HIP HOPライター斎井直史によるガチンコ連載「INTERSECTION」Vol.6ーー哀愁あるラップ、東京下町・北千住のムードメーカーpiz?

これまで、興味を持ったアーティストに直接接触することでリリース情報を掴み、記事にしてきたヒップホップ・ライター、斎井直史。そんな彼によるガチンコ連載「INTERSECTION」!! 扱う対象は、レーベルを通した作品だけでなく、手売り音源、ネットで活動しているアーティストの音源、ライヴに徹しているアーティストの音源まで… 要するにすべて!! 斎井がいま熱いと思えるアーティストをみつけては、アポ取りから配信契約までを行う、まさにガチンコのDIY企画。それゆえ、ホットなリリースのみならず、突如として独占音源やインタヴューが飛び込んでくることも当たり前。熱いアーティストが増えれば増えるほど、このコーナーも熱さを増していく。がんばれ、斎井! おまえの骨はOTOTOYが拾ってやる!連載6回目の今回は、どこか哀愁あるラップを歌う東京下町・北千住のムードメーカー、piz? をピック・アップ!! 一見強面で近寄りがたいオーラが出ている彼だが、とても人懐こく、多くの人に愛されているという。そんな彼の特徴的なラップや人柄の正体にインタヴューで迫った。もちろん、1stアルバム『3212』もOTOTOYで絶賛配信中!!
3212 / piz?
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC / MP3
※ファイル形式について
【価格】
単曲 199円(税込) / アルバム 1,650円(税込)
【Track List】
1. Do You Wanna / produced by KID FRESINO al / 2. I Crack / produced by KID FRESINO / 3.Weekend Schumacher (feat. RHYDA) / produced by KID FRESINO / 4.Lower East Riot / produced by Hi'Spec / 5.M.O.G.U.R.O (feat. MUTA) / produced by KC from Militant B / 6.Out Of Rescue / produced by KC from Militant B / 7. Comical Wash (feat. VANADAIAN EFFECT) / produced by JZA / 8. Love.S.Drill (feat. Tomonari Abe) / produced by JZA / 9. Mainichi Dori On A Rainy -Skit- / produced by dara' / 10. Heart Warming Quest / produced by JZA / 11. 2 Verse 3 Hook / produced by KID FRESINO / 12. Hand Sign (feat. VOLO) / produced by Hi'Spec / 13. Smile -Skit- / produced by dara' / 14. My Pace My Space / produced by Daworld / 15. L8R -After A Club- / produced by Yose / 16. As A Child / produced by 999 / 17. Hand Sign(AIWABEATZ REMIX-ototoy ver) mixed by SHOT-ARROW
※「Hand Sign(AIWABEATZ REMIX-ototoy ver) mixed by SHOT-ARROW」は、アルバムまとめ購入のみの特典音源です。
INTERVIEW : piz?
今回インタヴューしたのは、GAMEBOYSに引き続き、VLUTENT RECORDSからpiz? だ。 ABC(Air Boryoku Club)やVanadian Effect、Psychedelic Pay Channel等の活動だけでなく客演も多いのだが、意外にもソロ・アルバムは今作『3212』が初となる。piz? はインタヴュー中、ヒップホップは人間性が出やすい音楽だと語ったが、自身の『3212』は特にそれが顕著だ。酩酊しているようなリリックには、彼の感受性の豊かさや繊細さが詰まっている。また、巻舌ぎみの粗いラップにも、ちょっぴり哀愁がある。一見すると人を寄せ付けない強面な男でも会ってみればラップから受ける粗悪な印象はない。一緒に酒を飲めばとても人懐っこく、よく人を見ていて、人をとても大切にしている。だから、友達からも愛されている。
そんな北千住のムードメーカーpiz? が、タイへの移住と30歳の誕生日に間に合わせたアルバムは、通して聴けば友と夜通し飲み明かした後の帰り道のような気持ちになる。充足感と寂しさの混じった朝帰りのあれだ。あなたがpiz? のことも、北千住のことも知らなくてもいい。最後まで『3212』を聴けば、なんだか友達が1人増えたようなあたたかい気持ちになるだろう。このアルバムは彼自身であり、彼をつくった下町が素直に音楽になっているから。
インタヴュー & 文 : 斎井直史
自分はそれを見抜くプロかも知れない… 調子に乗りました(笑)
ーー今回ソロを作ろうと思ったキッカケって、タイ移住? それとも三十路が見えてきたこと?
