BURGER NUDS、Good Dog Happy Men、Poet-type.M――門田匡陽の証言と振り返る「美学の歴史」

門田匡陽のソロ・プロジェクト、Poet-type.Mが1年を通して描くコンセプト・ミニ・アルバム『A Place, Drak & Dark』春夏秋冬4部作から、第3章となる秋盤『A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-』がリリースとなった。夏盤に続き共同サウンド・プロデュースに楢原英介(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE / YakYakYak)、プレイヤーには水野雅昭(Dr)と伊藤大地(Dr)、宇野剛史(Ba)とおなじみのメンバーをはじめ、東京芸術大学の在学生によるカルテットを迎えて生み出された全6曲。きたる10月24日、これまで門田がフロントマンをつとめてきたBURGER NUDS、Good Dog Happy Men、そしてPoet-type.Mの3マンで行うイベント「festival M.O.N-美学の勝利-」を直前に、今回は門田匡陽総特集ともいえる内容でお送りする。

Poet-type.M、コンセプト4部作から最新の秋盤配信

Poet-type.M / A Place, Dark & Dark -性器を無くしたアンドロイド-

【トラックリスト】01. だが、ワインは赫(Deep Red Wine)
02. あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)
03. ある日、街灯の下(Farewell, My Lovely)
04. 双子座のミステリー、孤児のシンパシー(GPS)
05. プリンスとプリンセス(Nursery Rhymes ep4)
06. 性器を無くしたアンドロイド(Dystopia)

【配信形態】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3

【配信価格】
アルバム価格 1,620円(税込) / 単曲 270円(税込)

INTERVIEW : 門田匡陽

名古屋と大阪での公演を終え、現在10月24日の東京公演を残すのみとなった「festival M.O.N-美学の勝利-」。門田がこれまで関わってきたBURGER NUDS、Good Dog Happy Men、Poet-type.Mが一堂に集結するこのイベントは、強い美学を持ち、それを実践せざるを得ない人々の生き方を祝福する、文字通りの「お祭り」なのである。そこで今回は、門田の証言を基に、彼の15年に渡る「美学の歴史」を振り返ってみた。彼の現在のプロジェクトであるPoet-type.Mは、全体主義的な傾向が強まり、同調圧力がはびこる今の日本を「夜しかない街」にたとえた4部作『A Place, Dark & Dark』を展開中だが、この作品の背景にある想いがBURGER NUDSやGood Dog Happy Menをやっていた頃から何ら変わりのないものであるということが、はっきりと伝わるのではないかと思う。

インタヴュー&文 : 金子厚武
写真 : 畑江彩美

BURGER NUDS


BURGER NUDS「ミナソコ」MV

中高の同級生だった門田匡陽、丸山潤、内田武瑠によってBURGER NUDSが結成されたのは1999年。下北沢を拠点に活動をスタートさせ、2001年にミニ・アルバム『LOW NAME』でインディーズ・デビューを飾っている。当時の下北沢はギター・ロックのブームが起きていて、BURGER NUDSとも交流があったBUMP OF CHICKENを筆頭に、Syrup16g、ART-SCHOOL、ACIDMANらが次々メジャーへと駆け上がっていった。しかし、BURGER NUDSは彼らと同じ道は進まずに、2003年12月にはインディーズのまま、当時新宿にあったリキッドルームでのワンマンを完売させるに至った。ここには彼らの「正しくなさ」を愛し、「やりたいことだけをやる」という精神が強く表れている。それは音楽的な部分もそうで、オルタナ、ブリットポップ、エモ、ネオアコなど、青春期に聴いてきた様々な音楽を3人だけのルールで混ぜ合わせ、歌詞にはアニメやゲームからの引用が多数登場したりと、つまり彼らはその名前通りの誇り高き「NUDS=オタク」だったのである。そしてそのあり方は、同調圧力がはびこる現代において、ひときわ輝いて見える。2004年の解散から10年、2014年に恵比寿へと移ったリキッドルームにて復活を果たし、現在新作に向けて新曲を鋭意制作中。

Syrup16g好きはBURGER NUDSも好きとか括られるのが当時不思議だった

――BURGER NUDSはBUMP OF CHICKENやSyrup16g、ART-SCHOOLなどと一緒に「00年前後の下北系ギターロックバンド」と見なされることが多いと思うのですが、活動時期こそ一緒だったものの、そのメンタリティはかなり独立したものでしたよね。

