2013/11/6~11/12の注目の2作品をレビュー!!
今週もたくさんの新譜が入荷しました! 全部は聴いていられない! そんなあなたのために、このコーナーでは、OTOTOY編集部がオススメする今週の推薦盤を2~3枚ピックアップし、ライターによるレビューとともにご紹介します。音源を試聴しながらレビューを読んで、ゆったりとした時間をおたのしみください。あなたとすてきな音楽の出会いがありますよう。
sei and music『せいみゅー』
sei and music / せいみゅー
【配信形式】
mp3、WAV
【価格】
mp3、WAV3ともに 単曲 200円 / アルバム購入 2,000円
のっぽのグーニーこと田中純一郎と、女性ヴォーカリストseiによるユニット、ju sei。すでに田中はソロでの活動を積極的に行ってきたが、今度はseiが、初のソロ・アルバムを発表した。作曲・作詞に倉地久美夫や、ザ・なつやすみバンドの中川理沙など11人の豪華メンバーを迎え、ひとり1曲を担当。演奏陣も三輪二郎やitoken(トクマルシューゴ、相対性理論のサポートとして参加)といった話題の人物が一堂に会し、壮大なヴォーカル・プロデュースを展開していく。まるで80年代のアイドルを彷彿とさせるスケールだ。
アルバム全体の構成はアンプラグドな作りが多くを占め、生音のまろやかな響きを大切にして、無音の間でさえも巧みに操っていく。しかし時にエレクトロなアプローチも見せ、有機質と無機質の編み込みがアルバム全体の抑揚を生み出している。極東からフレンチ、さらには電子世界に至るまで、楽曲のジャンルは実にさまざま。しかしseiのふくよかな声色は、どんな曲調でも脈々と馴染んでいく。アジアン・ビューティなポップ・センスは瞬き、柔らかに広がりを見せる。彼女のヴォーカリストとしての腕の高さを、満腹中枢いっぱいに堪能できる一作である。(text by 高橋拓也)
Jinmenusagi『胎内』
Jinmenusagi / 胎内
【配信形式】
mp3、WAV
【価格】
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 1,800円
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 2,000円
いきなりではあるが、“近頃の若い奴は…”というあまりにもステレオタイプな老害常套句は遥か昔、紀元前から使われていたという。ピラミッドの奥深くにも同じ文句の落書きがされていたのは有名な話だ。
jinmenusagiは1991年、千代田区生まれのアーティスト、ラッパーである。本アルバム『胎内』(タイダイ)は前作同様LOW HIGH WHO?からリリースされる彼にとって3rdアルバム。筆者もそうであるがjinmenusagiも、歌詞から察するに物心ついた頃から身近にパソコン、インターネットが存在した世代である。今作にはネット世界の利便性、誹謗中傷、無秩序を思春期から感じてきたからこそ沸き上がる疑問と怒り、そして“自分はそれでも引き続き生活していく”という強さと世間への呆れ混じりの自信に満ちている。今作5曲目の「Oh Oh」では2013年、ネットとオタクを結ぶ=は死んだ”という一節からもそれが強く感じられる。またjinmenusagiのもう一つの大きな特徴はインターネット・カルチャーを感じさせるアーティストにありがちないわゆる“ギーク感”を全く感じさせない歪んだ声質と生々しいフロウであろう。そのふたつが上記のメッセージ性と絡まりひとつになることで作品をより力強くかつ音楽的な作品に仕上げている。是非広い世代に聴いていただきたいアルバムだ。(text by 浜公氣)