2015/01/30 12:27

2015年、“高音質”の行方を占う! ――和田博巳、島幸太郎、高橋健太郎による、新春! ハイレゾ鼎談

(左から)高橋健太郎、和田博巳、島幸太郎

高品質ヘッドフォンや、USB-DAC、PCオーディオの普及など、近年更なる盛り上がりを見せる“ハイレゾ”・ブーム。その流れを受けて2014年も開催された、OTOTOY主催による高音質の祭典、OTOTOY DSD SHOP 2014。その会期中、特に注目を浴びたイヴェントの1つである〈話題の11.2MHz対応DACでDSD音源を聴こう!〉では、2014年から商用配信が開始した11.2MHzのDSD音源を、複数のUSB-DACで聴き比べを行い、その別次元とも言えるほどの音像の豊かさと、透明度で会場を驚かせました。

今回はそのイヴェントの延長戦として、サウンド・プロデューサー、オーディオ評論家としても活躍する和田博巳と、アクセス数150万以上の絶大な人気を持つオーディオ・ブログ〈Theme:Spatiality 3D〉を主催し、株式会社エミライで、音響製品の企画 / 開発を行う島幸太郎、そして、音楽ライター、レコーディング・エンジニアである高橋健太郎の3人にご登壇いただき、“ハイレゾ”を取り巻く様々な実態、最新のハイレゾ事情、そしてこの先、“高音質”はどのように進化、展開していくのかをたっぷり話し合っていただきました。ハイレゾに興味がある方はもちろん、ディープなハイレゾ・リスナーの方も、この対談を読めば、ハイレゾに関する今後がきっと分かっちゃいます!

文 : 浜公氣
写真 : 大橋祐希

2015年、“高音質”の行方は? ――新春! ハイレゾ、DSD鼎談

混在する2つのハイレゾ

高橋健太郎(以下、高橋) : 去年はハイレゾって言葉がようやく世の中に浸透するとともに、波紋が広がりましたよね。

島幸太郎(以下、島) : すごい波紋ですよね。

島幸太郎

高橋 : OTOTOYは2009年から高音質配信をはじめて、6年目でやっとここまで来た感があるのですが、2014年のハイレゾ・マークの制定や、ハイレゾを取り巻くマスコミの動きについて、PCオーディオの牽引者の島さんとしてはどんなふうに受け止めましたか?

ハイレゾ・マーク

和田博巳(以下。和田) : まず、ハイレゾ・マークに関してよく分かってないんだけど、24bit/48kHz以上をハイレゾと呼ぶ、などの括りはあるんですか?

島 : そもそもJEITA(※1)のハイレゾに関する規定は、「CDのフォーマットを越えるもの」としています。例えば16bit/88.2kHz以上とか、24bit/44.1kHz以上とかです。

※1.JEITA : 電子情報技術産業協会。IT産業およびエレクトロニクス産業の振興と、技術開発促進などを目的としている。

和田 : え! どっちかでいいの? OTOTOYはソフト販売側の会社として、ハイレゾの規格は明確にあるんですか?

島 : どちらかでもよいですね。JEITAのハイレゾ規定はフォーマットに関するものなんですが、OTOTOYさんでの配信音源はJEITA寄りの運用ではないでしょうか。

高橋 : OTOTOYは2009年に “HQD”っていうのを提唱して、これはパイオニアと話し合って作ったんですよ。担当者間では「これで世の中が変わる!」くらいに盛り上がったんだけれど、そうはならなかった。今頃は各社がHQDのマークを付けるているはずだったんだけれど(笑)。その時決めたのは、HQDは24bit/44.1kHz以上でしたね。

島 : 一方日本オーディオ協会が所有しているハイレゾ・マークの規格は24bit/96kHz以上です。これは色々と経緯があるんですが、前身となっているソニーさんの規格とほぼ一緒という理解で良いと思います。

和田 : え!

