
DUBで旅する上海
時代も国境も不明! 中国への憧憬や偏見をダブ・ミュージックと掛け合わせるバンド泰山に遊ぶが、新作『上海旅遊』をリリースしました! 本作は、オリジナル5曲と、ダブ・バージョン5曲の計10曲を収録。アルバムの裏テーマとして、今年開催された上海万博へのオマージュがあり、上海の街並みや万博にまつわる事柄がアイテムとして散りばめられています。録音を担当したのはThe BOOM、アン・サリー、原田知世などを手がけたフジイサトル。ダブ・ミキサーとして、まつきあゆむ、バンド内でDUB PAを担当するprof.watanabe、神谷千尋などのサポートもつとめる沖縄ミュージック・シーンの重鎮ベーシスト/プロデューサー、ドン久保田、maoオーナーでもあり、自身のユニットpasadenaやあらかじめ決められた恋人たちへ/world's end girlfriendのDUB PAもつとめるイシモトサトシらが参加。色とりどりのダブワイズが展開されています。彼らの奏でる音に乗って、いざ旅へ!
☆アルバム購入特典として、壁紙2種類(それぞれ1280×1024px、1400×1050pxの2サイズ)とiPhone用着信音をプレゼント!
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泰山に遊ぶ インタビュー
中華DUBというものをご存知だろうか?中国製の入浴剤でも、巨大な中華なべのことでもない。中国四千年のメロディーをDUBという名のベールで包み込んだ全く新しいオリエンタル・ミュージックのこと。
このどこか怪しく少し胡散臭いサウンドを作り上げたのは、メンバー全員純日本人の泰山に遊ぶという名のバンドだ。細野晴臣の『トロピカルダンディ』や『泰安洋行』に込められた、中国に対するメルヘンチックな偏見を受け継ぎ、そこにDUBの方法論を加えたサウンドは、多くのエキゾ・ミュージック・ファンを虜にしている。FUJI ROCK FESTIVALや沖縄国際音楽祭などの野外フェスを経験して、更に強度を増したサウンドをもってニュー・アルバム『上海旅遊』を完成させた彼らは、一体なぜ今中国に注目しているのか? 青山月見ル君想フでのライヴを終えたばかりのメンバー、リーダーの寺尾ブッダ、踊りと歌の成瀬晃一にインタビューを試みた。
インタビュー&文 : 池田義文

中国人にはなれない
——なぜ「中国」に的を絞ったバンドをはじめようと思ったの?
寺尾 : 前のバンドを組んでいた時に語学留学で中国に行ったんだ。その時に1ヶ月北京に滞在して受けたカルチャー・ショックがあまりに大きくて、その影響を何とか音楽で表現したいと思ったのがきっかけ。
——カルチャー・ショックってどんなことがあったの?
寺尾 : 夏に満員のバスとか電車に乗るわけ。そうすると、20代の女の子たちがつり革をつかむと、腋毛がドーン!って感じで(笑)。
——えっ!? それがきっかけ??
寺尾 : いやいや。バンドとは関係ない! カルチャー・ショックの話(笑)。
成瀬 : 要するに全員、黒木香ってことですね。
寺尾 : (笑)。インドやヨーロッパは日本と違って当たり前なんだけど、中国は日本と容姿も含め色々と似ているけど、微妙に何かが違うパラレル・ワールドな感じがあるんだよ。それがすごく面白いんだよね。
——中国のどんな要素にDUBミュージック的な部分を感じたのかな?
寺尾 : オフィシャルのコメントにも書いたんだけど、中国は以前、社会主義などで画一化されている時代があった。そのときは同じような服を着て、同じような顔が沢山ならんでいるように見えた。ただそこにはたまに違う人、内面的には画一化されていない人がいるという部分。つまりミニマルな中に一瞬現れる違った表情をリズムに落とすとDUBになるんじゃないかなって思ったんだ。
——ちなみにメンバーに中国人は1人もいないよね?
寺尾 : うん。残念ながら(笑)。
——僕が初めて泰山のライヴを見たときに感じたのは、ハリウッド映画に出てくるデフォルメされた眼鏡をかけてる七三の日本人、それの中国版というイメージかな…。
寺尾 : 現地の音楽や文化をそのまま表現しても敵わないし、中国人にはなれない。だから、逆に中国にあこがれる日本人を表現してみようと思ったんだ。日本にいながら中国に対する偏見や妄想を膨らましてうまく音楽に還元できればいいんじゃないかなと。

