みんなにとっての「よすが」になればいいんじゃないか

──歌詞の部分で印象深いのが「色」を指し示す言葉なんですね。「爛漫」も「腕の中でしか」でも出てくるでしょう、赤という色が。情熱の赤。不良の赤なんですかね。
はははは。真っ赤なギターは、家に全然触ってない赤いギターがあったから「かわいそう」と思って。「腕の中」のMVのレコーディングで使ってたりする赤いギター。気に入ってはいるんですよ。弾き語りとかレコーディングでたまに使うし。でも、家の中を見渡して曲を作るしかなかったから。ただそれだけ(笑)。でも赤はめちゃくちゃ好きな色。赤と金色が好き。
──その赤に惹かれるのは、カネコさんの「やったれ!」の精神の表れなのかなと。
あるかも。赤着るとテンション上がるし。でも、今回はそういう「やったれ!」より、ゆっくり自分を見つめなおせたのがよかったですね。実際、めちゃくちゃゆっくり、焦らずに制作したし。そういう風にやれてよかったですね。
──ところで、「よすが」っていうタイトルは漢字で書くと「寄す処」で、心の拠り所、という意味ですよね。つまりかなり感覚的なもの。カネコさんはこの拠り所を何の象徴と考えているのですか?
このアルバムがそうなればいいってわけでもない…… 聴くことによって誰かを思い出したり、あの環境恵まれてたなとか、あのご飯美味しかったな、この間の晴れた日がすごく私を救っていたなとか、なんでもいいんですけど。そういうものたちが、みんなにとっての「よすが」になればいいんじゃないかなって思う。でもそれがこのアルバムでも、どれか1曲でもいい。そういう漠然としたものになれたらな、聴く人にとって。
──聴く人にとって?
そう。委ねたいんです。委ねたいが故にすごく考えちゃう。
──さっき「感性は他人のためのものじゃない」って言いましたよね。でも、最終的には聴く人のことを考えちゃう。
作品を出す前は身内しかまだ知らないけど、世に放ってしまったら私だけのものではなくなる。その自覚があって音楽を作ってリリースしてるから。そこの感覚にまで私は手を出せないから、その人の感性で聴いてほしいなと思う。そう思っちゃうんですよ。アルバム・タイトルつけるときはいつも名前をつけるみたいな感覚があって、この人はどんな名前で呼ばれて行くだろうみたいな。かなり入稿のギリギリに決めたんですけど、「よすが」は単語自体がいいなっていうのが最初にあって。いい響きだしぴったりだって、意味も調べたら、この時期にこのタイトルをつけるのは完全に降りて着てくれましたねと思いました。
──結局は自分のためじゃなくて自分が誰かにとって「よすが」でありたいという思い。それはカネコさんの表現者としての大きさですね。
いやいや全然ですよ、大きくなりたい。聴くことによって色々思い出して、それがその人の拠り所になればなとは思います。
──じゃあカネコさんの拠り所はなんでしょう?
わたし!? 音楽やってる自分は大きくありますね……でも、結局は恋人になっちゃうのかもしれない。あとは猫かな。この間、事務所の社長に「人間は対人関係でしか悩まない」って言われて確かになって思った。
──恋人とか好きな人が「よすが」っていう感覚は乙女ですね、やっぱり。
そう、乙女なの。でも一方で怒りも抑えられないんです。「理解しようとしようよみんな!」と思いますね。
PROFILE
カネコアヤノ
弾き語りとバンド形態でライブ活動を行っている。
2016年4月に初の弾き語り作品『hug』、2017年9月には初のアナログレコード作品『群れたち』を発表。
2018年に発表したアルバム『祝祭』は第11回CDショップ大賞2019入賞作品に選出。
2019年に発表したアルバム『燦々』は第12回CDショップ大賞2020大賞<青>を受賞。
2021年4月14日に新作アルバム『よすが』を発表。
5月からは全国ホールツアーを予定している。
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