2025/02/19 18:00

南アフリカ訪問記

────楽曲の話になったのでTYO GQOMが運営する〈USI KUVO〉についても。過去、ご自身たちも含め国内のアーティストを中心にリリースを重ねていますが、最近の状況は?

KΣITO:〈USI KUVO〉は......去年リリースしてません(笑)。

DJ MORO:すみません(笑)。去年の頭に年間スケジュールの話し合いしたんですけどね。

KΣITO:それぞれのソロEPを出したいというのは話してて。あとは何人か外部の人に依頼はしています。今年出るはず。

K8:曲はできているので。あとは最終調整。

KΣITO:あと、この間行ってきた南アフリカでGlistenというアーティストと曲を共作したんですよ。多分〈USI KUVO〉からリリースします。

────それは楽しみです。そして昨年末にmitokonさんとKΣITOさんは南アフリカを訪れていましたね。今回はどういう経緯で行くことに?

mitokon:私が南アフリカ音楽のファンなので、単純に行きたいなと。DJとしてもちゃんとシーンを体感しておきたいというか。ずっとタイミングを見計らっていたんですが「行けるときに行かないと」と思って昨年末に行きましたね。

────実際南アフリカでDJもしていましたね。

mitokon:D[NOWHERE]JSibathathuというDJが中心になって開催してる〈UMGQIBELO〉というパーティーに私は出ました。毎月くらいのペースでやっていて、そこでD[NOWHERE]JとB2Bという形で。場所はヨハネスブルグのアンダーグラウンドな〈Club AM〉というところで〈UMGQIBELO〉はGqomオンリーのパーティーなんです。私が出たときもいろんなDJが出ていて、ダーバン(Gqomの発祥地)からの若いDJも呼んでいました。すごく刺激的でしたね。

〈Club AM〉の様子 (photo by mitokon)

────〈Club AM〉はどのくらいの規模の箱なんですか?

mitokon:〈Forestlimit〉くらいのフロアかな。南アフリカのクラブって、エントランスで屋内に入った後に、テラスみたいな場所を経由してフロアに行く作りが多いんですよ。だから行き来がラフにできました。閉塞感が全然ない。

〈Club AM〉の様子 (photo by mitokon)

Zutai:〈Club AM〉の近くには他にべニューがあるんですか?

mitokon:うん。クラブ街だったから同じエリアに何個もあって。あとはみんな遠いところも行くんですよ。南アフリカは車社会だから、車でクラブに遊びに行くことも多いみたいで、中には平気で飲酒運転する人もいたり(笑)。

────(笑)。滞在中に衝撃を受けたパーティーや体験はありますか?

KΣITO:衝撃を受けたのは、ダーバンでいったパーティー。お酒を出す飲食店で音楽もかかってるみたいな。DJのブースの上も屋根はあるんだけど、フロアは屋外みたいな場所でした。

ダーバンでのパーティーのフライヤー

────KΣITOさんはそこでもDJしてましたよね。

KΣITO:結局上手くブッキングが取れなかったんですけど、ダーバンはGqomが生まれた街だからとりあえず行って。2泊3日で滞在したんだよね。全く予定とか決めていない中で、連絡取れたDJ MP3というDJからWhatsAppで「今日パーティーあるよ」って連絡がその日の朝来たんですよ。中心地から車で40~50分くらいかかった。

mitokon:どんどん郊外に行くと雰囲気も変わってくるんです。

KΣITO:そう。DJ MP3から教えてもらった場所は、本当村の集会所みたいなところで。日本で例えると、集落っぽいところにぽつんとベニューがある感じ。

mitokon:そういう人たちも元々タウンシップ出身なので、そういう場所にたくさんベニューがある感じ。

KΣITO:で、実際DJ MP3に会ったらすぐ裏に通されて「USB持ってるか」って言われて。「持ってるよ」って言ったらすぐブースに連れてかれました(笑)。そしたら突然バイクが出てきて、リズムに合わせてふかし始めて。その音がスピーカーの音掻き消してた(笑)。

mitokon:南アフリカの人は全然騒音気にしないイメージ。結構なバイクの数いた気がする。

HW BINGO:本当に集会だ。

mitokon:ね。出演してたDJもちゃんとバイカーで(笑)。この文化を見たのは初めてだったんですけど、ヨハネスブルグ(南アフリカ最大の都市)の人に聞いたら、「南アフリカっぽいね! 」って言ってたから、ある程度は浸透してる文化なんじゃないかな。

DJ MORO:Taxi Kick(※2)以来の衝撃。

HW BINGO:男の思春期って世界共通なんだなって。ブラジルとかタイもそういう感じじゃん。

Zutai:じゃあ南アフリカ内では、Taxi Kickのノリは薄れていったんですかね?

KΣITO:結局今回の滞在ではタクシーに乗れなかったんですよ。Glisten曰く、タクシー内でGqomを爆音でかけて騒ぐみたいな文化はそもそもユース・カルチャーで、学期終わりの最終日に、休みに入るからパーティーをやるらしい。

Taxi Kick Gqom mixed by Nan Kolè ( Groove Podcast 105 )
Taxi Kick Gqom mixed by Nan Kolè ( Groove Podcast 105 )

────じゃあ時期的に厳しかったんですね。

KΣITO:Glistenも若かったときはもっとやってたらしい。でもそういう文化は南アフリカで受け入れられる文化じゃないみたいで。「ドラッグのための音楽でしょ」って下に見られるらしく。だからちゃんとアーティストとして生計を立てようとしている人たちは、他のスタイルを模索するみたいです。

(※2)Taxi Kick : Gqomの一ジャンル、およびムーヴメント。音割れしたベースが特徴の音楽を、南アフリカ現地の「タクシー」にスピーカーを積み、流すというユース・カルチャー。タクシーは、南アフリカの人々の移動手段として親しまれている乗合バスのことで、トヨタのハイエースなどが使われている。

この記事の筆者
Kusaka. Ryu

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