2011/07/02 00:00

Curly Giraffeの全アルバムを高音質で配信開始 & インタビュー

80年代後半ROTTEN HATSでデビュー。解散後、GREAT 3を結成、HONESTYなどの活動や数々の実力派ミュージシャンのバックとしてひっぱりだこのベーシスト、高桑圭によるまったく一人のソロ・プロジェクト、カーリー・ジラフ。彼のソロ名義でのリリース作品、4枚のオリジナル・アルバムとセルフ・カヴァー・アルバム、またアーティストのオフィシャル・サイトのみで販売されていたライヴ音源も含めて、全8作品を一挙に高音質のHQD音源(24bit/48kHzのwavファイル)で販売開始! インタビューと共にどうぞ。

オフィシャル・サイトのみで販売されていた昨年のツアー・ファイナルの音源を高音質配信スタート

2010年6月4日に行われた"2010 Idiots Tour"@渋谷CLUB QUATTRO公演の音源をHQD(24bit/48kHzのwav)で販売。スペシャル・ゲストにCoccoを迎えた「My Dear Friend」や「Tricky Adult」からアンコールまでを収録した良質なポップ・ミュージック全22曲。
1. Roaring Forties / 2. Paper Doll / 3. Spider's Song / 4. The Flying Dutchman / 5. Mood / 6. Water On / 7. Sunshine Baby / 8. My Dear Friend feat. Cocco / 9. Tricky Adult feat. Cocco / 10. One Comfortable Bed In The World / 11. You Just Swept Me Off My Feet / 12. Fountain Of Youth / 13. Run Run Run / 14. Hana / 15. Sign Post / 16. 123 4 U / 17. Spilt Milk / 18. Gypsy Girl / EN1. B.B.B.Eyes / EN2. Chaos / EN3. Forbidden Fruits / EN4. 96708
【ダウンロードに関して】
windowsをご利用のお客さまは、標準の解凍設定、もしくは解凍ソフトによっては正常にファイルを解凍できない可能性がございます。その場合、お手数ですが別の解凍ツールを使用し、再度解凍をお試しくださるようお願い致します。7-Zip(フリー・ソフト)での解凍を推奨しています。
※7-zip http://sevenzip.sourceforge.jp/
また、ファイル名が長く操作出来ない場合や、ダウンロードしたファイルに不備や不明点がありましたら、info(at)ototoy.jpまでお問い合わせください。
>>HQDの聴き方はこちら

Curly Giraffe INTERVIEW

2005年のデビュー以来、4枚のオリジナル・アルバムやセルフ・カヴァー・アルバムを次々と発表し、その名を世に知らしめたカーリー・ジラフ。デビュー当初はプロフィールを公表しなかったため、「謎のアーティスト」と言われたりもしたが、今では多くの人が彼の「正体」を知っていることだろうし(わざわざ書かないので、知らない人は調べてね)、今思うとその後の「匿名ブーム」の先駆けだったようにさえ感じられる。また、60~70年代のアメリカのシンガー・ソングライターの影響下にあり、ウェスト・コーストやサイケデリックといった要素が混在したその音楽性は、近年のアメリカのインディーズ・シーンとの関連を指摘することもでき、少しずつではあるが、アメリカからの波が届きつつあるここ日本におい て、その音楽性においても、先駆けと見られる日が来るのは遠くないかもしれない。そして、彼自身が語るように、そんなカーリー・ジラフのオリジナリティとは、あくまで自分らしくあることによって培われてきたものなのである。

インタビュー & 文 : 金子 厚武

宅録だから高音質の方が手触りというか感触がより見えると思う

——今回OTOTOYで過去のカタログと昨年のライヴ盤が高音質で配信されるわけですが、これまではご自身のサイトから配信されていて、高音質での配信もされてますよね。やっぱり音質に対するこだわりがあるのでしょうか?

