遂にYouTubeのあの曲が買える! EVISBEATSのニュー・アルバムが届いた!
EVISBEATSの4年ぶりとなるアルバム、『ひとつになるとき』が届いた。韻踏合組合を離れリリースしたソロ・アルバム『AMIDA』以降も、KREVAやRHYMESTERなどをはじめ、数多くのアーティストを通してハイ・クオリティな作品を世に送り出してきた彼。今作を待ち焦がれたファンは多いに違いない。半年も前にYouTubeにアップされた「ゆれる feat.田我流」は話題となり、今や田我流を代表する曲の1つと言っても過言ではない。続いて公開された「いい時間」も鴨田潤(イルリメ)が作詞を担当し、スピリチュアルかつグッド・バイヴスな曲となった。
本作では、普段のプロデュース・ワークでは聞くことができない、ラップ・ネーム“AMIDA”としてのラップを聴くことが出来る。そのリリックに特徴的なのが、彼の仏教的な世界観だ。宗教音楽と思われるサウンドを多く取り入れてはいるが、そのサウンドを身構えることなく親しめる。むしろ脱力感すら漂う彼の声とフロウは、親しみやすい青年のようでもあり、内容は落語家のように起承転結とウィットに富んでいる。そんなピースフルなスタイルを一貫しつつも、競争激しいシーンの中では頭ひとつ飛び抜けている彼のヒップ・ホップとはどのようなものなのか。今作の製作に触れながら、EVISBEATSのオリジナリティに迫ってみた。
インタビュー&文 : 斎井直史
約4年振り、待望のセカンド・アルバムが遂にリリース!
EVISBEATS / ひとつになるとき
数々のプロデュース・ワーク、客演で更なる高みへ到達したEVISBEATSのセカンド・アルバム。PVや7インチでCD化を渇望されていた楽曲も勿論含む全15曲収録。こんなときだからこそ「ひとつになるとき」が必要なのです。
【Track List】
1. 祈り / 2. フェリチタ / 3. ちょうどYeah! / 4. いい時間 / 5. ゆれる feat. 田我流 / 6. ギャーテーギャーテー / 7. なんともまぁなんだかな / 8. ジャイプールの裏路地にて / 9. 一本のロープ / 10. ヨーガ教室 / 11. 海岸を越えて / 12. 気楽な話 remix / 13. いなか浜 / 14. AGAIN feat. CHIYORI / 15. 帰りましょ
やはり面白いネタを聞いて探す中で個性が出てくる
——今作はサンプリングを感じさせない音が多いように感じますが、ご自身で楽器を演奏されたのでしょうか? また普段から楽器に触れる機会があるのでしょうか?
今回のアルバムに関して言えば、割合はサンプリングと演奏の半々で、演奏は前田和彦さんにお願いしています。僕は楽器は出来ないので、コードを打ち込むくらいですね。
——EVISBEATSさんは、MCネーム「AMIDA」として活動されており、前作のアルバム名も『AMIDA』というタイトルでした。今作『ひとつになるとき』でも、前作に続き平和な雰囲気に溢れ、仏教的な香りが漂っています。もし宗教的ルーツが 今作に影響を与えているようであれば、教えて頂けますでしょうか?
そういった類いの本を読むのが好きなので、そういう影響はあるかもしれません、あと、旅をする中で自然とそうなったのと、参加してくれた作詞家さんや歌い手さんとの化学反応ですかね。
——今作のタイトルは『ひとつになるとき』ですが、アルバム制作に至った経緯を教えてもらってもよろしいでしょうか?
今作に収録されているのは、前作『AMIDA』から作り貯めてきた曲達です。遊びで作っていた曲を厳選してまとめました。
——EVISBEATSさんは、どのようなタイミングで曲が生まれるのでしょうか? テーマを先に設定されるのでしょうか? それともビート・メイクが先でしょうか? また、制作で苦しむ時があれば、どんなことで苦労されているのか、教えて頂けますか?
ビート作りが先です。トラックを作っている時は集中してるので楽しいですが、作詞や歌となると、なかなかうまく出来ずに苦労しました。歌詞は最初何曲か書いていたのですが、納得出来ずに全部ボツにしてしまったくらいで、歌詞が書けず長い間制作を放置してました。歌は何度もやり直したり、一人きりで録音してることもあって気分が滅入りました。
——「いい時間」で鴨田潤氏に作詞を依頼された経緯を教えて頂けますでしょうか? また「いい時間」はどんな時に生まれた曲なのでしょうか?
鴨田潤さんは、僕が歌詞を書けずに悩んでいるのを誰かから聞いたみたいで、電話をかけてきてくれて。自ら作詞をかって出てくれました。大阪に来てはる時に数曲のトラックを渡したら、次の日に『いい時間』が出来てきました。ひらめいて一気に書いて歌ったみたいで、そのスピードに驚きましたし、歌の素晴らしさに、うんこちびりそうになりました。
——優しい音や幻想的な雰囲気に、仏教に関するワードを抜きにしてもアジアを感じます。アジアの音を取り入れたヒップ・ホップというと、ウータン・クランのような東洋趣味に傾く気がしますが、それとは違ったオリジナリティに富んだ楽 曲になっているのには、何が影響しているのでしょう?
