2017/10/04 00:00

【REVIEW】Okada Takuro(ex 森は生きている)の鮮明な登場──1stソロをハイレゾ配信開始

2枚のアルバムをリリースし、2015年に突如解散をした“森は生きている”の岡田拓郎が、2017年10月4日、ソロ名義“Okada Takuro”としてのデビュー・アルバム 『ノスタルジア』をリリースする。マルチ楽器奏者であり、作曲家であり、更に“森は生きている”ではミキシングやジャケット写真までも手がけた、いわば芸術的創造力の塊ともいえる、岡田拓郎。そんな彼のデヴュー・アルバムは、ボブ・ディランからボン・イヴェールなど数々の名作を手掛けたグラミー賞ノミネート経験もあるエンジニア、グレッグ・カルビがマスタリングを担当。さらに、増村和彦(ex. 森は生きている)、谷口雄(ex. 森は生きてい る)、大久保淳也(ex. 森は生きている)の他に、西田修大(吉田ヨウヘイgroup)、三船雅也(ROTH BART BARON)、水谷貴次(peno 他)、優河、石若駿など彼と繋がりのある様々なアーティストも参加。多様な楽器が紡ぐ音、静かに漂う歌声がすっと心に沁み込む傑作『ノスタルジア』をレヴューと共にハイレゾでお楽しみください。


Okada Takuro / ノスタルジア

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/96kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?

【配信価格】
単曲 450円(税込) / アルバム 1800円(税込)

【収録曲】
01. アルコポン
02. ナンバー
03. アモルフェ (Feat. 三船雅也)
04. ノスタルジア
05. 硝子瓶のアイロニー
06. イクタス
07. 手のひらの景色
08. ブレイド
09. グリーン・リヴァー・ブルーズ
10. 遠い街角 (Feat. 優河)

REVIEW : 岡田拓郎という人間が生み出す世界

私は、静かに興奮していた。あれはわずか5か月前のことであろうか。映画『PARKS』の中で彼の音楽に出会った。穏やかに漂う彼のサウンド・トラック「Music For Film1」は、まるで森の奥の空気そのもので、すっと心に沁み込む。誰の音楽だろうか、と衝動的に検索をし、恥ずかしながらその時に彼があの“森は生きている”のリーダーだったと知ることになる。私事だが、上京して東京で初めて観たライヴが“森は生きている”のライヴだったこともあり、岡田拓郎のソロ名義でのアルバムが出るだなんて、興奮しないわけがなかった。 そして、そんな彼のデビュー・アルバム『ノスタルジア』は、私の想像のはるか上をこえていた。 バンジョー、マンドリン、ピアノ、ギターなど様々な楽器によって生み出される、時に美しい情景のような音。そしてそこに漂う、握ろうとしても握れない、空気と交わる煙のような、でも確かに聴く者の心に優しさや懐かしさを刻む、声。この声が作り出す空気はアルバム全体に染みわたり、まさに”ノスタルジック”な日本語ロック、岡田拓郎の鮮明な登場を顕にしていた。

Okada Takuro / 硝子瓶のアイロニー
Okada Takuro / 硝子瓶のアイロニー

そんなアルバムの始まりは、アンビエントなギターがまさに1970年代日本語ロックを彷彿とさせるM1「アルコポン」から。M3「アモルフェ」は多種多様な楽器によって彩られたサウンドに浮かぶ、ROTH BART BARONの三船雅也の声が印象的。空気と一体化したようなこの歌声を聴いて、岡田拓郎がこのアルバムにおいて“声”を重要視しているのだろう、と感じるほどであった。そして表題曲ともなるM4「ノスタルジア」。一見単調にも聞こえるが、冒頭から上層部で響くギターが故郷のカモメのようで、聴き終わる頃には優しい郷愁感で胸がいっぱいになる。続くM5「硝子瓶のアイロニー」は心揺れる優しいポップさと、音の粒全体に澄み渡る歌声の融合が美しく、彼のアンセムとなりうる余韻さえ感じさせる。7月にこの曲がリリースされた時、賛美の反響が後を絶たなかったことも記憶に新しい。

そして続く2曲では、美しい情景を表現したような音色が印象的。特に圧倒されたのはM8「ブレイド」。フルートやピアノが煌めくイントロ、少しの空白、そして声のない2分10秒間の空気。ふいにピアノの跳ねるような丸い音。後半へかけて生まれる高揚感…。この、想像のつかない音の動きはまるで即興絵画のようで、彼がマルチ楽器奏者であり更にジャケット写真を担当する程の美的感性にも溢れているという、岡田拓郎の才能の片鱗を見せつけられたかのようであった。続くM9「グリーン・リヴァー・ブルーズ」は、川を流れる水の粒、森の隙間からゆれる木漏れ日… そんな情景を表した繊細なピアノの音がドビュッシー等の印象派音楽をも想起させる。この2曲から、彼の音楽が多元的かつ視覚芸術的でもある、ということを明確なものとした。

アルバムを聴き終えて、あの時感じた興奮は、確かなものになっていた。多種多様な楽器が紡ぐ音は、時に懐かしく優しい日本語ロックを、時に情景が目に浮かぶような音楽を描く。そして、そこに静かに漂う、空気に溶け込んだような歌声。岡田拓郎という人間が生み出すこの世界に、私は静かに興奮している。

(Text by 福田 愛)

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PROFILE

Okada Takuro

1991年生まれ。東京都福生市で育つ。ギター、ペダルスティール、マンドリン、エレクトロニクスなどを扱うマルチ楽器奏者 / 作曲家。コンテンポラリー・フォーク、インプロヴィゼーション、実験音楽、映画音楽など様々な分野で活動。 2012年にバンド“森は生きている”を結成。〈P-VINE RECORDS〉より 『森は生きている』、自身がミキシングを手がけた『グッド・ナイト』をリリース。両アルバムとも、ジャケット写真も手がける。2015年に解散。個人活動としては、Daniel Kwon、James Blackshawなどのレコーディング、ライヴに参加。2015年には菊地健雄監督作品、映画『ディアーディアー』の音楽を担当。福岡のカセット・レーベル〈duenn〉のコンピレーション・アルバム『V.A one plus pne』に楽曲提供。『Jazz The New Chapter』、『ポストロック・ディスク・ガイド』、『レコード・コレクターズ』などにて執筆も行う。

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この記事の筆者

[レヴュー] 岡田拓郎

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