札幌出身の3ピースバンド・THE★米騒動が、強烈なラブ・ソング7曲入りの2ndミニ・アルバム『 十九歳でぜんぶ終わる』を完成させました! 昨年の1stミニ・アルバム『どうでもいい芸術』のリリースから、大型フェスの出演、初のツアー敢行と怒濤の1年を経験した彼ら。もはや10代だとは思えないその強力なグルーヴからは、一回り、二回りものバンドとしての成長を感じさせます。RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZOへの出演も決定しているTHE★米騒動、その勢いからは目が離せません。OTOTOYではさらにこのアルバムのリリースに合わせ、作詞作曲を手がけるGt./Vo.の石田愛実と、THE★米騒動と親交の深いバンド、赤い公園のGt./Cho.の津野米咲の対談をお届けします。
THE★米騒動 / 十九歳でぜんぶ終わる
THE★米騒動、待望の2ndミニアルバムが完成。3人の音のグルーブは更に不穏で凶暴になり、驚異的な爆発力と全く先の読めない鮮やかなサウンド・スケープを展開。冷たくも熱い轟音になってぶつかってくる。この作品にはバンドの「今」が凝縮されている。
1. 十九歳 / 2. DOSYAKUZURE / 3. 女の娘 / 4. ストランゲーゼ30番地 / 5. 家政婦はなにも見ていない / 6. 男ってこれだからさぁ / 7. S.S.A.
石田愛実(THE★米騒動)×津野米咲(赤い公園) 対談
シンガー・ソングライターからアイドルまで、現在の音楽シーンを引っ張っているのが、瑞々しい感性を持った若い女性たちであることは間違いない。それはバンドに関しても同じことで、20歳前後の女性を中心とした生きのいいバンドが続々と頭角を現してきている。THE★米騒動と赤い公園は、そんな流れを代表する2バンドだと言っていいだろう。00年代の日本のオルタナティヴなロックの精神性を受け継いだTHE★米騒動、ポップスや映画音楽といったバックグラウンドをバンドという形態に落とし込んだ赤い公園、真逆と言ってもいいぐらいにそれぞれのバンドが志向する方向性は異なる。しかし、共に20歳のコンポーザーである石田愛実と津野米咲は、もっと大きな視点でお互いシンパシーを寄せ合っている。多様性を受け入れ、自由を失わず、ある種のふてぶてしさを持って、音楽へと情熱を注ぎこむこと。これこそ今の若手バンドたちの充実ぶりの背景にあるものだと言えよう。
インタビュー&文 : 金子厚武
写真 : 畑江彩美
むかつくから、ホントに聴いてないもん
――2人ともバンドのコンポーザーなわけだけど、お互いの曲作りの話とかってしたことある?
津野米咲(以下、津野) : 普段どうやって作ってるんだっけ?
石田愛実(以下、石田) : うちが家でギター作って、歌作って、歌詞作って、ベース作って、ドラムのイメージ作ってから持ってって、それを口頭で伝える。
津野 : 口頭で伝わる?
石田 : 伝わ… らせなきゃいけないよね。
津野 : それは一緒です。「ドドダドド」とか言って(笑)。
――赤い公園はまず津野さんがデモを作るんだよね?
津野 : はい、しっかりデモを作っていくんですけど、それでも伝わらないとことかあるんで… 「ドドダドド」って(笑)。
石田 : 伝わらなかったときにさ、別のものが出てきて、「そっちの方がいいじゃん! 」ってある?
津野 : あるある。
石田 : あるんだ。米咲は完璧に家で打ち込んで、それを持ってって覚えさせるって感じじゃないの?
津野 : 最初はそうだったけど、みんなそれを100%はできないわけだよ。だから、最近は最初からギターも入れないで、シンセとかめっちゃ入れて、ベースもドラムもわざと無茶なことにしておいて、「これどうするかな?」みたいな感じで見てる。けど、たいていあいつらめっちゃ簡単にするね。
石田 : そりゃそうでしょ(笑)。
――でも、そうやってバンドに持って行ったときの変化を楽しんでるわけだよね?
