エッセイ・コラム等の執筆も行う。2023年5月、初のエッセイ集『もう一度 猫と暮らしたい』(Lemon House Inc.)を発売。

■HP : https://mishiomai.tumblr.com/
■X : https://x.com/mishio_mai
■Instagram : https://www.instagram.com/mai_mishio
■note : https://note.com/19790821
■Bluesky : https://bsky.app/profile/maimishio.bsky.social

見汐麻衣ライブ情報

「うたのしおり A bookmark for a song Extra Edition」

2026年3月15日(日) @八丁堀七針
開場18:20 / 開演19:00
前売3,500/当日4,000

ACT▼
見汐麻衣 with Goodfellas

見汐麻衣(Vocal,Electric Guitar)
坂口光央(keyboard,Synthesizer)
大塚智之(Electric Bass)
増村和彦(Drums,Perccussion)

ご予約は七針まで
ftftftf+yy22@gmail.com
日程を件名に、本文にお名前、人数、ご連絡先を記入して送信してください。

「うたのしおり A bookmark for a song Vol.15」

2026年3月28日(土) @八丁堀七針
開場18:00/開演18:30
前売¥2,800 / 当日¥3,300

ACT▼
見汐麻衣
Guest:福原音(Chappo)

ご予約は七針まで
ftftftf+yy22@gmail.com
日程を件名に、本文にお名前、人数、ご連絡先を記入して送信してください。

この記事の筆者
石川 幸穂

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この記事の編集者
石川 幸穂

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YAJICO GIRLが求める、ダンス・ミュージックの多幸感──“僕のまま”で“自分”から解放される

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20年の経年変化による、いましか表現できない音を──tacica『AFTER GOLD』先行試聴会&公開インタヴュー

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Guiba、歌ものポップス拡張中──スケール・アップを目指したセカンド・アルバム『こわれもの』完成

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滲んでいく人間と機械の境界線──OGRE YOU ASSHOLE『自然とコンピューター』クロス・レヴュー

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浪漫革命、音楽やバンドへの想いが『溢れ出す』──京都を抜け出し、この1枚で人生を変える

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一度葬り、新たに生まれ変わるフリージアン──覚悟と美学が込められたEP『歌葬』

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圧倒的な“アゲ”で影をも照らすビバラッシュ! ──“信じる”ことがテーマの「エンペラータイム」

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優河が奏でる、さまざまな“愛”のかたち──わからなさに魅了されて

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THE SPELLBOUNDと果てなき旅に出よう──セカンド・アルバム『Voyager』に込められた生命の喜び

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ナリタジュンヤがはじめて語った、自身の「原点」──「Hometown」で描いた、生まれ育った街の情景

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必要なものは海と人間のあいだにある──踊ってばかりの国が渚にて見つけた“ライフハック”

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孤独と痛みを共有した先でなにを歌うか──リアクション ザ ブッタがつかんだ希望の指針

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いつも全身全霊で楽しんだら、それでうまくいく──結成10周年のTENDOUJIは次のフェーズへ

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あらかじめ決められた恋人たちへが放つ、もっともタフで、もっともダブな最新アルバム『響鳴』

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猫田ねたこ、共生の尊さをしなやかに描いたセカンド・アルバム

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Atomic Skipperの“軌道”を記録したデビュー・アルバム完成

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[連載] Shohei Takagi Parallela Botanica, cero, 見汐麻衣

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