Yasei Collective ~ある種の“芸術活動”~

昨年は「FUJI ROCK FESTIVAL'12 ROOKIE A GO-GO」に出演したことでも注目を浴びるYasei Collective。今回の「お腹が痛い #4」ではsukida dramasやthe chef cooks me、画家といったポップ で踊って楽しむライヴがよく似合うバンドらやBELLING 少女ハートといった制服姿のアイドルとの共演で、彼らの存在は多少異色であったように感じた。しかし、今企画においてYasei Collectiveは間違いなくヒリヒリするような刺激を与えるエッセンスに成り得たように私は思う。
約2年ぶりの配信限定シングルとしても話題となった楽曲「CHAT‐LOW」の冒頭、乾いたシンバルが4つ鳴るとそれまでの和んだ空気が一瞬にして張りつめたのを感じた。ギターの斉藤の歌声が入るがエフェクターで電子音のように響かせかつ何重にも重ねられ全く体温は感じない。それは例えばどこかで聴いたことのあるような異国の楽器のような音色とメロディで、感覚がトリップし、かつ単調に刻まれるリズムで意識が引き込まれる。短いMCと新曲が挟まれ披露された「GOTO」は、楽曲が進むごとに展開が繰り返され、奥行きを広げて最終的には莫大なパワーを放つような構成。それまで繰り返されていたメロディもリズムも一瞬に消え、中盤、シンセの一音一音たどりながら丁寧に弾かれるメロディに、ドラム、ギター、ベースが加わり全体がグルーヴと化し迎える終盤は全く予想外の世界である。特に、メンバー全員合わせて一発の音を鳴らして終わるラストの重厚感は本当に感動的であった。 Yasei Collectiveは計算され尽くした完璧なサウンドと繰り返される転調で、良い意味で体温が感じられない点が魅力だと感じていたが、ライヴでは意外なほどにメンバーの熱量が楽曲に加わり、音源とは全く違った姿を見せていた。生と動のせめぎ合いのような、完璧に整頓された世界を多少暴力的にでももう一度再構築するような、言わばある種の“芸術活動”によく似ていると言ってもいいだろう。松下のアグレッシブなドラミングは激しく汗がほとばしり、転調の際にはメンバー全員の真剣な視線が一点に集まり、生ものであるライヴ空間の生成過程をまざまざと見せつけられているようだった。
最後の「Bong Bong Chin Chin」ではコミカルなシンセが飛び跳ね、MCでの彼ら自身のカジュアルな印象を思い出させた。楽曲によってもさまざまな表情を見せる彼らのライヴの魅力はまだまだ発見の余地がある。必ずまた足を運びたくなった。そしてこの会場にいたアイドル・ファンも、sukida dramasやthe chef cooks me、画家それぞれのファンも必ず、彼らのライヴをまた見たいと思った筈だ。(藤枝麻子)
Yasei Collective ~あっという間の30分~

連休の最後の夜までめいっぱい踊りつくしたい、という人々が集合したGW最終日の渋谷O-nest、ジャンルレスなこのイベントのトップバッターとして、Yasei Collectiveは登場した。
2月に出たシングル曲「CHAT-LOW」からライヴは始まった。ドラムが細かく刻み始め、ストイックなドラムのリズムに、加工されたボーカル、キーボードが入ると、一気にポップになる。最初は、それぞれが独立した音を奏でているように感じられたが、少しずつ混ざり合って一つの音楽となって行く様子は、これから始まる30分への期待を大きく高めた。Yasei Collectiveの曲は、一つの楽曲の中で展開が非常に大きい。ライヴではそれが顕著にあらわれており、クルクルと会場の空気をまるでスイッチでも押すかのように瞬時に変えてしまう。演奏すればするほど、次はどうなるのか、どんな音が飛び出すのか、という観客の期待が高まって行くのがわかった。合間のMCも短く終え、クールダウンもそこそこに、次の曲へ。「Goto」での、閃光のようなドラムと、どこか影のある不安定なメロディーが合わさって行く過程は素晴らしく、バンドの能力の高さを示していた。 「ラストの曲です。この後も楽しんで行ってください」というドラム松下の挨拶を合図に、ラストの「Bong Bong Chin Chin」が始まった。最初の「CHAT-LOW」から徐々に高まってきていた観客は、コミカルなリズムに乗って、ここぞとばかりにその熱気を解放させた。この曲もまた、テンポの良いポップなメロディーが、気が付けばエレクトロなダンス・チューンに早変わりしている。ドラム・ソロで、会場の興奮は最高潮となり、あっという間に30分のライヴが終わった。
1曲目からラストまで興奮が途切れず、リズムにほどよく酔ってきたところで、変化球な音色が入り込んでくる。リズム隊のどっしりとしたビートと軽やかなメロディーが拮抗して、絶妙なコントラストを生み出す。6曲という少ない曲数でライヴを一つの作品としてまとめ、観客の心を見事にコントロールしていた。客席をYasei Collectiveの未知なる世界にトリップさせた、秀逸なライヴだった。(本田瑞貴)
<セットリスト>
1. Chat low
2. Uncle B
3. Do good
4. Demode RE
5. Goto
6. Bong Bong Chin Chin