2020/10/28 18:00

生活の機微を掬うYMB──不器用な極上ポップスで晴れに変えていけ!!

数多いるアーティストの中からOTOTOY編集部がライヴハウスやネットで出会い、ビビッときた、これはもうオススメするしかない! というアーティストを取り上げるこのコーナー。読んで、聴いて、彼らのパフォーマンスを観てほしい。損はさせません。 そんな絶対の確信とともにお届けする、第20回。

第20回 : YMB

今回紹介するのは、大阪を拠点に活動するYMB。しなやかに強かな極上ポップスを、miyamoto(Gt / Vo)と いとっち(Ba / Vo)の爽やかなツイン・ヴォーカルで歌い上げる4人組バンドだ。

今年の3月に新体制初の作品『ラララ』をリリースすると、8月にはキャリア初となるワンマン公演を開催、9月にはバンドの目標として掲げる、スーパーノアとボールズを迎えたスリーマン・ライヴを大盛況の内に成功させるなど、2020年の夏を果敢に乗り越えた彼ら。

そんなYMBの音楽の魅力は、軽やかなアンサンブルにひっそりと隠れた生々しい人間の生活感。ぱっと聴きは耳触りがよく、誰にでもあてはまるようなほのぼのとした雰囲気を演出しているが、実はもっと内省的で、作曲者であるmiyamotoの確固たる目線で切り取られた日常の機微が生々しく描かれている。思春期的な捻くれの効いた言葉選びや、パートナーの寝顔を見て結婚生活の自戒を打ち立てる純情な不器用さなど、既出のソングライターとは一線を画す新たな感性の豊かさに心を掴まれる。サウンド面においては、新メンバーのヤマグチヒロキ(Dr)と今井涼平(Gt)の加入を経て、前作『CITY』よりもサウンドの輪郭が明確になり、miyamotoが想い描く楽曲の世界観をより高い解像度で表現されるようになった。

また、自粛期間中には様々な配信ライヴに積極的に参加し、新曲レコーディングの様子をスタジオから生配信、さらには先述の大きなライヴの成功など、これまでに無いハイペースな活動を見せた4人。明らかに以前とは異なる勢いで発信を続ける彼らをぜひ、この記事で皆様に知っていただきたい。

OTOTOYでも配信されているYMBの楽曲とともに、メンバー全員へのメール・インタヴューをお楽しみください。

当たり前を特別に変える音の魔法

MAIL INTERVIEW : YMB

──YMB結成以前からmiyamotoさんは宅録での活動をされていたとのことですが、宅録や音楽活動を始めたきっかけを教えてください。

miyamoto : きっかけは大学生とき、友達に「MTRっていうものがあるよ」って教えてもらったことでした。すぐにTASCAM製のものを購入してひたすら録音していたのを覚えています。それからはずっと家で作曲活動だけを続けていましたが、作って満足していたわけではなく、いつか人前で発表する時が来るんだろうなと漠然に思っていました。そんなとき、いとうさんから「バンドしようよ」って誘ってもらったことがライブ活動などをスタートするきっかけになります。

yoshinao miyamoto

──バンド結成のエピソードとして、「家に引き篭もっていたmiyamotoさんをいとっちさんが外に連れ出した」と紹介されていますが、「外に連れ出さねば」と、いとっちさんを突き動かしたものは何でしたか?

いとっち : 初めて彼の作った曲を聴いたときから、いいなぁと思っていたのですが、miyamotoさんから「何か作って欲しい曲はある?」と聞かれて、半信半疑でリクエストしてみたら、ほんの数日でとてもいい曲が完成していたんです。こんないい曲を作れる人は外に連れ出して、色んな人に聴いてもらわねばもったいないという気持ちと、「こんなにいい曲を作れる人がいるんですよ~!」 って自慢したい気持ちがありました。いま思えば、ろくに音楽活動をしたことがなかったのに無謀でしたね。いい曲ができると誰かに聴いてほしくてたまらなくなるのは昔と変わっていなくて、いまでも近しい方々に音源を勝手に送っては困らせてしまっています。(送られてきた方、いつもすみません。)

