レコミュニに提唱するHQD(ハイ・クォリティー・ダウンロード)、24bit/48kのWAVファイルによる配信の第一弾となるのが、の新曲「NOW!!!」。いよいよ、そのリリースの日が来ました。2年ぶりの新曲をマスター・クォリティーでファンに直送するという、このクラムボンの衝撃的なニュースは様々なアーティストからの反応を引き出し、9月以後は続々と同様のリリースが続くことに。9月1日にはのミニ・アルバムの24/48WAVでのリリースも決定しています。そんな中、クラムボンのミトとの鈴木慶一の対談が実現。レコード作りに対する深い知識を備えた二人の会話は、マニアックな中にも、音楽への愛情がじわりと伝わります。(司会/構成 高橋健太郎)

鈴木慶一×ミト

ミト×鈴木慶一


—今回、の「NOW!!!」は新曲をマスター・クォリティーの24/48でいきなり配信するんですけれども、多分、日本のポップ・グループでこんなことをやるのはクラムボンが初めてだと思うんですよ。

鈴木慶一(以下 K) : 聞いたことないね。先やられちゃったなあ。
ミト(以下 M) : 何言ってるんですか、がおこなってきた初めては一杯あるじゃないですか、他にも。
K : これはマスターが24/48なの?
M : マスターっていうか、レコーディングのフォーマットが24/48ですね。24/96って時代もあったんですけれど、そこまで行くとワカンナイすね、僕には。24/48が絶対に良いと思っている訳でもなくて、テクノとかだったら、16/44.1の方が良かったりもしますよ。
K : 俺達はDSDマスターもやってみたけれど、結局、やめたね。曲によっては凄く良い。室内学的なものは良いけれども、ただ、ロックビートにはあまり向いていないかもしれない。で、の場合、メンバーが各自、曲書いて、各自、サウンドも好きに作って、それを最後にマスタリングで整えちゃう。すると、結局、そんなに差異が出なかったりもする。
M : CDという小さい箱に入れちゃうと?
K : その箱自体もメンバーによって小さいのが好きな人もいるし、でかいのが好きな人がいるしね。



—CDって誰が何を作っても同じ箱に詰めなきゃいけないですよね。アナログ・レコードの頃はEPとLPで音量が違うのは当たり前だったし、そこでヴォリュームをいじればいいだけだった。

K : そうだね。でも、レコードの時もなるべく詰め込みたいわけじゃん。カッティングで、これ以上は針飛びします、と言われながら、そこをなんとかとやってもらっていた。その前に、6ミリのアナログ・テープにマスターを録る時にすでに、かなりぶっこんでいるしね。曽我部くんとやった私のソロ・アルバムは前回も今回もマスターは実は6ミリなんだ。で、ヴァイナル時代は突っ込んでいるといっても、エフェクトとしての突っ込みじゃなかったから、一応、良識あるところで止めてはいた訳だけれど、曽我部くんの場合はエフェクトとして6ミリを使っているから、本当のぎりぎりまでやる。これが難しいんだよ。曲によっては、部分的に歪んだりする。キック一カ所だけ、どうしても歪むとか、すんなりはいかない。
M : テープは何を使ったんですか?
K : 何だったかな? 2、3種類のテープを試して、最終的に何を使ったかは、オレは確認していないな。

—そのアナログ・マスターからさらにCDやSACDのためにマスタリングしているんですね。

K : そう、でも、マスタリングっていうのは、いまだに理解できないところが一杯あるね。エンジニアがミックスした時点で満足している訳だよ、我々は。これが最高だと。で、マスタリングということをするなら、それよりちょっと良くならないと困る。まあ、第三者が入って、この曲は低音が出過ぎだとか、ここだけでっぱっているとか、そういう部分を調整するために必要なのかなと納得する。
M : 僕もマスタリングはいろんな人に頼むのが好きで、一時期はハードディスクもってイギリス行ったりしてやってたんですよ。でも、最近は自分でもできるじゃないですか。だったら自分でやっちゃうのが良いのかなとも思ったり。
K : ソフトでできてしまうからね。
M : そう、マスタリング・スーツみたいのでボタンをぽちっと押せばバーンと。安いソフトでもたくさんありますからね。
K : レベル上げるだけだったら誰でもできちゃう訳だ。
M : でも気づいたら、自分達の音源はむしろレベル下がってるくらいでもいいんじゃないかと。違和感がある方が、普通のものとは違うと分かってくれるんじゃないかと思ったり。みんなが同じになっているところで、同じじゃなくする。それによって、聞き手にちょっとテンションを与えたいなと。
K : それは今回、曲を作っている時にすでに考えていたの?
M : いや、こういうことになったのは、たまたまだったんです。僕がクラシックを聴くイヴェントをやっていて、そこでうちらのマスタリングしてない24/48のファイルをかけたことがあったんですよ。そうしたら、お客さんもすごく反応して、うわあ、こんな臨場感が違うんだって。そこに健太郎さんも来ていて、しかも、偶然その日、レコミュニの24/48の企画会議の帰りだったという。