カーリー・ジラフ自体は基本宅録の形をとってるんですけど、宅録だからこそ、最終的な仕上がりの手触りによって、聴こえ方が違ってくるっていうのが何となくあるので、高音質の方がその手触りというか感触がより見えるとは思います。曲の音像自体はハイファイではないんですけど、元がハイファイじゃないものを、ちゃんとハイファイじゃないものとして聴いてほしいっていうか(笑)、自分が作ったときの音に近い形で聴いてもらえるっていうのは、自分がやりたいことがちゃんと伝わる気がするんで。

——配信で曲を買ったりとかはされますか?

しますね、最近は。

——勝手なイメージで、アナログとかお好きなのかな? って。

いやいや、アナログも好きだけど、最近はレコード屋に買いに行ったりしないんで、CD屋も行かなくなったし、配信で買うか、ネットで注文するかが多くなってきた。時代に乗ってると言っていいのかわかんないですけど、そっちの方が便利なんで。

——配信で一曲買いすることにアレルギーがある人もいると思うんですけど、そういうのは気にならないですか?

僕アルバム一枚単位で全部好きってそんなになくて、一曲聴きが多いんで、だから元々一曲買いに向いてるっていうか(笑)。

——へえ、僕今31歳なんですけど、僕より上の人とこういう話をすると、「やっぱりアルバムで聴くのがいいんだよ」っていう人が多いんで、結構珍しいタイプだと思います。

そうかあ(笑)。好きな曲だと基本エンドレスで聴けるタイプなんで、自分の人生において、毎年気に入った曲がちょっとずつ増えていって、それが自分のライブラリーに延々と残っていく感じなんです。だから、昔だったら好きな一曲を聴きたいからアルバムを買うってこともありましたけど、配信だと普通に一曲で買えるんで、僕からすればありがたいと言えばありがたいですね(笑)。

——そういう考え方ってカーリー・ジラフの作品にも反映されてると言えますか? アルバムとして作るっていうよりも、一曲一曲のコレクションみたいな。

そうですね。毎回アルバムのコンセプトを決めて作ることはしないんで、この先どうなるかはわかんないけど、現状はそうですね。

ファースト・アルバムの曲は10年以上前に作った曲ばかり(笑)

——「作曲は趣味」とおっしゃってますが、基本的に日々曲を書いてる感じなんですか?

僕は素材を作るのがすごく好きで、ICレコーダーに鼻歌で入れたみたいな素材が死ぬほどいっぱいあって、アルバムを作る時期になったら、その鼻歌を聴き返して、「今日はこの曲をやろう」とかって感じで作るんです。それも20年ぐらい前から取ってあって、寝かしがきくと、10年後に聴いてよかったりとか。

——10年寝かすってすごいですね。

でもカーリー・ジラフのファーストとか、ほとんど10年以上前に作った曲ばっかり(笑)。

——そうなんですね! では今回過去のカタログも配信されるので、改めて、カーリー・ジラフがどのようにスタートしたかを話していただけますか?

最初はすごい他力本願なんですけど、全然ソロとかをやるつもりはなくて、今のレーベルの人とは元々知り合いだったんですけど、「ソロやってみない? 」って急に言われて、特にやるつもりはなかったんだけど、曲の素材はいっぱいあったから、「今度聴かせるね」って、いっぱいあった中から、40曲ぐらいにまとめて渡したんです。

——まとめても40曲あったんですね(笑)。

そうしたら、次の日にFAXが届いて、ファーストに入ってる曲がセレクトしてあって、「これでアルバム作ろう」って。それで「あ、じゃあ作ろうかな」って感じで(笑)。

——それまでは「いつか発表したい」って考えてたわけでもなく、ホントに趣味で作ってる感じだったんですか?