門田 : BURGER NUDSっていうバンドの特異性はそこにあると思ってます。確かに、00年前後の下北沢にはすごく勢いがあって、BUMP OF CHICKENがブレイクして、いわゆるギター・ロックのバンドがたくさん出てきたから、僕らもそこに深くコミットしているように見られてたんだけど、実はそんなことはまったくなくて。他のバンドとの交流もほとんどなかったし、他のバンドの音楽を聴くこともほとんどなかった。これは今やってる「A Place, Dark & Dark」にも通じる話で、なぜロックって音楽を自分が愛するようになったかって理由でもあるんですけど、やっぱりロックの特異性って、人と違うことなんですよ。クラスに40人いたら、「俺は他の39人とは違うんだ」ってずっと思ってたわけ。

――下北沢の中でも「俺は他とは違う」とずっと思っていたと。

門田 : あとは単純に、他のバンドと仲良くするのがすげえかっこ悪く見えたんだよね。打ち上げで話してる内容とか、本当にどうでも良い事ばっかだし。「情けないな」って。

――友達作りでバンドやってるわけじゃないと。

門田 : そうそう、そういう人たちとは一緒にいたくなくて、特にマルジュン(丸山)はそのアレルギーが強かった。BURGER NUDSの中だったら、俺が1番ソフトだったかもしれない。

――BURGER NUDSは結局メジャーに行くことなく解散をしました。それは「あえて拒否していた」とも「好きなようにやっていただけ」とも言えるのかと思います。

門田 : どっちもあるよね。『LOW NAME』を出して、いきなりレコード会社の人がすごい来るようになったの。あるライヴのときは1度に13社来たりとかもあったんだけど、俺は誰にも会わなかった。メジャーに行く気がなかったから、「すぐ帰ります」って。

――それって単純に興味がなかったんですか?

門田 : うん、なかった。やっぱり、今より牧歌的な時代だったんだよね。「明日食べるご飯のお金を稼がなくちゃ」って気持ちは全くないし、「好きなことを好きなようにやりたいだけ」っていうのが3人ともホントに強かったから、めんどくさい環境に行くのはホントに嫌だった。高校時代に俺と武瑠で組んでたバンドで、とある事務所にいたことが大きいかもしれない。「こういう曲を作ろう」ってディレクターがいちいち言ってきて、そういうのはすごくつまんないなって、そのとき思ったんです。

門田匡陽

――BURGER NUDSの音楽的な背景についても教えてください。

門田 : 最初に考えてたのは、あの頃流行ってたいわゆるエモって音楽だよね。The Get Up Kidsとか、Jimmy Eat Worldとか。ああいうのをやりたいって話してたんだけど、そのうち3人のやりたいことがバラバラになって行って。武瑠はいろんな国のチャイルド・ミュージックとかカントリーに興味があって、マルジュンはよりコアな、DCハードコアの方に行って、俺は最低限いい歌にしないと意味がないと思ってたから、バランスを取るのがすごく大変で、後半の2年くらいはなかなか曲ができない状態になっちゃってたんだよね。

――歌詞に関してはどうですか?

門田 : 当時は青春パンクが流行ってて、「弱い自分をそのまま受け入れる」とか「へなちょこだけど、でも前を向くんだ」みたいのが嫌いで嫌いでしょうがなかった。BURGER NUDSの歌詞で今でもこれが自分の気持ちだって思う1か所があって、それは「逆光」の〈退屈だとか 絶望だとか それすら嘘に思えるだけ〉。当時は退屈とか絶望が音楽の要素になり過ぎてる感じがして、そこにぶら下がって音楽をやりたくねえって常に思ってた。

――そういう言葉を使っていたから、いわゆる「鬱ロックの元祖」的な見られ方をすることもありますが、「そんなことはどうだっていい」って歌ってたわけですよね。

門田 : そうなんです。だからSyrup16g好きはBURGER NUDSも好きとか括られるのが当時不思議だった。

Good Dog Happy Men


Good Dog Happy Men「そして列車は行く」(LIVE)