piz? : 両方です! 30歳までにソロを出すってことは、ラップを始めた頃からずっと決めていたことだけど、結局本腰を入れて作るためのケツを決めていなくて。ただ、タイに行くことが決まったのと、アルバムを作ることを決めたのは大体一緒だったんです。誕生日が発売日で、丁度間に合ったかな。
ーー今作を作る上で、本人としてリリースのタイミング以外で意識したことは?
piz? : 例えばVOLOとかは自分なりのフレッシュを掴むプロだと思ってるし、ヒップホップにはそういう魅力があると思うんだけど、自分の場合は、違うと。フレッシュという意味で例に挙げてみるけど、Fla$hBackSは大袈裟じゃなくて、2013、2014年あたりを完全に持って行ったと思ってて。そういうのを間近で見た身としては、いい意味で食らった。ぶっちゃけ謎に食らいすぎたりもした(笑)。それはFla$hBackSだけじゃなくて、そういう全体的なムードに負けたくない、という嫉妬もあった。そして、仕事とかしながら、客観的になったつもりで「なるほど…」なんて考えたりもした。だけど、本来の俺のやるべきことは全然そういう部分との比較じゃないって見据えてからは制作スピードに拍車がかかった感じ。開き直りです。俺はいまだに「ヒップホップも好きな音楽の一つ」と捉えてる。自分が好きな作品には必ずしもフレッシュが伴う訳ではなくて、個人的には時代性を伴わない様な普遍的な魅力を持っているアルバムが好きだったりするので、そういったものを作ってみたいと思えた流れというのが大切だった。『3212』や自分達のGRIND HOUSEというパーティーは、人間的な繫がりを軸にしながら、そういった雑多性・雑食性を反映したいみたいな。
ーーたしかに、piz? 君は才能がある人とつながりが多いからねぇ。
piz? : 自分はそれを見抜くプロかも知れない…。調子に乗りました(笑)。真面目に答えると、『3212』に協力してくれた演者もそうなんだけど、それぞれがリリースをしてから知り合ったという人は殆どいなくて。以前から友達だった人がその後、それぞれがリリースなどを通じて活躍して、それぞれがどこかで評価されているという流れなんです。ヒップホップは結局、人が反映される部分の魅力が大きくて、それは間違いなく他のジャンルより面白い部分だと思う。
ーーヒップホップは人が出る。それは、何でだと思う。
piz? : パーソナルな部分を歌にするって、ヒップホップ以外あんまなくない?
ーー確かにそうかもしれない。でも、今作はABC(Air Boryoku Club)の頃と比べるとサウンドはハードでも、結構内容が真逆だよね。それに、出会った頃はVOLOさんとpiz? 君は一体感があったけど、2人のソロは結構違うものになったというか。
piz? : 気を使いながら言ってくれてるけど、俺もVOLOも音楽の趣味が変わったって事だと思うんだよね。VOLOは遊び始めた当初、感覚的な部分で好きなモノが近いなって思うところが多かったし、ヒップホップ畑の人であぶらだこが好きな人いるんだと衝撃を受けたけど、彼自身は2010年頃に比べると、もっとヒップホップを好きになってる感じがする。リスナー的な目線の話だけど、俺はそんなVOLOからヒップホップの要素に影響を受けつつも、本来の自分の好きなものとかに素直になっていく感覚があった。俺は近くに影響力の大きな友人がいると、好きなものも引きずられるケースがあるんだけど、今は昔ほどではなくなったかな。要するにラップしはじめた時に俺が1番知らなかった音楽はヒップホップなの。だから、知らないことをいっぱい知ってる人には憧れるよね。VOLOだけじゃなくて、Febbもそうだし。自分は『自分がB-BOYです!』って未だに言い切れないジレンマもあるから。本当は相当大きな声で言ってみたいんだけど。
※あぶらだこ…1983年から現在にいたるまで活動を続けているバンド。結成当初はハードコア・パンク・バンドの色が強かったが、変拍子を多用した難解なリズム解釈、複雑すぎて意味不明とさえ言われる歌詞、そして独特の間を持ったスタイルのバンドとして唯一無二の存在を確立している。
理論的に在り得ないことだとおもってる。在り得てたまるかって気持ちだよね(笑)

ーーただ、ラップのフロウやリズムの取り方なんかは、ラップを始めた頃から変化はないようにも聴こえるけど、自分ではどう思う?
