1年やってきて確信につながったのかな
──6月11日のライヴの選曲は、でんぱ組.incの古い楽曲から最新曲までを並べて、その歴史を踏まえていこうという強い意志を感じました。今、そうしたモードになっているのはなぜでしょうか?
相沢 : 最初にYumiko先生の中で決まっていたみたいで。今のでんぱ組なら、原点の曲も今のみんならしく歌えるんじゃないかっていうことを予想してくれていたみたいで。
藤咲 : 新体制になって、「でんぱ組らしくない」とか言われたりする状況下で、新メンバーの子たちも「大丈夫かな」とか自信がないなか、1年やってきて確信につながったのかなと思っていて。独白も、でんぱ組が間違ってなかったんだなっていうのを、つなげるためにやったのかなって私は思っていますね。
──独白で思い出したんですけど、ぺろりん(鹿目凜)が家族やアスペルガーのことをブログで書いたじゃないですか。あれはメンバーは事前に聞いていたんですか?
相沢 : ぺろりんは先に言ってくれてましたね。
藤咲 : 彼女自身も「好感Daybook♡」や「初体験」に考えさせられたって言っていて。で、私はもともとぺろりんとあんまり馬が合わないというか、なんか仲良くなれなかったんですよね。それって私、ずっとすごいコンプレックスだったんです。ぺろりんにずっとうらやましいって思って。考えてない風に見えるけど実はちゃんと考えてて、怖いもの知らずというか、「なんでそんなに元気でいられるんだろう?」って。絶対にへこたれないというか、絶対に次の日に元気になってることに、ずっと憧れてたんですよね。でも、気持ち的にはぺろりんのことを認められないし。でも、今年に入ってすごいよくしゃべるようにはなったんです。ぺろりんから「今日話さない?」とか「この後ご飯行かない?」っていうのを絶対に誘ってくれるんですよね。自分もそういうチャンスをくれてすごい感謝してるし、そこで少しずつ腹割ってしゃべるようになって(笑)。そのときに「アスペルガーや家族の話を独白のときに話そうかな、どう思う?」って相談を受けて。ぺろりんがそれを言えるような度胸がちゃんとついたんだなって、ちょっと安心したんですよね。一緒に強くなってこうねって、信頼してくれてるんだなって思いました。

──藤咲さん自身も、自分のことをすごく客観的に語ってるし、すごいなと思います。
相沢 : ピンキー自身もきっと変わってるんですよ。
藤咲 : ぺろりんが変わって、それに感化されて私も変われたところがあるので感謝してますね。
相沢 : 北海道のときのピンキーもめちゃくちゃよくて。上の子たちがなんとなく目立っちゃってたけど、ピンキーが一生懸命考えてでんぱ組を引っ張っていくみたいなのをやれるようになってきてるんだなっていうのを感じて、私は「じゃあおんぶにだっこで」みたいに(笑)、ちょっと肩の力を抜かせていただいて、みたいな気持ちになりました。でも、それを言ったら「りさちゃん辞めちゃうんだ!」みたいな。なんかすぐ卒業させられそうになるんだけど、やめて!(笑)
──でも、このタイミングでそう思えるのは大きな変化ですよね。
相沢 : 私、チームを引っ張っていくよりは、支えるほうが得意だなって自分でも思うタイプだし、先頭を切って走ってくる人ではなくて、ちょっとその辺に落ちてるものとかに気づいて拾ってけるタイプなので。せっかくチームなんだから、得意なことをやるほうが能力的には良いほうに向くんだろうなって感じられて、いいなと思いますね。
──でんぱ組.incっていうチームのそれぞれが主人公であるわけですよね。っていうところから、主人公を意味する「プロタゴニスト」の話をさせてください。作詞作曲は、ツーマン・ライブもした眉村ちあきさん。あまり他人に楽曲提供をしない眉村さんが、ももいろクローバーZに次いででんぱ組.incに楽曲提供したわけですが、傷つけ合う「僕」と「君」を描くこの曲に、どう臨みましたか?
相沢 : 眉村さんのでんぱ組に対する愛情を感じて、嬉しいです。でんぱ組が長いことやっていたからこそ、でんぱ組のことをもともと知っていた方が同じフィールドにやってきて愛情を持っていてくれて、それを作品にして私たちにくれてるアルバムなんですよね。自分の手から大事なものが離れるって怖いと思うんですよね。それをくれたってことに対して、命みたいなものをくれたんだなと思ったら、すごく感動して。

藤咲 : ツーマン・ライブの続きという気がして、愛に溢れていて感動しました。歌詞に「思惑通り にはいかないよ / だって 僕の⾔葉は / 傷をつけるために磨いてきたわけじゃない」ってあって、言葉が武器になってしまうときもあるので、「思っていること一緒!」と思って(笑)。大人数になって埋もれちゃうんじゃないかな、って誰か思ってるかもしれないし、でもやっぱり「君と僕で / 主人公」。こんな曲を歌わせてもらえるのは光栄ですよね。眉村さん、愛の人ですよね。
チームで大きなことを成し遂げてみたいな
──『DEMPARK!!!』は、2021年2月16日以降のでんぱ組.incの歩みが記録されたアルバムです。できあがってみていかがですか?
