2013/05/20 00:00

画家 ~美味しいお酒が飲めそう~

画家

このイベントの最後の出演アーティスト。転換時、雨も降っていないのに何故か水が滴り落ちてきたフロア。ステージに“画家”のメンバーが並びきってもその事態は収まらず、修復作業の間OTOTOY編集長の飯田が場をつなぎがてら、メンバーにインタビューした。“画家”に入ったきっかけは何かと問われた一人が「美味しいお酒が飲めそうだから」と答えて、フロアにいるお客さんのほとんどがビール片手に激しく納得したに違いない。

“画家”のメンバーは16人。ということだったが、その日ステージに並んだメンバーは14人。ざっと見て、コンガ・ジャンベ等のパーカッション3人、ドラム、キーボード、鉄琴・鍵盤ハーモニカ、ベース、ギター2人(時に3人)、トランペット、サックス3人(時に2人)、ディジュリドゥという編成。曲によって楽器チェンジあり。最初は「パレード」からスタート。静かなドラムとギターのアルペジオから始まりだんだんと各楽器の音が重なりあって個々の音を聞かせていき曲調も少しドリーミー、パーカッションとディジュリドゥのグルーヴ感も比較的緩く、バンドの自己紹介的な印象にもとれた。会場がふんわりと温まったのだが、突き抜けたテンションのMCを挟んでからの「遠足」ではディジュリドゥとカットギターで軽やかな足取りを思わせる冒頭から一転、スカを思わせるリズムになり、最終的にはサンバも出てきて、飲んで騒いでの大人の遠足か。その後の楽曲は、冒頭からがつんと音でおしてくるものが多く怒濤のグルーヴが始まっていく。少しコミカルな和風メロディの「西の義賊」や「獅子舞」ではチンドンやお祭り要素ありで会場を踊らせる。

独特の低音をフロアに這わせ、ヴォイス・パーカッションの役割も担っていたディジュリドゥだったが、雄叫びともとれるような声の増幅で、全体の感情を引っ張りあげる。ギター・フレーズで曲の雰囲気を自在に操り、不適な笑みを浮かべながらギター同士でフレーズ合戦。情感たっぷりにも、リズムを刻むにも自在のホーン隊。ステージ奥で繊細な鉄琴の音色を響かせていたと思えば、鍵盤ハーモニカをいくつも抱えてフロアに踊り込んできたり、インストバンドなのにMCはゴールデンウィーク最終日の夜に踊れ騒げと即興の歌(この日限定か?)で大いにあおってくるあたり歌もいけるのではないかと思わせたり、メンバー一人一人を追いかけるのが楽しく、見どころ聞きどころ満載で、とにかくステージに釘付けになった。冒頭で「美味しいお酒が飲めそう」と書いたが、その日の出演者でもある全員10代でお酒を飲めないBELLRING少女ハートのメンバーも、セーラー服の襟とスカートをひらひらさせながらフロアで楽しそうに踊っていたので、お酒が飲めない人でも未成年でも大丈夫。曲1つとっても、どこかクスリと笑える要素があって、そこに“画家”のスタンスが現れている。「お腹が痛い」の最後を鮮やかに飾ってくれた“画家”、今後のライヴも見てみたい。そのときは是非16人編成で。(岡崎千紘)

画家 ~酒を交わすように音楽を~

画家

ジャンル問わず、今フレッシュな音楽を届けるイベント『お腹が痛い』。前アクトのBELLRING少女ハートが可愛らしくも独特な世界観で盛り上がりを加速させ、熱気で溢れた会場はエアコンから水が漏れるといったハプニングも発生。そんな事件を乗り越えて、いよいよ本日のラスト・アクト、16人編成の大所帯インストゥルメンタル・バンド、画家が登場した。狭い舞台は皆個性の違った16人でいっぱいになり、ギター、ベース、ブラスから鍵盤、ハーモニカ、オーストラリア先住民族の伝統楽器、ディジュリドゥまで幅広く用意された。

