2026/01/16 18:00

循環する環、重なり合う響き、際立つ音 = “環響音”

――2023年9月に和田さんがパリから帰国し、10月に初楽曲となる「SŒUR」のMVがYouTubeで公開されます。MVは水面が写ってるだけで和田さんの顔も出てこないという、ある意味匿名性が高いものでした。そのあたりは意識していたことだったのでしょうか。

LOLOET - “SŒUR” Music Video
LOLOET - “SŒUR” Music Video

和田:ヴェネツィアで見た水面がめっちゃ綺麗だなと思って、動画に撮っておいたんですよ。それをいつかMVに使いたいと思っていて、「SŒUR」のMVで使いました。

ただ、自分の顔が出ないということは意識してたし、そこはやっぱり「音としてみんなに楽しんでほしい」という気持ちもありました。自分はもうアイドルじゃないし、自分の顔が出て何かを評価されるという場にはいないので。

――LOLOETの楽曲は即興の部分と作曲された部分が組み合わされていますよね。こうしたスタイルにはどのように辿り着いたのでしょうか。

和田:曲に関しては劔さんが土台の部分を作ってくれるんですけど、結構大雑把で。AとBという構成があったら、Cの部分はフリーみたいな感じなんです。この間に即興も入るし、そうやってひとつの曲になっていくんです。

――大まかな構成だけ作って、あとは各プレイヤーに委ねているわけですね。

劔:もちろん僕自身があまり細かいことをできないということもありますけど(笑)。バンドをやる以上、自分が想定しているものがそのままできあがってもおもしろくない。人の手とアイデアが入ることで、全然違うものになったほうがいいし、それが楽しみでこういうことをやっているようなところもあるので。

――このバンドで即興をやるうえでのルールはあるのでしょうか。「今日のあそこの即興、良かったよね」というときの判断基準みたいなものというか。

和田:確かに「今日はなんかハマったな」っていう瞬間、ありますよね。

劔:このあいだ禅宗の本を読んでたんですけど、即興の中で何が起こっても、それはそれで正解だと考えたいなと思ってて。 無為自然(人為的な作為をせず、ありのままの自然の摂理に従うこと)というか。即興もだんだん息が合ってくる瞬間があるんですけど、それはそれで良しとして、そうならなくてもいい。そういうマインドは常に持つようにしています。

和田:あえて言語化するならば、このバンドはそれぞれの役割がはっきりしてるので、その役割があるべきところにはまって、みんなの音がいい感じに重なった瞬間な気がしますね。

――このバンドの即興はみなさんの音が調和してるというか、溶け合っている感じがするんですよね。Quick Japanの和田さんの連載「『アイドルになってよかった』と言いたい」のなかで「最終的に学んだことは、人の痛みに寄り添って、ルールや正しさで判断しきるのではなく、話し合いで理解し合うことと、個人主義と愛でいろんな困難を乗り越えることだった。それが私の価値観になった」と書いていますが、和田さんのそうした価値観とこのバンドの即興は繋がっている感じがするんですよね。

和田:読んでいただいてありがとうございます。引用していただくとちょっと恥ずかしいですね(笑)。

――すいません。でも、すごく素敵な言葉だなと思って。

和田:でも、きっと繋がっていると思います。ただ、このバンドはそれぞれのメンバーがいて、みんながやってきたことあっての今だから、自分がリーダーとしてバンドをどうこうしたいというより、みんなで作っていくほうが楽しいんですよ。

――長野・高山村の牧場で撮影された31分のライヴ・セッションがYouTubeで公開されてますけど、LOLOETというバンドがやりたいことが表現されている感じがしますね。あれはどういう流れで撮影することになったんですか?

LOLOET Live Session in autumn leaves in Japan / Altenative & Ambient
LOLOET Live Session in autumn leaves in Japan / Altenative & Ambient

和田:劔さんが「牧場で撮ろう」って言い出して。

劔:彼女は昔から「森や工場でライヴをやってみたい」と言ってたんです。そのことがずっと気になってて、体制が整ったらいつか野外でやってみたいと思っていました。

――この動画がおもしろいのは、 演奏している間に雲の流れとか光の加減が変わっていくじゃないですか。風の音もそのまま入っています。天気が刻一刻と変わっていくなかで、みなさんの演奏と風景の移ろいが同期している感じがするんですよね。

劔:なるべく風の音もそのまま使いたかったんです。すぐそこに時計台みたいなものがあって、演奏を始めたら時計台の音が鳴り始めるんですよ。鳴り始めたとき「これだ!」と思いました(笑)。

――今回のアルバムには『環響音』というタイトルがついていますし、レーベル名も「Kankyo-ON」です。「環境音」ではなく「環響音」というところに意味が隠されているような気がするのですが、いかがでしょうか。

和田:「環響音」というのはLOLOETのテーマをもとに作った言葉です。端とか中心がなくて、ずっと同じことを繰り返していく世界観が私は好きなんですけど、それが「環響」の「環」。私は一個一個の音が合わさった時にできる響きが好きなので「響」、そしてその音自体がもうちょっといい風に目立っていけるといいなと思って「音」という言葉をつけました。あと、環境に配慮したバンドでありたいとも思っています。

劔:彼女はもともとアイドル活動をしてた人だから、CDを売りすぎたことに対するいろんな思いがあるんです。

和田:みんな50枚とか買っていくんですよ。それで目の前で握手して。モノの消費と人の感情の消費を目の当たりにしていたので、これは良くない経済のあり方だなと思っていました。

劔:だから、LOLOETでは環境に配慮した活動をしたいと。今回レコードは作るんですけど、CDは作らないことにしました。

この記事の編集者
石川 幸穂

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