昔の自分や音楽を思い出すことで、今後の未来や自分に思いをはせる
──コロナ禍になってから、楽曲制作をリモートでやるようになったバンドも多いようですが、今作はどのように制作されましたか?
林 : 30、40%ぐらいできたものをみんなで家で打ち込みながら50、60%に上げて、スタジオにまた持っていくっていうスタイルですね。スタジオに入ったら、全然違うものになったりすることも多いです。
伊井 : 前作のときは、ある程度できあがったデモをスタジオで合わせて完成させることが多かった。レコーディングも、録音する前にまずライヴでやって、そこでちゃんと演奏できたら録るみたいな。
林 : まだライヴができて当たり前のときやったんで、新しい曲を作ったら、(録音の前に)ライヴで披露みたいな感じやったんです。でも今回は、曲ができたからといって、すぐにライヴができる感じではなかったので。“Myself”と“Fool”以外の曲は、ライヴよりレコーディングが先ですね。
──制作はスムーズにいきました?
林 : ほぼほぼ、ぶつかりました。
丹埜 : いつも不完全な形でデモを共有して、そこからみんなで作っていくんですけど、すんなりいけることの方が珍しいです。
林 : ボツになることの方が多いよね。でも、捨て去ろうとしている曲のなかには、他のメンバーがやりたい曲があったりもするんですよ。今作で言ったら、“Anytime”と“See you”は、丹埜がパーツを持ってきた曲なんですけど、ボツになりかけましたし。
丹埜 : 僕が作るのを諦めかけちゃったんですよ。作ってもいい感じにはならなそうだと思って「ボツにしませんか?」ってみんなに言ったんですけど、「いや、やったほうがいいと思う」って言ってくれて。みんながそういうんやったらやろうかなって気持ちになったんです。それで曲を確認していくうちに 「これはこれで、いいところがあるんだ」って気づかされて。

──クレジットに「全曲 : 作詞/作曲 Newdums 」とあったんですが、作詞はどなたですが?
伊井 : 基本的に、自分が歌う曲は自分が書いてますね。
林 : もともと伊井の歌詞は前向きで、丹埜はネガティブやけど作っている曲は明るいみたいなイメージがありますね。丹埜の歌詞は、無常観とかどうしようもないとか刹那な感じが多いです。
丹埜 : “Naked”は、もともと、僕が歌おうかなと思ったんですけど、伊井くんのほうがいいなと思って、変わったんですよ。だからこの曲は歌ってはいないんですけど、僕が歌詞を書きました。
伊井 : “Stand by me”は、1番のAメロが俺、2番Aメロは丹埜、コーラスのところはふたりっていうツイン・ヴォーカルだから歌詞どうしようと思ってて。ある程度デモができあがった日の夜に、ちょうど映画の『スタンドバイミー』を観たんですけど、「じゃあ、『スタンドバイミー』をテーマに、お互い歌詞を書いてこうよ!」ってなって(笑)。ふたりの歌詞を照らし合わせてみたら、方向性が同じやって嬉しかった。
──Newdumsの楽曲は全編英詞ですが、 日本語で歌うよりも、解釈の幅が広くなりやすいですよね。
伊井 : それに対するネガティヴな感情はないです。僕も歌詞を書くときは抽象的な言葉を並べたりすることが多いですし。「伝わってくれよ」というよりかは、聴いた人の思った通りの解釈でいいと思ってます。
──今作には、そういったNewdumsの音楽性やバンドに対する姿勢が濃く表現されている気がします。
林 : アルバムって1つの作品だけど、その当時のことを思い出せる記録でもあると思うんです。 Newdumsっていうバンドがおって、アルバムを作っている段階でコロナがきて、世の中が大変なことになってっていうひとつの記録なので、あくまで自然体な作品です。2020年、2021年と生きてきて、いまもこうしてバンドをやっている人間としての作品というか。あと僕は、いい音楽には、懐かしい感じが絶対どこかにあると思うんですよ。いまの音楽としてNewdumsのことをすごくいいなって思いながらも、昔の自分や音楽を思い出すことで、今後の未来や自分に思いをはせる。みんなにとって、そういうアルバムになればいいなって思ってます。

──それと曲の繋がり方もすごくきれいで、1枚のアルバムとして通しで聴きやすい作品ですよね。
林 : アルバム作品としての聴きやすさは、すごく意識しましたね。前のEPは、できた曲を集めてEPにしていたんですけど、今回はアルバムという形を意識して曲を作って行きました。丹埜がデモを8曲作っているんですけど、デモの段階から丹埜が「ルーツ寄りにしたい」というイメージを共有してくれていて、それがみんな沁みついていたんだと思います。
伊井 : “Myself”を作りはじめるときから言ってたよな。だから「“Myself”がこのアルバムの軸になるんだ」って全員が思えていたし。
平間 : 制作にすごい時間かかったよね。
丹埜 : デリケートな部分が多くて、いままでやっていなかったことをやった曲な気がします。
──というのは?
伊井 : 激しいところと静かなところの差を付けていて。出したいものを出す努力を、それこそ神経を使ってやるような感じ。Aメロに「カビが生える」っていう歌詞があったり、この歌詞書いたときはちゃんと普通に生活はしていたけど、なんか動き出せないな、腐ってるなって思っていた時期があって。コロナになる前にアルバム制作に入っていたので、それはあまり関係ないんですけど、そのときに思っていたことを書きなぐったので、感情が入りやすい曲になってますね。