「あなたが抱えている傷は、あなたの価値を損ねるものではない」
――松本さんは、Enfantsとして活動をしていく中で、「若い世代と出会いたい、繋がりたい」という欲求もありますか?
下世話な話になりますけど、若い子たちの方がパワーがありますからね。自分が音楽人として活動を続けていこうと思ったら、間違いなく、その子たちのパワーが必要になると思うんです。さらに言えば、僕もなんだかんだで18歳くらいの頃から気持ちは変わっていないんですよ。自分の父親も言っていたんですけど、人って、体は老いていくけど、実は心は17、8歳くらいの若いいままで、ただ、「できない」が増えていくから大人にならざるを得ない。そんなものなのかもしれない。どの世代の方と話しても、「心はあの頃のままなんだけどね」という話になるし。それなら、少なくともバンドをやっている間だけは、無理やり大人になることもないのかなと思っています。なので、僕の場合は「若者に照準を合わせている」というより、バンドをやろうと思って裸ん坊になってみたら、結果的に、どうしようもなかった子どもの自分が「(胸を差しながら)ここ」にいて、それが出てきているっていう感じかもしれないです。それを表現しようすることの方が、僕にはやりがいがあったんです。
――「デッドエンド」「R.I.P.」「Dying Star」と、アルバムの中盤には「死」をイメージさせるタイトルの曲が並んでいますよね。
確かに(笑)
――意識的ではなかったですか(笑)。
「デッドエンド」「R.I.P.」「Dying Star」……その後なんでしたっけ? 「天国で生まれた僕ら」か(笑)。今初めて気づきました。
――この3年間、松本さんが音楽を作るうえで「死」は意識せざる得ないものだったのかな、と思うんですけど、いかがでしょうか。
元々、死がすごく怖かったんです。誰かに死なれることも、自分が死んでこの世から去ることも、めちゃくちゃ怖くて。それを考えると怖くて夜も眠れない、みたいな人間だったんです。誰にもいなくなって欲しくないし、自分がいなくなったことに悲しんでほしくないから、「誰もいなくならないで!」って、ずっと思いながら生きてきたんですけど。でも人生が進んで行くと、自分の親友が亡くなるようなことも起こる。そうなると、あれほど死ぬことが怖くて眠れない日があったのに、それを受け入れるしかなくなっていく。それは……ある意味、救いになりましたね。「自分もいつか同じところに行くんだな」と思うと、ちょっと楽しみにさえ思えてくるんです。死のような極端に悲しいこと、それに付随して感じる虚しさだったり、怒りだったり、そこにある辛さを心で感じつつ、頭では冷静に処理しようとする力ってあると思うんです。それって、表現をするうえですごく大事なことだと思うんですよね。自分にとっての恐怖の対象に冷静に向き合う、ということなので。なので……死は、元々の自分にとっては一番あってはならない状態だったけど、それを曲に取り入れてみようとしたというのは、自分の創作活動において重要なことだったんじゃないかと、今話しをしていて思いました。


――アルバムの終盤3曲、「星の下」「Kid Blue」「Midnight Yellow」には、希望が見える……と言ったら、ご本人的には極端に思われるかもしれないですけど――。
まあまあ、でも、そうですよね。俯いていた顔が、ちょっと上がるくらいの感じかもしれないですけど。
――この曲たちは、松本さんの中のどんな部分が表れていると言えますか?
「Kid Blue」は、「中学生だった頃の自分をもう一度思い出そう」という感じの曲ですね。バンドを始めたばかりの頃の感覚と言いますか。何をするでもなく集まって、昔は畳の上でバンドをやったりしていましたからね。ガレージでガシャガシャの音で録音したり、30ワットくらいのアンプをママチャリのカゴに乗せて坂道を思いきり下ったり、レリック加工に憧れて、ギターを引きずり回してみたり(笑)。「Kid Blue」は、あのときの自分の感覚を思い出しながら作った曲です。
あと、これは裏テーマ的な部分ですけど、Enfantsを始めたとき、まずは『Q.』『E.』『D.』という3枚のEPを通して「LAMP IN TERRENをやめてまで始める必要があるバンドなんだ」ということを、それまでのファンにも分かってほしいという気持ちがあったんです。「Kid Blue」は、その3枚目のEP『D.』のリード曲でもあったので、「もう一度あの頃の気持ちを思い出して、がむしゃらに音楽をやっていこうと思います」ということ、これまでの自分の人生で出会ってくれた人たちに伝えたい、という気持ちもありました。
――なるほど。
で、「Kid Blue」がバンドを始めた頃の自分の原点を思い出した曲だとするなら、「星の下」は曲を作り始めた頃の自分の性質を思い出しながら作った曲なんです。あの頃の自分はでっかい音で、でっかい雰囲気のことを、でっかい声で歌うっていう(笑)、そういう部分がストロング・ポイントとしてはあったと思うので。「元々、自分が評価されていたポイントってこんな感じのところだったよな」と思うし、その頃の自分は手癖で曲を作っていたので、また1曲手癖で作ってみよっかなと思って生まれたのが「星の下」です。アルバム最後の「Midnight Yellow」は……「あなたが抱えている傷は、あなたの価値を損ねるものではない」ということを、強めに言いたかった。最後だけはもしかしたら、日記ではなく、手紙になったのかもしれないなと思います。
――「あなたが抱えている傷は、あなたの価値を損ねるものではない」と、強く言いたいと思ったのは何故なのでしょう?
