大切なことはフィーリング! ───peanut buttersの"これまで"を収録した初のフル・アルバム
"新発見"をテーマとし、UK.PROJECTが新設したレーベル〈highlight (ハイライト)〉の第1弾アーティストとして昨年2020年にデビューしたpeanut butters。そして9月22日にバンド名を冠した初のアルバムをリリース。peanut buttersは、コンポーザーのニシハラとメイン・ボーカルの紺野メイから成るプロジェクトだが、今作のサポートはPanorama Panama Townの浪越康平、エンジニアはthe telephones / Yap!!!の石毛輝など、豪華アーティストが制作に参加している。今回のインタヴューでは、全曲の作詞・作曲を担当しているニシハラに話をきいた。peanut buttersの軸である"ポップ"を表現した大橋ゆりののイラスト作品とあわせてお楽しみください!
INTERVIEW : peanut butters
ニシハラが楽曲制作をするうえで最も大切にしていることは、自身のフィーリング。だからpeanut buttersの曲には、彼のその時々のモードが反映されているのだという。それを想像しながら聴くことはすごく楽しいし、1曲1曲の細かな違いを発見するおもしろさがpeanut buttersにはあると思うのだ。まさに、新録の“パワーポップソーダ”は、ニシハラの最近のルーツが反映されており、より一層ポップな音楽を追求する姿勢を感じた。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が自身のプレイリストに収録するなど同業者からの支持されているほか、漫画『金色のガッシュ!!』の作者、雷句誠など各方面からも注目されているアーティスト、peanut buttersを見逃さないでほしい。
インタヴュー・文:梶野有希
ポップじゃないと飽きちゃう
──楽曲制作のきっかけが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズというのが意外でした。
小学生の頃に漫画を描いてる友達が周りにいて、僕も一緒に読んだり描いたりしてたんですけど、ちょうどその時に『DEATH NOTE』が映画化されて。その主題歌がかっこよくて、いとこにレッド・ホット・チリ・ペッパーズの昔のアルバムを聴かせてもらったんですけど、おもしろいアーティストだなと思って、そこから色々と掘り下げていきました。
──ルーツとなっている他のアーティストを教えてください。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズを好きになるまでは、あまり音楽を聴いている方ではなかったので、そのいとこからニルヴァーナ、グリーンデイ、スマッシング・パンプキンズなどを教えてもらって聴いていました。すごくハマったアーティストでいうと、ウィーザー、ドラムス、POLYSICS、ゆらゆら帝国、神聖かまってちゃんですね。
──なるほど。peanut buttersという個性的なバンド名がすごく気になるのですが…。
バンド名がすぐに思いつかなかったんです。それで制作したタイトルのどれかをバンド名にしようと思って、今作にも収録されている“Peanut butter 2021”(元々は「Peanut butter」というタイトルで自主制作作品として2019年に配信リリース)から名付けました。バンドって「〇〇ズ」っていう響きが多いじゃないですか。それで「s」をつけていって、しっくりきた曲が“Peanut butter”だったので、バンド名がpeanut buttersになりました。
ーpeanut buttersは、ニシハラさんがコンポーザーを務めるプロジェクトで、メイン・ボーカルは、あみのずに所属している紺野メイさんが担当されていますよね。紺野さんとはどのように知り合ったんですか?
Twitterで音楽関係の方のツイートをみていたんですけど、その流れで知りました。そのとき「UK.PROJECTがやっているイベントにいつか出て欲しいです」って連絡をレーベル の人からいただいて、イベントに出るならすぐにメンバーを探さなきゃと思って。それでメンバー募集のツイートを投稿したんです。それを紺野さんが“いいね“してくれて。前から紺野さんのことをいいなと思っていたので、「よかったら一緒にやってみたいです」とDMしてそこから知り合いました。
──自分がボーカルもやろうとは思わなかった?
思わなかったですね。まずは曲を作りたいっていうのがあったので。最初の頃の音源は、自分で歌ってますけど、それは頼める人が誰もいなかったからというだけで、自分の声が作った曲に入っているのは正直嫌で。だから当初は僕のピッチを上げた声と地声を混ぜて、自分の声だって分からないようにしていました。紺野さんの声か僕の声か分からないって言われるんですけど、「Peanut butter」というe.p.と昔ネットにあげていたデモなどは、ボーカル含め全部ひとりで作ってます。
───ニシハラさんの歌詞は、曲調に反してちょっとネガティブなものが多いですよね。“ツナマヨネーズ“でも、「意味のない日々」といった言葉が続いていたり、日々への葛藤を感じます。
日頃の葛藤とか、ネガティブな気持ちとか、そういった元々持っている自分の性質がよく反映されていると思いますね。もともとがマイナス思考なんですよ。“ツナマヨネーズ“を作っていたときは、朝起きて電車に乗るのがすごくキツかったり、引っ越した先の最寄り駅が混んでいたのが、自分にとってはすごい苦痛だったりしたんです。当時住んでいた家は壁も薄かったので、ギターも普通には弾けなかったのもキツかったので、そういったものから抜け出したいっていう歌詞になっています。でも歌詞は、ただメロディ・ラインに合うように後からつけているだけなので、僕の曲にとって歌詞は重要ではないです。
──反して曲調はポップなものが多いですが、それはどうしてだと思いますか?
メロディ・ラインがポップじゃないと飽きちゃうんです。途中で作るのを辞めちゃうんですよね。制作するときって、何回もその曲を聴くじゃないですか。そういうときスロー・テンポな曲だと飽きちゃうというか。最終的にボツにしちゃうことが多くて。制作において、いちばん大切なことが自分のテンション感とかフィーリングなんだと思います。
──“ツナマヨネーズ“は、「紺野さんが珍しく褒めてくれた」というエピソードを拝見しましたが、“珍しく“なんですか?
最初の1年、2年はあまり意思疎通がお互いうまくできていなかったんですが、“ツナマヨネーズ“の音源をLINEグループに投げたときは、珍しく褒めてくれました(笑)。「めっちゃいい!」って。その前までは特にコメントがなかったんですけど、この曲は珍しく褒めてくれたんですよね。
──反響も大きかったようですが、ご自身ではどんな心境でした?
実はアップロードするとき、紺野さんと揉めていたんですけど、そんななかでアップした次の日にTwitterを見たらめっちゃ反応があって、すごいなって。はじめてたくさんの反響をいただいたので、嬉しかったですね。HOLIDAY! RECORDSさんが熱心にずっと紹介してくださっていたので、そのおかげもあって広まってくれたんだと思います。
──今回“ツナマヨネーズ”含むほぼ全曲にPanorama Panama Townの浪越さんがサポートで参加されたとのことですが。
そうなんです。ちょうど“ツナマヨネーズ“を制作していたときに、浪越さんがライヴに呼んでくれたんですけど、Panorama Panama Townのロックとラップが入ってるような音楽性に刺激を受けたんです。それで僕もラップぽいことを入れようと思って。だから“ツナマヨネーズ“は韻を踏んでみたりしていて。
──あと、“ツナマヨネーズ”はASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんが自身のプレイリストに入れていましたよね。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲は自然と耳に入ってくるくらいの大きなアーティストさんなので、すごく光栄です。あと嬉しかったことでいうと、『金色のガッシュ!!』の作者の雷句誠先生にもツイートしていただいたてとても嬉しかったです。小学生くらいの頃にみていた作品だったので、びっくりしました。