高橋 : でもソニーの規格はハードの規格なんですよ。ハイレゾ対応のハードは24bit/96kHz以上なんです。だから、2つのハイレゾがあるって感じです。そこがユーザーが混乱しがちなところなんですけど。

和田 : 今日はユーザー代表としていっぱい質問があります(笑)。

和田博巳

島 : 山に例えるなら、土台の部分にまずJEITAがあるんです。“ハイレゾ”というものを、なにかしらで表記するための工業規格として定めたもので、中身としては「CD音質以下のソフトは、ハイレゾではない」という規格になります。だからテープもレコードもmp3もハイレゾという表記はしないんです。ソニーさんなどの規格は、そのベースの上にある、もっと厳しい狭い範囲の規格と理解すると良いと思います。

和田 : 44.1kHzもだめなの?

島 : 24bit/96kHz以上でなければロゴを付けることができません。

和田 : OTOTOYは24bit/48kHzの音源が多いよね。

高橋 : それは僕個人の志向も影響していましたね。僕のスタジオ作業は24bit/48kHzが多かった。周りを見てもそうだったし、坂本龍一や山下達郎などのビッグネームも24bit/48kHzでやってる人が多くて。

和田 : そう、96kHzから48kHzに下げた人もいますよね。

高橋 : 24bit/96kHzに関しては、日本では小室哲哉さんがすごく早い段階でそっちに行って、その影響でavexが制作環境を24bit/96kHzで統一するって流れが一時期あったんですよ。10年以上前のことなんだけど。でも制作現場はすごく困ったんです。

和田 : それはなぜ?

高橋 : まず容量が倍になる。それはコピーにも倍の時間がかかるってことで、CPUも食うから、現場のストレスも増える。いまの技術があっても、64チャンネルとかを24bit/96kHzでやるなんて嫌なんですよ、現場としては(笑)。そういうストレスのせいで、ミュージシャンのモチヴェーションが下がることが一番危険ですから、パソコンはさくさく動くのに越したことはないんですよ。

島 : 僕も最初知らなかったですけど、アーティストのモチヴェーションとか、タイミング的にノってるうちに全部やっちゃいたいみたいな、そういう部分はすごく重要みたいですね。

高橋 : そう、そういうこともあって、24bit/96kHzは導入が難しかった。しかも、96kHzって箱がでかいから、ロック、ポップスだと、空間の感じが変わっちゃうんですよね。リヴァーブ感も変るし、ヴォーカルが前に出なかったりとか、そうなると24bit/48kHzの時とは、音作りも変えないといけない。それもあって24bit/96kHzにあげた人も24bit/48kHzに戻ることがあった。さらに、配信に関しても、サーバーや回線の負担が倍になる。だから、そこまでして、サンプル・レートを倍にする必要はないっていうのが、僕の価値観だったんです。でも、今はもっと多様な価値観が生まれているし、配信サイトとしては、当然、アーティストの意向を尊重する。だから、OTOTOYも24bit/96kHzの音源は増えてきています。

アナログとデジタル、音が良いのはどっち?

和田 : ロックやソウルは24bit/44.1kHzが多いけどそれはなぜ?

高橋 : 確かに、2014年は24bit/44.1kHzのハイレゾが本当に増えた年でしたね。24bit/44.1kHzが増えているのは、16bit/44.1kHzのCDマスタリングをする際にも、たいていの場合、DAW(※2)は24bit/44.1kHzか32bit/44.1kHzで動かしてるんですよ。だから24bit/44.1kHzのマスターも作るとなったら、1曲15分もあればできるんですよね。24bit/44.1kHzだと上下の聴こえ方がちょっと変わるから、少しEQなどを変えるかもしれないけど、大きな作業にはならない。で、それはアーティストが16bit/44.1kHzでOKしたサウンドに近くて、ちょっとクオリティーがあがったものになるから、制作面でもスムースで、リーズナブルなんですよね。これが、24bit/96kHzだと箱自体の違いが大きいから、マスタリングも違う方向で考えることになって、ハイレゾ版のマスタリングに、もう1日必要になったりする。

※2.DAW : デジタル・オーディオ・ワークステーションの略。デジタルで音声録音、編集、ミキシングなど、音楽制作に必要な一連の作業が行えるソフト。

高橋健太郎

島 : 昔よく言われた説明としては、製作環境は24bit/48kHz系で録っていて、それをCD用に変換する時にサンプリング周波数を非正数倍に変換しなければならないけど、この変換の際に音が悪くなる、と。だからプロがマスタリングをしなければならないって話も出ていたように思うんですけど、そもそも24bit/48kHzで録ってた理由はなんですか?