ビル・フリゼールのアルバム・タイトルからバンド名をつけ、ジョン・ブライオンがプロデュースした『エターナル・サンシャイン』のサントラに盛り上がる中で結成されたGood Dog Happy Men。BURGER NUDSを解散した門田と内田、すでにSAKEROCKとしても活動していた伊藤大地と韮沢雄希というこちらも高校の同級生である4人は、ツインドラムという編成からして「正しくなさ」の美学を引き継いでいたとも言えるが、BURGER NUDSとは違ってメジャー・レーベル内に設立されたマネジメント事務所との契約を果たし、2枚のフル・アルバムをはじめとした複数の作品を残している。音楽的にはBURGER NUDSのオルタナ路線から一転、海外におけるアメリカーナ勢にも通じるルーツ路線へと向かったが、その特異な編成からして特定のジャンルに収まるようなものではなかった。それは「架空の街を設定する」というコンセプトとのリンクも大きく作用していて、2007年発表の『the GOLDENBELLCITY』は、現在の『A Place, Dark & Dark』の出発点だと言ってもいいだろう。DVD化もされている2008年のワンマンを経て、2009年に伊藤と韮沢が脱退。門田と内田の2人体制でアルバム『The Light』を発表するも、その後に内田の脱退が発表されて、活動休止状態に突入。「festival M.O.N」において、6年半ぶりとなる4人でのライヴを披露する。

当時から日本で1番いいバンドだと思ってたし、今もそう思うもん。Good Dog Happy Menほどのバンドはいないよ

――結成当時におけるバンドのビジョンはどんなものでしたか?

門田 : BURGER NUDSとは違う美しさの表現をしたいというか、「美しさ」によりフォーカスを当てたのがGood Dog Happy Men。結成は2004年で、やっぱり今よりも牧歌的な時代だった。2004年の東京に住んでいて、「不満がある」っていうのが馬鹿らしいというか、自由に楽しく生きていけるんだってことを表現する音楽があってもいいんじゃないかと思った。絶望とか退屈、不安よりも、どれだけ自分の想像力が無限大か、想像力を馬鹿にしないで生きていけるかっていう。なので、最初はBURGER NUDSをやってた人がGood Dog Happy Menをやることに賛否両論あって、BURGER NUDSが好きだった人は、最初Good Dog Happe Menを見て、みんなひいたもん。

――音楽性も、表現のベクトルも、ガラッと変わったわけですもんね。

門田 : でも、BURGER NUDSを解散させた意味をちゃんと伝える義務があるとも思ったんですよ。「俺がやりたいのはこういう音楽だから、BURGER NUDSじゃないじゃん」って。バンドが解散とか活動休止をして、同じような音楽を違うメンバーとやってたら、それってただの仲たがいでしょ?(笑) BURGER NUDSも俺とマルジュンの仲が悪くなったことには変わりないけど、その理由はホントに音楽的な部分だったから。

――音楽性に関する具体的なビジョンはどんなものでしたか?

門田 : 1950年代にロックが生まれたとしたら、そこから今に至るまでを全部やるバンドっていうのがテーマ。先進的な音楽って、ちゃんと線がないと意味がないんだよ。その文化の線上の1番先にいたいと思ったの。当時『JAPAN』の山崎(洋一郎)さんが「Good Dog Happy Menの新しさは、ルーツを踏まえて懐古してないところ」って言ってくれて、やっぱり見る目が確かだなって思ったのはよく覚えてる。

――くるりの岸田さんも当時のGood Dog Happy Menの支持者の一人だったと思うんですけど、2007年にGood Dog Happy Menは『the GOLDENBELLCITY』を、くるりは『ワルツを踊れ』を出してるんですよね。アウトプットの仕方は違うけど、線の先端にいるという意味では、時代感を共有していたように思います。

門田 : 『ワルツを踊れ』はすげえいいアルバムで、あれは悔しかった。でも、そう考えるとおもしろいね。そういうタイミングだったんだね。

――一方では、エモやハードコアがより日本的な発展を遂げて、9mm Parabellum Bulletとか凛として時雨とかが「突然変異系」って呼ばれたのもその頃なんですよね。「音楽って絶対ルーツがあるから、突然変異のわけないじゃん」って思ってましたけど、そことGood Dog Happy Menやくるりが並行してたっていうのも、今考えるとおもしろいなって。

門田 : そういうことでひとつ思うのは、俺はルーツがないミュージシャンだからこそ、ルーツをいつも探してるんだよね。ある特定のアーティストが好きで音楽をやってる人って、たまに羨ましく思う。だって、「自分はこのタイプ」ってカテゴライズできるわけでしょ? 俺はそれがまったくないんだ。でもね、俺はそれは日本人的な音楽の聴き方だと思ってて、だから、Good Dog Happy Menはすごく日本的なバンドだったと思う。

