2021/09/24 18:00

MAIL INTERVIEW

文藝天国

──バンドの結成経緯を教えてください。

すみあいか (以下 あいか) : 17歳の冬、高校卒業を区切りに音楽製作は趣味で続けると言ったこうくんの音楽を、絶対に終わらせちゃだめだ、広めてやると心に決め、ともに活動することに致しました。

ko shinonome (以下 ko) : はじめは、文藝天国を続けていくつもりはなく、高校の卒業記念のような気持ちでつくりはじめましたが、あいかと「アイスクリイムは溶けるから。」のMVをつくったことをきっかけに、音楽と映像を掛け合わせて創作活動を進めていくことが凄く楽しくなって、活動を続けていまに至ります。

アイスクリイムは溶けるから。(Official Music Video) - 文藝天国
アイスクリイムは溶けるから。(Official Music Video) - 文藝天国

──バンド名の由来は?

あいか :「はじめにロゴス(言葉)ありき。」というのは、聖書の一節でいろんな解釈がある言葉ですが、わたしの持論として、言葉も形もまだ宿っていないものを、わたしたちは意識の奥底で共有しているのではないかと考えています。それがまず言葉になり、五感へ展開しながら表現し、身体は分離した個体であっても、感覚を通じて意識の奥底が共鳴し合う瞬間が生まれたら、そのときこの世に天国を感じることができるのではないかと。私は「文藝天国」という言葉に対し、そのような解釈をしています。

──Koさんとあいかさんは、音楽とビジュアル面をそれぞれ担当されていますが、参考にしている人やものを教えてください。

ko : 高橋國光さんです。繊細にメロディを構築していく職人のような彼の曲作りに感銘を受け、それぞれの楽器を考えるとき、メロディの合間や重なりを大切にしています。

  あいか : イギリスの陶磁器メーカー、ロイヤル・ドルトンです。食器や服は、日用品でありながらも芸術品であるという点が素晴らしいと常々思うのですが、需要に応じた大量生産品としてスピードとクオリティを追求する職人的な面と、一点物として系統に縛らず色とりどりの表現を自由に作家に開放する画廊的な面がすごく好きで、自分がものをつくるときに在りたい理想の姿勢ととても共鳴します。

──最近聴いているアーティストは?

あいか : Snail's House、SPECIAL OTHERS、TEMPLIME、んoon、m-flo、菊池成孔です。

ko : uyuni さんの ‘99 PEACHYというアルバムをヘビロテしています。

──7月にシングル「マリアージュ」をリリースされましたが、こちらはどのような作品になりましたか。作品に込めた想いを教えてください。

ko : 「マリアージュ」は、DCC(全国高等学校ダンス部選手権)のプロモーション楽曲ということで、高校生たちの「それぞれの色」というものをテーマに歌詞を書きました。各々の持っている色は、それぞれが出会い、交わり、別れ、影響しあって自分の色が出来上がっていく。そんな意味を込めています。

あいか : ワインとお料理で、お互いを引き立たせ合うもの同士の重なりのことを「マリアージュ」というのですが、はじめてその言葉に出逢ったときに、ハーモニーのようだと感じました。「別の存在であったものが出会い、ともに新しい世界をつくり上げる」という意味がすごく好きで、ともに作品をつくる者同士がお互いに溶け合うようになれたらいいなと思い、名前をつけました。

──すみさんの映像作品へのこだわりを教えてください。

あいか :「アイスクリイムは溶けるから。」のときは、こうくんの頭の中を忠実に視覚化することに意識を向けていたのですが、いまは音楽とはまた別の世界線で動いている物語をつくるように意識しています。映像で忠実に音楽を表現するよりも、少しズレがあったほうが、映像と音楽が重なったとき、そのズレに対してリアリティを感じると思うのです。物語のズレを孕んでいながらも、映像と音楽のシンクロニシティを高めるために、編集のときカットの切り替えは音のハマりを一コマレベルで合わせています。わたしは映像監督というより、楽器担当:カメラ の意気込みでセッションに参加してます。

──koさんが、楽曲制作で心掛けていることは?

ko : ロック魂を込めてつくっています。日常生活で心が揺れ動く瞬間を、文藝天国の世界に昇華させて、曲を書いています。 一人でパソコンで作ってはいますが、バンドサウンド、バンド構成をかなり意識していますので、「生感」を失わないようにつくっています。音作りは、”ざらつき” や ”煌めき” を意識しています。

メタンハイドレート(Official Music Video) - 文藝天国
メタンハイドレート(Official Music Video) - 文藝天国

──初のワンマン・ライヴを開催されましたが、振り返ってみてどんな公演になりましたか?

ko : 文藝天国の初公演ということで、沢山のプレッシャーを抱えながら本番を迎えました。公演を終え、実際にリスナーの皆さんに直接音楽を届けられたと実感でき、いままで一度も公演を行っておりませんでしたが、今後はもっと積極的に行なっていきたいと考えております。お客さんも皆さん暖かくて、とにかく楽しかったですね。1st one-man live は我々としても節目だと考えていましたので、無事開催することができて本当によかったです。

あいか : 現実に起きたことのような感じがしなくて、演奏してるときに自分が感じたことはまだ言葉にまとまっていないです。運営と企画の部分では、とにかく来てくださる方とご一緒に文藝天国の世界のなかに入れるような時間と場所にしたいという気持ちがずっとありました。会場の入り口で夢の香りのアロマを焚いたり、ドリンクチケットをレーザーカッターで自作したり、メニューを文藝天国仕様にデザインしたり。あとは公演で販売するための雑貨や演奏に合わせた映像も制作しましたし、舞台装飾を揃えたり、お土産用のキャンドルを100個近く作ったりもしました。公演前は頭が爆発しそうでしたが、ここまで手づくりを徹底できる公演は後にも先にもなさそうだな、なんて思っています。今後はそのときそのときの規模感でしかできない天国のつくりかた、公演を非日常な空間にするだけでなく、それぞれの日常にもどっても、続いてゆく生活のなかに天国が隅に宿るような時間と場所のつくりかたを模索したいなと思っています。

──最後に1年以内に達成したいバンドの目標を教えてください。

あいか : ティーカップをつくりたいです。

ko : 森でコンサートをします。


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文藝天国のその他過去作品はこちらから

新→古


PROFILE : 文藝天国

メンバー:ボーカル ハル / 色彩作家 すみあいか / 音楽作家 ko shinonome

透明度の高いボーカル、叙情的な歌詞、ざらついたギターロックサウンドを基調とし、メンバー内で映像までつくり上げる異形のオルタナティブロックユニット。鮮やかな感性から紡ぎ出される儚く美しいオルタナサウンドは幅広い世代の心を摑んでいる。

■公式HP:https://www.bungeitengoku.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/bungeitengoku

この記事の筆者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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[インタヴュー] 文藝天国

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