『雨の箱庭』は私たちにどんな世界のすばらしさを見せる?──約3年半ぶりコトリンゴのオリジナル・アルバム

卓越したピアノ演奏と柔らかな歌声で浮遊感に満ちたポップ・ワールドを描くコトリンゴ。そんな彼女が約3年半ぶりとなるオリジナル・アルバム『雨の箱庭』をリリースする。前作からこれまで、アニメ映画『この世界の片隅に』の全ての音楽を担当し数々の賞を受賞する等、音楽家としての評価を高めた彼女。映画同様、今作でも作詞作曲編曲(ストリングス、ホーン含む)、サウンド・プロデュースのすべてを手掛けている。そんな今作は、のちにドキュメンタリー映画となった企画「LIGHT UP NIPPON」のために書きおろした楽曲のほか、RADWIMPS・野田洋次郎主演ドラマ「100万円の女たち」の主題歌等、色とりどりの音楽たちがぎゅっと詰め込まれた鮮やかなアルバムが完成。歌のように響くピアノの音色と、そっと優しいコトリンゴの歌声と共に生み出されるカラフルな音世界を、レヴューと共におたのしみください。


約3年半ぶりとなるオリジナル・アルバム



コトリンゴ / 雨の箱庭

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 280円(税込) / アルバム 2,500円(税込)

【収録曲】
01. 雨あがる
02. 迷子になった女の子
03. 雨をよぶひと
04. 漂う感情
05. Light Up Nippon メインテーマ
06. To do
07. 林檎
08. wataridori
09. hanabi

REVIEW : 箱庭を彩るカラフルな音楽

可愛らしく揺れる花、壮大に生い茂る緑、芽生え始めたばかりの小さな蕾。彼女がつくった箱庭は、美しく煌めくピアノから、重厚なオーケストラまで多様な音色を詰め込んだ、色とりどりの植物が息をする鮮やかな世界だった。


コトリンゴ / 漂う感情

そんな箱庭の物語は、雨あがりの透き通った美しい空気から始まる。M1「雨あがり」では、16分音符で煌めくピアノが、葉の上にまだ残るしずくの冷たさや、雲間からさす太陽の光、雨あがり独特の透明な空気を想起させるように、美しい。歌うようにピアノを奏で、楽器のように丁寧に歌う。そんな、コトリンゴらしさをぎゅっと詰め込んだ1曲だ。

M1とは打って変わって、M2「迷子になった女の子」、M3「雨をよぶひと」ではヴァイオリンをはじめとしたオーケストラによるサウンドが、深く、そしてどこまでも続く壮大な世界をみせてくれる。M3「雨をよぶひと」ではそんなサウンドにのせてポップなメロディーやトランペットのファンファーレが鳴り響き、アルバム一高揚感のある1曲に仕上がっている。

そんな、ピアノとオーケストラ、そして透き通るような歌声が美しい箱庭に、突如ジャジーで都会的な風が吹く。M6「To do」はアーバンなビートとリズミカルな管楽器のサウンドに対し、気取らないコトリンゴの歌声や口笛が生み出す“抜け感”がなんとも独特でくせになる。続くM7「林檎」も、鳥の鳴き声からトランペットまで、まるでサーカスのように様々な楽器が自由に鳴り響く遊び心満載な世界に、思わずにやっとさせられてしまった。コトリンゴのもつそのカラフルな音楽性を、存分にみせられた瞬間であった。

そして箱庭の世界には、再び美しいピアノの音が降り注ぐ。『雨の箱庭』の最後を飾るのは東日本大震災後、東北太平洋沿岸部10ヶ所での花火同時打ち上げを実現させた密着900時間の映像をもとに描かれたドキュメンタリー映画「LIGHT UP NIPPON」のエンディング曲であるM9「hanabi」。ピアノと、歌声。その2つの音色で描かれているという点においてM1「雨あがり」と共通するものがあるはずなのに、そこで私が出会ったのは、M1「雨あがり」のような煌めきや、透き通るような空気ではなかったのだ。低音で優しく揺れるピアノの音色、丁寧におかれた言葉の1つ1つ。そこにあったのは、聴く者の胸に〈希望のあかり〉をぱっと残していってくれるかのような、暖かさ。ピアノと歌声という2つの音色だけで曲ごとにここまでの表現の違いと、感情の残像を心に残すコトリンゴの音世界にただただ圧倒されるばかりであった。

そんな彼女が生み出した箱庭を、もう一度ふと眺めてみる。雨で塗れた土からは、可愛らしく揺れる花、壮大に生い茂る緑、芽生え始めたばかりの小さな蕾。ピアノの音色やその優し気な歌声と共に彼女の箱庭を彩っていたのは、縛りのない色とりどりの音楽たちだった。そんな箱庭に、また雨が降る。新たに芽生える音楽の蕾もまた、素晴らしき世界を私達にみせてくれるのだろう。『雨の箱庭』を聴き終えた頃には、私の胸にはそう予感させる気持ちが溢れ出て仕方なかった。

(Text by 福田 愛)

過去作もチェック!

