フィクションとノンフィクション、どちらも私
──そしてこれからスタートする"青い"は、フィクションとノンフィクションという二面性の世界観を持ったソロ・プロジェクトです。ひとりのドラム・ヴォーカルとして、それぞれの表現をする場になるかと思いますが、ご自身の言葉で"青い"について、改めて教えてください。
葵:簡単にまとめるならば、ノンフィクションは、ありのままの自分を見せていく場であり、これから私がソロ・アーティストとしてやっていきたいことを実現する場所です。対して、フィクションは、SNSを通じていままで出会った人との繋がりだったり、自分が挑戦しながら歩んできた道のりの続きですね。だからフィクションとノンフィクション、どちらも嘘ではなくて、どちらも私であることがこのプロジェクトの大事な部分だと思っていて。SNS上で見てもらってきた自分を「フィクション」と謳っているけど、自分の見てもらいたい部分を集中的に披露してきたという意味であって、これまでとこれからのSNS活動にも嘘はないです。
──なるほど。ソロプロジェクトに関してお声がかかった時、どう思いましたか。
葵:最初からとても前向きに捉えていました。ただ、SNSを通して発信してきた音楽や言葉と、自分がソロ・アーティストとして突き詰めたい音楽は、ジャンル分けすると等しくなくて、どちらかを選ぶことができずに悩みました。そんな中でチームの方が「どっちも葵だし、いままでとこれからを両立させるためのプロジェクトをやろう」と言ってくださって、本当にそんなことができるのか疑問はありつつも、そういう未来ならば前向きに考えることができて、そこからフィクション、ノンフィクションというふたつの世界観というプロジェクトテーマが生まれました。
──自分がソロアーティストとして活動していく理想像が見えた?
葵:方向性ははっきり見えました。ただ、理想像というのはまだこれからですね。だから、"青い"は自分探しのプロジェクトとも言えるかもしれません。これから活動をしていくなかで、自分だからできることや求めてもらえることを知ったうえで、なりたい自分や理想像へ向かっていけるのかなと。ドラム・ヴォーカルはあまり馴染みがないスタイルだと思うので、そういうところもこのプロジェクトを通して広めていきたいですね。
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──歌を歌うことに対しての興味はずっと前からお持ちだったんですか?
葵:表立って歌を披露したことや、誰かに習ったりはしていないですけど、歌うこと自体はずっと好きでした。いつも歌に寄り添ったフレーズを考えながらドラムを叩いているので、歌いながら叩くということは元からやっていて。ヴォーカルの人が歌いづらいと感じるフレーズは入れないようにしているし、ドラム単体ではなく、楽曲全体をかっこいいと思ってもらえるようなプレイを心掛けていて。だから歌への意識は元から強かったですね。
──自分の歌を披露しようと思ったきっかけはありますか?
葵:コロナ禍に入ってから、スタジオにいくことも発信者としては自粛したほうがいいと思ったので、生ドラムから自宅で叩ける電子ドラムのカバー動画に切り替えたんです。ただ、そうすることで表現の幅が一気に狭くなってしまって。電子は音の種類がたくさんあるけど、どう叩いても私だけの音にはならないじゃないですか。誰が叩いても同じ音が出ることが電子ドラムのいいところでもあるけど、表現という点では扱うのが難しくて。そこで自分にしか出せない歌声という要素をプラスできたら、電子ドラムでも自分の理想の音楽ができるかなと思ったのがきっかけですね。
──でもドラマーとしての葵さんが確立されているなか、歌っている自分も世に発信することは簡単ではないですよね。
葵:ドキドキでしたね。「ドラマーなのに歌?」って言われてしまうのが怖かったし、ブレている人と思われちゃうのも嫌で。でも歌うことがドラマーの可能性を広げる手段だと確信していたので、今回の"青い"プロジェクトとの出会いがなくても、歌う姿を発信してみようと決めていたんです。
──そうだったんですね。
葵:実は"青い"プロジェクトのスタッフさんとの出会いは、別件のサポートドラムを依頼されたことだったんです。そのときに「あなたはドラマーなのにフロントマンオーラがすごい」と言ってもらって。そこで将来的なソロ活動に関する思いを話したら「一緒にやろう」と言ってくださって。そこからソロアーティストとしての活動とか、歌うことに対して本格的な準備がはじまりました。