4年の歳月の中で、インドでのフィールド・レコーディングやタイ・ファンクなどを聴く中で、色々と興味が変化していきました。タイ・ファンクなんかは、歌と音の怪しい感じが面白くて色々と聞きました。やはり面白いネタを聞いたり、おもしろい部分を探す中で個性が出てくるかと思います。『ヨーガ教室』は前田和彦さんが演奏してくれました、アイデアも技術も凄いのでほんと天才だと思います。
——宗教と音楽の繋がりというのは、現代、希薄に感じます。それは、EVISBEATSさん自身が求めているものなのでしょうか?
もともと芸能は神事から生まれてますし、神に奉納するみたいな、その繋がりはあってほしいですね。作品を発表するとなると多くの人に影響力があるので、やはり少しでも希望や慰め、励まし、癒し、安らぎなどがあればいいなと思います。今は、音楽の力が広がりもパワーもあるし、いつでもどこでもお金もかけずに楽しむことが出来る。しかも音の波動で良くも悪くも色んなエネルギーを与えれる。まぁ、このような作品でも音楽療法になればいいなと思います。
——ご自身のラップにおいては、ディス・リスペクトや他のラッパーに対しての「嫌み」や「感情」が排除されていますよね。ヒップ・ホップは、そういった棘が付きものかと思いますが、EVISBEATSさんのラップ・スタイルのスタイルは昔から一貫したものなのでしょうか?
そういう嫌悪や批判をラップで表現した時もありましたが、結局は天に唾を吐くみたいに自分に返ってきますし、ヒップ・ホップがどうこう以前に、なぜ相手にそういった感情を持つのかというと、自分自身の未熟で嫌な面を相手に見ていて、それが嫌悪の対象になると思います。羨ましかったり見下していたり自分のエゴだったり金のことだったり… まぁ自分にもありますが、気にならなくなりましたし、本当に理にかなった突っ込みじゃないと駄目ですね。
——そもそも、ヒップ・ホップにハマったキッカケを教えて下さい。そして、トラック・メイクを始めた頃のお話もお聞かせいただけますでしょうか。
ベタに中学の時にスケボーをしていて、そのビデオに使われてる音楽や、兄がテープに録音していたEric B. & Rakimの「Don't Sweat The Technique」を聞いたりしたのがきっかけです。日本語で初めて聴いたのは、スチャダラパーの「後者」っていう曲です。兄の部屋から聞こえて来て「なんやこれ? 」って。RAPしててもハマるオケがなかったので、トラックは自分で作りたいなと。20歳の時地元の先輩からASR-Xを譲ってもらいました。音はショボイですが、シンセ音源もついているし、耳で聞いて編集する感覚で作れるので楽しかったです。
——リスナーとして洋楽、邦楽問わずシーンの流れをチェックされたりはするのでしょうか? もし、されているのならば、ヒップ・ホップにおける"流行り"な制作手法に影響を受けることがあるのか、教えて頂けますでしょうか?
フリーで配っている音源とかを聴くくらいですね。BLU(E)とかKANKICKとかEXILEとかFUNKY DLとか好きで聞いてます。最新って感じではないですが。新旧問わず面白いやり方は真似します。
——他のアーティストに提供するトラックも、一聴しただけでEVISBEATSのトラックと直感するのですが、ご自身ではオリジナリティを出す為に、何に気をつけて制作されているのでしょうか?
個性は多分ネタの選択とかアイデアとかですかね、特に個性を出そうと思ってないですが変わったのが好きです。グルーブとか、ネタの質感、ドラムの質感と鳴りは気をつけてます。まぁ普通ですね。
——ご自身でライバル視もしくは気になるプロデューサーがいらっしゃいましたら、教えて頂けますか?
ライバルはいないですね。気になるのは、BENNY SINGSとかBLU(E)とかKANKICKとかEXILEとかFUNKY DLとかJ DILLAとか、まぁやばい曲作る人全員です。日本では、細野晴臣さん、TEI TOWAさん、BACHLOGICさん、PUNPEEさん、ハナレグミ、S.L.A.C.K.さん、鎮座君やシンコさん等、書ききれないですが沢山います。
——既にとてもアーティストの繋がりが広いEVISBEATSさんですが、今後共演したい方がいたら教えて頂けますでしょうか?
ライヴを一緒にやっている、PUNCH&MIGHTYとは一緒に作品を作りたいのと、鴨田潤さん、伊瀬峯幸さん、DOZANさん、前田和彦さんとは今後も一緒に作品を作りたいです。それと鎮座DOPNESSさんとハナレグミさん、七尾旅人さん、田我流さん、UAさん、KEYCOさん、LEYONAさん、ERIさん、女性の歌い手さんとか共演したいです。
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PROFILE
EVISBEATS
元韻踏合組合。2004年韻踏脱退後にトラック・メイカーEVISBEATS、ラッパー名義AMIDAとしてソロ活動を開始する。KREVAやET-KING、RSPといったメジャーから韻踏合組合、般若、SHINGO西成、UKのブレイク・ビーツ職人BOCA45のREMIX、サイプレス上野、スネークマンショウのCLUBKINGのコメディー音源等、様々な楽曲の制作に携わる。