パンクが描く新たな風景がここに
パンク、ハードコア、プログレやヒップホップ等様々な音楽の要素を含みながら、そんなジャンルなど簡単に超えてしまうバンドが、「突然変異型」だと言われている。Qomolangma Tomatoもそんなバンドのひとつ。たたみかけるようなボーカルと激しいサウンドに潜む叙情的な一面に、思わずはっとさせられる。
2003年の結成以降数々のライブを重ねてきた彼らは、大型フェスティバルのSUMMER SONICで多くのオーディエンスを盛り上げる一方で、京都ボロフェスタや山形DO ITなどのDIY精神溢れるフェスティバルにも出演、また自身ではOGRE YOU ASSHOLE、nhhmbase、lostageと3ヶ月連続で2マン・ライブを開催してきた。オーバーグラウンドからアンダーグラウンドまで、自由に行き来できる稀有な存在。
彼らのライブは常にエモーショナルで衝撃的で、否応なしにこちらの感情に波を立てていく。その真っ直ぐな姿勢が、コアな音楽ファンから初見のお客さんまでを満足させるのだ。
彼らがサード・アルバム『camouflage』をリリースした。今作が出来上がるまでの経緯、バンドが目指す未来についてボーカル石井成人氏に話を訊いた。
インタビュー&文 : 井上沙織
INTERVIEW
今まで作っていた曲が自分の心をすり減らしていた
—前作『Limelight Blue on the Q.T.』の衝動的・挑発的なイメージから一転、今作『camouflage』は内省的な印象を受けました。
石井成人(以下I) : 今回はコード感や歌の奥行きにこだわったんです。以前のほうがもっとそれらが前面に出ていたんじゃないかな。
—変わっていったのは自然に?
I : そうですね。アルバムごとに変化していくのが自然だと思うから。もともと風景を描こうという意識がバンドにあったんですけど、どうしたらもっとその観点から曲を作れるかを考えた。そうしたら身の周りが見えるようになって、描きたい風景が明確になっていったんです。今作では、曲が描きだす風景と吐き出す衝動的なエネルギーのバランスが変わった。やっと鳴らしたい音になってきた。『camouflage』は今の僕らのすべてをストレートに詰め込むことのできた作品ですね。
—レコーディングはどのようにして行われたのでしょうか?
I : 品川のレコーディング・スタジオで録りました。でも、レコーディングをする前に違う環境でセッションをやってみようってことで合宿をしたんです。山やダムのある爆音の出せるペンションで2週間位。そこでセッションをして曲を構築していきました。
—3曲目の「動揺」が印象に残りました。自分の中にある感情を見つめた、心象風景のような曲ですね。
I : Limelight Blue on the Q.T.をリリースしてライブをやっていくうちに、今まで作っていた曲が自分の心をすり減らしていることに気付いたんです。「動揺」はその状態から抜け出すために、素直になって曲を作ろうと思って一番最初に作りました。Limelight Blue on the Q.T.を作り終えた反動が顕著に出ている、『camouflage』の中でも核になる曲だと思っています。良いか悪いかわからないような質感でしょ? そんな音作りが好きなんです。
—深みのある質感ですね。
I : すごく漠然とした感じですけど、こういう質感の音作りを意識しています。音楽でも映画でも本でも絵でも、自分が好んで選ぶものには同じような質感を求めちゃうんです。
—小説では、梶井基次郎の「檸檬」がお好きだと伺ったんですが、感情が暴発しそうな危うさが、Qomolangma Tomatoの音楽と似ていますね。
I : そうですか? それ嬉しいですね。あの作品って、『日常を生きていく中で主人公の気持ちがどれだけブレているのか』がテーマで大好きなんですよ。だから通じるものがあるのかもしれないです。
LESS THAN TV周辺のバンドに対する憧れとかもあったし、そういうシーンとは今でも絡みたい
—「突然変異バンド」といわれることはどう思っていますか?
I : 嫌ですね。まず褒め言葉じゃないですよね(笑) 意味を考えても当たり障りがないし、かっこいいって言われることとは全然違う。いわゆる「突然変異バンド」って言われる中にカテゴライズされても、「なんで? 」って思う。カテゴライズされた中で一番かっこいいって言われるよりも、他に無いバンドだよねって言われるようになりたいです。
—横浜と横須賀出身とのことですが、東京の音楽シーンに対して思うことはありますか?