う~ん……自分で言うのもなんですけど、結構優しいんです、僕は(笑)。ずっと他人を軸に生きてきた部分があるし、そこにある自分の本音みたいなものを、ないがしろにしたくなかったのかもしれないです。カッコつけたかったのかもしれない(笑)。それがカッコいいかどうかはさておき、自分の基本理念に従うと、アルバムの最後は、できるだけ安心してほしかったし、肩を貸したかった。アルバム最後となると、どうしてもそういう気持ちになっちゃいましたね。やりっ放し、ぶっ放しで終わり、でもよかったのかもしれないですけど、アルバム完成までに3年もかかったので、その締め括りとなると……。アルバムを梱包するに当たっての、リボンみたいな曲なのかもしれないです、この曲は。
――「Midnight Yellow」には、愛されたときの記憶に守られているような感覚が歌われているような気がして。そこにとても優しさを感じました。
ありがとうございます。そういう曲だと思います。
――「星の下」では《醜くあって 美しい僕らの抵抗》と歌われますが、「抵抗」という言葉は、松本さんが音楽活動をしながら生きていくスタンスを言い表す言葉として、しっくりきますか?
僕から「抵抗」という言葉が出てきたのって、たぶん、BUMP OF CHICKENの影響だと思うんですよ。
――おお、なるほど。
当時、狂ったように『ユグドラシル』(2004年)というアルバムを聴いていたんですけど、あのアルバムに入っている「sailing day」という曲に「抵抗」という言葉が出てくるんです。あれをカッコいいと思った感覚が体の中に染みついているんですよね。生きることは、つまり抵抗である。この感覚を、僕は受け継いでしまっているんだと思います。
編集 : 石川幸穂
生きることは、抵抗である。
Enfantsの“現在地”を鮮やかに刻む1stアルバム
ライブ情報
One Man Live "Tiny Cosmos"
公演日:2026年2月21日(土)
会場:恵比寿The Garden Hall
OPEN 17:00 / START 18:00
出演:Enfants (One Man Live)
チケット
前売一般:¥4,900
前売U-22:¥3,500
※いずれも別途1ドリンク代必要
※オールスタンディング
※U-22チケットは、ライブ当日に22歳以下のお客様を対象としたチケットです。
※U-22チケットは当日年齢のわかる顔写真付き身分証明書の提示が必要です。
当日お持ちいただけない場合は、差額をお支払いいただきます。
※一般チケットとU-22チケットの同時購入はできません。
※整理番号は発券開始日までにご購入いただいた皆様の中で抽選で付番いたします。
特設サイト:https://enfants-tinycosmos.studio.site/
Enfants の特集記事はこちらから
Enfants のほかの作品はこちらから
PROFILE : Enfants
バンド名はフランス語で“子供たち”。
2022年活動開始。オルタナティブ・ロック・バンド。
衝動と開放感、そして日本語詞の繊細な情緒表現を融合させ、現代的な感性へと昇華させる独自のサウンドを鳴らす。
フロント・マンである松本 大が書く歌詞は、日常の断片を切り取り、孤独や焦燥、怒りといった「感情的でいることを否定する社会への抵抗」をメッセージとして掲げる。誰もが見落とすような“弱さ”や“歪さ”を力に変え、聴き手の内側に眠る痛みと触れ合う。
サウンドは飾り気がなく、強烈に生々しい。
美しさを求めながらも、どこか破壊的で、壊れかけの叫びを抱えたまま突き進む彼らのライブ・ステージでは、抑えきれない感情が爆ぜ、観客の胸に直接爪痕を残すような “体験として の音楽” が立ち上がる。
Enfantsの音楽は、生きづらさを抱えた人々のためのアンセムであり、感情を押し殺して生きる若者への、静かな革命である。
■Official Site : https://lesenfantsdanslalune.com/
■X : @enfants_jp
■Instagram : @enfants_jp
■YouTube : @enfants_jp










































































































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