OTOTOY AWARD 2014ーーOTOTOYスタッフが選ぶ、2014年のBEST ALBUM 20 & BEST SINGLE 10
2014年、OTOTOYの音源配信トピックは2つ。1つ目はOTOTOYが、2009年からずっと提案し続けたハイレゾ(始めた当初はHQDと言ってた)が、遂に一般層にまで伝わるようになったこと。2013年の秋に、ソニーが(ハイレゾ対応のプレイヤーを発売するなど)本格参入したことをきっかけに、2014年1月の「のうりん」でアニソン・ハイレゾが注目を浴び、4月にASIAN KUNG-FU GENERATIONのGotch、9月にくるりというJ-ROCKシーンを引っぱるアーティストがハイレゾでリリースを行い、さらにAphex TwinやFlying Lotusのクラブ勢がハイレゾでヒットを飛ばした。12月に開催した「OTOTOY DSD SHOP 2014」で来場者が2013年の倍になったことからも、ハイレゾの認知が広がったと実感できた1年だった。
もう一つのトピックは、OTOTOYが押し続けたアーティストが、多くの人に聴かれるようになったこと。大森靖子のメジャー・デビュー、水曜日のカンパネラ、BELLRING少女ハートは、LIQUIDROOMやCLUB QUATTROを埋めるようになったし、森は生きているやYogee New Wavesは、音楽好きから多くの評価を得た。彼らの才能を信じて応援し続けてきたので、このような状況は、“メディア(記事やニュース)も内包する配信サイト”という独自のサービス形態であるOTOTOYとしては、嬉しい限りである。
上記のような理由で、OTOTOYの配信売り上げを伸ばすことができ、やっとレーベルの皆さんにお返しが出来るようになってきたし、多くある配信サイトの中で、OTOTOYを選んでくれるリスナーの皆様には本当に感謝している。OTOTOYでしか買えない作品がある。 OTOTOYでしか読めない記事がある。OTOTOYにしかないサービスがある。2015年は、その「OTOTOYだから!」を丁寧に増やしていけるよう、STAFF一同、丁寧に頑張っていきたい。
飯田仁一郎(OTOTOY編集長 / Limited Express (has gone?))
OTOTOY AWARD 2014 BEST 20
第1位 くるり / THE PIER
くるり / THE PIER
【販売価格】
単曲 540円(税込み) / まとめ購入 3,240円(税込み)
【Track List】
1. 2034 / 2. 日本海 / 3. 浜辺にて / 4. ロックンロール・ハネムーン / 5. Liberty&Gravity / 6. しゃぼんがぼんぼん / 7. loveless / 8. Remember me (wien mix) / 9. 遥かなるリスボン / 10. Brose&Butter / 11. Amamoyo / 12. 最後のメリークリスマス / 13. メェメェ / 14. There is (always light)
くるりが掲げたテーマは、越境。彼らは、11作目となるオリジナル・アルバム『THE PIER』で、最大の武器である音楽を使い、アジア、中東、東欧、アフリカといった世界各地を越境した。過去、現在、未来を行き来した。そして、メジャー・フィールドのロック・バンドではいち早くハイレゾ(24bit/96kHz(K2HDver.)、24bit/44.1kHz)を提案した。OTOTOYで開催したハイレゾ試聴会には、ハイレゾを体験したことのない人が多く訪れ、その音の良さに歓喜した。また『THE PIER』で、聴いたことのない国の音楽の一端に触れることができたリスナーは多かっただろうし、自身も、中東、東欧の音に触れるきっかけを本作には与えてもらった。
『新しい世界との出会い』 それは、くるりがずっとやり続けてきたこと。2015年は、戦後70年である。それなのに隣国との仲は一向に良くならない。隣に広がる世界をヘイトするのではなく、国境を越えてその文化に触れ、新しい出会いに歓喜しよう。それこそが、平和への道筋。『THE PIER』からは、平和に対するくるりからの強いメッセージを読み取ることができる。(text by 飯田仁一郎)
第2位 水曜日のカンパネラ / 私を鬼ヶ島に連れてって
水曜日のカンパネラ / 私を鬼ヶ島に連れてって(24bit/48kHz)
【配信形態】
単曲 208円 / まとめ購入 1,234円
【Track List】
1. 千利休 / 2. 桃太郎 / 3. エンゲル / 4. チャイコフスキー〈Interlude-ラモス-〉 / 5. インカ / 6. デーメーテール / 7. ジャンヌダルク / 8. ドラキュラ