piz? : そうだなぁ。本質的に言うと、ラップのスキルに関して、俺は何も考えてないかもしれない。言うなれば、結構メロディがこのアルバムには入ってたりするけど、そういうのは自分がギターとか弾いて口ずさむような、自分の中にある素直なものが大事だったりする。前までは、そんなに歌っぽいものはなかった。つまり、ラップのスキル云々はそんなに意識してないのかなぁ。
ーーABC(Air Boryoku Club)はちょっと暴力的というか、闇?
piz? : トゲ(笑)?
ーーそうそうそう(笑)。そういったバイブスのあるアルバムだったけど、今作はそこを踏まえたポジティヴさや、ストイックさに跳ね返った感じがするよね。
piz? : なるほどね。人の感想を聞くのは面白いです。確かにABCの頃に比べて、「普通にみんないい奴とか多くない?」みたいな感じが増えた(笑)。昔は、他人のことを知ろうとしてなかった。「人の考え方? 無理です。俺はこう考えてるんです」っていう。でも、20代そこらはそれが普通じゃん。まずは自分じゃん。
ーー外に対して攻撃的なことを言ったり。
piz? : そう。まあ、そうやって自分に気づいてもらって、目を向けてもらうっていうのも、その行動の裏にはあるんだろうけどさ。
ーー今作は、自分に目が向いている歌詞が多い気がする。
piz? : 人のことを言っても仕方ないからさ。なんか俺、誰かをやっつけてどうにかしようっていうモードでは全然ない。聴いた人が勝手にやっつけられたりしてくれたら楽しいけど。
ーーサウンド的にはハードなんだけど、結構ポジティヴなんだよね。ポジティヴな内容をそのまま明るく歌ったら、piz? 君らしくないしね。
piz? : やっぱ自然な形にしたいじゃん。俺はVANADIAN EFFECTのリリース付近からパーソナルな面での葛藤が繰り返しあったから、『3212』は問題があってもポジティヴに捉えられる様に過ごしていた時期だったかもしれない。結局、『3212』っていうタイトルは、カウント・ダウン。30歳までのカウント・ダウンとか、日本を離れるまでのカウント・ダウンとか。でもそれだけでなくて、新しいところに行く示唆までがこのアルバムなのね。321で終わって、次が見える2くらいまでは残したくて。自分なりの色々な意味はあるんだけど、簡単に言うとアルバムがリリース出来た時点で2に到達する様にしたかった。このアルバムの表題曲が無い理由がそれです。気付きにくい部分だけど、『3212』という数字に関してはアルバムの最後にもひとつ仕掛けを置いていて、Tsuboiさんと電話しながら思い付きで決めたんだけど。
ーーけど、このアルバムでこれという1曲を挙げるなら?
