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曽我部恵一が、ソロ名義での新作を発表! 先日OTOTOYでフリー・ダウンロードを実施した「サマー・シンフォニー」をはじめとする12曲が、ヴォーカルとギター、そしてハーモニカのみの完全な弾き語りで表現されている。「ここにはぼくの声とギター以外に何もありませんが、ぼくのすべてが詰まっていると感じています」という言葉通り、シンプルながら彼の魅力が存分に楽しめる、晩夏にぴったりの作品。
けいちゃん / 曽我部恵一
1. 夕暮れの光 / 2. サマー・シンフォニー / 3. パリへ行ったことがあるかい? / 4.愛ってやつを / 5. ネコとネズミ / 6. ねむり / 7. 恋は風とともに / 8. そしてぼくはうたをうたう / 9. 線香花火 / 10. さよならを言う時に / 11. おかえり / 12. 夏の夜の夢
販売形式 : mp3 / WAV(16bit/44.1kHz)
曽我部恵一でしかありえないロマン
曽我部恵一ソロ名義では『blue』以来、3年ぶりとなる新作『けいちゃん』。「寅さん」とか「両さん」とか、そんな人物を思い出させるような等身大すぎるほどに等身大のタイトル。身近な近所のお兄さん。曽我部恵一というアーティストの今は、きっとそんな場所にこそある。下北沢を普通に歩いていたり、自転車をこいでいる彼を見かけても、きっと何も驚かないだろう。ああ、あの人また今日もあそこでギターを弾いているなとか、今日もあの曲がり角で人と笑い合っているなとか、そういう存在。そして、このアルバムの内容もそのものずばりで、歌とギター、ハーモニカだけの弾き語りで紡がれていく夏の物語達。
アイスクリームとろけるような 暑い 暑い 夏に
i scream 届けるつもり 熱い 熱い やつ
この夏を代表する名曲「サマーシンフォニー」で歌われる2010年の夏を予見していたようなこのフレーズ。暑くなれば暑くなるほど、猛暑が続けば続くほど、この曲はどんどん包容力を増していくようだった。そして、このアルバムに収録されているのは、HIP HOPスタイルのシングル・ヴァージョンとは全く異なる手触りの、まるで物語を朗読するかのような弾き語りヴァージョン。夜の空気を吸い込んだようなロマンに満ちた曲からあらゆる装飾を削ぎ落とし、剥き出しの言葉で語りかけるこのアルバム・ヴァージョンは、ロマンティックで夢見心地な世界に連れて行ってくれたシングル・ヴァージョンとは違い、とことん尖っている。その突き刺されるような言葉には、七尾旅人「シャッター商店街のマイルスデイビス」にも通じるような生々しさと、それでもやはり曽我部恵一でしかありえないロマンが同居している。
「パリへ行ったことがあるかい?」「愛ってやつを」というまさに曽我部恵一と言いたくなる2曲に続く「ネコとネズミ」は、このアルバムの中でもポイントとなる一曲だ。トムとジェリーよろしく、ネコとネズミが街で追いかけっこを繰り広げる。汚れた街角の無常の中で、ネコとネズミは追いかけっこをしながら、互いの愛と夢を求め合う。何も変わらず仲良く眠るまで、その追いかけっこは続いていく。スリリングで、チャーミングな人生賛歌。
そして、彼は例えばこんな風に言葉を紡いでいく。
夜の中できみは / やわらかい生き物 / きみがねむってる間に / 月が笑ってたよ(ねむり)
コンビニで買えるもののなかで / いちばん素敵なものを選んだよ(線香花火)
こんな憎らしいほどにシンプルでロマンティックな言葉で生活を切り取り、そこに説得力を持たせられる人間は滅多にいない。それは、『けいちゃん』曽我部恵一という人間の生き様そのものだから。音楽を取り巻く状況がどう変わろうと、そんなことは別に関係ない。いつだって、音楽と音楽を愛する人達の生活があるだけだ。彼は、それを音楽でも生き様でも実践してみせる。 だからこそ、愛と夢を歌い、日々の景色を切り取りながら紡がれていく小さな物語達にこんなにも感情が揺さぶられるのだろう。
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日常のちょっとした出来事や物語に言い知れない幸せを見つけること。日常の一場面が、どこまでも広がっていくこと。 アルバムのラスト・トラック「夏の夜の夢」に代表されるように、曽我部恵一は清濁入り混じる日常を讃えながら、ささやかな一風景を無限に増幅させてしまうアーティストだ。しかも、たった一人、歌とギターとハーモニカだけで。そこに、『けいちゃん』こと曽我部恵一という稀代の詩人の素晴らしさがあるわけだし、そんな彼のロマンによって、僕は目の前の街の風景が、昨日見た、もしくは今夜見るだろう夢にも、まだ見たことのない景色やまだ出会っていない人にも繋がっていることを想像して少し嬉しくなる。そしてまた、目の前の恋人や友人、近所の商店街の風景に、言い知れない愛情を抱く自分にふと気付く。
素敵な夢から目が覚めて、日常の中で愛と夢を追い求め、すべてが夏の夜の夢にとけていく12編の物語。「これからは秋が来てぜんぶもとに戻してしまう」と彼は歌うが、2010年まだしばらく夏が終る気配はない。そして今、大切な人へ音楽をプレゼントするとしたら、NEIL YOUNGでもAL GREENでもなく、僕は迷うことなくこのアルバムを贈ろうと思う。(text by 佐々木健治)
夏に溶け込むメロディ
LOVERS ROCK NITE CREW/NO.1 / V.A.