――どこかのジャンルや年代に帰属するわけではなく、歴史をひっくるめて表現する方法が日本的だと。

門田 : うん、あれが日本のロック・シーンにおけるひとつの解答だっていう、それくらいの自負を持ってやってた。当時から日本で1番いいバンドだと思ってたし、今もそう思うもん。Good Dog Happy Menほどのバンドはいないよ。

門田匡陽


門田匡陽「Dear My Teacher」MV

Good Dog Happy Menの活動休止から約1年のときを経て発表された、本名名義での唯一のソロ・アルバム『Nobody Knows My Name』。タイトルからして何とも門田らしいが、これまで友人関係をベースとしたバンドでのみ音楽を作り続けてきた門田が、初めてサポート・メンバーと共にアルバムを作るという経験は、とても大きなチャレンジであり、「孤独」をテーマに据えた本作は、彼のディスコグラフィーの中でもある意味では最も異質な、素の門田が垣間見える作品だと言えよう。レコーディングには盟友である伊藤大地のほか、Poet-type.Mでも活動を共にすることになる水野雅昭らが参加。また、自らのアイデンティティを模索し始めたまさにそのタイミングで震災が起きた意味は大きく、自身も体調を崩し活動においてのドクター・ストップを受けてしまう。結果、次作『White White White』のリリースまでには2年4か月という歳月を費やすことになるのだが、BURGER NUDSやGood Dog Happy Menの再録といったチャレンジも経て、この後門田はPoet-type.Mとしての活動を掴みとることになる。

俺はそういう意味ですごく強力なバンドをやってきたから、もう一生新しいバンドは組めない。そういう呪いをかけられてしまった(笑)

――Good Dog Happy Menの活動休止後、本名名義での唯一のアルバム『Nobody Knows My Name』がリリースされています。

門田 : 武瑠も大地も韮もそうだし、マルジュンもそうだけど、最近Good Dog Happy MenやBURGER NUDSのメンバーとよく一緒にいて思うのが、いわゆるフォーマットからズレることに対しての恐怖がまったくなくて、ズレればズレるほど気持ちいいし楽しい、そういう根本的なアナーキズムをみんなが持ってるから、たぶんずっと一緒にはいれないんだよね(笑)。だからたまに道が同じになったら、そのときに一緒に歩けばいい。俺はそういう意味ですごく強力なバンドをやってきたから、もう一生新しいバンドは組めない。そういう呪いをかけられてしまったなって思う(笑)。でも、音楽は続けたいから、ちゃんと孤独になって、ちゃんと寂しいなってことを表現したかった。それが『Nobody Knows My Name』のすべて。

――「孤独」の悲しみを表現すると同時に、それを肯定する作品でもありましたよね。

門田 : あとはわかりやすい攻撃性を取り戻したかったっていうのもある。春盤の「救えない。心から。(V.I.C.T.O.R.Y)」とかもそうだったけど、あえて攻撃的な言葉を使って、それをちゃんと歌えるのかっていう。Good Dog Happy Menで楽しい時間を過ごしてきた俺が、直接的に「許さない」とか「バカばっかりだ」とかって歌詞を歌えるのか。そういうある種の実験も自分の中ではありましたね。

――音楽的なビジョンに関してはいかがですか?

門田 : 初めて同時代のインディー・ミュージックをやろうと思った。だから、俺はあそこで追いつかれちゃってるよね。それに「festival M.O.N –美学の勝利-」をやって思ったのはGood Dog Happy Menはやっぱり早かったんだよね。だから、今ライヴでお客さんすげえ楽しそうなの。

――Good Dog Happy Menは当時のアメリカにおけるアメリカーナの流れともシンクロしてたと思うんですけど、2010年代に入って日本のインディー・シーンにもそこが入ってきて、だからこそ、今Good Dog Happy Menがより受けるっていうのはわかる気がします。

門田 : うん、そこはいろんな若いミュージシャンのおかげかもしれないね。今みんな一生懸命かっこいいことやろうとしてるじゃん? 俺たちが下北でやってた頃より絶対いいと思う。

