2014年のジャパニーズ・ヒップホップ・シーンを締めくくる最重要作! jjj(Fla$hBackS)、豪華客演も満載のソロ作をついにリリース
2013年の日本語ラップ・シーンにおいて目覚ましい活躍をみせたFla$hBackS。その一員であり、確かなラップ・スキルと、ヒップホップ・トラックとは思えないトリッキーな上モノでシーンに風穴をあけ続けているjjjの、待望ソロ作がついにリリースされました! Fla$hBackSによるファースト・アルバム『FL$8KS』発売以降の、様々なアーティストへのビート提供、客演参加を経て、ラップ / トラックメイク両面で着実な進化を遂げた彼の新作には、どのようなドラマが詰まっているのか。彼へのインタヴューとともに、彼の“ブランニュー・シット達”をお楽しみください。
jjj / Yacht Club
【配信フォーマット / 価格】
ALAC / FLAC / WAV / mp3 : 単曲 257円(税込) / まとめ購入 1,697円(税込)
【Track List】
01. g / 02. another / 03. yacht / 04. vaquero! ft. KID FRESINO / 05. go get 'em ft. MONJU / 06. tenchu ft. MUTA, Kiano Jones / 07. repliroid (crack) / 08. I.C.U. ft. febb as Young Mason / 09. fightup / 10. thinkback ft. MUTA / 11. hoodie / 12. room ft. Taha Vanilla / 13. am.. / 14. windu / 15. damn ft. SU (RIP SLYME) / 16. children's / 17. wakamatsu
現在廃盤となっている、2012年発売のソロ・アルバムはこちら
jjj / ggg
【配信フォーマット / 価格】
ALAC / FLAC / WAV / mp3 : 単曲 100円(税込) / まとめ購入 1,000円(税込)
【Track List】
01. #planet_g(prod.jjj) / 02. wassup men? d.o.p.e KSKY pt2(prod.jjj) / 03. oil musik ft.Fla$hBackS(prod.jjj) / 04. skit(a park)(prod.jjj) / 05. abc - gta ft.OMSB'EATS jjj remix / 06. champion(prod.jjj) / 07. stranger(prod.illsugi) / 08. #strangerz(jet)(prod.jjj) / 09. interlude(evallday)(prod.jjj) / 10. to be continude(prod.jjj) / 11. akira(2014)(prod.jjj) / 12. freestyle ft.小宮守,muta(prod.jjj) / 13. instant(exclusive) ft.youngyosui,djtiga / 14. ggg(prod.jjj) / 15. uruoi(prod.jjj) / 16. MFK(jet)(prod.jjj) / 17. southsidegang(prod.jjj)(bonus) / 18. get busy men! d.o.p.e KSKY pt3(prod.jjj)(bonus) / 19. old to the new(exclusive)(prod.jjj)(bonus)
INTERVIEW : jjj
2013年、当時20歳前後だったFebb、jjj、KID FRESINOからなるFla$hBackS。彼らのアルバム『FL$8KS』は、国内ヒップホップ・シーン内外からも絶賛され、『ミュージックマガジン』誌の年間ベスト・ディスクにも選出されるほどのヒットとなった。そのFla$hBackSのすごさと、jjjに対する筆者の熱い想いは、当時の記事を観ていただきたいのだが、彼が『FL$8KS』リリース以降も提供した数々のトラックや客演でのラップ・スキルによってその活動にはさらに期待が高まった。そんななかで、jjjが、ついにファースト・ソロ・アルバムをリリースする。タイトルは『Yacht Club』… 。このヒップホップらしからぬタイトルに現れるjjjの個性は憎いほどに天然であり、そこがまたクールじゃないかと思う。爽やかなタイトルとは裏腹に、バッチリとヒップホップ・サウンドなこの1作。トラックの特徴であるエッジが効きまくったエレキ・ギターや、ラフなサンプリングの捌き方、そしてワンショットを落とすタイミングの妙が日頃から味わえるアルバムとなった。そこにはMONJUやMUTA、Kiano Jonesなどjjjと親交の深いラッパーだけでなく、ACOやSU(RIP SLYME)といった憧れの先輩とも言えるアーティストたちとの共演を、どのように作り上げているかも聴きどころのひとつだ。もしかしたら、全体を通してこれまでよりも落ち着いた印象を抱くリスナーも多いかもしれない。このスタイルに現れたjjjの変化とは何か。ニューヨークに住むKID FRESINOへ会いに行く直前だというjjjにインタヴューをしてきた。それでは、素朴なのにミステリアスな天然さが滲み出たjjjのインタヴューをどうぞ!