DJイベントから生まれた人気コンピレーション・シリーズLOVERS ROCK NITEから生まれたIMAGE HOUSE BAND LOVERS ROCK NITE CREWのファースト・アルバム。米光達郎、井出靖、藪下晃正らのカバー楽曲をセレクトの元、さまざまなレゲエ・アーティストのエンジニアでも知られる太田桜子、ソロ名義やLITTLE TEMPOのメンバーでも知られるHAKASE-SUNがトラックを製作、プロデュース。曽我部恵一、ハナレグミ、金原千恵子やこだま和文らさまざまなミュージシャンがフィーチャーされている。甘く切ない楽曲をレゲエ・カバーした、リゾート感溢れるリスニング・ミュージック。
WHALABOUT / S.L.A.C.K.
「サマー・シンフォニー ver.2」で共演したPSGの一人、S.L.A.C.K.のセカンド・アルバム。前作に比べ、RAP、TRACK共に、更に独自のゆるさと鋭さが共存している。 もちろん大半のTRACKメイクを自らが手掛ける中、お馴染みMonjuから16FlipがTRACK提供。 フューチャリングに仙人掌。そして、Jazzy Sportから話題を呼んでいるBudamunkyのL.A仕込みのビートも興味をそそる。
billion voices / 七尾旅人
ほぼノン・プロモーションにも関わらず、多方面から反響が起こり奇跡と言われた七尾旅人×やけのはら名義のシングル『Rollin' Rollin'』から半年。独力で作り上げた3枚組超大作『911fantasia』以降、全国各地の独自の活動で出会った仲間を迎え、新旧問わず七尾ファンが間違いなく心揺さぶられる入魂のマスターピースが遂に完成! 音楽の全てを飲み込んだ七尾旅人が解き放たれた様な衝撃作。大人気の既発曲「検索少年」「Rollin Rollin」、UAにカバーされた「私の赤ちゃん」等含めた全14曲。真新しい感動を生み出す、21世紀のポップ・アルバム。
PROFILE
曽我部恵一(そかべけいいち)
1971年生まれ。香川県出身。ミュージシャン。<ROSE RECORDS>主宰。ソロだけでなく、ロック・バンド<曽我部恵一BAND>、アコースティック・ユニット<曽我部恵一ランデヴーバンド>、再結成を果たした<サニーデイ・サービス>で活動を展開し、歌うことへの飽くなき追求はとどまることを知らない。プロデュース・ワークにも定評があり、執筆、CM・映画音楽制作やDJなど、その表現範囲は実に多彩。下北沢で生活する三児の父でもあり、カフェ兼レコード店<CITY COUNTRY CITY>のオーナーでもある。
LIVE SCHEDULE
【曽我部恵一ソロ】
- 8/31(火)@渋谷 クラブクアトロ
- 9/25(火)@山梨 甲府 桜座
【曽我部恵一ランデヴーバンド】
- 9/11(土)@恵比寿 LIQUIDROOM
【サニーデイ・サービス】
- 8/28(土)@大阪 インテックス大阪 5号館
- 8/29(日)@山梨 山中湖交流プラザ きらら
- 9/3(金)@東京 LIQUIDROOM
- 9/5(日)@広島 クラブクアトロ
- 9/10(金)@名古屋 クラブダイアモンドホール
- 9/20(祝)@福岡 DRUM LOGOS
- 10/10(日)@高松 オリーブホール
- 10/11(祝)@心斎橋 クラブクアトロ
- 10/23(土)@新潟 LOTS
- 11/3(水)@札幌 PENNY LANE 24
- 11/22(水 祝前)@宮城 Zepp Sendai
- 11/28(日)@東京 九段会館 大ホール