Gang Gang Dance来日公演 ライブレポ
9月24日(水)@渋谷O-nest
ニューヨークのダウンタウンがあまりに家賃高騰し、もはやアンダーグラウンドなミュージシャンが住む場所ではなくなってしまった。イースト・ヴィレッジあたりで蠢いていた尖鋭的なシーンも霧散・・・と思いきや、かわりに年々、面白くなってきたのがイースト・リヴァーを隔てたブルックリンの音楽シーン。多くのミュージシャンがブルックリンに住むようになり、そこで新しい化学反応が生まれているようなのだ。 アニマル・コレクティヴやバトルズの周辺、あるいはザ・ナショナル、スフィアン・スティーヴンスといったあたりも現在のブルックリンの顔となっているが、ここに来て目立つようになったのが、アメリカのバンドとは思えないような変態エキゾ・センスを感じさせるバンド群。そして、ダーティー・プロジェクターズと並んで、その筆頭に上げられるのがギャング・ギャング・ダンスだ。
2001年結成。来日は二度目だが、今回は新作「SAINT DYMPHNA」のリリースに合わせて全国で七公演。会場では、どこの国のものか分からないオリエンタル歌謡がずっとSEとして流れている。たぶん、これも彼ら自身の指定による演出だろう。ヴォーカルのリジー・ボウガツォスはギリシャ系らしいが、ともかく、GGDの音楽にはエキゾチシズムへの憧憬がべったりと貼り付いている。しかし、それはどこにも漂着しない。どこまで行ってもカオスのまま。ニューウェイヴやディスコ、ダブやレゲエ、グライムやダブステップなどとも溶融しながら、極彩色の荒野をさまよい続ける。 4人のメンバーの誰一人として、ありきたりな音は出さない。全員が変態。が、ダンス・ビートだけは決して失わない。ライヴではよりダンス・バンドとしての輪郭がハッキリしてくる。
逆に言うと、聞く者の脳味噌をぐちょんぐちょんに掻き回し、気持ち悪くなる寸前のエクスタシーに導く力は、レコードの方が強いかもしれない。終演後は、レコードの方が良い、ライヴの方が良い、という意見が、かなり真っ二つに分かれたようだった。 が、今回のライヴを見てから、新作を聞き直してみると、奇妙にとっちらかっていた音が、少しづつ整列して聞こえ始めたり。どちらも面白い。デタラメなバンドだが、デタラメで終わらないためのことを着実に押し進めているバンドにも思える。それもまた、今のブルックリンのバンドらしいたたずまいかもしれない。(text by BB)