INTERVIEW : Meg Bonus(野本慶)

長谷川白紙が、君島大空が、小袋成彬が、後に続く世代によってある種の「パイオニア」として判を押される時代へと突入した。彼らとの邂逅を原体験に抱えるMeg Bonusの最新作『LOSS』は、そのことを象徴的に描写している。そしてそれは単なる追従ではなく、2025年現在の音楽シーンの中で自らの問題意識をワークさせるという、実に今日的な手法によって達成された。
今年20歳を迎えた野本慶によるソロ・プロジェクトであるMeg Bonus、彼は約7ヶ月前に1stフル・アルバム『New, Man』を発表したばかりだ。今回のEP『LOSS』にはソウル/R&Bの意匠が凝らされた祝祭的なポップな歌モノに挟まれる形でトラップ〜ダブ・ステップ〜アンビエントとカラーの異なるトラックが収録され、20分足らずの作品ながら重蜜なテイストに仕上がっている。
ディジョンにジェイムス・ブレイク、さらにスティーヴィー・ワンダーや¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uに池田亮司と縦横無尽な嗜好から弾き出された『LOSS』のサウンド。今回のインタビューでは本作の影響源を伺いつつ、「デザイン」という現在のMeg Bonusが抱いているテーマについて深く掘り下げた。並の理解では及ばぬ速度で邁進する彼、その目は常に先を見据えている(事実、彼はインタビュー中に「次作では」というニュアンスを何度も強調していた)。振り落とされぬように、Meg Bonusの頭の中を覗き見るような感覚でご一読いただきたい。
インタビュー&文 : 風間一慶
撮影 : Kana Tarumi
日本ではまだ浸透していないけどボン・イヴェールにはある「あの部分」
──まず、今年の4月にフルアルバム(『New, Man』)を発表したばかりですよね。それから半年ちょっとで7曲入りのEPをリリースするとは、凄まじいリリースペースというか。
野本慶(以後、野本):なんか出来たっすよね(笑)。アイデア次第で、思いついちゃえば曲は作れますね。
──前作まではSplice(注:サンプル音源をダウンロードできるサブスクリプション型のサービス)による制作が中心だったじゃないですか。ただ、『LOSS』は最初と最後にレコーディング中の会話が挿入されていて、制作環境の変化を感じました。
野本:そうなんです、今回は初めてレコーディングを導入したんですよ。前にもドラムを録ってはいたんですけど、今回はピアノとトランペットもスタジオで入れて。ベースは佳輝(高橋佳輝)さんの家で入れました。そこにSpliceのサンプルも足しました。
──どのようなメンバーと録音を進めたんですか?
野本:ベースは佳輝さんと一緒に録って、ピアノは榎本響さんに頼みました。ドラムは窪田大志さん、「Stay,be」のトランペットはTAMTAMなどでも吹いている堀京太郎さんです。また、ミックス、マスタリングと録音は最初のEPから担当していただいてる向啓介さん。それと、ヨシキさんにはサウンド・デザインも担ってもらいました。プロデューサーではなくて、あくまで「サウンド・デザイン」です。
──サウンド・デザインとは具体的にどういった役割なんですか?
野本:楽曲のデザインをブラッシュアップするための役割ですね。デモを共有しながらリファレンスや雰囲気を共有しつつベースを佳輝さんの家で 録った後基本的にスタジオレコーディングにもいてもらうんですが、自分がやりたいことを音楽的に言語化してもらう。でも最終決定権は自分にあるって感じです。ミックスとマスタリングは終えた後に佳輝さんへ渡すんです。その時点では僕らのミックスの作業を一切知らないんですよね。だから先入観のない状態で聞いてもらえるんです。それで楽曲全体がどういう印象なのかを伝えてくれるんですよね、ヨシキさんは耳が良いし自分の意見も尊重してくれるのでブラッシュアップされている感覚になります。
──そこまで委ねるとなると、お互いの共通言語が重要な気もします。
野本:そこが一番重要なんです。というのも、ヨシキさんってジャズ・マンとして活躍している印象なんですけど、ポーター・ロビンソンとかアレキサンダー・パノスとかにもめちゃくちゃ詳しいんですよ。僕がカニエ・ウエストの話をしたら、それも大好きらしくて。かと思えば「Aimerを聞くとキュンキュンする」みたいな話もこの前してて(笑)。
──だいぶ珍しいですね(笑)。
野本:めちゃくちゃ珍しいです。だから「こういう表現が面白いね」っていう話がすんなり出来るんです。それに、佳輝さんを通してウェス・モンゴメリーとかマイルス・デイヴィスとかを知ることもできるし、モータウンとかにも興味が出てきたというか。お互いの価値観を信頼しているからこそ、腹の底を話せるような気がしています。

──なるほど。『New, Man』から『LOSS』までの約半年間で新たに聞いたサウンドも、二人の作業には影響していると思いますか?
野本:そうですね。ボン・イヴェール周りのミック・ジー(Mk.gee)とかディジョンからは影響を受けましたけど、そのサウンドが前面に出てくるのは次の作品からなんですよね。ただディジョンの『Baby』はめっちゃ聞きました、あれはヤバかったです。
──わかります、ヤバかったです。
野本:あそこまでカットアップしてるものをオーバーグラウンドでやってるのって本当に凄いっていうか、あれこそサウンド・デザインだと思うんですよ。今回のEPで佳輝さんにデザインを頼んだのにも通じているというか、音楽をデザインするという考え方をみんなにも知ってほしいんですよね。日本の文化はデザインに目を向けていないと思うし、その現状に対して少しでも良い影響を与えたいと思って意図的に「デザイン」という言葉を使っています。
──それは「アート」という言葉と対置させた場合の「デザイン」という概念に対して理解が足りていない、という認識ですか?
野本:というより、音そのもののデザインの話でもあるし、インスタレーション的に物事を考える視点におけるデザイン性の話でもあるというか。例えば……ボン・イヴェールの演奏って、意外とコピーできるんですよ。アコギのサウンドにしたって、全然難しくない。だけど俯瞰して見ると全く違うものに仕上がっているというか。コピバンしようと思えば絶対に出来るけど、絶対に同じ作品を作ることは出来ないんです。
──確かに。音像もですし、ミックスもマスタリングも、全てを融合させないと辿り着けない。
野本:そこでデザインが重要だと思ったんですよね。言語化は出来ないけど、日本ではまだ浸透していないけどボン・イヴェールにはある「あの部分」を見つめたくなったんです。
──「あの部分」を。
野本:「あの部分」です。それと、今年の<フジロック>でジェイムス・ブレイクを観た時にデザインを感じたんです。ジェイムス・ブレイクの1stアルバムって音数が少ないのにシェイプが整えられてるから、一聴して「凄い作品だな」って感じるじゃないですか。それで俺もスネアの音とかを変えたりして、なんとか近づこうとしたんですよ。でも<フジロック>で観た時に、そういう細部が大事なんじゃなくて、それによって歌メロが引き立つことが大事だって気づいたんです。



























































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