
POWER DA PUSH第6弾! 不良ビート・メイカーが登場!
OTOTOYのヒップ・ホップ担当こと和田隆嗣が、毎月一押しのヒップ・ホップ・タイトルを追い続けるPOWER DA PUSH! 第6弾は、SUNNOVA!! 噂がシーンを駆け巡り、豪華なゲストを呼んで完成したフル・アルバム『Flip Stoner』。今作はエレクトロニカ~ダブを経由し、ヒップ・ホップ以外の要素も組み込まれた仕上がりとなっている。ジャンルは聴く人の環境、価値観に委ねるLOW HIGH WHO? PRODUCTION流のカウンター作品が届いた!
異質のスモーク・サウンド・ビート!!
SUNNOVA / Flip Stoner
【価格】
mp3 単曲 150円 / アルバム 1500円
wav 単曲 200円 / アルバム 2000円
ヒップ・ホップにも聞こえ、エレクトロニカかもしれない。だけどダブである。決定的なものは一つもなくリスナーに委ねているのは、彼のアイデンティティによるものかもしれない。「どこかで見た事のある景色だ。」そう思うこともあれば「いまだ知らぬ発見の連続」かもしれない。
リリースおめでとうございます! 昔ライヴを見ている時から、その突出していたSUNNOVA氏のビート・センスにやられていました。いつの間にかヒップ・ホップ・シーンに蔓延していたSUNNOVA氏のビート・コネクション! これからどんな絡み方をしていくのかが楽しみです!(OTOTOY / 和田隆嗣)
美しくも奇妙で、とても誠実なビート・ミュージック
8月の狂騒はとっくに過ぎ、9月も半ばにさしかかろうとしているのに、まだまだ暑い日が続く東京の小さな部屋で、トラック・メイカーSUNNOVAのファースト・アルバム『Flip Stoner』を聴いている。夏の思い出、海に入り、波に翻弄されるあの圧倒的な高揚感。ムシムシとした都会で聴く、クソみたいなニュースの数々。音楽と酒にまみれた幾つもの夜。とりとめもない記憶が、時にノスタルジックに、時に喜びや懐かしさを感じさせながら、時に怒りや焦燥となって、SUNNOVAが鳴らすビートと重なって現れては消えていく。
奔放にゆらぎ、うねりを生み出すスモーキーなビート。エレクトロニカ、アンビエントのような美しく漂うインスト・ナンバーもあれば、ABCをフィーチャーした「OPP」のようなノイジーで攻撃的なトラックから、LOW HIGH WHO?のレーベル・メイトEeMuとの「Dancer」のようなスモーキーでソウルフルなトラック。このアルバムには、様々な表情のビート・ミュージックが詰まっている。一か所に留まらない、想像力を自然と刺激されるようなビート・ミュージックは、都会の空気となり、様々な表情を見せる波となり、見上げる夜空や頭の中の宇宙、様々な人間の感情そのものとなり、着地点があるようで、気が付けばいつのまにか別の場所へ連れて行かれる。
ただし、このアルバムに浮遊感やドリーミーといった言葉はあまり似つかわしくなく、ましてや単純な逃避願望とは真逆の現実がしっかりと感じられる不可思議なサイケデリアが広がっている。目の前の風景や事象を切り取り音にしながら、その向こうに蜃気楼のように浮かび上がる「頭の中の第三世界」。ABC(AIR BOURYOKU CLUB)、EeMu、Paranel、USOWA(SIMI LAB)、Metro Field、Momose、golf、呂布(ズットズレテルズ)、個性豊かな客演陣によるリリックも、それぞれにSUNNOVAのビートに乗りながら、様々な現実や感情を描き出していく。美しい音からにじみ出る苛立ちや憧憬、怒りや悲しみ。矛盾した存在である人間そのものと、個々人が生み出す無数の心象風景。

未来的なもの、非現実的なものにノスタルジックを感じることがあるように、日常を忘れる為の旅先で日常に置いていかれているような焦燥に駆られることがあるように、様々なエレメンツの表裏を表しているようなビートの揺らぎ。抒情的にも叙景的にもなりえるビート・ミュージックの奥深さが感じられて、とても興味深い。各曲にちりばめられた細かな粒子のような音やノイズにまで、聴く者の想像力を駆り立てられるリアリティが凝縮されている。美しくも奇妙で、とても誠実なビート・ミュージックだ。(text by 佐々木健治)
POWER DA RECOMMEND
ABC(VOLO+piz?) / ABC
2010年、好事家達を唸らせた"VEAZY"が記憶に新しいVOLO A.K.A JZAと、トラウマ軍団VANADIAN EFFECTの酩酊担当Piz? による30日間という超短期間に制作された科学実験の研究レポート!! OMSB'EATS(SIMI LAB)、KMC(POPGROUP RECORDINGS)、WO2X7(VANADIAN EFFECT)、JJJJ(FIVE STAR RECORDS)参加。
RHYDA / FREEWHEELIN' THE HIGHFIELD
RHYDAが仲間と遊びながら吐き出すリアリティーは、まだ誰も言葉にしたことがないものばかりだ。世間のカラカラとした狂騒に隠れて、思い出し笑いのようにふと湧き上がり、脳裏にこびりつく言葉たち。描き出された夜の光景。夢と現実には境などなく、延々に続く今をどう生き、どう戦い、どう遊ぶか。一見無益なその衝動に純粋に向きあう者にとっては、RHYDAの言葉に共感にも似た感情が生まれるはずだ。
COASARU / 分裂
LOW HIGH WHO?を主宰するParanelのビート・メイカー名義COASARU。1st Album『別人格コアサル』から生まれた2nd Album『分裂』は、さらに物語の深みに墜ちて行くアングラ・カルチャーの産物。ノイズと、アンビエントを駆使した舞台音楽のようなヒップ・ホップ。それを彩るように個性ある客演者たちが踊る。KAZE magazineに影響を受け、グラフィティのライターたちや、スケーターやライダーなどのエクストリーマーたちに敬意を込めて放つメッセージ。
PROFILE
SUNNOVA
東京在住のビート・メイカーSUNNOVA。マシン・ライヴでクラブを揺さぶり、これまでに数多くのアーティストと共演を果たした。術ノ穴主宰「ササクレフェス」や『映像作家100人2012』のリリース・パーティー「REPUBLIC」でもアクトを務めた。SATELLITE from MSC (Libra Records)のアルバム『FULL SMOKE』にも楽曲提供、術ノ穴コンピ『HELLO!!! vol.4』に参加。またネットでも多くの作品を発信させている。曇りがちで心地のいい彼のビートは現代ビート・メイカーとしての注目を集めている。