インタヴュー&文 : 斎井直史
特に言いたいことはなかった
——すでにいくつかインタヴューを受けたらしいけど、どうだった?
jjj : 「ソロとグループの違いは?」とかって質問は5回くらい訊かれたかな(笑)。Febbが中心でやっているくらいで、やってることは変わらないんだけどね。(ソロは)テーマを考えるのが難しかった。特に言いたいこともなかったから。まぁ、大した生き方してないから、俺らは(笑)。
——そういうつもりで訊いているわけじゃないよ。
jjj : いや、俺はそういうつもり。というのはおかしいけど、言いたいことがないってことをカッコよく言いたかった。
——Fla$hBackSはリリックに重点を置くタイプじゃないけど、個人的にはそれでもリリックにはやられた! ごちゃごちゃ言わない美学のようなものを感じたし、それが他のラッパーにはないタイプの説得力だった。耳から離れない渋さが備わったよね。
jjj : そうっすね。Fla$hBackSはFebbがラップしやすいトラックを作ろうって感じだったから、俺にとってFla$hBackSのトラックはラップしやすいと思わなかったですね。「Oil Muzik」とか好きだけど、「Young Goku」はやりづらかった記憶がある。
——Fla$hBackSの反響を見てどう感じた?
jjj : そんなに大きかったわけではないけど、初めてにしてはいい感じでしたね。ヒップホップ・リスナー以外の人も聴いてくれた実感があった。それがビックリしたし、嬉しかったっすね。バンドの人とか、あんまりラップのイベントに行かない人が「普段(ヒップホップを)全然聴かないんですけど、今日観に来たんですよ」って言ってくれて。
——思いの外、いい反響が多くて驚かなかった?
jjj : ウケたっすよね。「こんなんでいいんだ」みたいな。「もっとできるけどね」っていうか(笑)。みんなそういう感じだったと思うっすよ。「へぇ~(笑)」みたいな。てか、いま考えると始まってすらいないっすよね。3人の名前を一緒に出せたのが嬉しかったっすけど。
昔はラップする隙間がないくらいギンギンだった
——Fla$hBackSの前と後で作る音楽に違いは?
jjj : 昔は本当に考えないで作ってたから、そこは違うっすね。いまはラップが乗って100%完成するようなトラックを考えて作るようになりましたね。昔は、無茶ぶりだったというか、ラッパーに対してなにも考えてなかったから。ラッパーからしたら、ラップする隙間がないくらいギンギンで、自分が気持ちよければよかったっていうか。だから、いまはすこしスペースをつけるというか、さじ加減で余白を作るっすね。
——Fla$hBackSのときはどうやって作っていた?
jjj : あのときは無茶ぶりをしていましたね。「これ、Febbはどう攻めるんだろ」って思いながら作ってた。闘ってた感じっすね、Febbと。
——「ここまでやっから、ここまでやれ」みたいな。
jjj : そうっすね。「Cowboy」とかはまさにそうかな。あのトラックでラップをカッコよくできる奴なんて、あいつ以外はいないと思うんですよ。
——KID FRESINOのアルバム『Horseman’s Scheme』をプロデュースした頃は?
jjj : Fla$hBackSでアルバムを出して、いろんな奴にラップを乗せてもらって、いろいろ学んだあたりのことっすね。ラップをどう乗せれば100に近づけるかが、体でわかってきたころに作り始めた頃っすね。
——そう思えるようになったきっかけとなる曲は?
jjj : 「The Coolest」とかそうだったかもしれないっすね。あれ、音小さめじゃないです か。いつもゲージをマックスまで上げてたんですけど、上ネタをちょっと下げた。
——ビートのテンポも落ちてきたよね。それは何の影響だと思う?
jjj : そっすね~… 体の中のBPMがどんどん下がっていってますね。今でも下がってる。最初ビートを作り出した頃は100とか90とかで速ぇんすけど、Fla$hBackSの時は80で、今60か50くらいに落ちてるっす。
——60か!
jjj : Trap(※1)っすよね。
——ところで、延期を繰り返した理由を教えてもらえますか(笑)?