高橋 : それは24bit/48kHzと24bit/44.1kHzではDAWのパフォーマンスが違うからですね。だから、ミックス作業などは24bit/48kHzでやりたくて、僕の場合は、最初にアーティストからもらったマルチの素材が24bit/44.1kHzだったら、24bit/48kHzに変換して作業していました。今だったら、24bit/88.2kHzにするでしょうけれど。それくらい24bit/44.1kHzと24bit/48kHzの天井は違うので、24bit/44.1kHzでPro Toolsの作業はしたくなかったんです。

和田 : クラシックなどは別として、ロック、ポップスだったら、僕は24bit/44.1kHzでもほとんど問題ないと思うんだよね。

高橋 : 最終形はそうなんですけれど、プラグインなどを多用する制作途中はDAWを24bit/48kHz以上で動かしたいんです。

島 : 音源の相性的に、ですよね。まあ24bit/44.1kHzでなきゃいけない理由って逆に言うとCD作らなきゃいけないっていうことがあるからですよね。

高橋 : そういう意味でいうと、ハイレゾ配信のフォーマットが24bit/88.2kHzっていうのも意外にわかりやすいです。制作時は24bit/48kHzとか24bit/96kHzで作業していても、マスタリングで44.1kHzに持ってかないといけない。そこで、24bit/48kHzや24bit/96kHzをアナログ出力して、アナログでEQ、コンプレッションなどした後、今度は24bit/88.2kHzでADするんですよ。それを機械のなかでダウン・コンバートして、44.1kHzを作ってるマスタリング・スタジオは多い。その場合は、それを24bit/44.1kHzに落とさず、24bit/88.2kHzのままにすることで、やはり、少ない作業でハイレゾ版のマスタリングもできる。

和田 : デジタル・ミキサーは使わないの?

高橋 : デジタルの機材も使いますけど、マスタリングはアナログ領域でやるスタジオが多いですね。というかアナログ使わないと、お金とれないじゃないですか(笑)。だから、高級スタジオはアナログ志向です。

島 : 確かに最近は個人の方でも、環境が許せばプラグインで細かく作れてしまいますからね。そういう方も多いみたいですね。

※3.プラグイン : ここでは、DAWなどの音楽制作ソフトの機能を拡張するための追加プログラムのことを指す。

高橋 : はい、プラグインもどんどん音が良くなってる。アナログの機材のシミュレートも本当にグレード・アップしてるんですよ。だから、もうアナログが絶対いいとも言えないんですよね。前にOTOTOYの学校で講座やってた時、和田さんからある宿題が出て、それは、ポール・マッカートニー&ザ・ウィングスの「バンド・オン・ザ・ラン」のノーコンプレッションの24bit/96kHzのデータを僕がハイレゾ・マスタリングして、アビー・ロード・スタジオのハイレゾ・マスタリングと勝負しようというものだったんです(笑)。で、その時はアナログ機材を使ったマスタリングと、もう1つは完全デジタルのプラグインだけでやったマスタリングを作ったんですよ。それを15人に目隠しで聴かせてどれが一番音がいいかテストしたら、僕のアナログ・マスタリングに6人、デジタルに6人、アビーロードに3人だったんですよ。

Paul McCartney & Wings / Band On The Run
Paul McCartney & Wings / Band On The Run

島 : アビーロードを越えたんですね(笑)。

高橋 : 僕はアビー・ロードのマスタリングも聴いた上でやってますから、後出しじゃんけん的な有利はあったんですけれどね。それより一番驚いたのは、デジタルとアナログが一緒の票数だったし、あと、だれもどっちがアナログかデジタルかが分からなかった。

和田 : あれは衝撃的だったよね。もうデジタルでいいじゃんって思ったもんね(笑)。

島 : 前にOTOTOYさんでPCオーディオに関する講座を行った際に、参加者の皆さんを対象にwav、mp3のビットレートを変えたものをランダムにしてどれが元のwavファイルかという聴き比べの実験をしたんですけど、全然あたらなかったですね。そこにいた方はオーディオに興味のある方々だったんですが、それでもわからなくなってしまうんですよ。皆さん音の違いはわかるんですけど、どれが元のwavかを特定するのは難しい、というのが当時印象的でした。