piz? : Daworld(仙人掌)の「My Pace,My Space」かな。「My Pace,My Space」は、昔あったMONJUのMy Spaceに上がっていた曲のリリックがずっと好きだったんだけど、「My Pace,My Space」のビートをウチで聴かせて貰った時に震えてしまって…。その時、その曲のリリックを思い出して感情が昂ったんです。Daworldとは自分が18歳くらいの頃からの付き合いなので、モラトリアム期のセンチメンタルが走馬灯の様にフラッシュバックしてしまって…(笑)。即座に立候補したら『これは俺が使おうと思ってたんだけど…』ってなったところを間髪入れずにゴリ押して剥奪致しました。この2年位の自問自答を反映してリリック書いたくさいなぁ、と。要は、イケてる友達と自分への戒めの歌なんだけど、気に入っています。戒められます。最初アルバム・タイトルは『My Pace,My Space』にしようかとも思ってました
ーーその曲もそうだけど、今作は全体的にとてもパーソナルな内容じゃない? 意地悪な質問だけど、それをアルバムにした意図ってなんだと思う? 世に出せば縁もゆかりもない人がこれを聴くわけじゃない?
piz? : パーソナルな内容の強い作品を世に出すことの意味とかも考えたんだけど、結局行き着いたところは、言いたいことを言う、とかシンプルなことかな。それが世の中の音源を出す人の定義とは違くても、俺の場合はこの日記みたいなことが、『3212』の2に届く。だから、自己満足でいいやって今は開き直って言える。
ーーリリックにも〈金じゃないんだ〉という部分が多いよね。
Piz? : 要するに買った人はマジで本音の意見を言う権利を与えられたんだぜって感じ。この時代でも変わらずにCDを買ってくれてる人なんだもん。今はSNSとかにも見えない言論統制みたいな風潮がある様にも感じるけど、対価を払ったなら、思った事は素直に言っていいんだよって感じだなぁ。でも、音源を買ってない人の意見というのはリスクを負わない評論家の様なものだから、仮に何か文句を言われても本質的な意味では真剣に受け止められない気がする。作る側が削っているのはお金だけじゃないから。
ーーそれだけ心の対価を払え、と。
piz? : そもそも買うことで初めて作品と向き合ってるわけじゃん。俺のオナニー的な作品だったとしても、対価を払ったならそのオナニーに文句言う筋合いはあるでしょ。「お前のオナニーはヌけない」ってさ(笑)。女のオナニーを見て勃起する事だってあるわけだから、オナニー的な作品だって勃起する人もいると思うよ。
俺は(生活の)サイクルがあった方がうまくいくタイプだから
ーー(笑)。今回はプリプロの段階でも聴かせてもらってたけど、Illicit Tsuboiさんのマスタリングを通すと、本当に違うね。
piz? : そうなんです! エンジニアじゃない! アーティスト! 思い込みかも知れないけど、意志が入って返って来て、そこに面白味がめちゃめちゃある。
ーー例えば、そう思ったのはどこだった?
piz? : 例えば1曲目の冒頭にしても、Kid Fresinoから貰った時点のトラックと比較して、明らかにベースが割れる位にラウドに鳴る様になっていたり。ただ、それはラップ前に一度抜きがあるんだけど、そこで聴覚を一度スッキリさせる為の仕掛けなんだと思うんだ。普通、そういうのはエンジニアの人って自発的にはやってくれないし、一般的にはそれが望ましいんだろうけど、他にも『そこの為のここ』みたいなのは説明する必要が無いというか、それ以上に興奮させて頂きました。
ーー俺も「こんな音、プリプロの時点であったっけ?」と思う箇所があったよ!
piz? : 今回のトラックメイカーには、パラ出しできる人が少ないから、LRで音を出してるケースが多くて。だから、いじられる箇所は少ないはずのに、そのトラックでは聴こえなかった音が(マスタリングを終えると)聴こえたりする。異常なんだよね。別に足してるんじゃなさそうなんだよ。理論的に在り得ないことだとおもってる。在り得てたまるかって気持ちだよね(笑)。
ーーそうなんだ! タイでも録音し直したりしたのかと思った。
piz? : 違うんだよ。あれは本当に不思議。こんなことは初めて経験した。
ーーマスタリングのやり取りはタイと日本でどうやるの?