――でも、『Nobody Knows My Name』はある意味追いつかれてしまったと。

門田 : そこがバンドじゃない限界だったのかもしれない。どうしても自分の想像を超えなかったんだよね。必要以上に音がスカスカだったりするのが、当時のインディー・ミュージックっぽい部分で、Clap Your Hands Say YeahとかThe Spinto Bandの感じ。The Drums以前っていうかね。でも、あのときはホント悪あがきをしてて、マスタリングでわざわざ音を引っ込めたりとかしてる(笑)。今聴くと、いろんな部分で自分の葛藤を感じるよね。

Poet-type.M


Poet-type.M「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」MV

2013年、「帰る場所のない美しさの翻訳」をテーマに掲げ、ソロ・プロジェクトPoet-type.Mが始動。「清く、正しく、美しく」を意味するデビュー・アルバム『White White White』には、BURGER NUDSのアルバム・タイトルをもじり、Good Dog Happy Menのメンバー全員が参加した「長い序章の終わり(Law Name)」という曲が収録されていて、言ってみれば、ここに「festival M.O.N」の開催が予告されていたとも言えるかもしれない。2015年に入ると、全体主義がはびこる今の日本を「夜しかない街」にたとえた4部作『A Place, Dark & Dark』を始動し、これまで『観た事のないものを好きなだけ』(春盤)、『ダイヤモンドは傷つかない』(夏盤)を発表。そして、新たな試みで生のストリングスを取り入れるなど、これまでとは作風を変えた最新作『性器を無くしたアンドロイド』(秋盤)が10月21日にリリースされる。

迎合しない、同調しないっていう歩き方をしてきたからこそのモノがやっぱりあるよね

――『Nobody Knows My Name』のリリースは2011年の6月でしたが、制作は震災よりも前に行われていたわけですよね?

門田 : そう、よく覚えてるんだけど、俺1月30日が誕生日で、1月31日からレコーディングが始まって、あれは1週間ぐらいで完成させてるから、震災前には終わってて、震災後は自分がやる音楽ではなくなったんだよね。俺が震災で学んだのは、みんながそれぞれの場所で本気を出すってことだけ。みんながみんな社会のことや政治のことを歌わなくてもいい。今は表現者がそういうことを歌わないとって感じになってるのがすごく嫌なんだ、それこそ全体主義的で。俺はそこと音楽は別のものであってほしいし、浸食されたくない。

――じゃあ、自分がやるべきことは何なのかと考えて始まったのがPoet-type.Mだった。『White White White』のリリース時には、「帰る場所のない美しさの翻訳」というテーマも掲げられていました。

門田 : 一言で言うと、もっとみんな気楽に考えようぜってことだよね。音楽もそうだし、生きることもそうだし、きっとよくなる。だって、こんな何もないところにも、いろんな美しさがあるじゃんかっていう、『White White White』はそれが言いたかった。あれを今聴くと、当時の東京の風景がすごく思い浮かぶんだよね。『Nobody Knows My Name』と『White White White』の間には、自分の活動の中では最も長い2年4か月っていう空白の期間があって。その中でいろんなことをやった上での答えがあれだった。

――『White White White』でPoet-type.Mとしてのベーシックを打ち出した上で、2014年はインプットとアウトプットを繰り返し、音楽的にはより同時代性が強く、より広くに届けることを意識した『A Place, Dark & Dark』が始まります。

門田 : 春盤と夏盤に関してはそういう意識が強くて、言うならば、『Nobody Knows My Name』の作り方だよね。「今をやる」って感覚。でも、秋盤は今までの2枚とは明らかに違ってて、今思えば、これまで門田匡陽がPoet-type.Mに対して、どこかで気を使っていたという言い方もできるかもしれない。「Poet-type.Mってこうでしょ」っていう。でも、やっぱり俺はそういう枠からはこぼれちゃうんだよね。だから、今回表現者としてわがままになったと俺は思ってる。前の2枚が窮屈だったかっていうとそんなことはないし、まだこれまでのやり方でもやれることはいっぱいあるんだけど、今のタイミングじゃないとこういう1枚はできないと思った。こういうことが言いたい、だから、こういう音楽をやるしかない。2015年の今しかリアリティを持ってやれないと思って、そっちに舵を切ってしまった。

――実際、秋盤の背景にはどんな出来事があったのでしょうか?

