仙人掌から16FLIP、PUNPEE、jjj(Fla$hBackS)まで客演に迎えた作品を産み出した、Cenjuとは何者なのか?
2014年10月にリリースされたDown North CampのCenjuによる『Cakez』。仙人掌や16FLIP、Mr.PUGなどDown North Campの面々はもちろんのこと、ONE-LAW、KNZZ、PUNPEE、jjj(Fla$hBackS)、ERAといった錚々たる名前がクレジットに並んだ話題作であった。それだけでなく、ハードコアなレーベルとして名高いWD Soundsからのリリースというのだから、いかにして『Cakez』が出来たのか気になるところ。また、フィーチャリングしたアーティストに振り回されない仕上がりとなったこのアルバムは、どのように作られたのか。すべての軸となるCenju本人にインタビューすれば、今作とその界隈の良き解説書となるに違いない。そう思いインタヴューを敢行した。
途中、WD Soundsのレーベル・オーナーとして同席したLil Mercy氏(ラッパー名義はJ.COLUMBUS)も自然と会話に混ざり、最後には驚くべき告知もあるので、最後まで読んで欲しい! というか結論から言うと、2015年はアンダーグラウンド・シーンにおいて大きなグループが発足するかもしれないので、これから目が離せないぞ!
インタヴュー&文 : 斎井直史
取材協力 : DJ 1an
数多くのラッパー / プロデューサーが参加したHIP HOP MUZIK ALBUM
Cenju / Cakez
ALAC / FLAC / WAV / mp3 : 単曲 150円(税込) / まとめ価格 1,500円(税込)
【収録曲】
1. full noon (feat. ONE-LAW / prod. ONE-LAW)
2. maby c (feat. Mr.PUG / prod. HIGHSCHOOL)
3. chilliwin (feat. KILLAH BEEN / prod. jjj)
4. tattoos (feat. J.COLUMBUS and KNZZ / prod. 16FLIP)
5. just feat (feat. J.COLUMBUS / prod. QROIX)
6. UNTITLE DANCING (feat. jjj & OS3 / prod. 16FLIP)
7. imanimitero (prod. PUNPEE)
8. 夜の帳 (feat. O.I. & 仙人掌 prod. DJ HIGHSCHOOL
9. SKIT
10. サンキューフレンズ (feat. EAT / prod. MASS-HOLE)
11. world end (feat. J.COLUMBUS & ERA / prod. BUSHMIND)
12. BROADWAY (feat. J.COLUMBUS & ILL-TEE / prod. AYATOLLAH)
INTERVIEW : Cenju
ーーまず、Cenjuさん自身のことをもっと知りたいのですが、Cenjuさんは出身はどちらなんですか?
Cenju : 出身は、世田谷区の下北沢です。
ーーDown North Campの初期からのメンバーと聞きまして、今更ですがDown North Campの成り立ちを教えてほしいのですが。
Cenju : 1個下で俺と小中が一緒のYAHIKOってのがいて、俺とYAHIKOが17くらいの時にSORAと出会って出来たって感じっすね。
ーーヒップホップに最初触れたのは何だったんですか?
Cenju : 結構… 格好からかもしれないっすねぇ。俺が中2くらいの頃、YAHIKOに会ったら突然当時流行っていたKriss Krossみたいに、前後逆さになってて(笑)。
ーーそれで、ヒップホップに出会って、初めてやったのはラップだったんですか?
Cenju : そうですね。一番初めは先輩に「町田のFlavaでパーティーがあるからやってみる?」って言われて、中3くらいの頃に試したりして。
ーーその頃聞いていた日本語ラップって何ですか?
Cenju : LAMP EYEとか、キングギドラ、Soul Scream、Twigy…。
ーーそういう先輩たちに絡もう、なんて思わなかったんですか?
Cenju : まったく思わなかったですねぇ。俺らの中では芸能人レベルの人ですし。
ーーその活動初期の頃はまだ、Down North Campはないんですよね。誰がいいだしっぺなんですか?
Cenju : それはSORA。… だと思うんですけど、あいつ別のインタヴューとか見るとなんか俺のせいにしてるっていう(笑)。後から聞いたんですけど、その時はメシア・ザ・フライとかもいたんですよ。あと、仙人掌とTAMU。その5、6人だったっていうのは聞いたことありますね。
ーーそのとき、Down North Campはレーベルとして発足したんですか?