piz? : 俺の場合、指示がハッキリしてたからTsuboiさんから「そこまで文章化出来るんだったら逆にメールのがいいね」って言ってくれて。それにTsuboiさんは「Weekend Schumacher」を気に入ってくれたみたいで、そのメールが届いた時は嬉しかったな。

ーーあれはヤバいよね。もっと言うとね、あんなヤバい曲を作れるのに、音楽で金を稼ぎたいっていう気持ちがないの? 勿体ないよ。
piz? : 違うよ。別に金稼ぐつもりはあるよ! ただ、順番として1番じゃないだけ。金稼ぎて~よ(笑)。
ーーじゃあ、音楽で生活できればなっていう気持ちはあるの?
piz? : それはない。俺は(生活の)サイクルがあった方がうまくいくタイプだから。
ーー仕事で溜まるフラストレーションを糧にしてるわけだ。
piz? : 仕事だけじゃないしフラストレーションだけを糧にしてる訳じゃないけど、こんだけ週末を楽しめるには、自分にとっての日常のリズムがないとダメだな。「Weekend Schumacher」は色々な意味があるけど…(笑)。週末が一瞬で過ぎちゃうってのは、それだけ週末へ向けて弓を引いてるってこと。
ーーそれとさ、他にも聴きどころはpiz? 君とMUTA君の相性の良さだよね。
piz? : MUTAはびっくりするくらい一部分が似てるんだよ。MUTAのだらしない所と、俺のだらしない所がダブるときもあるし。いいところもそう。MUTAも多分、俺のやましい所とか悪い顔を見抜いてると思う。でも、いい部分も人より分かってくれてるとも思う。MUTAのことは本当に弟みたいに思ってる。あと、MUTAはあえて言うことをしない。MUTAはあんまり考えていないタイプに思われてるところもありそうだけど、すごい素朴で感覚が鋭いところがある。ピュアなのにすごい鋭い。だから、MUTAのアルバム『UMAT』はめちゃめっちゃ売れて欲しいと思ってるんだ。
これだけはインタヴューに書いて。最後まで聴け!!
ーーところで『UMAT』での「迷彩」ってさ。
piz? : あれは友達に書いた曲だね。俺も明確な意味を設けた曲の中でも、1番納得いく曲かな。コーラス・ワークもよく出来たし。でも、ああいう曲を作るには、そこに至る関係性とか空気感が必要で、悪い意味じゃないけど、ああいう曲はブルテン(VLUTENT RECORDS)の様に近過ぎる距離感のみんなと歌ったりすると照れちゃって出来ないと思う。MUTAも『UMAT』を自分たちのFSR(FIVE STAR RECORDS)で出さなかった気持ちもなんとなくわかる。それはお互い話してないけど、すげえなんとなく分かるね。
ーーその、すごいなんとなく分かる、っていう言葉は2人っぽいね~。
piz? : (笑)。そういうとこがいいんだと思う。MUTAには本当に大事なことは口にはしないでも大丈夫で。でも、絶対わかってるよなっていう感じがする。
ーー「MOGURO」だって阿吽の呼吸だからこそ作れた曲だよね。
piz? : リリックに〈ペン持つまで4時間〉ってあるけど、俺らはまじで4時間遊ばないと書けない。いい大人が4時間ダラダラと割いてくれる人はなかなかいないからね(笑)。本当にぴったり、決めてないのに4時間かかるんだよね。でもスイッチ入ると2人ともスグに録音終わっちゃうんだよ。
ーーこの場にMUTA君がいたらねー。
piz? : いないところがMUTAっぽいじゃん。そこがいいんだよ。
ーーそうだね。他のクレジットされている友達はどう? 999っていう最後の曲にクレジットされている人も、昔からの友達なんだよね?
piz? : それは小1からの俺の一番最初の友達って感じ。こいつはずーっと一緒にやってたバンドのドラムだった奴で。そのバンドは、変拍子をアイコンタクトだけでいってしまう様なバンドだったのね。だから、ベースとかめちゃめちゃ辞めちゃうの。
ーーついていけなくて?