元々バンドをずっとやってたんで、それ用の曲として作った曲もあるし、そうじゃない曲もあって… ボツ曲っていうと聞こえが悪いけど(笑)、世に出なかった曲とか素材がいっぱいあったんで、バンドとは違う形で出せたらいいなってなんとなくは思ってましたね。

子供の頃に純粋にいいと思って聴いていたときの気持ちを自分の表現に使いたかった

——音楽性はどのあたりがルーツになっているんでしょう? 70年代のアメリカのシンガー・ソングライターとか、そういう雰囲気があるようには思うのですが。

70年代にこだわってるわけではないんですけど… まあ、確かに70年代の音楽に対する原体験があるから、その頃って子供で、音楽を素直に聴いてたっていうか、10代とか20代になると、「こういうのを聴いてるのがかっこいい」みたいな姿勢とかあるじゃないですか? でも、子供のころは純粋にいいと思って聴いてたんで、その気持ちを自分の表現に使えないかなと思ったんです。音楽に対してもっと素直になりたかったっていうか、それまでバンドもいろいろやってきてたけど、そういうのも抜きにして、純粋に自分の好きな音楽を表現できないかと思って。

——「自分の好きな音楽」っていうのを具体的に言っていただくことはできますか?

一枚目のときは何となくコンセプトがあって、カーリー・ジラフって名前で、僕自身のプロフィールを一切出さなかったんですよ。しかも英語の歌詞じゃないですか? そのことによって、洋楽だと思う人もいたらいいなっていう(笑)。いたずら心っていうか、そういうのもあって、ジャケットの感じとかも、70年代に出た隠れた名盤の再発みたいな(笑)、そういうイメージもあったんで、音も含めて、あえて新しい試みではないものにしたいっていうのは漠然とありました。

——実際「洋楽だと思ってました」みたいなリアクションってありましたか?

結構ありましたね。プロフィールを出してなかったんで、それこそ亀田(誠治)さんにしばらく前に会う機会があって、「一応僕カーリー・ジラフっていうのもやってて… 」とかって言ったら、「え! 僕カーリー・ジラフ買ってる! 」とか言われて(笑)。「え、じゃあ僕カーリー・ジラフに会ったことあるって言っていいの?」とかって言われて、「そうですよ、僕がカーリー・ジラフですから」って(笑)。あとたまに「洋楽コーナーをずっと探したんですけどなかった」とか、そういう人もいるみたいです。

——面白いですねー。そもそも、プロフィールを非公開にしたっていうのは、バック・グラウンドに捉われずに、音そのものを聴いてほしかったっていうことだと思うんですけど、今考えると、その後の匿名ブームの先駆けになってるような気もして。

あ、ホント? 例えば?

——相対性理論とか、そういうネットを通じて噂が広まるっていう。

そういう風になるっていうのはもちろん考えてなかったけど、ただ純粋に音を聴いてほしかったっていうのがあって、プロフィール先行で聴いてもらうんじゃなくて、音に先に興味を持ってもらえるようにしたかったんで、ミュージシャンとして真っ当なことがしたかっただけというか。

——やっぱりネット時代でますます音以外の情報っていうのも増えてるから、そうじゃなくて純粋に音を聴いてほしいっていう人が増えたんだと思うんですよね。もちろん、中にはそれをプロモーションに使ってる人もいますけど。

逆に言うと、調べればすぐにわかるじゃないですか? 知りたい人は調べて知ることもできるし、自分としては音楽以外のことで知ってもらいたいことがなかったっていうか(笑)。

自分にしかできないものを追求すれば、それは常に新しいものになる

——なるほど(笑)。では、レーベルからの後押しもあってファーストがリリースされたわけですが、その時点ではカーリー・ジラフを継続的なプロジェクトにしようっていう意識はあったのでしょうか?