Cenju : いや、全然違うっすね。ただのグループっす。できたのは1999年ですね。
ーー自分はスケート文化に疎くて、Down North Campっていうと全員がスケーターというイメージなんですが、当時はスケーターってどんな存在だったんですか?
Cenju : そもそも、俺らはスケーターって思われてるかもしれないけど、「それはどうなんだろう」と心底、常々思っていたことなんですけど(笑)。
ーーそ、そうなんですか(笑)。普段、なにやってるんですか?
Cenju : … 言えないっすね(笑)。昼から酒飲んでますね。最近、音楽とか関係ない普通の人と飲んだら、その人即潰れちゃって。俺、結構鍛え方違うくせえってなって(笑)。そのくらい飲んでますね。
ーー普段からもう長い時間飲むんですね。
Cenju : そうっすねぇ。てか、飲んだらとことん飲まないと気が済まないんですよ。
ーー曲を作るのは、その合間に?
Cenju : その時に作ったりとかも多いです。
ーーリリックを書く時っていつもどんな感じなんですか。
Cenju : 思いつきっすね。フリー・スタイルに近い。
Lil Mercy : でも、あんま人の前で書かないよね。
Cenju : そっすね(笑)。なんか、ハマんなくなっちゃうんですよね。やっぱ1人の世界にならないと。サビとかはその場のノリのがいいんですけど。
届いて欲しいところに届いていたなとは思いましたね
ーーそれで、Cenjuさんが今回アルバムを作ったキッカケは?
Lil Mercy : 前に出した作品が、意外に評価されて嬉しかったんでしょ(笑)?
Cenju : (笑)。去年(2013年)Cenju and Qroixでリリースした『Thanks God,It’s Flyday!』は、枚数はそんな出てないですけど、届いて欲しいところに届いていたなとは思いましたね。とりあえず、去年1枚せっかく出したし、これを続けようと。前回のはラップは全く1人だったので、今回はいろんな人をフィーチャリングしてみたいなと思ってて。で、KILLAH BEENを聴いたとき、この人は一緒にやりたいなって思ったんです。MERCY君とは、アルバムの話が前から決まってたので、KILLAH BEENに「MERCY君がやってくれるって言ってます」って言ったら「じゃあ、俺もやらないとな」って言ってくれて。
ーー今回、Lil MERCYさんもJ.COLUMBUS名義で、4曲も参加してるじゃないですか。
Lil Mercy : それはただ、なんとなく一緒にいたから(笑)。アルバムに入れるために録った曲じゃないのもあるよね。他にも俺が参加してないのに、俺がフックを作ってる曲とか(笑)。
ーー(笑)。そういうこともあって、Down North CampじゃなくてWD Soundsからのリリースなんですね。
Lil Mercy : まあ厳密に言うと、WDからじゃなくて、Skarfaceからなんですよ。
ーーそうなんですか。下北からも近い、代田橋のお店ですよね。ところでSkarfaceのことも、教えてほしいです。いつ頃からあるんですか?
Cenju : 多分、俺が22くらいの頃なんで結構昔ですよね。普段俺はそんなにいないっすけど、一応はバイト・リーダーってことで(笑)。
Lil Mercy : Skarfaceは皆に服を運んでくれてると思うっすね(笑)。
Cenju : でも、今やMERCY君もDown North Campじゃないですか。
Lil Mercy : そうっす(笑)。最近Down North Camp入ったんです。
ーー少し話が変わりますが、アルバムのタイトルの理由って何ですか?