—それで、今回のの場合は24/48のミックス・マスターをマスタリングはしないで、そのまま配信するんです。

K : マスタリングしてCDになると、確実にがっかりはするんだ。悪いがっかり感じゃあないけれども、こういうことなんだろうなあ、と。我々がスタジオで聞いている音とは違う。今回はそれをそのまま出したということだね。
M : そうですね。で、運が良かったのは24/48のWAVならば、iTunesで再生可能じゃないですか。そうじゃなかったら厳しかったとは思いますね。こないだ、試聴会みたいなことをやったんですけれど、そこでもボディソニックを感じてくれた人が結構いたみたいなんですよね。よりライヴに近いというか。アキバの音楽とか、ちっちゃいハコに分かりやすい要素だけ鬼のように入れるから、街中でビックカメラでかかってもヤマギワでもかかってても、ちゃんと聞こえてくる。ただ、そこからこぼれたところ、ボディソニックとか、倍音とか、ライヴで感じられる音楽の説得力みたいなものはない。あれはあれでいいと思うんですけれど、それでカルチャーができると思うから。でもそればっかりではね。
K : みんな箱のサイズはお好きなように、ということだな。それで俺は5.1の方に行っちゃった訳だけれど。
M : 僕達はアゲインストのためにやっているんじゃないんですよ。テンションをあげてやるというだけ。
K : 音楽によって向き不向きはあるからね。mp3は駄目だよ、とかそういうことじゃない。我々はこれが最高だという音を作って、その音を再現したいんだよ。それはもう祈りみたいなもんだよ。こうやって聴いて欲しいというお願いみたいなもので、でも各自の家庭でどうやって聴かれているのかまでは分からない。
M : 24/48の音を聞いて、そこにはよりライヴっぽい肌触りがあるから、結果、ライヴに来てくれれば嬉しいと思うんですよね。
K : それが素晴らしいことだね。別に聞く人は24/48って意識で聞いてなくてもいいんだよ。
M : まさにそうです。こっちの方がライヴっぽいとか、そういう説明で良いのかな。
K : ライヴのフリーケンシー、あれはオーディオでは再生出来ない。私の場合は録音物至上主義みたいのがあって、ずっとレコードを偏愛してきたんだけれど、途中でそれがCDになって、そして、これからはパッケージがなくなっていく。もうパッケージはないものはなくてもいい、とは思うんだ。で、これは絶対に生き残るなと思うのはライヴだね。
M : 録音物がいつのまにかユースフルであることが前提になってしまっていて、でも、これからは原点に戻って、よりライヴに近いものになっていくのかもしれないですね。

ミト×高橋健太郎×鈴木慶一

クラムボンの新曲「NOW!!! 」遂に発売!!!

新曲「NOW!!!」が遂に発売しました。この「NOW!!!」はクラムボンのオリジナルの新曲としては2年ぶりのリリース。今年のFUJI ROCK FESTIVAL、先日の「Re-clammbon tour」やスタジオ・コーストの「NEUTRAL NATION 2009」でも唯一の新曲として披露された超名曲です。

→購入はこちらからどうぞ

24bit48KHz高音質配信リリース予定アーティスト

  • 8/16(日) GONTITI
  • 9/1(火) moonriders
  • 9/1(火) 朝日美穂
  • 9/16(水) SOUR

→24bit/48KHzとは?

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クラムボン
moonriders



この記事の筆者
高橋 健太郎 (Reviewed by Kentaro Takahashi)

本名:高橋健太郎 プロデューサー、ジャーナリスト、選曲家など。高橋健太郎 文筆家/音楽制作者 評論集「ポップミュージックのゆくえ〜音楽の未来に蘇るもの」がアルテスパブリッシングから発売中。http://tinyurl.com/2g72u5e twitterアカウントは@kentarotakahash

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