I : 最初の頃は東京に出なきゃいけないと思って都内でもライブをやっていたんですけど、高いノルマを課せられたりして嫌になったので、一時期横浜に戻ってスタジオ・ライブとか、かぼちゃ屋(横須賀のライブ・ハウス)でやってた。でもかっこいい音楽をやってる人はいろんなところにいて、閉じてちゃいけないなって思った。その頃にstudio justのABDrecordsっていうレーベルから「HONTOWASHIGARAMINONAKA」っていうCDを出したんです。そのレーベルから紹介してもらっていろんなライブ・ハウスに出してもらったり、ライブ・イベントにも呼んでもらえるようになりました。小岩エムセブンの店長の柿沼実(TIARA)君はもともと横須賀でバンドをやっていたので、その繋がりもあってよく呼んでもらってましたね。当時はLESS THAN TV周辺のバンドに対する憧れとかもあったし、そういうシーンとは今でも絡みたいなって思います。でも、東京で自分達が関わる独自のシーンを作りたいとは思わないです。自分の音楽を追求することとシーンを作ることでは、バンドをやる意味が全く違ってきますから。
—『camouflage』は新たな境地を切り開いた作品だと思うのですが、以前のようなハードコア的な要素を求められることはありませんか?
I : それはあると思います。でもバンドをどうしていきたいかって考えたときに、ただ求められているものを出していくだけではつまらないし、そんな人生でありたくない。僕らはパンク、ハードコアに限った音楽をやる姿勢ではなく、もっといろんな表現をしていきたいんです。だから求められているものを理解しつつ、好き勝手やっていきたい。僕らはどんな活動形態でやっていくかということよりも、いろんな人に聴いてもらって、良い反応も悪い反応も受け止めながら、音楽の中身で勝負するっていう本質的なところを突き詰めていきたい。自分の音楽はこういう音楽だからこういうところでしかやらないって決めつけてしまったら、何も変わっていかない。それよりも、どれだけ音楽性が変わろうが、いいものを作り続けていきたいと思っています。
Qomolangma Tomatoが気になった人におすすめの5枚
LIVE SCHEDULE
- 5月20日(水)@旭川CASINO DRIVE
- 5月21日(木)@札幌KLUB COUNTER ACTION
- 5月23日(土)@盛岡club change
- 5月24日(日)@仙台MACANA
3rd Album 「camouflage(カムフラージュ)」レコ発
- 6月12日(金)@渋谷O-nest
- 6月18日(木)@松本ALECX
- 6月19日(金)@金沢vanvan V4
- 6月21日(日)@京都磔磔
- 6月23日(火)@岡山ペパーランド
- 6月24日(水)@広島ナミキジャンクション
- 6月26日(金)@福岡VIVRE HALL
- 6月27日(土)@鹿児島SR HALL
- 6月29日(月)@高知カオティックノイズ
- 7月1日(水)@松山サロンキティ
- 7月3日(金)@高松DIME
- 7月4日(土)@徳島ジッターバグ
- 7月5日(日)@神戸HELLUVA LOUNGE
- 7月12日(日)@HEAVEN'S ROCK さいたま新都心
- 7月14日(火)@千葉LOOK
- 7月18日(土)@水戸ライトハウス
- 7月19日(日)@宇都宮HR VJ-2
- 7月21日(火)@高崎FLEEZ
- 8月20日(木)@横須賀かぼちゃ屋
- 9月6日(日)@いわきSONIC
- 9月8日(火)@仙台MACANA
- 9月9日(水)@盛岡CLUB Change
- 9月11日(金)@函館BAY CITY’S STREET
- 9月12日(土)@札幌COLONY
- 9月13日(日)@旭川CASINO DRIVE
- 9月16日(水)@新潟CLUB JUNK BOX mini
- 10月2日(金)@名古屋HUCK FINN(ワンマン)
- 10月4日(日)@大阪十三FANDANGO(ワンマン)
- 10月10日(土)@渋谷CLUB QUATTRO(ワンマン)
LINK
- Qomolangma Tomato website : http://www.qomolangmatomato.com/
- Qomolangma Tomato MySpace : http://www.myspace.com/qomolangmatomato
- Qomolangma Tomato photo : http://fotologue.jp/qomolangmatomato
- blog しがらみ虫が居ても困る(弐) : http://shigarami.cocolog-nifty.com/blog/
Qomolangma Tomato
石井成人(Vo)、小倉直也(G)、山中治雄(B)、大工原幹雄(Dr)の4人から成るロック・バンド。2003年結成。2004年2月に自主制作盤「1stDEMO」を発表し、翌2005年にABD RECORDSからミニ・アルバム「HONTOWASHIGARAMINONAKA」をリリース。2007年4月には初の全国流通盤「チョモと僕は柵の中」を発表。噛み付くようなボーカルと耳を突き刺すようなギター・サウンド、社会問題をえぐりだした歌詞がリスナーの心を揺さぶり、着実にファンを増やしている。