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8/1 コンゴトロニクス(コノノNo.1+カサイ・オールスターズ)with フアナ・モリーナ、スケルトンズ
2000年代に入り、一つの大きな流れが音楽の世界を席巻し始めている。欧米中心だったロック~ダンス・ミュージックのシーンに、中東、アジア、アフリカや南アメリカのサウンドが浸透してきたのだ。今年のFUJIROCK FESTIVALでもそういった地域で活動するアーティストの出演が多かったように、日本にも徐々にその流れがやってきている。その中でも最も代表的なアーティストの一つが、中央アフリカ、コンゴ共和国出身のバンド、コノノNo.1とカサイ・オールスターズだ。アフリカ特有の呪術的で土着的なビートを基本にしながら、ギターやリケンベと呼ばれるコンゴの親指ピアノをアンプにつなげ、エレクトリックで強力なダンス・グルーヴを生みだす。そしてこの夏、この2バンドが合体し、出身地であるコンゴとエレクトロニクスをあわせた造語である「コンゴトロニクス」として来日することになった。
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2011年8月1日、渋谷CLUB QUATTOROにて行われたコンゴトロニクスのライヴ。前々日のFUJIROCK FESTIVALでのライヴを2011年のベスト・アクトに上げる者が多かっただけに、大きな期待を持って会場へと足を運んだ。そして、この日はFUJIにもRockersとして参加したフアナ・モリーナとスケルトンズがこのバンドに加わることになった。会場に着くと、おそらくFUJIROCKへ行くことが出来なかったであろう多くのオーディエンスがフロアを埋め尽くし、今か今かと彼らの登場を待ち望んでいた。そして、いよいよ登場したコンゴトロニクスの面々。カサイ・オールスターズは民族衣装のようなものを身にまとい、コノノNo.1は彼らのサウンドの最大の特徴である電気親指ピアノを抱え現れる。そこに彩りを加えるフアナ・モリーナとスケルトンズ。
彼らのグルーヴを一刻も早く味わおうと、会場は興奮状態に。そして、最初の一音がなると同時に歓声が上がり、ダンス・フロアへと変わった。包みこむようなリズムを刻むパーカッション。そして、彼らの最大の特徴であるアンプを通して聞こえてくる親指ピアノのサウンドは、電子音の鋭さと人間の手から生み出されるものの柔らかさを兼ね備えていて、不思議で心地よい音色を奏でる。それらは全て、広大なアフリカの大地が生み出した音なのだ。その音に導かれ、一瞬にしてオーディエンスは体を揺らして踊り始める。何百年、何千年も前から受け継がれてきたそのリズムは、アフリカから遠く離れたこの日本でも同じように会場と観客を揺らした。僕らの先祖のその先祖のそのまた先祖のずっと遡る先祖達が同じように大地の上で感じていたリズム。DNAの奥深くに刻まれたグルーヴ。誰もが同じように感じていたメロディ。そのポジティブなサウンドは紛れもなく国境も人種もなかった頃の音楽だ。
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そんなことを感じている間に、アンコールを含むおよそ90分のライヴは終了してしまった。会場が明るくなってからも鳴り止まないアンコールが、どれほどこの日のライヴが素晴らしかったのかを証明していた。この日とても印象的だったのは、フアナとスケルトンズとコンゴトロニクスのメンバーが笑顔でダンスをしていた光景だ。その姿は人種、国や言葉による差別のない理想郷のようだったし、音楽が目指すものの一つであったと思う。今の日本の大変な状況の中はるばるやってきて、素晴らしいライヴをしてくれた彼らに深い感謝を捧げたいと思う。そして、彼らが再び日本にやってくる頃には、僕らも最高の笑顔で彼らを迎えてあげることが出来たらと思いつつ会場を後にした。(text by 池田義文)
ライヴ概要
日時 : 2011年8月1日 (月)
開場 : 渋谷CLUB QUATTRO
開場 / 開演 : 18:00 / 19:00
出演 : コンゴトロニクス(コノノNo.1+カサイ・オールスターズ)with フアナ・モリーナ、スケルトンズ