2025/11/20 18:00

5年後に「この作品で音楽の聞き方が変わりました」っていう人が出てくる

──歌モノを作る上で、歌詞はどのように考えているんですか?

野本:詩集から引っ張ってくることが多いですね。ブックオフの棚から適当に取った本から一番良いものを選んで、そこから作っていったりします(笑)。歌詞を作るのが一番楽しいかも知れませんね。

──トラックの制作とは脳が切り替わる感覚ですか?

野本:なんというか……恋愛に失敗して落ち込んでいる友達に一番いい言葉をかけるみたいな感覚なんです。「今の効いたっしょ!」みたいな(笑)。

──(笑)。今作の歌詞にはMeg Bonusというより20歳の野本さんが表れているというか、端的に言って若さゆえの悩みが出ていると思っていて。

野本:そうですね、俺なんてめちゃくちゃガキだと思いますよ。作詞によって自分を振り返るプロセスを踏むときに「俺ってこんなこと考えてるのかな?」って考えるんですけど、結局は「暗くても頑張れ」みたいな歌詞になりがちな気はしていて。どうなんですかね、日々辛いんですかね。

──ことポップスにおいては、歌詞が社会性を帯びて広がっていくという側面もあるじゃないですか。そういう意味で、ご自身の書く歌詞に一定の社会性はあると思いますか?

野本:社会的な意義というか、自分が若者を代弁しているような気持ちは全然ないですね。Z世代の希望でいたいとも思わないです。

ただ、それでいい気はしているんですよ。というのも、表面上ではSNSとかで繋がりが見えるようになっても、その奥の内面的な部分では昔よりも遥かに個人化が進んでいる印象があるんです。なんとなく憂いがあって、人生について考えている人たちは、個人として考えるようになっている。それを一緒くたにして「こういうことを思ってます」って言う時代じゃないからこそ、俺という個人が歌っていることを聞いて、そのどれか一節にでも引っ掛かったら万々歳だなって考え方なんです。何も思わなくても曲は曲自体として良いから聞いてね、ぐらいのイメージです。

──そもそも代弁という役割からは降りている、と。

野本:そうですね、むしろナチュラルにやった方が届くと思いますよ。サンボマスターとかも「こんな大義が俺にはあるんだ!」とか言ってないじゃないですか。サンボマスターは超好きなんですけど、ナチュラルに出た言葉を聞いてみんなが拳を上げてるって思うんですよね。なのに「若者って、こういうのが辛いよね」って語るのはあまりに表面的すぎるんじゃないかと。

──このインタビューの直前に、「Stay,be」で引用されているスティーヴィー・ワンダーの「Sir Duke」を聞き直したんですよ。それがもう素晴らしくて、見事に音楽への愛のみを語っているというか。

野本:わかります、最高ですよね。ちょっとわかるというか、実はまだラブソングを書いたことがなくて。代わりに自分が何かに向かって「好き」って言うのは音楽か過去の自分に対してなんです……ヤバい、恥ずかしい(笑)。

──いや、めっちゃ良い話です(笑)。ちなみに、先ほど「次の作品」と仰ってましたけど、既に構想はあるんですか?

野本:はい、マジで未来っす(笑)。サウンド・デザインについて色んな人が意識するようになるというか、5年後ぐらいに「この作品で音楽の聞き方が変わりました」っていう人が出てくるみたいな、そんな曲が沢山入っています。

──やはり「デザイン」が一大テーマだと。

野本:はい。誤解がないように言うと、俺は弾き語りとかも好きなんですよ。ただ、アルバムの中でピアノやギターによる弾き語りがあったとして、それが全くデザインされてないという事実が、作品全体を通して聞いたら逆接的にデザインされているように聞こえるっていう状況を作りたいんですよ。 他の全てのものが複雑になっているからこそ、その中でシンプルなものを聞いた時に「これは作品において重大な意味があるんだな」っていうのを考えさせる、そういうものを目指しています。

──なるほど。

野本:その状況において何が面白いかを常に考える、そういうプロセスを踏むっていうのが大事だと思うんです。誰もそれを考えていないし、意識せずに聞いている人が多い。でも、それはリスナーが悪いわけではなくて、こっち側で面白いものを作っている人が少ないっていう事実だけだと思うんです。だからこそ、ミック・ジーやディジョンの作った流れと一緒に、俺もどんどんやっていきたいんです。

──今すぐ聞きたいです(笑)。最後に、12月のワンマンライブについても訊かせてください。『LOSS』をどのように落とし込んでパフォーマンスする予定ですか?