jjj : それ答えまくったからいいっすよ(笑)。単にリリックが書けなかったんですよね。ダラダラしてたと言えばそうなのかもしれないけど、書くことがなくて! 無駄なことも言いたくないし、2週間くらい書けないこともあって。その間、俺はトラックに逃げて、新しく出来たトラックにまた「これでラップしよ」ってなって、アルバムの曲が決まらず延びまくるっていう。
——じゃあ、この中には結構新しい曲もあるんだ。
jjj : あるっすね。「room ft. Taha Vanilla」とか。あと、「tenchu ft. MUTA, Kiano Jones」も。
——その間にKID FRESINO君のフリーEP『Shadin'』があったけど、「Who Can」って曲が異様に感傷的だったよね! それが他の曲とは違って気になってたんだけど、何か特別なテーマとか、エピソードがあるの?
jjj : ありありっすね。最初、俺が入る予定じゃなかったんですよ。KID FRESINOがFebbと一緒にやるっていって(スタジオのある)上野に来て、遊びつつ録音しようってなったら、あの2人がケンカしだして(笑)。それで録らないって話になって、俺も時間割いて来たからムカついて(笑)。てか、その前のイベントでライヴに納得できなかったことにも俺はムカついてたから。そんなタイミングで作ったんですよ。
——じゃあ、jjjが場を諌める感じでフック入れたってこと?
jjj : いや、誰に言われたわけでもなく。その時すっげー思うことがあったから、すこし落ち着いたくらいでトラック聴きながらリリック書いてたら、Febbが「じゃあjjjがフックやればいいじゃん」みたいな(笑)。「あ~、おぅ」「でも、恥ずかしいから今日は録らねぇ」みたいになって、次の日録ったっすね(笑)。
——意外なエピソードが聞けたわ。そんなこともあるんだね。話が変わるけど、アルバムで、RIP SLYMEのSUさんが入った経緯は?
jjj : D.O.I. (※2)さんのスタジオでミックス作業をしてた時に、同じようにRIP SLYMEもD.O.I.さんと作業してて。俺らの曲をD.O.I.さんが聴かせてくれて、気に入ってくれたみたいでライヴに呼んでくれたんです。それで、Baccas(※3)君とレーベルの担当スタッフと3人でライヴを観に行かせてもらって。そしたら最後に挨拶できる機会があって、メンバーとひと通り話したんですよ(笑)。SUさんは思った通りの人でした。俺、人と会ってもあんま緊張とかしないんすけど、会う前に久々にめっちゃ手汗とかかいてすごいドキドキしましたね。
——他のメンバーとの話にはならなかったの?
jjj : 話したけど、俺が最初に一緒にやりたかったのがSUさんで。実はもう1曲SUさんと作ってたんですよね。それはお蔵入りじゃないけど、もうちょっと練って作ろうかなって。っていうのも、20歳近く離れてるお互いがディスり合う曲で(笑)。おもしろかったですけど、自分たちだけでアガる感じの曲だったから。
——なんでそんな曲をつくろうと思ったの(笑)。それ超聴いてみたいわ!
jjj : 俺ももう1回聴いてみたいですね(笑)。なんか一度闘ってみたかったんですよね。流石にそう簡単に出せる曲じゃないと思うんですよね。
——Taha Vanillaっていうシンガーは知らないんだけども。
jjj : それは前にSenshi(※4)ていう名前で「Sour」っていうトラックに歌を乗せてSoundcloudにあげてくれた子です。
——フランスの子だっけ。
jjj : そうっす。今回アルバムに乗せる名前は、「Tahaにする」って。で、すごいんすよ。俺が「このトラックどう?」って送ると、即LINEのボイス・メッセージで返してくるんですよ。「こういうふうに乗せるね」って。だから、Tahaとは歌が溜まったら出したいっすね。
——あと、「wakamatsu」ってなんでなの。
jjj : それ、よく聞かれるんですけど(笑)。特に意味ないって言ったらダサいけど、トラック作ってる時は「Takamatsu」だったんですよ(笑)。これ中学んときの部活の話なんすけど、光が丘に若松って奴がいたんですよね。そいつが超うまくて。俺勝てなくて。それから「"松"ってヤバいな…」「"松"格好いいな」「俺も"松"つけたかったな」って(笑)。松って、なんか品があるじゃないっすか。だから、Young Matsuみたいな感じで若松なんですよ。てか、斎井さんはどの曲が1番好きっすか。
——(笑)。俺は「yacht」かな。タイトルが「ヨット」って見たとき、めっちゃ綺麗な海っぽい、それこそ「The Coolest」みたいなのを期待してたんだよね。そしたら、(映画の)『キャスト・アウェイ』的なヨットじゃん?