1st EP『遊覧船』収録 : “収録揺れる電車” MV
1st EP『遊覧船』収録 : “収録揺れる電車” MV
  

  ──miyamotoさんといとっちさんのツイン・ヴォーカルがYMBの大きな特徴のひとつだと思います。いとっちさんをヴォーカルに迎えようと思ったきっかけは何でしたか?

miyamoto : 僕は決して歌が上手いわけではないですし、基本的にはいとうさんのほうが歌えると思っているので、全部自分が歌いたいという気は最初からありませんでした。もっと練習して圧倒的に上手くなってくれたら、メイン・ヴォーカルはいとうさんでいいと思っています(笑)。 それから曲作りに関して言えば、2人の音域を気にしてしまうと楽曲に制限がかかってしまうので、僕といとうさんのどっちが歌う曲かというのは決めずに作り出します。なので、曲が完成してからピッチ的にいとうさんに歌ってもらおうとか、難しいフレーズを弾きたいからここのパート歌ってとかで割り振りしています。

いとっち

──今井さんとヤマグチさんが繰り出すフレーズからは純粋なロック・バンドというより、ジャズやファンク、ビッグ・バンドのような大きなアンサンブルを意識する音楽の影響を感じるのですが、お2人の音楽のルーツについて教えてください。

ヤマグチ : 自分の引き出しを増やすためにジャンル問わず様々なバンドに参加して来ました。その中でも、オーニソロジー(奈良県出身SSW辻村泰彦によるソロ・プロジェクト)というR&BやJAZZ要素の強いバンドに参加する事がきっかけでブラック・ミュージックにどっぷりハマったことが、いまのプレイ・スタイルに影響していると思います。クリスデイヴ、ケンドリックスコット等のジャズ・ドラマーが好きなので、フレーズが無意識に寄ってしまう部分もあるかもしれませんね。

クリスデイヴ
クリスデイヴ
  

今井 : 音楽の好みが雑食なので、その時々によってハマっているものが変わるのですが、好きなギタリストにジャズ・ファンクやブルースの人が多いのでその影響は受けている気がします。スティーヴィー・レイ・ヴォーン 、グラント・グリーンは昔からよく聴いています。

グラント・グリーン “I wish you love”
グラント・グリーン “I wish you love”
  

──YMBとして意識しているサウンドや、目標としているバンドはありますか?

miyamoto : 目標は曲ごとに違うかもしれないです。例えば、“ラララ”だともろにELOを意識していたり。ただ、その曲のいいところを技術的にもっと表現できるバンドになりたいと思っていて、そういう意味では9/27(日)に対バンしたスーパーノアは僕らにとって目標のバンドです。

2ndミニAL『ラララ』収録 : “ラララ” MV
2ndミニAL『ラララ』収録 : “ラララ” MV
  

  ──最新作『ラララ』は前作『CITY』と比べ、よりパーソナルな内容に踏み込んだことによって、逆に外へ大きく開いた内容の作品になったと感じました。みなさんにとって本作はどのような作品になりましたか?

miyamoto : 個人的には、より自分の今の生活を具体的に反映した作品になりました。結婚生活の中でよく考えることがたくさん詰まっています。自分の中で言いたいことの具体性が増したことで、少し読み取り易くはなったのかなと思いました。

いとっち : いまのYMBを詰め込んだ思い出深い作品になりました。曲は夫婦生活がそのまま歌詞になっていて、少しこそばゆいところもあるのですが、このアルバムをこのメンバーで出すことができて本当に良かったです。まだ成長途中なので、これからの基準になるアルバムだと思います。

2ndミニAL『ラララ』収録 : “若いふたり”
2ndミニAL『ラララ』収録 : “若いふたり”
  

ヤマグチ : YMBとして初めて参加した作品なので、曲が出来上がっていく喜びが強い反面、自分としては探り探りだった部分もありました。いい意味でそんな初々しさによって、アルバム1枚を通しての勢いが出たような気がしています。