野本:そこまで肉体的にしないっていうのを今は意識しているんです。タイラー・ザ・クリエイターもNewJeansも、大音量のトラックを流しているだけの時間が良かったりするじゃないですか。なのにバンドセットとかピアノで静かに聞かせられるのは違うというか、「それはTiny Desk Concertでやってくれよ」みたいに思っちゃう(笑)。だからトラックメイキングとライブ感を上手く混ぜて、分かりやすく出来れば良いと思ってます。それこそディジョンのミュージック・フィルムみたいな、ああいう温度感を探りたいです。

編集 : 菅家拓真

数年後のシーンを見据えた意欲作

LIVE INFORMATION

Meg Bonus ONEMAN LIVE 2025 “Lossy”
2025年12月21日(日)新宿MARZ
開場 19:30 / 開演 20:00
Adv.¥4,000+1D / 学割 ¥2,000+1D

チケットはこちら

DISCOGRAPHY

●LOSS
https://MegBonus.lnk.to/LOSS
●New,man 
https://MegBonus.lnk.to/New_man
●18PERSONAL 
https://MegBonus.lnk.to/18PERSONAL

【公式Instagram】
https://www.instagram.com/megbonus_/

【公式X】
https://x.com/MegBonus_

【公式YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/@megbonus

この記事の筆者
菅家 拓真 (Kanke Takuma)

レコーディングを少し齧りました。 脳みそみたいな音楽が好きです

エスキベルによる、終わりなき“音の壁”の追求──エンジニアKensei Ogataと辿る「Overthere」のサウンドに隠された秘密

エスキベルによる、終わりなき“音の壁”の追求──エンジニアKensei Ogataと辿る「Overthere」のサウンドに隠された秘密

片平里菜が最新シングルで伝える“愛”の抱きしめ方

片平里菜が最新シングルで伝える“愛”の抱きしめ方

Looprider、新メンバー加入とバリトン・ギターで切り拓いた『LOVE』への道

Looprider、新メンバー加入とバリトン・ギターで切り拓いた『LOVE』への道

カメレオン・バンド13.3gが魅せた変幻自在のパフォーマンス──ワンマン「潜在的なアイ」ライブ・レポート

カメレオン・バンド13.3gが魅せた変幻自在のパフォーマンス──ワンマン「潜在的なアイ」ライブ・レポート

多くを捨てた先に残った、あるモノとは?──Meg Bonusセカンド・アルバム『TO THE YOU (ME) I MET BEFORE』インタビュー

多くを捨てた先に残った、あるモノとは?──Meg Bonusセカンド・アルバム『TO THE YOU (ME) I MET BEFORE』インタビュー

Etrangerがファースト・アルバム『Kishibe』でみつけた愛と自然、人とのつながり

Etrangerがファースト・アルバム『Kishibe』でみつけた愛と自然、人とのつながり

REVIEWS :  117 インディ・ポップ〜ロック  (2025年10月)──OTOTOY編集部(石川幸穂、菅家拓真、高田敏弘、TUDA、藤田琴音)

REVIEWS : 117 インディ・ポップ〜ロック (2025年10月)──OTOTOY編集部(石川幸穂、菅家拓真、高田敏弘、TUDA、藤田琴音)

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.370 卒業おめでとう

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.370 卒業おめでとう

Sou × KBSNKスペシャル対談──『Panorama』に隠した音楽への愛

Sou × KBSNKスペシャル対談──『Panorama』に隠した音楽への愛

ネット・カルチャーを網羅するイベント『FAVOY』を120%楽しむための予習ガイド──出演アーティストの見どころ徹底解説

ネット・カルチャーを網羅するイベント『FAVOY』を120%楽しむための予習ガイド──出演アーティストの見どころ徹底解説

13.3g「潜在的なアイ」クロスレビュー ──カメレオン・ロック・バンドの秘密に迫る

13.3g「潜在的なアイ」クロスレビュー ──カメレオン・ロック・バンドの秘密に迫る

潜在的に備わっているものを大切にしたい──13.3gがメジャー・デビューと共に掲げる“アイ”