どう思ってたんだろうな… そんなに将来的なヴィジョンまでは考えてなかったけど、単純にアルバム出して、ライヴとかできたらいいなってところから始まって、それがどんどん広がってきたっていうか… ライフワークまでになるとは考えてなかったけど。

——「これからはカーリー・ジラフで! 」みたいな感じではなかったわけですよね。

うん、ただ一枚目って、発売する一年前には完成してたんですよ。じゃあなんで一年空けたかっていうと、メジャーじゃないから、その間に口コミのプロモーションをしようと思って。レーベルの人と話してたのは、こういう音だから、別に一年後に出しても古くならないっていう、別に新しくもないから(笑)。それで地道に友達周りから始めて、プロモーションっていうか、要するに音を広げるっていうか、そういうことをしてたんです。

——あんまりこう言うのもなんですけど、まず口コミでっていうのも、やっぱりネット以降のやり方を先んじてるなって感じがします。

持論なんですけど、新しいものって目新しくて楽しいんですけど、新しければ新しいほど古くなるのも早いと思うんです。キャリアを積んでいくに連れて、新しさにこだわりがなくなってきたというか、それよりも長く聴けるものがいいなって思うようになってきて。ちょうどそういうときにカーリー・ジラフを始めたんで、新しさを目指してない分、普遍的なものってわけでもないんだけど、長く聴けるものを作りたいっていうのがすごくあって。だから、むしろ時代背景は… 無視まではしないけど、積極的に取り入れることもしてないっていう。ただ自分は現代に生きてるわけだから、自ずとその空気感は反映されてるとは思うんだけど。

——発売一週目で百万枚売ってチャートで一位になって、その代わりすぐ落っこっちゃうよりも、じわじわと売れ続けて百万枚売れる方が、アーティストにとっても幸せですよね。

そうですね。そっちの方が自分の理想に近いっていうか、時間をかけて、聴く人が増えていったらいいなって。まあでも… 瞬間的にでも、一位になってみたいけど(笑)。

——一度ぐらいは(笑)。では、その「あえて新しいことはしない」っていう最初の基本姿勢は、その後のカーリー・ジラフの活動の中で変化はありましたか?

基本は変わらないです。だけど、その都度自分がいろいろサポートしたりとか、いろんな音楽に関わったりもしてるんで、そのときどきの刺激が反映されてるっていうのはありますけどね。ただ、根本の姿勢は変わらないっていうか… カーリー・ジラフを始めてから何となく気がついたのは、新しいものを作ろうと思うと絶対古くなっちゃうんだけど、自分にしかできないものを追求すれば、それは常に新しいものになると思ってて、そこの差なんじゃないかって。自分らしさを追求すれば、人がマネできないものであれば、それが個性だと思うし、それが新しさなんじゃないかって。

——そういう意味で僕はカーリー・ジラフとトクマルシューゴくんに共通するものを感じていて、音楽的な趣味の共通点もあると思うんですけど、彼もやっぱり曲も詞も演奏も全部自分でやるんですよね。またネットとか言っちゃいますけど、情報がいっぱいあって、作り手も聴き手も何を基準にしていいかわからない時代にあって、やっぱり自分でいることが基準であり、100%自分が出てるものを作ることが大事なんじゃないかって、お二人を見てると思うんですよね。

うん、カーリー・ジラフはバンドじゃないから、ホント100%でいいんですよ。バンドだと、化学反応で120%になったりするけど、ソロだから、100%でいいっていうか、どれだけ100%の純度を高くできるかだと思うんですよね。

昔だったら古いのを知ってると偉かったりしたけど、そういうのはもうどうでもいい

——本当にそうだと思います。では残った時間で、もうちょっと広い、シーンの話みたいなこともできればと思うのですが、基本古い洋楽がお好きなんだと思うんですけど、最近のアメリカのインディーズとかだとお好きなバンドも多いんじゃないかと思うのですが、いかがですか?

最近すごい面白いバンドいっぱいいますよね。西海岸のシーンもそうだし、東海岸も面白いバンド出てきて… 名前忘れちゃうんですけど(笑)。

——とりあえず、絶対お好きだろうなって思ってたのは、アリエル・ピンク。

アリエル・ピンク、大好き。4ADだっけ?