藤咲 : 頭から聴いて思ったのは、めちゃくちゃ歌詞で「私」って言ってるんですよ。すごく自分を大事にしてるなって思ったんですよね。世の中の状況が不安定だし、自分のことよりも他者に対してすごく心配になってしまうけど、でも第一にやっぱり自分が大事……って言うと自己愛が高いみたいに言われるかもしれないけど、自分のことって大事だなってすごい思って。他者を救うってことは自分も救うってことだし、「生きててほしい」って思うのも、自分に対しても「生きててほしい」って願うべきだなって。だから自分を大事にするアルバムなのかなって思いました。聴いて、循環させて、自分にもいれるみたいな。
相沢 : 「DEMPARK」って、ひとつの場所じゃなくて、それぞれ100人分あったんだなって思って。曲だけを散り散りに聴いてたら、ファンタジーな世界観で楽しくて明るくてみたいな印象だったかもしれないんですけど、まとめて聴いたときに、相乗効果で全然印象が違ったりして。「初体験」もライヴでやったのを聴いてから、もう一回アルバムで聴くと、もっと曲のパワーを実感できて。それに、今のでんぱ組.incの状況が、作家の方々にも通じてるなと思ってて。今のでんぱ組.incを見放さずにきてくれたり。「ドキ+ワク=パレード」では、ピンキーの遺伝子に組み込まれてる浅倉大介さんのサウンドが聴けたり。本当に今のメンバーだから歌えた曲をこんなに預けてもらえて、我々に表現する機会をもらえたってことが、本当に「愛」ですね。
藤咲 : mekakusheさんも「W.W.D」と「サクラあっぱれーしょん」とか当時すごい励まされてたそうなんです。レコーディングのとき、すごい緊張して立ち会いしてくださったんです。ちゃんとつながってるんだなって。
相沢 : 私ひとりじゃ歌えない曲もあるし、自分の成長にもなったし、ツアーとアルバムを通して、でんぱ組.incが今、改めて成長期に突入したような感覚があるんです。もちろんまだまだ悩んだりとか、自分の気持ちがコントロールできないとか、体調とか、いろんなことがあるかもしれないけど、でもチームで大きなことを成し遂げてみたいなっていう希望を、10年やってて改めて感じられるグループって「すげえ」と思って。アイドルの成長期っていちばん面白いタイミングだと思うので、今からでもでんぱ組.incをチェックしてもらえたら嬉しいです。
編集 : 田尻菜穂子
おすすめINTERVIEW
相沢梨紗 × ゆっきゅん対談(2021年12月24日掲載)
チャペの泉 from でんぱ組.inc(藤咲彩音、愛川こずえ、小鳩りあ)インタビュー(2021年09月25日掲載)
もふくちゃん、YGQ、Yumiko先生インタヴュー(2021年03月16日掲載)
でんぱ組.inc DISCOGRAPHY
他全楽曲は こちら
でんぱ組.inc LIVE INFORMATION
でんぱ組.inc全国ツアー2022 「電電電電電電電電電!!!!!!!!!」
2022年10月1日(土)@新潟・LOTS
2022年10月29日(土)@名古屋・THE BOTTOM LINE
2022年11月3日(木祝)@宮崎・LAZARUS
2022年11月4日(金)@鹿児島・CAPARVO HALL
2022年11月5日(土)@福岡・DRUM LOGOS
2022年11月6日(日)@長崎・DRUM Be-7
2022年11月11日(金)@京都・KYOTO MUSE
2022年11月12日(土)@神戸・VARIT.
2022年11月13日(日)@和歌山・SHELTER
2022年11月27日(日)@東京・Stellar Ball
2022年12月4日(日)@札幌・PENNY LANE24
チケット発売は後日発表
PROFILE
2007年にオープンしたライブ&バー「秋葉原ディアステージ」で働く、アニメ・漫画・ゲームなど、自分の趣味に特化したコアなオタクのメンバーを中心に結成。「萌えキュンソングを世界にお届け」のキャッチフレーズで、秋葉原を中心に2010年頃より活動を本格始動。数々のメンバーチェンジを経て現在は古川未鈴、相沢梨紗、藤咲彩音、鹿目凛、愛川こずえ、天沢璃人、小鳩りあ、空野青空、高咲陽菜の9人組ユニット。
アイドルとしては異例の東京コレクションでMIKIOSAKABEとのコラボレーション・ライブ出演や、ロシアでの村上隆個展でのオープニングアクト、蜷川美花作品へのモデル出演をはじめとして、様々なクリエイターとのコラボレーションを活発に展開し、国内のみならず海外からも注目を集め、台北やジャカルタでのファッションイベントにも参加。2013年にはJAPAN EXPOに日本代表として出演。2014年度は東アジア文化都市2014横浜親善大使を務めた。2015年はワールドツアーも敢行。MTV「ワールド・ワイド・アクト賞」の日本部門「ベスト・ジャパン・アクト」のウィナーに。今までに日本武道館や代々木第一体育館、幕張メッセなどアリーナクラスのライブも長年に渡って行なってきた。 2020年にはコロナ禍の中、SNS上での呼びかけに応じたクリエイターがたった8日間で作詞・作曲・編曲・演奏・MV制作までを行った「なんと!世界公認 引きこもり」を発表し、前向きなメッセージをファンに届けた。2021年11月16日には、でんぱ組.incの代表曲「Future Diver」リリース10周年をむかえた。