津野 : そうですね。完全再現だったら、一人でスタジオ・ミュージシャンみたいな人とやればいいと思うんで。だーいしは伝わらせるときどうするの?
石田 : バンド名挙げたりとかする(笑)。
津野 : あー、わかる。私も最近レコーディングのボーカル録りで、「語尾某バンド風で」って言った(笑)。
――(笑)。曲を作った本人が歌うか、別にボーカリストがいるかっていう違いはあるよね。
津野 : 曲作ってる人がギター弾いてガッて歌うのって、エンジンのかかり具合がすごくて、それは私たちには出せないものだなって。こっちは、「ポチッポチッ」ってスイッチを押すみたいな、もうちょっとインドアな感じがする。
――米騒動はアウトドア?
津野 : アウトドアですね。真夏のバイクだよね。
石田 : アカコー(赤い公園)は?
津野 : オフィスだね。
石田 : 単純に、知性は感じるけどね。
津野 : ちょっとスカしてっかんな(笑)。でも、米騒動は音もそんな感じだよね。ギターとか、粘っこいよね。
石田 : 粘っこい、しつこいギター弾くね。米咲みたいなギターは弾けない。
津野 : 私は軽音部の流れなので(笑)。
――2人には似てる部分、違う部分それぞれあると思うんだけど、一番違うのは「バンド」っていうものに対する考え方だと思うのね。石田さんは昔からバンドを聴いてきて、バンドが好きでバンドをやってる人でしょ? 一方で、津野さんは元々ポップスとか映画音楽を聴いてて、その人が今はバンドをやってる。その違いが曲作りの違いにもつながってると思うんだけど。
津野 : そうなの?
石田 : うん、それはめっちゃ感じてるよ。バンドに対する気持ちは全然違う。
津野 : うちらはバンドがひとつの手段みたいな感じかな。
石田 : いつか楽器捨てるかもしれないよね?
津野 : そろそろかなって思ってる。
石田 : 早いな(笑)。
――石田さんはバンドに対する愛着強いでしょ?
石田 : 強いし、あとの2人も楽器を取ったら何もできないと思う。
津野 : うちら他の3人は楽器取ったらそれぞれ他のやりたいことをやると思う。バンドとどっちが大事なんだっていうぐらい、いつも「彼氏欲しい」って言ってるし(笑)。
――他にやりたいことってそういうことか(笑)。
津野 : 普通の女子です。ちーちゃん(佐藤千明)は多分ディズニーランドで働くことをまだあきらめてないと思う。(藤本)ひかりはコリラックマストアで働きたいって言ってた。(歌川)菜穂ぐらいかな、何やろーかなって悩むやつは。
――(笑)。まあ、バンドに対する考え方は全然違うんだけど、それでも近いところにいるっていうのが面白いところだよね。津野さん、米騒動を初めて見たときのこととかって覚えてる?
津野 : 初めて見たときは、得体が知れなさ過ぎて、怖くなってトイレに行っちゃったんです(笑)。FEVERのトイレで「怖い怖い… 」ってなって、トラウマぐらいな感じになってて。でも、去年のロックインジャパンで見たら、別のバンドみたいになってて、めっちゃかっこよかった。渦巻いてたものの下にあったものが上に出てきた感じっていうか。
――じゃあ逆に、石田さんが赤い公園を初めて見たときの印象は?
石田 : LUSHで初めて対バンしたときに、最初メンバーみんなすごい話しかけてくれたのを覚えてる。
津野 : 遠征の車でずっと聴いてたから(笑)。
石田 : 赤い公園の音源は聴いたことあったんだけど、ライブを初めて見たら、「こういう感じのライブなんだ! 」と思って。ちーちゃん、MCでめっちゃ暴れてた。
津野 : 「行ってみヨーカドー! 」って言ってたよね。
石田 : そうそう、言ってた(笑)。でも、同い年の女の子で音楽やってる人ってそんなにいなかったし、うちらが劣等感を感じるぐらいの音楽の幅広さで、うちらには絶対できないと思った。うちらが人を感動させて、美しいと思わせる手段って、衝動的な爆音と音圧による説得力みたいのしかないから。音源もホントすごくて、「ランドリー」聴いたときは、「2度と聴きたくない」と思ったし。
津野 : 聴いてくれよー。
石田 : 本当むかつくから、ホントに聴いてないもん。
津野 : でも、米騒動は爆音だけど、1曲の中に緩和するところ緊張するところがちゃんと作られてて、1曲の間で毎回「えっ? 」ってなるんだよね。ずっと大きな音で30分とかだと、ポップスかぶれにはつらいんだけど、全然つらくないから、考えてるのかなって思ってたけど… 考えてる?
