2021/09/15 18:00

嫉妬や劣等感みたいなものがもともとすごく強い

──資料に「10代の全てを詰め込んだアルバム」とあったのですが、自分にとって10代はどんなものでした? そういったものが今作に反映されていると思うのですが。

比喩根 : たぶん10代は、人生のなかで密度が最も濃い年代だと思います。「20歳になるまでが、体感では人生の半分」と聞いたことがありますけど、その通りで。本当に人生の半分くらいの密度があった気がしますね。やっぱりなにをするにもすごく新鮮だし、人生のなかで基礎になるようなひと通りの経験をできた気がします。色々なものからの影響をもろに受けやすいし、そこから行動するまでも早かったです。今作でも、3ヶ月前に影響を受けたものを反映させていますし。10代特有の「やってみよう精神」みたいなのは詰まっているかもしれないですね。10代って終わりに近づけば近づくほど貴重だなって感じますね。

ジャスティン : 19年の人生のなかで、コロナもそうですし色々と経験をして、それによってできないことが増えたり、学生生活のなかで「嫌だな、辛いな」って思うことも結構ありました。でもメンバーや色々な人に出会えたり、バンドをはじめてみたりという、いい面もあって。いいことも悪いことも、本当に濃密だったなと思いますね。

玲山 : たしかに経験はすごく多かったね。比喩根の話を聞いていて、10代終わるのちょっと嫌になってきました。昔ははやく大人になりたいと思っていたけど、いまはあんまり考えたくないな(笑)。

小崎 : 10代終わりたくないと思うくらい色々な経験をさせてもらったね。

──20代へ向けて、また新たな変化が楽しみですね。今作はリードが2曲ありますが、ひとつめの“未定“はディスコっぽい曲調で、かなり新鮮でした。

比喩根 : デモを作っていたときは、ディスコっぽくする予定はなかったんです。でもスタジオで合わせていたときに、ジャスティンが「ディスコっぽい感じにしてみたいんだよね」って言ってくれて、やってみたら意外とぴったりハマったんですよね。

──他人と比較し劣等感を抱いてしまう人や自分に対して否定的な人に寄り添う曲ですよね。ご自身も日頃から他人と比較し、劣等感を抱いてしまうことがあったのでしょうか?

比喩根 : 私自身はすごく多くて。音楽もそうだけど、長所も短所もなんでも比べちゃうんですよ。だから落ち込むことも多いし、嫉妬や劣等感がすごく強いんです。人と比べてやる気が出るんじゃなくて、落ち込むタイプだから原動力にならないし。「落ち込んでいる」ってなかなか言えないので、自分で自分がかけてほしい言葉をかけてあげるようにしたら、嫉妬や劣等感を抱くことが最近は少なくなってきました。

ジャスティン : 僕も多少はありますね。もともと自分で思うこともありますけど、「最近の若者は競争精神が足りない」って言われたり、人から言われてはじめて他と比べることもあったり。

──なるほど。MVについてはいかがでしょう。

ジャスティン : フル尺で見ると、メンバーそれぞれがどこかにいたり、いつも手伝ってくれるスタッフさんが出演していたり、遊び心がすごくあるMVになってますね。

比喩根 : 途中のカメラのフラッシュが入る部分はジャスティンがやっていたりね。あと今回は、鏡を使って撮影したんです。鏡って自分を映し出すものだから、誰かと比べるんじゃなくて自分自身を見つめて、自分の成長を自分で見てあげるっていうメッセージも込められています。かっこいいMVになったと思います。

未定(Official Music Video) - chilldspot
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──もうひとつのリード曲“dinner”は、「怒りやストレスを食べてしまおう」という発想がおもしろいです。これはどこから着想を得たんでしょう。

比喩根 : なんでかは分からないんですけど、メモに書いてあったんです。嫌な人がいても、直接本人にそれを言うわけにはいかないし、かといって夢の中で存在を消しても、どこかすっきりしない。それで相手に「勝ってるぞ! どうだ! 」って罪悪感なく見せつけられる方法は、食べることかなって思ったんです。全部飲み干して消化して、自分の養分にできるから。あと「食べちゃおう」だったら、ダークだけどポップさが残るから、フィクションって分かりながらも楽しめるかなと思ってこういう考えになりました。

──メッセージ性の重みはあるけど、ダークすぎない感じがchilldspotらしいですよね。間奏のギターや、「I like meat.」からの英詞部分も印象的でした。

玲山 : ここの展開もジャスティンがアイディアを出してくれました。ソロに入った時に展開を変えて、インパクトある強めのギターを弾いてみようって。それで作って合わせてみたら、おもしろくなりましたね。

比喩根 : 歌詞が結構カオスだし、ダークでいたずらっ子みたいな感じだから、演奏隊もカオスな感じにしてやろうっていうのがあったよね。

ジャスティン : 展開もグチャグチャにしてますし、ドラム自体もギターソロまでは、あえてずらして叩いていたりしていて、これに関してはやりたいようにめちゃくちゃやりました。

ジャスティン(Dr) / 小崎(Ba)

この記事の筆者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

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