ヤマグチヒロキ

今井 : 『ラララ』は、YMB加入後初のレコーディング作品だったのでとにかく必死でした。 いまになって自分の弾いたパートを聴くと、等身大で綴った日記を読んでいるような嬉し恥ずかしい気持ちになります。

今井涼平

──『ラララ』制作にあたって本作ではどのようなサウンドや、作品としての世界観を表現しようと思われましたか?

miyamoto : バンドとしてはじめて録音するアルバムだったので、音作りやプレイに関してはメンバーに任せました。曲の世界観は歌詞で築くことができたので、サウンド面はみんながいいと思った音で録れているんじゃないかな。

2ndミニAL『ラララ』収録 : “crossfade”
2ndミニAL『ラララ』収録 : “crossfade”
  

いとっち : “夏の螺旋”では懐かしくて少し寂しい夏を、“とけない魔法”では冬の都会でばったり懐かしい人に会ったときの心情だったりと。日常にありふれた心の動く出来事を想像してもらえたらいいなと思って録音しました。

 

──『ラララ』リリース以降に発表された“フィルム”や“A Summer Day”はヒップホップやハウス・ミュージックの雰囲気が感じられる楽曲でした。YMBがこれから作りたい音楽はどのようなものですか。また、次作への展望やイメージもあれば教えてください。

自粛期間中に宅録で制作された楽曲“フィルム”
自粛期間中に宅録で制作された楽曲“フィルム”
  

miyamoto : コロナウイルスの影響でレコ発イベントが全部飛んで、歌詞の面では意識が1回リセットされた感じがありました。これまでよりもさらに言葉のリズム、メロディーへのハマり方を重視するようになりましたし、言葉数はより多く、それでいて密度は濃くしていきたいと思っています。また、その意識がメロディーにも反映されていますね。言葉ありきのメロディーというか、歌詞の持つ意味を自然に伝えられる歌を作っていきたいです。言葉数や、韻への集中力が増しているので、“フィルム”や“A Summer Day”は結果的にヒップホップ的な音に寄ったのかもしれません。そういう自分の変化として必然だったのかなと思っています。

いとっち : 最近の曲は音に言葉を詰め込んだリズミカルな曲が多くて、ベースを弾きながら歌うのがどんどん難しくなってきていますし、バンド・アンサンブルとしても難しい曲ばかり。でも、その中で自分たちがどれだけやれるのか毎回挑戦していきたいです。

最新SG「A Summer Day」トレイラー
最新SG「A Summer Day」トレイラー
  

──8月に行われた初のワンマン・ライヴも素晴らしかったです。『CITY』と『ラララ』を完全再現したセット・リストでしたが、このような構成にしようと思った理由を教えてください。

miyamoto : ありがとうございます。これは〈Live House Pangea〉のブッキングを担当されていて、僕らもよくお世話になっている中井さんと相談して決めました。 配信ライブが一般的になってきている中で何か新たな試みをしたいというのと、既に自分の気持ちは『CITY』と『ラララ』よりも先を見ているいる部分があり、次に進むための集大成的なライブをしてバンドを前進させたいという気持ちであのセット・リストを組みましたね。今ちゃんもMCで言っていましたが、やっとスタート・ラインを踏み出せたという気持ちでいます。

YMB初となるワンマン・ライヴのダイジェスト映像
YMB初となるワンマン・ライヴのダイジェスト映像
  

──よく出演されるライヴハウスを教えてください。また、そのライヴハウスの好きなところについて教えてください。

全員 : 〈Live House Pangea〉です。

miyamoto : Pangeaはブッキング、スタッフの方々が本当に音楽とライブが好きなんだなというのが伝わってきます。言葉で指摘されるわけではないのですが、みなさんの反応で自分たちがいいパフォーマンスをできたかどうかがよくわかりますね。 音がとても良いので気持ちよく演奏できるし、さらに成長するきっかけをくれるライブハウスです。