門田 : 今回のテーマのひとつが「別れ」で、夏前からいろんなことがあったんだけど、近い身内に病気の人が出たってことと、11年連れ添ったルイージっていう猫が死んでしまって、このふたつが自分の中でここ10年ないくらいのショックで。Good Dog Happy Menの『the GOLDENBELLCITY』は「今が永遠に続く」っていう感覚で作ってたんだけど、俺つい最近までその感覚が続いてた。こう言うとバカみたいだけど、今年の夏まで俺自分が35歳だってちゃんと認識できていなかったんだよね(笑)。意識したことがなかったんだろうけど、今年の夏に「俺、35歳なんだ」とハッとして。そうしたら「あと何年生きれるんだろう? 」って考えたし、「今が永遠じゃないんだ」って思わされて。「いつか来る別れ」っていうのもチラチラ見せられたし、そういう人生のタームになってるんだなっていうのがすごくショックで。

――僕も同い年なので、その感覚はよくわかります。

門田 : 「別れ」って、相手を愛してれば愛してるほど寂しいじゃない? それがこの10年の中でひとつの点として刻まれてしまったんだけど、でもルイージのことはこれからも一生愛し続けるだろうなってわかるわけ。その自分の気持ちを肯定したいと思ったから、「別れ」を歌ってるんだけど、絶対ポップでキラキラした曲にしてやろうっていう気持ちがあって、それが今回真ん中の4曲に表れてる。別れについて歌った4曲なんだけど、俺の歴史上こんなポップな並びの4曲はないもんね。

――そういった秋盤ならではのポイントがありつつ、『A Place, Dark & Dark』を通じてのテーマである「アンチ全体主義」のメッセージも入っているわけですよね?

門田 : 今回のジャケットの半分くらいを覆ってる月は、まさに全体主義の表れで。Good Do Happy Menの歌詞で月が出てくるときは、大体ユーモラスで、みんなを見守ってくれる優しい存在だった。箱舟に乗り遅れたウミガメを見下ろしながらマルボロを吸ってたり(「Nightmare's Beginning」)、「Sweet heart of moon」もそうだよね。〈蝙蝠橋を夜のパトロール〉とか、月はいつも見守っててくれた。でも今回の月は脅迫的に見下ろしてる。モヤッとした気持ちの悪い全体主義の象徴になってしまった。

――この物語は冬盤でどのような結末を迎えるのでしょうか?

門田 : 正直、まだどっちにも行けるんだよね。この物語を当初の予定通り4枚の作品に閉じ込めるのか、それともそういうことではないのか。終わるのか終わらないのか、終わらせるのか終わらせないのか、正直まだ答えは自分でも出てないんです。

――現在「festival M.O.N ?美学の勝利-」の最初の2本が終わった段階ですが、どんな手応えを感じていますか?

門田 : 今ひとつ言えるのは、やっぱりバンドってすげえなってことで、残念なことにもう俺は新しいバンドは組めないなって、改めて感じてる。Good Dog Happy Menはもう絶対超えられない。BURGER NUDSはBURGER NUDSで違う飛び抜け方があるから、未来に希望は持ってるんだけど、これから新しく何かを始めて、Good Dog Happy Menを超えられるとはとても思えない。大地とも話してたんだけど、ひさしぶりにやってもまったく懐かしさがないし、置きに行く感じもまったくないの。今、Good Dog Happy Menの曲を「新曲です」ってやっても通用すると思うし、それは時代に寄りかかってないってことだと思う。20年前にやっても、40年後にやっても変わらないんじゃないかな。

――途中でおっしゃっていた文化の線が、今もまだちゃんと続いているってことでしょうね。では最後に、Poet-type.Mの今後についてはどうお考えですか?

門田 : ひとつは継続だよね。15年間、俺はギター・ロックの端っこをずっと歩いてきたの。望む望まないにかかわらず、メインストリームになったことはないし、誰もが知ってる曲なんて1曲もないんだけど、まだこうやって音楽をみんなに聴いてもらえる環境にいれるっていうのは、とても感謝してる。ハタから見れば不器用だとは思うけど迎合しない、同調しないっていう歩き方をしてきたからこそのモノがやっぱりあるよね。だからPoet-type.Mもそうやって続けていくと思う。あとは願わくば、『A Place, Dark & Dark』に住んでる人たちに、『the GOLDENBELLCITY』の住民たちと同じくらいの幸せな結末を与えてあげられたらいいかな。

LIVE INFORMATION

festival M.O.N-美学の勝利-
2015年10月24日(土)@恵比寿LIQUIDROOM
出演 : Poet-type.M / BURGER NUDS / Good Dog Happy Men
開場 : 17:00 / 開演 18:00
チケット : ¥3,800(税込)+D別
各プレイガイドにて発売中

