Sean Oshima──ノンフィクションな表現を貫くソロ・シンガー

数多くいるアーティストのなかから編集部がグッときたアーティストを取り上げる新企画〈OTOTOY Search〉。早耳リスナーへ今後さらなる活躍が期待できるアーティストを紹介していた連載〈OTOTOYの「早く時代がついてこい!」〉をバージョンアップし、ショートレヴューとインタヴューで若手アーティストをご紹介していきます。記念すべき第4回は、ソロ・シンガーのSean Oshima。
REVIEW : どんな現実からも目を背けない芯のあるシンガー
文 : 梶野有希
今年ソロ・アーティストとしての活動をスタートしたSean Oshima。1年足らずでシングル6曲をリリース。今年の4月に実施していたクラウドファンディングを自ら行うなど、自身の活動に対しての熱量を持ったアーティストである。そのリターンのひとつで「支援者の希望のお題に合わせて、自身で制作した楽曲のフルコーラスをプレゼントする」というものがあった。そもそもこのクラウドファンディングは、シングル制作のために実施されたのだが、そのリターンがまた楽曲制作という。音楽がよっぽど好きなんだろうと思ったし、すごくパッションがあるアーティストなんだと思った。
そんなSean Oshimaをはじめて知ったのは、「疲れた日の夜に -Hard Day's Night- 」という曲のMVからだった。セッションを聴いているかのような臨場感ある間奏、華やかなブラス・サウンドなどそれぞれのパートが生き生きとするように考えられている楽曲構成がすごく耳に残った。他の作品も、エレクトロ・ロックからゴスペル、ジャズなどさまざまなジャンルを横断した楽曲ばかりで、表情が全く違う。それは彼の強い探究心が故にだと思うが、それが聴き手にも伝わるほどの熱量だからこそ、目が離せないアーティストなのだろう。
音の鳴りは違っても、アティテュードは一貫している。彼はどの曲でも「現状から目を背けないで」と常に訴えているのだ。現状を肯定するような優しいエールを送るのではなく、あえて厳しい主張をし続ける。そうやって進むべき道を正してくれるアーティストは貴重な存在だ。なかでも印象的な楽曲は、似たような曲が蔓延る世の中へ一石を投じる「君のバンドが嫌い - I don’t like your band -」と〈金のために曲を書いている〉という歌詞が印象的な「ミュージシャン - Musican - 」。音楽業界に潜む苦悩をアーティスト自身が赤裸々に表現することはすごく意味がある。
ダークで鋭いメッセージは、Sean Oshimaのノンフィクションな表現であり、人としての温かさでもある。次はいったいどんなリアルを音楽にしてくれるだろうか。彼の作る音が今後も楽しみだ。