潜在的に備わっているものを大切にしたい──13.3gがメジャー・デビューと共に掲げる“アイ”

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.361 最近聴いたもの

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.361 最近聴いたもの

OTOTOY各スタッフ+αがそれぞれ選ぶ、2025年の10作品

OTOTOY各スタッフ+αがそれぞれ選ぶ、2025年の10作品

REVIEWS :  113 インディ・ポップ〜ロック  (2025年10月)──OTOTOY編集部(石川幸穂、菅家拓真、高田敏弘、TUDA、藤田琴音)

REVIEWS : 113 インディ・ポップ〜ロック (2025年10月)──OTOTOY編集部(石川幸穂、菅家拓真、高田敏弘、TUDA、藤田琴音)

代え難い、音楽をつくる喜び──サウンド・エンジニア、Kensei Ogataが振り返る今年のインディー・シーンとこれから

代え難い、音楽をつくる喜び──サウンド・エンジニア、Kensei Ogataが振り返る今年のインディー・シーンとこれから

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.352 インディーズ・バンド最前線

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.352 インディーズ・バンド最前線

20歳の奇才 野本慶が掲げる“サウンド・デザイン”とは? ──Meg Bonus 2ndEP「LOSS」の魅力に迫る

20歳の奇才 野本慶が掲げる“サウンド・デザイン”とは? ──Meg Bonus 2ndEP「LOSS」の魅力に迫る

絶望の中に光が差す──吉乃が新曲「贄 -nie-」に投影したTVアニメ『わたたべ』の真髄

絶望の中に光が差す──吉乃が新曲「贄 -nie-」に投影したTVアニメ『わたたべ』の真髄

REVIEWS : 105 インディ・ポップ / インディ・ロック  (2025年8月)──OTOTOY編集部

REVIEWS : 105 インディ・ポップ / インディ・ロック (2025年8月)──OTOTOY編集部

配信をしないNikoんが、音源配信サイト・OTOTOYにやってきた

配信をしないNikoんが、音源配信サイト・OTOTOYにやってきた

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.344 すごいぞボーカロイド

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.344 すごいぞボーカロイド

チル系シンガー、Mel、セカンド・アルバム『LIFE』で綴った、いびつで愛すべき人生

チル系シンガー、Mel、セカンド・アルバム『LIFE』で綴った、いびつで愛すべき人生

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.335 個人的〈FUJI ROCK FESTIVAL 2025〉のおすすめ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.335 個人的〈FUJI ROCK FESTIVAL 2025〉のおすすめ

REVIEWS : 101 インディ・ポップ〜ロック (2025年6月)──OTOTOY編集部

REVIEWS : 101 インディ・ポップ〜ロック (2025年6月)──OTOTOY編集部

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.326 変わっても

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.326 変わっても

見返りもなく、救いもしない──ドレスコーズ『†』で志磨遼平が語る、いま必要な「ロックンロール」とは?

見返りもなく、救いもしない──ドレスコーズ『†』で志磨遼平が語る、いま必要な「ロックンロール」とは?

雪国が奏でる、余白の芸術──「Lemuria」の研ぎ澄まされたサウンドに迫る──【In search of lost night】

雪国が奏でる、余白の芸術──「Lemuria」の研ぎ澄まされたサウンドに迫る──【In search of lost night】

絶対に、なにがあっても諦めない──FINLANDS、愛と憤りを込めたフル・アルバム『HAS』

絶対に、なにがあっても諦めない──FINLANDS、愛と憤りを込めたフル・アルバム『HAS』

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.310 冬に聴きたいスピッツ

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.310 冬に聴きたいスピッツ

OTOTOY各スタッフ+αがそれぞれ選ぶ、2024年の10作品

OTOTOY各スタッフ+αがそれぞれ選ぶ、2024年の10作品

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.299 リフレインごと歌って!

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.299 リフレインごと歌って!

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.289 やさしい街のうた

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.289 やさしい街のうた

TOP