高橋 : 聴き比べて、ようやくわかるわからないの世界だとすると、人がお金を払うほどのことではなかったともなるじゃないですか。だから違うのは当然なんですけど、切り替え試聴で違いがわかるっていうことにそんなに価値があるのかっていうのは、よく思うんですよ。

島 : ハイレゾになったということって、表面的には数字が大きくなっちゃうことが不幸っていうか複雑なところでもありますよね。例えば、サンプリング周波数が倍になったりとかビット数が8ビットも増えましたとかの話って、自分のなかでどう思うかって話と、客観性がどこまで必要かは、各人のバランスの取り方として難しいですよね。僕は自分が良ければいいという考えなので、どういう数値でも聴いて良ければいいです。

聴こえなかった音まで聴こえてくる、11.2MHzDSDの実力

和田 : 多くの方がそうだと思うんだけど、去年OTOTOYで出た丈青のDSD11.2MHzのピアノ・ソロは本当に驚いた。全く別のものだと思ったね。非常に価値のあるものだと思った。PCMでの24bit/44.1kHzや24bit/48kHzとかの違いとは、全く別の世界。DSDのソフトってクラシックが多かったと思うんだけど、ピアノ・ソロっていうのはダイナミクスやフリケンシー・レンジなど、いろんな面で分かりやすいんですよね。それで11.2MHz聴くともう戻れないってくらいすごいんです。

高橋 : 和田さん的に丈青の11.2MHz音源は大きいんですね。

和田 : 本当に。2015年に期待するのは、ピアノ・トリオだったり、ロックやヴォーカルものなど様々なジャンルのものが11.2MHzで聴けるかどうかだね。5.6MHz音源とも聴き比べもしてみたい。

高橋 : コルグの人にDSDとは結局のところなんですか? って聴いたら、「どこまでもSN比(※4)が良いアナログ・レコーダーみたいなものです」って言ってたんだけど、11.2MHzが出た時は、これはもうアナログのテープ・レコーダーではできない領域だなあと思ったの。STUDERを持ってきてもこの録音は出来ないと思えるものであって、音質のきめの細かさに関してもアナログ・レコーダー以上で、なおかつSNがいいから完全に勝ってしまう。

※4.SN比 : 信号雑音比 (signal-noise ratio)の略。SN比が高ければ雑音の影響が小さく、SN比が小さければ影響が大きい。

和田 : 生理的な肌触りの面でアナログって素晴らしいんだけど、DSDの透明感には勝てないですよね。ピアノの余韻の滞空時間の長さが11.2MHzと5.6MHzではわけが違うなあと。

高橋 : そのへんはPCMの16bitと24bitと同じくらいの差があるように思えましたね。

和田 : 録音の話ですが、演奏が終わってフェーダーを下げるじゃない。でも11.2MHzだと空気感とか気配までみっちり録れてるから、耳で聴こえてない音まで鳴ってるんじゃないか、と思ってフェーダー下げるの心配になっちゃうよね(笑)。

島 : 丈青さんの11.2MHz DSD音源を録音した奥田泰次さんのスタジオに、OPPOのHA-1とexaSoundのe20mk3を持ってお伺いしたんですけど、特にexaSoundはとんでもなく音の数が多いらしくて、「こんな音入ってなかったと思ってたんだけど…」ってぼやかれていたんですよ(笑)。こないだのOTOTOY DSD SHOP 2014で開催した、HA-1とe22の聴き比べイヴェントの時も聴こえ方が全然違うという意見もありましたし。

HA-1とe22の聴き比べイヴェントの様子

高橋 : 確かに、OPPOのHA-1とexaSoundのe22で聴き比べて、いままで聴こえなかった音が聴こえたときは衝撃的だったよね。

和田 : 左からペダル・アクションのような音が聴こえたよね。

高橋 : あの音、家帰ってヘッドフォンで聴き直したらどのDACでも分かるんですよ。

和田 : でも、あんなにお客さんがいっぱいいて、つまり決して静かな環境ではなくて、空調も回っていた状態。なおかつ、スピーカーの軸上じゃなくて、ほぼ真横で聴いていても分かったからね。

