21世紀のネオ・サイケデリック・ロック
日本のサイケデリック・ロックは、—ジャックスやゆらゆら帝国が現れた時がそうだったように—常に音楽的な目新しさと古き良きロック・ミュージックの持つ懐かしさの両方を抱えて進化してきている。それは、日本の都会の風景に似ている。「上を見れば高層ビル群、前を見ると古びた木造住宅」そんな景色がまだあるように、正反対のものが同居しているのだ。つまり現在と過去の間にある“ひずみ”だ。最初は戸惑うけれど、ビルの合間の公園で一息つく時のように、ふとした瞬間に妙に心地の良いものになる。
そんな“ひずみ”から流れてくる音楽を奏でる21世紀のネオ・サイケデリック・ロック・バンドを紹介。高円寺を中心に都内のライヴ・ハウスで精力的に活動しているコモリ(Vocal、Guitar)、ユサ(Organ、Vocal)、shino51(Bass)、44O(Drums)の4人による壊れかけのテープレコーダーズだ。音楽はジャックス直系のロック・ミュージック。早川義夫の深く内面をえぐる歌詞、ドアーズのレイ・マンザレクばりのオルガン、ジミ・ヘンドリックスのファズ・ギター、そこにフィル・スペクターの霞がかったメロウなメロディが添えられる。誰もが聴いてみたかった組み合わせを実現させた4人により21世紀のネオ・サイケデリック・ロックが生まれた。
ニュー・アルバムをリリースする直前の2月に初めてライブを見た。一度演奏が始まると彼らの佇まいが一変する。その場の雰囲気はまるでエドワード・ゴーリー(注)の絵本の中に足を踏み入れてしまったのではないかと錯覚してしまう程だった。どのくらい演奏していたのかはっきりとは覚えていない。ものすごい長い時間だったようにも思えるし、ほんの一瞬であったかのようでもあった。時間の感覚がなくなるくらいの熱気を含んだ、懐かしくもある心地よいライブだった。それ以来、僕の頭の中で壊れかけのテープレコーダーの再生ボタンは押されたままになっている。(text by 池田義文)
注 : エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)は、アメリカの絵本作家。ナンセンスで残酷で不条理に満ちたを描く。代表作『ギャシュリークラムのちびっ子たち』など。
壊れかけのテープレコーダーズ
2007年、新緑萌ゆる5月に結成。
ドリーミィ・サイケデリック・ガレージ・ロック・バンド。
同年8月にメンバーの440が主催するイベント「夢の島で逢いましょう」@三軒茶屋HEAVEN’S DOORにて初ライヴ。(尚、同イベントはその後不定期ながら継続的に行われ、東京インディーズ・シーンの先鋭或いは異端達、また最近では日本サイケデリックの至宝「割礼」を招くなどして好評を得ている。)以後都内ライヴ・ハウス各所にて精力的に活動を展開。
2009年2月、待望のファースト・アルバム『聴こえる』を、「三輪二朗といまから山のぼり」、「前野健太」を輩出し、今最も注目を集める新進気鋭のレーベル、ハヤシライス・レコードよりリリースした。
- website : http://kowarekake.net/
- 壊れかけ情報局 : http://love.ap.teacup.com/kowarekake/
- 44Oブログ : http://yoyoyonoyo.exblog.jp/
- YC-20 : http://sun.ap.teacup.com/kowarekakeorg/
LIVE SCHEDULE
- 5/10 (日) 我々のモコモコニャンニャン Vol.13 @高円寺 無力無善寺
- 5/29 (金) MOONLIGHT EXPRESS @青山 月見ル君想フ
- 5/30 (土) 真世界マサコ倶楽部+裏窓 presents @ 高円寺 20000V
- 6/9 (火) 壊れかけのテープレコーダーズ企画 定例(化したい)3マンシリーズ 第1回 『雑種天国』@新宿 スモーキンブギ
w/ 喉笛チェインソ / ミッシング箱庭
- 6/18 (木) 日々の音楽〜青と碧〜 @ 高円寺円盤
- 6/27 (金) @ 都西院 Music Cafe OHH-LA-LA
- 6/28 (土) @ 大阪 塚本 エレバティ
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