「パレード」でしっとりと始まり、2曲目「遠足」で早くもメンバーの衝動は爆発!  ディジュリドゥの唸りが響きわたり、それが見事にギターやパーカッションと混じり合うことでバンドに一体感を生み出していた。この曲を皮切りに、オーディエンスの動きも激しくなってきた。「西の義賊」「おばけの夏」と次々に披露され、会場の高揚に呼応するかのように、先ほどビニールで補強したはずのエアコンからは再び水が。小さな滝となってキラキラとステージに降り注ぎ、客は嫌がりもせずにその空間を受け止めていた。一仕事を終えたBELLRING少女ハートのファンさえも巻き込み、そこは見事なダンス・フロアになっていった。 ハッピーでダンサブルなその音楽性から、しばしば「フェス向きのバンド」と言われることが多い彼ら。私も以前からそう考えていた。しかし初めてライブを観て、フェスというよりも“大衆酒場のようなバンド”だということが分かった。16人それぞれがワイワイと楽器を奏でる姿は酒を交わし談笑しているように見えるのだ。実際に酒を飲みながらプレイする者や、一見寡黙そうだったが客席へ飛び込み踊り出した女性メンバー。それぞれの雰囲気も個性も違い、動きもまた良い意味で統一感がない。それは彼らが舞台に立ち“スター”として機能するのではなく、オーディエンスと同等の位置に立つプレイ・スタイルを意識しているからではないだろうか。我々オーディエンスでさえも登場人物の一人として、“画家”というコミュニティへ招待し、一緒に盛り上がっていきたい、そのようにおもてなしをしてくれているようだった。

アンコールは短いものだったが、確かな会場の揺れを感じ、素晴らしい大団円を迎えることが出来た。酒を交わすように音楽を浴び、ただただ愉快で仕方がなかった画家のプレイに、今私は可笑しくて猛烈にお腹が痛い! (梶原綾乃)

画家 ~渾身のライヴ~

画家

GW最終日の物悲しさを吹き飛ばす程の熱いライヴが繰り広げられている「お腹が痛い#4」だが、残すところあと一バンド、画家だけとなった。サウンドチェック時からステージ上には人が増え始め、最終的には14人がステージに上がっている。そう、画家は大所帯インスト・バンドなのである(正式メンバーは16人)。この大所帯バンドがどんなライヴを見せてくれるのか、期待を膨らませながらO-NESTの前方フロアに進む。 なにせ大所帯だけあって、ステージ上は身動きが取れないほど、楽器がひしめき合っている。ギター、ベース、ドラム、管楽器、ピアニカ、ディジリドゥ、パーカッション…すごい迫力である。

1曲目「パレード」が始まる。管楽器の美しいメロディが印象的なゆったりした曲。フロアには早くもゆらゆら踊る人の姿が多数。1曲目が終わりMC。「GW最終日だからって、嫌々ライヴ観に来たんじゃないだろう!? GW最終日、盛り上がっていきましょう! 」と煽ってからの二曲目「遠足」へ。タイトル通り、どこか牧歌的なメロディーから始まるこの曲。しかし途中から一気にテンポが上がり、画家の強力なリズム隊がフロアに牙を剥く! ものすごい音圧!激しいビートにフロアは一気にダンス・タイムに突入! それはさながら「遠足」が「マラソン」に豹変してしまったかのようだ。 画家の音楽は、いささか乱暴ではあるが、一言で言うならファンクである。しかしそこに昭和歌謡や童謡のようなメロディを加えることで、ぐっと彼らの音楽に親しみやすさをもたらしている。一度聴いただけで覚えられるメロディに、始めは様子見だった観客も踊りだしている。 3曲目「西の義賊」、4曲目「旅役者」、5曲目「おばけの夏」と続く。ステージ上のメンバーもフロアに下り、完全にステージとフロアが一体化している。これでもかと踊り狂わさんばかりのビートに、筆者も気がつけば汗だくになっていた。最後の曲と紹介された「獅子舞」ではBELLRING少女ハートのメンバー、ファンも入り乱れての、本日最大のダンスタイム! みんな笑顔で踊り狂っている。まだまだ踊り足りない観客の要望に応え、「二分の短い新曲」というアンコールでライヴを締めくくった。

画家のライブ前に、O-nestの天井、冷房付近から水が漏れ出し、ライヴ開始が遅れるというアクシデントがあったものの、そんなことを忘れさせてくれるほど、観客の心をがっちり捉えた渾身のライヴであった。いつまでも鳴り止まない拍手がそれを証明していた。 GW最終日という、ある種の寂しさが漂う日に開催された「お腹が痛い」だが、ラスト、最高に楽しませてくれた画家に観客は皆、笑顔になっていた。筆者も翌日の筋肉痛を気にしながらも、心地いい疲労感に満たされてO-nestを後にしたのだった。(野津真澄)

<セットリスト>
1. パレード
2. 遠足
3. 西の義賊
4. 旅役者
5. おばけの夏
6. 十三月
7. 獅子舞
en.子連れ狼

[ライヴレポート] Deerhunter

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