「桃太郎」という誰もが知っている昔話を、このユニットなりに解釈・アレンジした楽曲がラジオを中心に話題を呼び、連鎖的に流れた他楽曲も見事にリスナーの好奇心を刺激、中毒化させることに成功。完全に2014年の台風の目になったユニット、水曜日のカンパネラによる4作目となるミニ・アルバム。「千利休」「チャイコフスキー」などの人名を曲名にすえ、おやじギャグのような連想ゲームをリリックに据えている点はかわらないものの、ヴォーカル・コムアイの歌唱力・パフォーマンス力の向上、トラックメイカー・Kenmochi hidefumiによるダブステップをはじめとしたサウンドの幅の広がりと融合、なんでも屋・Dir.Fによる音楽ファンにとどまらないリスナーに向けた戦略、振り付け師・竹森徳芳によるコンテンポラリー・ダンスの導入など、個々がやるべき役割に対する意識が向上し、それぞれの結果が見事に組み合わさったことで、「すべてがチグハグ」状態から「絶妙なバランスで組み体操」状態へと変貌を遂げた。外部クリエイターとコラボレーションし、完成次第即時アップしていくスピード感はネットとの親和性も高く、それを目にしたリスナー主導による盛り上がりも今っぽい。新旧メディアともに盛り上がっているところに、このユニットの潜在能力の高さを感じる。現在全国ツアー中、3月末には初ワンマンも控えており、2015年も目が離せない。(text by 西澤裕郎)
第3位 Aphex Twin / Syro
Aphex Twin / Syro(24bit/44.1kHz)
【配信形態】
単曲288円(税込) / まとめ購入2,571円(税込)
【Track List】
1. minipops 67 [120.2][source field mix] / 2. XMAS_EVET10 [120][thanaton3 mix] / 3. produk 29 [101] / 4. 4 bit 9d api+e+6 [126.26] / 5. 180db_ [130] / 6. CIRCLONT6A [141.98][syrobonkus mix] / 7. fz pseudotimestretch+e+3 [138.85] / 8. CIRCLONT14 [152.97][shrymoming mix] / 9. syro u473t8+e [141.98][piezoluminescence mix] / 10. PAPAT4 [155][pineal mix] / 11. s950tx16wasr10 [163.97][earth portal mix] / 12. aisatsana [102] / 13. MARCHROMT30A edit 2b 96 [104.98]
”まさか”続きの大型リリースが続いた2014年後半、13年ぶりのエイフェックス・ツインのニュー・アルバム。夏のコースティック・ウィンドウのロスト・アルバム発見からの、クラウドファンディング騒ぎに続いて(しこみかしら、なんて…)、秋の正式発表で怒涛のリリース。さまざまな話題をぶちまけながら突き進み、2014年の後半はメディアに黄緑色のエイフェックス・ロゴが踊った年と相成った。作品的な部分でいえば、ハイパー天邪鬼なリチャード・D・ジェームズが珍しく、彼のこれまでの音楽性をストレートにまとめたような、ある意味でスタイリッシュな作品をリリースしたところもポイント。1曲目が流れたときの、あの「エイフェックスの音」というのを認識させる音のアイデンティファイっぷりはさすがとしか言いようがない。ひとつ難癖を付ければ、サウンド的に2014年現在のカッティング・エッジなサウンドを象徴するものではない、が、2014年を象徴する1枚であることは確か。横綱相撲とはいえ、その豊かな才能を再度確認できた作品でもある。本作でハイレゾ配信を初体験したテクノ~エレクトロニカ・ファンも多かったんじゃないでしょうか。(text by 河村祐介)
4位 BELLRING少女ハート / UNDO THE UNION
この作品は絶対にベスト3入りでしょ!! と強く主張しまくったんですけど、年間ベストの選考が終わったあとにリリースされたハンデにより、滑り込みの4位でした(それでも4位!!)。黒い羽を身にまとったアイドル・グループ、BELLRING少女ハートによる、1年半ぶりとなる2ndアルバム(17曲入り)。小難しいことは言いません。1曲目のワンフレーズ、聴いてみてください。この作品が傑作だとわかるエネルギー、すべてこもってます。音楽的には、これまでのサイケデリック・ロックに、グランジ、エレクトロニカ、ジプシー・ブラス・バンドといった時間軸を取っ払った要素が加わり、幅が相当広くなりました。メンバーのヴォーカルの不安定さも安定してきて、絶妙にズレた美学が推し進められています。1回聴いただけじゃ100%理解不能なので、2015年に繰り返し聴いてほしい超大作。(text by 西澤裕郎)