コトリンゴ / birdcore!

コトリンゴのコアとなる要素を散りばめ、新たなる世界観を見出せるフル・アルバム。NTV系ドラマ『明日、ママがいない』の主題歌でもある「誰か私を」は、その美しすぎるピアノの音の結晶と柔らかな歌声、そして圧倒的な演奏力で聴く者の心を捉えて離さないだろう。


コトリンゴ / ツバメ・ノヴェレッテ

主人公は、一羽の白いツバメ。ライヴでおなじみの「minoru」や木管楽器をポップにアレンジした楽曲等、新しいコトリンゴ・ワールドが満載の1枚となっている。ツバメが織り成すストーリーを、ぜひ堪能してください。

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矢野顕子 / akiko

矢野顕子の27枚目となるオリジナル・アルバム。グラミー賞を受賞した音楽プロデューサー`T・ボーン・バーネット`を迎え、全曲ロサンゼルスとニューヨークで録音。1stアルバム『JAPANESE GIRL』を感じさせる原点回帰と、30年以上が経った矢野顕子の成長をミックスした圧巻の1枚。


青葉市子と妖精たち / ラヂヲ

NHK-FM「坂本龍一ニューイヤー・スペシャル」のスタジオ・セッションをCD化。細野晴臣、坂本龍一、小山田圭吾、U-zhaan、青葉市子による一発録りの音源を再ミックスして収録。青葉市子の歌声が生み出す、儚くも芯のある世界からは聴く者の日常を変える力を感じるだろう。

LIVE SCHEDULE

〈コトリンゴ 10周年記念にまだまにあいますか? & アルバム発売記念ツアー〉

2017年11月11日(土)@三重・伊勢市 賓日館 大広間
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
料金 : 前売り ¥3,500 / 当日¥4,000(入館料別途300円必要)

2017年11月23日(木・祝)@大阪・ビルボードライブ大阪(band ver.)
時間 : 〈1st〉OPEN 15:30 / START 16:30 〈2nd〉OPEN 18:30 / START 19:30
料金 : 自由席 ¥5,500 / Casual(1drink付)¥4,500
出演 : コトリンゴ(vo & pf)/ 鈴木カオル(drums) / 須藤ヒサシ(bass)

2017年11月25日(土)@高知・蛸蔵
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00
料金 : 前売り ¥3,800 / 当日¥4,300(ドリンク代別途)

2017年11月26日(日)@愛媛・松山モノリス
時間 : OPEN 19:00 / START 19:30
料金 : 前売り ¥3,800 / 当日¥4,300(ドリンク代別途)

2017年12月3日(日)@名古屋聖マルコ教会
時間 : OPEN 17:00 / START 18:00
料金 : 前売り ¥3,800 / 当日¥4,300(ドリンク代別途)

2017年12月23日(土・祝)@東京・恵比寿 The Garden Hall
時間 : OPEN 16:00 / START 17:00
料金 : 前売り 指定席 ¥6,000(ドリンク代別途)
プレミアムシート¥10,000(1ドリンク&1タパス付)
※プレミアムシートはチケットぴあ限定
※未就学児童入場不可
出演 : コトリンゴ(vo&a.pf) / 鈴木カオル(drums) / 須藤ヒサシ (bass) / 副田整歩 (sax) / 川上鉄平(tp)

その他
〈ぎふアジア映画祭〉
ぎふアジア映画祭で「この世界の片隅に」が上映されます。
2017年12月2日(土)@岐阜市文化センター小劇場
時間 : OPEN 15:40 / START 16:00
※映画祭は10月14日~12月2日まで

PROFILE

コトリンゴ

5歳からピアノ、7歳から作曲をはじめる。
1999年、神戸の甲陽音楽院を卒業後、ボストンのバークリー音楽院に留学。ジャズ作・編曲/ピアノパフォーマンス科専攻。在学中には教会でのクワイヤのレギュラーピアニストや、バークリーのヴォイス科のピアノ伴奏の仕事も務めながら、数々の賞を受賞。学位を取得後NYへ移り、様々なギグに参加。 2005年秋より自宅での曲作り/デモテープ作りを始める。
2006年3月、坂本龍一がナビゲーターを務めるJ-WAVE「RADIO SAKAMOTO」のオーディションコーナーにて、のちに2ndシングルとなる『にちよ待ち』がオンエアされ、 坂本龍一プロデュース「ロハスクラシックコンサート」に出演。
同年11月「月桂冠・つき」のCMソングとなり話題になった『こんにちは またあした』で日本デビューを飾る。
2016年11月に公開し、ロングヒットしたアニメーション映画「この世界の片隅に」のテーマ、劇中歌、BGMの全ての音楽を担当し、第40回日本アカデミー賞優秀音楽賞、第71回毎日映画コンクール音楽賞、おおさかシネマフェスティバル2017音楽賞を受賞。

卓越したピアノ演奏と柔らかな歌声で浮遊感に満ちたポップ・ワールドを描くアーティストとして活躍中。

アーティスト公式HPはこちら

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レヴュー

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筆者について
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