高橋 : あれは恐ろしいなと思いましたね。

島 : 音数の違いって「~に注目して聴いてください」とかの指摘をされれば、どんなDACでも分かると思うんです。オーディオのそもそもの基準として、無意識的にすごさが分かるかが重要じゃないですか。誰でも分かる違いだったら、お金かける必要もないと思うんですよね。

和田 : DSDレコーディングで5.6MHzでも、注意深くやれば相当S/N比の良い透明感のある音で録音できるじゃない。そういう時のために、DSDでも使えるデジタルのプラグインが出てくればいいけどね。

島 : そこが一番問題かもしれないですね。

高橋 : DSDはミックスでの加工がしにくいので、本当に録りのマイク勝負なところがありますね。

和田 : それでいくとヴィンテージ・マイクじゃなくても最新の優秀なマイクでいけるのかな?

高橋 : というか、そういう方向にならざるを得ないところもありますね。話を戻しちゃいますが、さっきのハイレゾ・マークは結局24bit/96kHzが基本で、40,000Hzが録音再生できることが基本じゃないですか。オレ、そんなマイク持ってたかな? と。

島 : まず、ハイレゾ・マークってどういう仕組みになってるかというと、基本的な条件として日本オーディオ協会に加盟する会社のみが申請できるんですね。加えて、ハイレゾ・マークがつけられるのは民生用の機器に限られるので、プロ用マイクとかはそもそも適用外ということになります。

和田、高橋 : そうなんだ!

(左から)高橋健太郎、和田博巳

島 : 業界的にもソニーさんが無償でハイレゾ・マークの権利を日本オーディオ協会に譲ったのは驚きだったと思うんですけど、でもソニーさん由来のマークは使いたくないというメーカーさんもいらっしゃるみたいです。

高橋 : DSDはどうなんですか?

島 : DSDはJEITAの基準からしてもハイレゾという理解で良いと思います。要はダイナミック・レンジを考えても可聴帯域であったら-100dBくらいあるし、周波数特性も少なくとも20kHzは越えてるので、JEITAの規格としてもハイレゾとして収まります。なので、日本オーディオ協会の基準も一応24bit/96kHzと言ってますけど、DSDの2.8MHzもハイレゾに含まれるという解釈ですね。ただし、解釈上だけで、オフィシャルには書いてないです。

高橋 : 40.000Hzの基準についてはどうなんですか?

島 : 40,000Hzは基準としてはあるんです。それはオフィシャルに言ってることですから。スピーカーとかヘッドフォンとかでハイレゾ対応と言うためには、40,000Hzの再生能力がないといけないということです。

高橋 : DSDだと40,000Hzはノイズばっかりだったりするよね(笑)。

島 : この基準が混乱の原因でもありますよね。スピーカーやヘッドフォンとかにハイレゾって言葉がつくことには議論があります。しかも実際についている製品があるんで、話がぐちゃぐちゃになっちゃったんですよね。

高橋 : アナログのオーディオ製品に関しても、ハイレゾ・マークが付いてないとハイレゾ買っても意味ないのか、みたいな話になりますものね。

和田 : 自分に近い一般の方々にとって、ハイレゾ・マークというのは有難い存在と言えるのだろうか。

島 : もともと、どういうところでハイレゾ・マークが機能するかというと、主に量販店さんで機能するんですよね。専門店さんでの利用はおそらくほとんど考慮してないでしょう。

高橋 : 買い替えを促すというか、DACを買うにあたって「じゃあヘッドフォンも変えようか」とかそういうところで、じゃあハイレゾ対応のものにするかといった感じですか?

島 : 量販店さんに関しては、担当製品のローテーションもあるので一概に店員さんが全員詳しい知識を持つとは限らないという事情があります。そうするとアイコン的にマークが付いていた方が便利だという現実があるから、営業的な意味で付けざるをえないというか……。個人的な意見としては、現時点ではイヤホンとかヘッドフォンのハイレゾ表記は無い方がわかりやすかったと思うんですけど、セールスの現場では、これがハイレゾに対応してるのかを簡単に説明しなければならない状況にあるということでしょうね。

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