Lil Mercy : 元々長いタイトルでしょ。それを俺がダメ出しして。
Cenju : うん。『Cakez Jam On The Money』っていうタイトルだったんです。ケーキって、色々と混ぜるじゃないですか。それで、金を越えた部分でみんなでジャムろうっていう。
ーーだから、すべて客演があるんですね。でも、こんなに客演が豪華でも、聴き終わってみるといい意味で掴みどころのなさがありますよね。
Lil Mercy : 確かに(笑)。普通この面子でやったらガチャガチャになっちゃうけど、そうなってないのがCenjuのよさなのかなって思いますね。
Cenju : でも、意外にソロがないことは、気付かれなかったっすね。でもまぁ、それは、皆がそうに合わせてくれたからなのかな。ありがたいっすね。曲も被らないようになってるし。
Lil Mercy : あと、Cenjuはリリックが意外にすごいと思うんですよね。例えば、Febbとかは言葉のチョイスや組み方が、あからさまに圧倒的な感じじゃないですか。でも、Cenjuは普段使ってる言葉を使ったりしてるんだけど、「よくこうゆう風にラップに組み込んだな」って思うことは意外とあるんですよ。 〈ドラッグは正気を保つため〉とか。用法的にはそのリリックは負荷なのに、きれいにハメてるなぁと。全体的にそう思いますね。(「夜の帳 feat.O.I. & 仙人掌」のフックで使うレゲエの)「BAM BAM」を使うとかも、普通あんなフックやる人いませんからね。
Cenju : あれは元々DJ Highschoolが持ってきて、適当に「これBAM BAMっぽくね」なんて話して、適当に入れただけっすけどね。
WCBっていう新しいクルーができて、面子がハンパないんで
ーーでも、こうしてアルバムの成り立ちを聞いてますと、本当に素のままがアルバムになってますね。
Cenju : そうっすねぇ。逆に人のフィーチャリングだとカッコつけますよ。だけどこれ、自分のアルバムなんでねぇ。あとで聴いた時に自分がカッコつけてたら、超恥ずかしいなって。
ーーそういえばプロフィールには”怒られ役”なんて書いてありましたよね。Down North Campって、メンバー内で怒り怒られとかあるんですね(笑)。イメージとしては、全員すごいクールなイメージなので。
Lil Mercy : ダウンノースは全然クールじゃないよね(笑)。
Cenju : くっちゃべってるだけなので、たまに女子会って呼ばれてますから(笑)。Skarfaceが結構溜まり場になってて。
Lil Mercy : ただ溜まってただけなんだよな。何かするとかなく。そこにいた、やたら刺青入ってる2人ってことで、普通に仲良くなった感じですよね。当時、今に比べると刺青入ってる人は珍しかったから。
ーーそういえば、Down North Campの人がWDからリリースするのは初めてですよね。
Lil Mercy : 初めてだけど、この後MASS-HOLEとISSUGIのミックス・テープが出ますよ。それに個人的には全然仲いいんですけどね。てか、WCBの話してよ。
Cenju : そうだ。WCBっていう新しいクルーができて、結構面子がハンパないんで。
ーーWCBって何の略なんですか。
Cenju : World Coke Boys。メンバーは、俺、MERCY君、jjj、仙人掌…。
ーーえ、すごくないですか!?
Cenju : 他にもいるんですけど、まだシークレットですよね。で、DJ Yodelが一応ボスってことで。DJ YodelのミックスCDが『WCB』なんですけど、「それどういう意味なんすか」って訊いたら、ちょいカッコつけて「ワールド・コーク・ボーイズ」って答えてて(笑)。そこで俺とMERCY君で「それ俺らも入る」って発足されて。
Lil Mercy : 後はDJ Yodel関係なく、勝手にスカウトしてメンバー入れてますね(笑)。
ーー(笑)。メンバーは何人いるんですか?
Lil Mercy : 7、8人。1月からライヴ活動始まるんで。
ーーもう曲はあるんですか?
Cenju : アルバム制作に向けて動こうとしてますね。アルバムは、2015年中ですねぇ。
Lil Mercy : 今言っとくと、出さなきゃいけなくなるからね(笑)。
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PROFILE
CENJU
1981年生まれ。DOWN NORTH CAMPのオリジナル・メンバーであり、何かのフィクサーともアクターとも言えるかもしれない。いたり、いなくなったりを繰り返しながらも、詩的なリリックでリスナーの想像を膨らませる。ISSUGIのALBUM『Thursday』での「The HAND (LEFT HAND RMX)」でのフィーチャリング、QROIXの『MUZIK MAKES ME FLY』での「クロトラリリ」「Too much」、MrPUGのALBUM『P-SHOCK』での「not enough」またYouTubeでのSLACKとの「Mr.Vansman」、QROIXとの「KELAKELA」などで話題を呼び、2013年に遂に1stアルバム『Thanks God, It's fly day』をリリース。滅多にステージに上がらないHYPE MANであったCENJUはリリース後、確実にポイントをおさえながら、ステージに上がり騒ぎ、場を騒がしている。東京で最も注目を浴びているラッパーの1人と言っても何の差し支えもないであろう。