石田 : 考えてないよ。ポップスかぶれの気持ちなんて全然考えたことない。
津野 : でも、そういうところが図らずもポップだね。
石田 : 元々ポップなのは好きだから、無意識だよね。シューゲイザーとか、ノイズとかはライブじゃなくてもいいかなあって。
津野 : 何かしながら聴きたいよね。パソコンでメールしてるときに、演奏しててくれればいい(笑)。野外とかだとまた違うのかもしれないけど。
石田 : でも、うちらはホント引き算が苦手なんだよね。赤い公園って、それが完全にできてるじゃん?
津野 : 理数系だからね… そういう問題じゃないか(笑)。
石田 : ファーストとセカンド、2枚でひとつの作品に確実になってて、何でそれができるのかがわかんない。
津野 : 赤い公園は衝動を隠してるバンドだと思ってて、「投げっぱ」っていうか、飄々と、ポンポン違う曲を出すっていうイメージ。ちょっとあざといぐらいのコンセプト感とかがいいのかなって。曲はめっちゃ作ってるから、それを分けて… でも、自分たちの中では自然にそのときできることをした感じではあったけど。
スガシカオ的な「十九歳」
――津野さん、米騒動の新作『十九歳でぜんぶ終わる』に対しては、どんな印象を持った?
津野 : やってること自体は粗さがあるものだと思うんですけど、長くやってる人が初期衝動を思い出そうとしてやってる粗さみたいな感じがしたんですよ。すごく貫録みたいなものがあって、「十九歳」っていうのも、38歳ぐらいの人が、当時の気持ちを思い出して「十九歳」って言ってるような、スガシカオ的な「十九歳」っていう感じ(笑)。これも自然?
石田 : チョー自然だよね。
津野 : だーいしは大人っぽいとかそういうレベルじゃなくて、仙人っていうか、レジェンド感がある(笑)。「あの米騒動がCD出したらしいよ! 」って、男子も女子もみんなコピーするし、30歳とか40歳の人にも憧れられるんだけど、実際には若いっていう、そのアンバランス感があるっていうか。自分で若いって思ってる?
石田 : 年齢は若いよ。ファーストとかセカンドのこの音はもう二度と出せないと思ってるし。
津野 : それはそうだよね。でも、熟練した人が「もう一回あの音を出してみよう」って出した感じがして、だからすごくコクがあるの。背伸びとかとも違うし、何なんだろう… 前世がついてる感じ? もうひとつの人生が加わってる感じっていうか(笑)。
――わかるような、わかんないような(笑)。
津野 : でもさ、やっぱり見事に持ってるものが被ってないよね。
石田 : でも、お客さんは似てるじゃん。
津野 : お客さん似てるんだよね! それって、この2つのバンドは接点がないぐらいの音楽性なんだけど、お客さんたちも、私たちも、それぞれ聴いてきた音楽っていうのがあって、それでつながってる気がする。間にいっぱいある音楽が好きで、そこでつながってるから、やりたいことも目指してるところも違うんだけど、「知―らない! 」って感じにはならないっていうか。何よりライブがめちゃくちゃかっこよくて、最初に対バンしたときに、他の3人は憧れみたいな感じで「米騒動と対バンできる! 」みたいな感じだったから、その日いいライブができるはずもなく、そのとき悔しい気持ちがやっと湧いたって言ってて。
石田 : その次に対バンしたときの赤い公園のライブがすごいよかった。
津野 : 「殺しに行くぐらいの気持ちで行かないとダメなんだね」って(笑)。私たちはのりやすい音楽ではないから、どこかあきらめてる部分があったんですよね。でも、どんなにのりやすい音楽をやってても、バンドに力がなかったら意味ないし、お客さんもそんなのでのるわけない。米騒動にそれを見事に見せつけられて。
――お互い持ってるものが違うからこそ、刺激を受ける部分があって、結果的に影響を与え合ってるのかもね。
津野 : 例えば、私みたいなギターを米騒動で突然弾いたら、大事件じゃないですか(笑)。だから、直接的な影響というよりは、スタンスとかも含めての影響でしょうね。
石田 : 赤い公園っていう存在からの影響ですよね。同い年で、同じフィールドに立ってやってるっていう。
津野 : しかも、米騒動はちゃんとやってますからね。
――その「ちゃんと」っていうのはどういうこと?