——成瀬さん何か言いかけましたが。どうしました?
成瀬 : ……。僕の両親は満州や樺太から引き上げてきているんで、中国人が両親を逃がしてくれた恩義を感じているんです…。
寺尾 : その時に中国の人たちがかくまってくれなかったら、成瀬さんはこの世に生まれていないかもしれないわけですからね。
——本当か嘘か分からないんですけど(笑)。ちなみに今まで中国人が泰山のライヴを見たことはある?
寺尾 : ありますよ。その人はすごい感動して、「大きなチャイナのパワーを感じました!」って言ってくれたね。細かい旋律やリズムからではなく、ゴチャっとカオスな状態で演奏している姿から中国を感じたんだと思う。
——最終的には中国で演奏したいという気持ちは?
寺尾 : もちろんあるよ。日本人が中国をこんなにもハイブリッドに表現できるんだというところを見てほしいです。
北京の伝統芸能を面白おかしく、オルタナティブに表現してみたい
——話は変わるけれど、「ダンボール肉まん」についてはどうお考えですか?
成瀬 : まだまだ法的な整備が遅れているというか、日清戦争の恨みをもっているのか…。
寺尾 : でもあれは実は中国のテレビ局の人がネタ欲しさに捏造したんだよね。
——えっ!! そうなの? 餃子中毒事件などマイナス・イメージもまだまだ強いよね。
寺尾 : 実はそういうのいっぱいあって、革靴からミルクが作れるとか。都市伝説が沢山あるんですよ(笑)。
——なぜかメルヘンチックなものを感じる(笑)。そういう胡散臭いメルヘンが泰山にもあるよね。
成瀬 : そうですよ。孫悟空は山から生まれたんですからね。
——(笑)。メンバーで中国について語り合ったりすることはありますか?
寺尾 : ほとんど無いです(笑)。
成瀬 : 中国語わかりませんからね。
寺尾 : ただ今度Ustreamで週に1回、泰山の曲をテーマに中国語講座をやろうと考えているんです。今回のアルバムの歌詞カードにも中国語を対訳として入れてあるので、それを教材として使用しようかなと思っています。日本語で説明しきれない部分も、中国語にすると浮かび上がってくることもあってとても面白いんですよ。
——おそらく泰山に遊ぶは1人1人の中国に対するゆがんだイメージが現れていると思うんだけど、あの成瀬さんのダンスはどういう中国観に影響されているのですか?
成瀬 : 上海というゲームです。同じものを選んで山をくずしていくゲームなんですけど、さっき言っていた同じDUB観ですね。
寺尾 : 完全に後付けですね(笑)。

——メンバーで中華料理を食べに行ったりすることは?
寺尾 : それはもちろん。みんなで池袋のマニアックな中華料理屋に行ったりしますよ。料理に関するモチベーションは高いから(笑)。そこから生まれるグルーヴがあるからね。麻というしびれる料理を食べれば、ギターのディストーションがファズに変わるし、広東料理を食べればバラードの曲が書きたくなったり(笑)。
——少しはアルバムの話をしましょうか(笑)。裏テーマが「上海万博」とのことですが、どういうことですか?
寺尾 : 今回のアルバムは、上海の過去から未来までを一気に旅行するというのがテーマなんです。その中でも上海万博は今の中国の夢が詰まっている。だから、とても感慨深いんです。
——リミキサー陣も豪華ですね。
寺尾 : 最初はLee Perryぐらいのぶっ飛んだDUBアルバムを作ろうとしていたんだけど、作ってみたら意外とポップなアルバムに仕上がったんです。それに5曲しかないから、DUBミックスを入れてバランスのいいアルバムにしたかった。リミキサーの人たちに関しては、活動の流れからなんとなく見えてきた自然な人選だね。
——まだまだアルバムを作るうえでのネタは沢山あるのかな?
寺尾 : 次は個人的には北京の伝統芸能を面白おかしく、オルタナティブに表現してみたい。さらに、三国志をテーマにしたら50作くらいアルバムが作れちゃうからね。まだまだやりたいことは沢山あるよ。ただやっぱり現在の中国のことは行ってみないと分からないから、このバンドで中国ツアーに行きたいですね!
——では最後に質問。今後ももちろん中国ありきですよね?
一同 : 当たり前ですよ! (笑)
寺尾 : 今後も中国のことは泰山にご用命ください。
寺尾ブッタ流DUB&SURF
『The Boy Meets DUB』 V.A.
寺尾ブッタ監修のコンピレーション・アルバム第1弾。東京のDUBは歌から始まる?! 既成の枠にとらわれず活動するDUB魂溢れるバンド11組による歌モノDUBが収録されています。このコンピを聴けば、すぐにどこかへ飛んでいけます(笑)。
『The Boy Meets SURF』 V.A.
寺尾ブッタ監修のコンピレーション・アルバム第2弾。いなかやろうの土岐と寺尾のデュオ、ニュートリノ、成瀬晃一、KIKORI、alter bingo、灯台守、big sirrus、ザジ、NIGHT!&NIGHT!PRODUCTION、井上智徳(TAYNTON)、を収録。
PROFILE
歴史の語るように音を奏で、黄河よりも深いグルーブを生み出す、二十一世紀の東アジア・エスニック楽団。 天然のリバーブ値が1msを超え、太古から民間芸術としてダブ・ミュージックが根付いている中国の霊峰、泰山の麓。そこで果てることなく繰り返されるダブ・セッション。いつしか人は、それを「泰山に遊ぶ」と呼ぶようになる。 「泰山に遊ぶ」がひとたびメロディーを奏でれば、その年に幸福が訪れると話題に。いくつかの体制の変革を経て、二千と二年、横浜に上陸。主に都内ライブ・ハウス・カフェにて中華ダブ・ライブを披露している。 1st album『四合院 MY LIFE』には、四千年の喜怒哀楽が収められ、様々なシーンで好評を博している。二千と九年。夏。富士(フジロック)で泰山、という日中霊峰共演が実現! 二千十年には沖縄国際アジア音楽祭に参加、9月には上海旅遊がmaoから発売!! ますます目が離せない!!!
LIVE SCHEDULE
- 2010/9/12@青山月見ル君想フ
- 2010/9/16@渋谷LUSH
- 2010/10/17@青山月見ル君想フ アルバム・リリース・パーティ!
- 2010/11/12@名古屋KDハポン
- 2010/11/13@京都アバンギルド