——そうです。

あの辺周りも結構いいし、最近好きなのはトロイモワとか。今までわりと打ち込みっぽかったけど、新しいやつ結構バンドっぽくていいんですよね。その辺共通して言えるのが、みんな曲がいんだよね。音が悪かろうが、アレンジがひどくても、全然聴けちゃうんです。そういう不思議な人たちが最近出てきてて、いいなあと思って。日本にもそういう人たちが出てくればいいのにってすごく思うんですけど、なかなか… 受け入れ態勢もなってないと思うんだけど(笑)。

——アリエルが4ADのイベントで来日したとき見に行ったんですけど…

あ、僕もそれ見に行った。

——やっぱり演奏はあんまり上手くないですよね。カーリー・ジラフの方が完成度は全然高い。

いやいや、そんなことないけど(笑)。

——でも、さっきおっしゃってたように、やっぱり曲がいいんですよね。

有名なところで言うと、MGMTとかもそうだけど、やっぱりみんなセンスよくて、面白いなって。

——そのときアリエルにインタビューをして、彼もやっぱり昔の音楽が好きで、彼に言わせると現代の音楽を取り巻く環境とか、音楽の質自体、どんどん悪くなってるようにしか思えないと。でも、それは時代の流れだから止めることはできないけど、できるだけその流れに抗って、「昔はこんなに良かった」っていうことを伝えていきたいって言ってたんですね。まあ、彼はちょっと極端ですけど、カーリー・ジラフの活動に少しでもそういう意識ってあったりしますか?

そういう気持ちもありつつ、それは僕にとって声を大にして伝えたいことではなくて、それは音で伝えたいというか、アリエル・ピンクもそうだと思うんだけど、その匂いを感じてくれればいっていうか、それがすべてではないっていう。でも、自分にとって音楽が輝いていた時代っていうのはやっぱりあって、その感覚を今でも持ち続けてることが、音楽を作るエネルギーになってる。僕の場合は、さっき言ったようなシーンもあるから、今の音楽に対してそんなに悲観的じゃないっていうか、今ってインターネットがあることによって、昔の曲を簡単に聴けたりするじゃないですか? そういうのって若い人たちの刺激になるから、すごくいいことだと思う。僕らが子供のころは、昔の曲を聴こうと思っても、レコ ード屋に探しに行ったりとか、情報が少なかったから苦労したんだけど… まあ、その苦労がいいっていう見方もあるけど、僕の場合は便利な方がいいと思ってるから(笑)。

——最近ロックン・ロールのシーンとかでは、若くして古いのに精通してるバンドが日本でも出てきてますよね。やっぱり若者はまずそういうところに飛びつくんだなって思いますけど。

そうだね。僕らが10代の頃も、60年代の音楽とかリアル・タイムじゃないけど、新しく聴こえたっていうか、自分たちが聴いたことないような曲だったわけで、そういう感覚は今の若い子にも絶対あるよね。捉え方はもちろん違うだろうけど、昔のものを新しいと思って聴く感覚はわかるから、その感覚はこれからも続いていくものっていうか、インターネットが普及したことで、それが特別なことじゃなくなって、昔だったら古いのを知ってると偉かったりしたけど、そういうのはもうどうでもいいっていうか。

——「新しい・古い」っていう価値観じゃなくて、「いい・悪い」で判断できるフラットな土壌ができたっていうことですよね。

うん、ホント好きか嫌いかだから、自分の部屋には好きな物しか置いてないっていう感覚に近いっていうか、自分の物差しでいいんだっていう。最近のアメリカのインディ—ズのバンドとかも… みんなセンスいいなっていうか(笑)、センスってなかなか磨けないじゃないですか? マネはできるけど、最終的にセンスがいいと「あっ! 」って引っ掛かってくるというか、そういう人たちがいっぱい出てくるのはいいなって。最近イギリスもちょこちょこ面白くなってきたし。一時期全然ダメだったけど(笑)。