津野 : 曲とかライブはもちろんのこと、いろいろ考えてると思うし、貪欲な感じがします。きっと米騒動に、音楽にかけてると思うんで、そこはシンパシーを感じます。
――津野さんは赤い公園にかけてる?
津野 : かけ方は違うかもしれないですけど、最終的に言えばかけてると思うし、気を抜かない感じ、隙がない感じもシンパシーを感じます。負けず嫌いってことかな?
石田 : 米咲がフロントマンとして考えてることが、手に取るようにわかるんですよね。どういう風に考えて、こういう曲を作ったのかっていうのが、なんか伝わってくるんです。どういう風に売れたくて、どういう風にメンバーをコントロールしてるのか、とかね。そこは尊敬もしてるし、私よりずっと考えてると思うし、そういうところで自然と仲良くなったのかなって。
津野 : お互い結構いけ好かないタイプなんだけどね(笑)。初めて対バンしたとき(石田が)ちょっと怖かったし。
石田 : うちも米咲怖かった。
津野 : お互いそうだったんだ(笑)。他のメンバーは「米騒動だー! 」ってなってたけど、私だけメラメラだったんだよね、たぶん。だから、しゃべるどころじゃなかったっていう。
――でも、いざ話してみると… 。
石田 : こんなに考えてる人周りにいないから、すごく新鮮だった。
津野 : やっぱり若いから、自分たちがちょっと気を抜いても、チヤホヤしてもらえる状況だったりすることもあるんですけど、たぶん米騒動も赤い公園も、それに飲まれないぞって思ってるんですよね。なので、何年後、何十年後、たぶんそのときはマジ別フィールドになってると思うんですけど、お互い残ってたらいいなって思うし、お互い残るつもりでやってると思いますね。
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PROFILE
THE★米騒動
高校の軽音楽部にて結成。
1992年生まれの全員10代3ピースバンド。
現在札幌を中心に活動中。
2010年8月、「閃光ライオット」にてグランプリを獲得。
2011年6月、1stミニアルバム「どうでもいい芸術」をリリース。
LIVE SCHEDULE
2012年7月7日(土)@下北沢SHELTER
2012年7月14日(土)@札幌Sound Lab mole
2012年7月29日(日)@Zepp DiverCity
2012年8月10日(金)・11日(土)@RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
赤い公園
女子4人による“ポスト・ポップ・バンド”。高校の軽音楽部の先輩後輩として出会い、佐藤、藤本、歌川の3名によるコピー・バンドにサポート・ギターとして津野が加入。そのままズルズルと現在に至る。2012年2月デビュー・ミニ・アルバム(上盤/黒盤)『透明なのか黒なのか』、5月にデビューミニアルバム(下盤/白盤)『ランドリーで漂白を』を発売した。
LIVE SCHEDULE
2012年7月6日(金)@仙台MACANA
赤い公園リリース記念公演「ランドリーで漂白を」
2012年7月21日(土)@代官山UNIT
2012年8月3日(金)@下北沢CLUB Que
2012年8月4日(土)@国営ひたち海浜公園
2012年8月7日(火)@Zepp Namba
2012年8月11日(土)@音霊SEA STUDIO
2012年8月17日(金)@名古屋CLUB QUATTRO
2012年8月19日(日)@国営備北丘陵公園
2012年8月22日(水)@新宿レッドクロス
2012年8月25日(土)@福岡DRUM LOGOS, Be-1, SON
2012年8月29日(水)@代々木公園野外ステージ
2012年9月2日(日)@山中湖交流プラザ きらら