※スプリット・シングル『3 Way Spirit festival M.O.N -美学の勝利-』が会場限定発売
各出演者の未発表音源を収録。数量限定によりなくなり次第終了。

>>『festival M.O.N-美学の勝利-』特設サイト

PROFILE

Poet-type.M / 門田匡陽

1980年東京都生まれ。

1999年より3ピース・ロック・バンド「BURGER NUDS」のメンバーとして活動。新宿リキッドルームを完売させる勢いを持ちながら2004年解散。同年、ファンタジックで独創的な世界観を持つツイン・ドラムの4ピース・ロック・バンド「Good Dog Happy Men」を結成。数々の大型フェスに出演し、多くのファンを魅了させるが2010年にメンバーの脱退を受けて活動休止。

2011年、門田匡陽として初のソロ・アルバム『Nobody Knows My Name』をリリース。その後わずかな休息を経て、2013年4月1日よりソロ名義を「Poet-type.M」に変更し活動を再開。同年10月2日に初のフル・アルバム『White White White』のリリース。

2014年6月21日リキッドルームにてBURGER NUDS再結成、Poet-type.Mと並行して活動開始。

2015年1月31日に独演会「A Place, Dark & Dark -prologue-」を開催。「夜しかない街の物語」というコンセプトを掲げ演奏を披露。そして同コンセプトを反映した4部作となる『A Place, Dark & Dark』を「春夏秋冬」でリリースしていく事を発表し、四季に合わせ、春盤『A Place, Dark & Dark - 観た事のないものを好きなだけ -』(旅立ち)、夏盤『A Place, Dark & Dark - ダイヤモンドは傷つかない -』(出会い)とリリースし、10月21日は待望の秋盤『A Place, Dark & Dark - 性器を無くしたアンドロイド -』のリリースが決定。

また、門田主催「festival M.O.N - 美学の勝利 -」を名阪で開催し、ファイナル公演が10月24日LIQUID ROOM ebisuにて控えている。

>>Poet-type.M Official HP

この記事の筆者
金子 厚武

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4人組インストゥルメンタル・ロック・バンドOVUMが、5年半ぶりとなるフルアルバム『ascension』をリリース&インタヴュー!

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リサ=オフリー、新作アルバム『誰にも言えない』より「翌朝」「カタルシス」を先行フリーダウンロード

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LITE 4th Album『Installation』リリース&インタビュー

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石田愛実(THE★米騒動)×津野米咲(赤い公園) 対談

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南壽あさ子『フランネル』

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triola『Unstring,string』

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きのこ帝国 デビュー・アルバム『渦になる』インタビュー

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The Flickers『WAVEMENT』インタビュー

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SA.RI.NA『光-HIKARI-』インタビュー

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クラムボン FUJI ROCK FESTIVAL'09 LIVE REPORT

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THE BEACHES 『Hi Heel』 インタビュー

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JOAN OF ARC『LIFE LIKE』

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末光篤mini Album『From Your Pianist』

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LITE『arch』武田信幸(LITE)×キャロライン・ラフキン 対談

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unsuspected monogram シングル『kotoba _ buzz』リリース&インタビュー

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松井省悟(空中ループ)×成山剛(sleepy.ab)対談

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MO'SOME TONEBENDERの初公開楽曲をフリー・ダウンロード開始!

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末光篤 3年振りに活動開始&インタビュー

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入江良介(Veni Vidi Vicious)×武井優心(Czecho No Republic) 対談

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小林祐介(THE NOVEMBERS)×下津光史(踊ってばかりの国)対談!

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Curly Giraffeの全アルバムを高音質で配信開始 & インタビュー

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ショピン『春のソノタ』を高音質DSD音源で配信!

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トレモロループ トレモロイド・小林陽介×空中ループ・松井省悟の対談

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石毛輝『from my bedroom』フリー・ダウンロード第2弾&インタビュー後編

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石毛輝『from my bedroom』先行販売開始&フリー・ダウンロード! インタビュー前編

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蔡忠浩インタビュー! 初ソロ作&オトトイ限定高音質シングル配信

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世武裕子「恋するリリー」高音質で先行配信&インタビュー

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アナログフィッシュ『Life Goes On』インタビュー

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ツジコノリコ『penguin2009』remixes

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bonobos「夕景スケープ」高音質で先行配信 インタビュー

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小島麻由美『アラベスク』

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