piz? : そう。7拍子、3拍子、5拍子をアイコンタクトでどんどん変えていく謎なバンドだし、幼馴染みだし、背景的な部分も含めて数回のセッションで合致する事はないから、スタジオでセッションをくり返すんだけど、そいつだけは地獄のように合わせられる。目で「次は3」とかね。それには普通は全然ついていけないから、次々にベースが変わっちゃって。で、そいつがいよいよ就職のタイミングになってしまって、もうバンドはやれない。そんなことがあったんで、そいつと遊ぶ機会が減ったりしてる時期に、あいつは俺との会話を盗聴してたんだよね。
ーー友達との会話を盗聴するって! そんなことあるんだ!
piz? : いや、たぶんね、フィールド・レコーディングってあるでしょ? それで環境音を録音して曲を作ろうというテーマだったと思うんだよね。んで、その頃にさっき話したみたいな事があって、俺はいよいよ「もう(バンド)やんねーんだな?」って問い詰めたことがあったんだけど。最終的に、どうやら無理そうだってなった判断した後くらいの時期に、そいつからの返答としてなのかどうかは分からないけど、送られてきたトラックがコレ。その曲のイントロで、俺が「もう限界?」と聞いて、ヤツが「まだ行ける」って言ってる部分が使われてるんだけど、その会話の後に送られてきたトラックだったから、俺はまるでアンサーみたいに感じてる。しかも、めちゃめちゃいいトラックだなって。使うまで何年も掛かったけど、最初のソロで使える事に意義があったな。それに、あの曲をラストにした事で、聴き終わった後にはヒップホップのアルバムを聴いた事が錯覚だったみたいな感覚が残る様な狙いもあって。俺も、それが俺っぽい終わり方だなってことにしてる。999だけじゃなくてdara'も普通に中退する前の高校の同級生で、自分がヒップホップに触れる要素を作ってくれた重要なひとりだし、実は俺以外のVANADIANの中学の同級生でもあるんだ。彼らには今からでもまた何かやってほしいなって気持ちも、めちゃめちゃ込めて半ば強引に土俵に上げた感じ。
ーーちなみに、そのバンドの時のように、他の人たちがついていけないようなグルーヴは、ラップでも起きてないの?
piz? : 音楽的な意味でのついていけないとかはあまり分からないけど、VANADIAN(Effect)からここまで期間が空いたのは、以前よりはそれぞれの事情もあるし、それぞれの方向性がより明確だろうから、足並みを揃えるという意味でのハードルはあるのかもね。特にVANADIANは俺以外の3人がちょうど入れ替わり立ち替わりで壮絶な時期だったから、よく考えたらソロをやらないとって思う最初のキッカケはそれだったかもな…。あ、VOLOさん、アルバムのこと話してるから来てよ。
VOLO : ああ、そうなんだ。
piz? : 「Hand Sign」の〈ジャケならそうIce-T のPower〉って、Ice-Tのジャケの裏ってことらしいけど意味わかんなかったからさ(笑)。
VOLO : あー、IceTの『Power』はジャケの裏側を見ると、銃を持ってるんだよ。言葉の裏を読むっていう話。表と裏で違う意味があるんだよっていう意味合い。表からみると、堂々と立ってるポーズなんだけど、裏から見ると全員片手にショット・ガン持ってる。
piz? : ブルテンのサインもピースとファックで出来てるからね。

ーーあー! なるほど!
VOLO : そういう意味にもとれる。それにしても、マスタリングですごく音が変わったよねー。Abeちゃんの曲とかもベースとか足してくれてるし。
piz? : あれ、足してないっぽくて。
VOLO : へー! 違う音鳴ってたもんね! じゃああれ、抽出して出してんだ。
piz? : しかも、ツー・ミックスでそんなことが行なわれるって謎だよね。じゃあAbe呼ぼうか。ブルテンの中で1番付き合いが長いのがAbeなんだよね。

ーー何がきっかけで2人は友達になったの?