jjj : そうっす、そうっす! 俺もトラック作ってるとき、頭のなかで同じでした! トム・ハンクスのっすよね。
——そうそう。ところで、リリックでもあるけど「様子がおかしいぜ」って思うの?
jjj : 思うっすよ。あの歌は全体が例えっすから。海は業界で、Fla$hBackSを出した後でちょっと海に出たはいいけど、真っ暗な空で、「なんか変だぞ…」って感じっすね。最初は晴れてたように見えたけど(笑)。
——でも、ほかの曲もすごくよくて、アルバム全体通してめっちゃかっこよかったよ。
jjj : ありがとうございます。でも、多分斎井さんが思ってたのと違うんだろうなって。俺はそういう感じでやってましたね。なので、俺はセカンドから本番開始って感じですかね。
——ソロって聞いたとき、俺は殺意に目覚めた感じのやつとか、ドラマティックでぶっ飛んでるのが多いかと予想してたんだよね。
jjj : 最初そうだったんすよ。白か黒かハッキリしたものにしたいって思ってました。暗いんだったら、全部暗いもので通そうと。だけど、原点に戻るじゃねーけど、自分が無理なく聴けるものにしたくなってきて、今の形になったっすね。
——リリース後のヴィジョンは?
jjj : セカンドっすね。もっと未来の話は… 海外のやつともっとやりたいですね。本当は Evidence(※5)に声をかけてて入る予定だったんすけど、Step Brothers(※6)のツアーとかが始まっちゃって話が流れちゃったんですよ。だから、セカンドはしっかり入れたい。あと、他の人のトラックでもラップしてみたいなって思いますね。RAMZA君とか格好良いと思うんですよ。CAMPANELLA(※7)のアルバムでKID FRESINOとやった1曲目とかすっげーカッコよかったっす。
——他のFla$hBackSの予定ないの?
jjj : Febbが作ってるらしいっすよ。別のクルーで、KNZZ(※8)さんとか。あいつが最も得意とする治安悪い感じのやつ。いつ出るのかはわかりませんけど。
【注釈】
1. Trap : スロウな重いベース音やキック・ドラムに、BPMの倍の早さで打ち込んだスネアの連続音が乗ることで、スロウかつ退廃的な印象が特徴的なビートを指す。2000年以降にアトランタから人気に火が付き、アメリカではメインストリームでも耳にするビートのスタイルとなった。なお、トラップ・ハウス(コカインを売買する場所)から派生した言葉と思われる。
2. D.O.I. : サウンドエンジニアとして多岐に渡って活躍中。いちはやくヒップホップにおける高音質について語ってくれたインタヴューはこちら。
3. Baccas : jjjが属するFivestar Recordsの中心となる3MC1DJグループ、Young Drunkerの一員。ADAMS CAMPの黒真珠との新ユニットZOMGのインタヴューと独占配信もOTOTOYで配信予定。
4. Senshi : 以前、Senshiという名前でSoundcloudに歌をアップしていたフランス人の女性シンガーソングライター。現在はTaha Vanillaに改名。「Sour」は現在「girls」という曲名に変更されている。>>「girls prod by jjj」
5. Evidence : Dilated Peopleメンバーであったが、後にソロとなったラッパー。西海岸のアンダーグラウンド・シーンを代表しながらも、Dilated People期にはKanye Westらとメジャーでも活躍した時期があった。
6. Step Brothers : Evidenceといとこ関係にあるプロデューサー / ラッパーのAlchemistとのデュオ。2014年2月に『Lord Steppington』をリリースしている。
7. CAMPANELLA : 名古屋を拠点とするNEO TOKAI/TOKAI DOPENESSの一員にして、全国から注目される若手MCのひとり。池袋BEDを拠点とするアンダーグラウンドシーンのアーティスト達との親交が深く、スタイルも通じるものがある。
8. KNZZ8 : 元ICE DYNASTYの”最重要人物”、元練マザファッカー所属。>>18production
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PROFILE
jjj
1989年生まれ、川崎在住のトラックメイカー / プロデューサー / MC / DJ。febb as young mason、KID FRESINOと共にFla$hBackSを結成。
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>>jjj Official Twitter
>>jjj SoundCloud