——となると、日本ももっと面白くなるといいですよね。

なんかイマイチ… 例えば、ロック雑誌みたいな部分と、芸能寄りな人たちと、その二大派閥みたいな感じだけど、僕からするとどっちもどっちな感じがして(笑)。枝別れの仕方が間違ってる気がしてしょうがないっていうか、でも日本の音楽シーンって昔からそうで、その辺が根本的に変わんないなってすごく思う。

——オルタナティヴもあるっちゃあるけど、最近はいわゆる細分化ってやつで…

うん、もちろんそういう人たちもいると思うんだけど、いまひとつシーンとして確立しないっていうか、それが惜しいなって。

——シーンをひっくり返すようなことにはなかなかならないですよね…

もちろん、アメリカのインディ・シーンもひっくり返すようなシーンではないけど(笑)、だけど、あの空気感っていうか、そういうのがいいなって。だから、いつも日本人で対バンしたい人っていうのがあんまり思いつかなくて、もっといっぱいそういう人が出てくるといいなって… どっかで孤独な感じがします(笑)。

——次のアルバムのツアーのタイミングでは、一緒にやりたいと思うバンドが増えてるといいですね。実際、今まさに次のアルバムの制作中とのことですが、どんな作品になりそうですか?

三枚目ぐらいから、ちょっとライヴを意識するようになって、それがどっか片隅にありつつ曲を作ってたんですけど、今回また一回それをナシにして、自分が表現したい音っていうのを優先して作ってるんで… 結構支離滅裂ですね(笑)。

——(笑)。

曲によっては「これ同じ人がやってるの? 」みたいな。ただ僕が歌ってるので、統一感は自ずと出てくるだろうから、音としての統一感はあんまり意識してないっていう。最近出てきたアメリカのインディの影響も多分受けてて、アリエル・ピンクとか聴いて、「こんなめちゃくちゃでいいんだ」とか思って、結構愕然としたんで(笑)。でも、「この人ホントこういうのが好きなんだろうな」っていうのは伝わってきて、そういうのはやっぱりいいなって。自分の基本姿勢もそこにあるから、改めてそこをキチンと見つめようと思いましたね。

Curly Giraffeの全作品を高音質でコンプリートしよう!

PROFILE

カーリー・ジラフ / Curly Giraffe
学生時代からベーシストとして数々のバンドで活躍。美大卒業後、デザイナーとして仕事をするかたわら続けていたバンド活動が忙しくなり、音楽活動に専念。いくつかのバンドでメジャー・デビュー後も、ベーシストとしてのサポート、プロデュースなど多岐に活躍。とにかく、モノを作っているときが一番幸せと語る。コンセプチュアルなお洒落さと、ドロドロとした初期衝動が同居するカーリー・ジラフ ワールドを基本形に、さまざまなフィールドで発信中。2005年カーリー・ジラフとしての作品をリリース後、創作のペースはまったく衰えるところをみせず、コンスタントに作品をリリース。制作のほとんどすべてを一人でこなすアルバム制作のスタイルとは別に、ライヴにおいては永年の仲間たちである凄腕の曲者たちとともにセッションを繰り広げ各地のフェス等で観客を沸かしている。2009年4月、3rdアルバム『New Order』を発表。10月21日には、所縁のある女性ヴォーカリストを迎え、ライヴのメンバーと共にスタジオ録音したセルフ・カバー・アルバム『Thank You For Being A Friend』をリリース。同日、SHIBUYA-AXにてアルバムに参加参加した豪華ゲストをそのまま迎えたリリース・パーティを開催。その素晴らしさは、朝日新聞からmixiまで、さまざまな場所で伝説として語られている。 2010年4月、オリジナル・アルバムとしては4枚目となる『Idiots』をリリース。その後、初の全国ツアー。

Curly Giraffe Official Web

この記事の筆者
金子 厚武

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[インタヴュー] Curly Giraffe

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