Abe Tomonari : 音楽から繋がったっちゃー、繋がったんだけど。高校も中学も違うんだけど、これは語ると長くなるから割愛します(笑)。
piz? : Abeさんは実はラッパー歴が長い。中断期間があるんだけど強引に再開して貰いました。… 当時は自分がどんだけイカれてるかってところに如何にして身を持っていけるかってことに注力してたから。
Abe Tomonari : でも、イカれたかった(笑)。
ーー〈発狂遊び〉ってのはそのことを言ってるの(笑)?
piz? : 発狂遊びってのは、高円寺だね… 2人で奇声上げて狂人になるという遊びがありまして。その日は高円寺の駅前にいたいじめられっ子みたいな奴を助けて。
Abe : いじめっこみたいな奴にイカれてるフリして絡みながら、いじめられっ子にチャンスを作ってたのに、全然チャンス活かしてくれなくて(笑)。リーダー格みたいなのが俺のところに「おい!」とか来たんだけど、こっちがキ◯◯イのフリをしてたら最後「ダメだこいつら、完全にイカれてやがる!」って(笑)。
piz? : あのセリフやばかったな(笑)。でも、この曲は俺がタイに行く前なのもあって、Abeだけ感傷的になっちゃってさ(笑)。なんかまともなこと言ってるんだよね。ラップ自体を聴いただけじゃ分からないけど、リリックに地味に2人の温度差があるんだよね(笑)。
Abe : 俺的には、旅立つ前の日に作ったやつかな。ポエトリーやってみた。
piz? : Abeは俺の最低なところとかも知ってるでしょ。それくらいこの男には、感謝してますよ。あと、doqもこっち来て。どうですか、俺のアルバム。
doq : 真面目な意味で、真面目なところが出てますね。この男の繊細さが出てますよ。あとは巻舌を聞いたらいいんじゃないっすか?
piz? : おい、真面目に答えろよ(笑)。あと、これだけはインタヴューに書いて。最後まで聴け!!
「INTERSECTION」アーカイブ
第1回特集 : MUTA

MUTA from YNGDRNK / MutaEP
"YOUNG DRUNKER" 3MC'sの1人。 Fla$hBackS Album「FL$8KS」収録曲「g3」への客演で知られ、公園と霊園を隔てる言問streetにRec studioを持つ"FIVE STAR RECORDS"所属のRapper、Muta。無二の声質と多彩な引き出しをlightにtightにわからせる、6 trax.EPをこの度drop。爆心地は池袋から全国へ拡散。All Tracks Prod. by Febb as Young Mason(Fla$hBackS)。Bonus trackに地元からQron P's beatをFeat。2013年10月13日(日)池袋bed『GONZALES』にて先行発売したところ即完売した本作は特定レコードショップでも取り扱われる様になり、この度更にOTOTOYからの独占配信がスタート!
第2回特集 : 〈Soulection〉

連載2回目は、海を飛び越え、海外のレーベル、〈Soulection〉をピックアップ。残念ながらこのタイミングでの音源配信はないが、自らを"The Sound of Tomorrow"と銘打つレーベルに切り込んだインタヴュー(2014年4月に来日した際収録)をご覧いただきたい。
第3回特集 : ZOMG

連載3回目では、Young DrunkerのBaccasと、ADAMS CAMPの黒真珠による2人組、ZOMGをピックアップ。2人へのインタヴューとともに、OTOTOY限定の特別パッケージを配信開始。そのヤバいライヴを観る前に(もちろん観たあとでも)、熱いヴァイブスを感じてほしい。
第4回特集 : starRo

連載4回目となる今回は、ビートメイカーstarRoをピックアップ!! 連載第2回目でも取り上げた、LAの新鋭レーベル〈Soulection〉にも所属する彼の新作ハイレゾ版を、OTOTOY限定で配信。多くのシンガーとフィーチャリングした、上質なフューチャー・ソウル・サウンドをご堪能あれ。
第5回特集 : GAMEBOYS

ナンセンスなトピックをラップにする千葉県柏市出身のCHAPAHとKAICHOOによる2MCのHIPHOPデュオ、GAMEBOYSをピックアップ!! 新作のハイレゾ・リリースに加え、OTOTOY限定のボーナストラックも配信中。