いとっち : スタッフのみなさん全員が気さくなのに、ライブに対しては本気という絶妙な空気感があって、とても刺激されます。

──関西の音楽シーンで影響を受けた、もしくは注目しているアーティストはいますか? また、それらからどのようなインスピレーションを受け、作品に反映されていますか。

miyamoto : アフターアワーズは前のサポート・メンバーが活動していることも大きく、思い入れがとても強いです。ライブ・バンドとしてどこまでも上っていって欲しいです。意識するバンドはたくさんいますが、特に歌でグイグイ引き込めるバンド、Easycomeとベルマインツのことはよく考えます。同じことをしていてもダメなので、違う工夫をして対抗していかねばと常々思っています。

1stミニAL『CITY』収録 : “city” MV
1stミニAL『CITY』収録 : “city” MV
  

いとっち : ライブ・パフォーマンスに関しては、ボールズに影響を受けました。MCと演奏がどちらもツボで、彼らのように勢いのある演奏しかり、人を惹きつけられるようなMCができるように挑戦していきたいです。

ヤマグチ : 僕はスーパーノアと、the coopeezです。安定したアンサンブルとリズム感、時にエモーショナルな楽曲は今後のYMBのライブパ・フォーマンスや作品にも影響が現れるんじゃないかなと思っています。

今井 : YMBに加入してからは、さとうもかやDENIMSなど、ツイン・ギターのバンドやソングライターが主体となって活動しているバンドを意識的によく聴くようになりました。特に上記のアーティストはルーツ・ミュージックの昇華の仕方がとても自然で憧れています。

──目下のバンドとしての夢を教えてください。

miyamoto : この4人でいけるところまで、YMBの音楽をどこまでも広げたいです。とても個人的な狭い世界のことを歌った曲がどこまで遠くの人に届けられるのか、挑戦していきたいと思っています。

いとっち : 毎回のライブで成長した姿を皆様に観ていただきたいので、どんなに大きなステージでもベスト・パフォーマンスを出せる実力をつけたいです!

ヤマグチ : 各々のライブパフォーマンスやスキルの向上、フェス等の大きな舞台での演奏です。

今井 : 少しでも多くの人にYMBの音楽を知ってもらうことです。

LIVE SCHEDULE

〈calm sleep〉
日程 : 2020年10月30日(金)
会場 : 寺田町fireloop
開場 / 開演 : 18:00 / 18:30
出演 : YMB、my sister circle、Re:name、Ochunism、The L.B.

〈JANUS lavoratory3〉
日程 : 2020年11月6日(金)
会場 : 心斎橋JANUS
開場 / 開演 : 18:30 / 19:00
出演 : YMB、um-hum、EMIRI、The L.B.

〈YMB主催イベント『あさぼらけ』〉
日程 : 2020年12月4日(金)
会場 : Live House Pangea
開場 / 開演 : 18:30 / 19:00
出演 : YMB、Special Favorite Music、平岡ひぃら

YMBが紹介してくれた関西の注目バンドも要チェックだ!!

スーパーノア

“なつかしい気持ち” MV
“なつかしい気持ち” MV
  

the coopeez

“無力な瞬間” MV
“無力な瞬間” MV
  

ボールズ

“通り雨” MV
“通り雨” MV
  

オーニソロジー

“Brocken Spectre” MV
“Brocken Spectre” MV
  

アフターアワーズ

“シャッフル” MV
“シャッフル” MV
  

Easycome

“スピーチ” MV
“スピーチ” MV
  

ベルマインツ

“ハイライトシーン” MV
“ハイライトシーン” MV
  

PROFILE

YMB

2015年より大阪を中心に活動している。新しくもどこか懐かしいポップミュージックを日本語で歌う4人組。 引きこもって宅録をしていたyoshinao miyamoto(Gt.vo)をいとっち(Ba.vo)が外に連れ出して活動開始。 様々なサポートメンバーを迎えて活動していたが、2019年2月よりヤマグチヒロキ(Dr.)と今井涼平(Gt.)が加入し現体制となる。

【公式HP】
https://ymb-band.jimdosite.com
【公式ツイッター】
https://twitter.com/ymb___

この記事の筆者
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[インタヴュー] YMB

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