5位 大森靖子 / 洗脳
メジャー初作品『きゅるきゅる』のリリース前に新宿ロフトで行った「コピバン祭」で、ハロプロはもちろん、globe、SPEED、宇多田ヒカルらを歌った大森靖子を観て、彼女が目指すものは、こうやって誰かと共有できる「J-POP」をつくることなのかなと思った。それから3ヶ月後、90〜00年代J-POPのオマージュを時たま伺わせつつ、そこをフックとして機能させ、わかりやすくポップな作品として仕上げたメジャー・ファースト・アルバム『洗脳』がリリース。もちろんポップさだけでなく、創造性に富んだマイノリティな要素を「大森靖子のJ-POP」で肯定するべく作られた作品といえるだろう。ああ… 「かわいい大好き」で終わらせてもいいくらい大森色に染まった、私にとって不動の1位。(texy by 梶山春菜子)
6位 丈青 / I See You While Playing The Piano
SOIL&"PIMP"SESSIONSで活躍する丈青のピアノ・ソロ作。商用配信として世界初となるDSD 11.2MHzのリリースを実現し、各方面で話題をさらった。11.2MHzの実力はさすがの一言で、88鍵すべての響きが余すところなく表現され、弦が震える際の細かいノイズまで記録されていることには驚かされる。だが、音源スペックの高さはもちろんのこと、何よりもアルバムとしての完成度が圧倒的だ。全編を通して濃密な静寂が支配するなか、コンサート・グランドの逸品「FAZIOLI」が紡ぎ出す1音1音が、理知的かつ情熱的に配置される。あえて卓袱台返し的なことを言えば、この作品には音質の良し悪しに左右されない強度が宿っている。(text by 長島大輔)
7位 坂本慎太郎 / ナマで踊ろう
ほぼひとりで作り上げられたファーストから一転し、バンド編成で作られたというセカンド。そのサウンドは虫声とスチール・ギターに彩られたサイケデリック・ポップ。そこでコンセプチャルに描いているのは、ポップな意匠に包まれた、まるで笑えないディストピア小説のような風景。ファンタジーとはいえ、そこで描かれているのは、この目の前の国の情況を捉えたもはやリアリティ・オンリーな寓話だ。とはいえ、歌詞世界のわからない海外にも多くのファンを持つ、その音楽的なすばらしさは、言うまでもないでしょう。メイヤー・ホーソンとの交換カヴァー・スプリットも今年ですな。しかし、次作こそ、ハイレゾでのリリース希望です! (text by 河村祐介)
8位 eufonius / frasco
名作アニメ / ゲームの主題歌を多く手掛けてきたeufoniusのヒット作。2014年はアニソン / ゲーソン系のハイレゾ配信が盛り上がった1年だったが、その流れに大きく貢献したアルバムのひとつだ。とはいえ、ほぼノン・タイアップで制作された本作を、安易にその枠に収めるのは間違いだろう。実際、転調を巧みに使って展開する楽曲の構成力などは、数多のアニソン / ゲーソンから完全に頭ひとつ抜ける存在だった。また、生楽器を多用しつつ徹底して高音域を意識したサウンド・プロダクションは、まさにハイレゾで聴くのにぴったりの内容だ。このアルバムを流行り物のひとつとして聴いてしまうと、きっと痛い目を見るに違いない。(text by 長島大輔)
9位 Gotch / Can't Be Forever Young
“Gotch”の愛称の名で始めた後藤正文ソロ初作品は、親交の深いアーティストを招き、リラックスしたなかで作られたことが十分に伝わるカジュアルな作品だった。その反面、本作にはつねに示唆を含んだ眼差しが潜んでいる。それは今回彼が用いた音楽的手法であったり、ソロ・プロジェクトの在り方であったり、そのリリース方法を、”ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマンである彼が選んだ”ということから生まれるものだが、大雑把に言えば、もっと音楽は楽しめるだろうというちょっとした提案なのである。鳴っている音からしてそんな大げさに捉える必要はないのだが、やはりこの2014年に彼が起こしたアクションは、ミュージシャンに、リスナーに、なにかしらの選択肢を増やしてくれたことは間違いないだろう。(text by 梶山春菜子)
10位 森は生きている / グッド・ナイト
リーダーの岡田拓郎(Gt、Cho)を中心に集った音楽集団によるセカンド・アルバムは、スウェーデンのバンド、アルキメデス・バドカーを彷彿とさせるアンビエントなアレンジや、カンタベリー・ロックを思わせるファズのきいたリフものなど、前作より演奏の幅を広げた作品となった。17分にもおよぶ「煙突の夢」での、リスナーの集中をとぎらせることのない展開作り、音像の心地よさは、本作のハイライトと言っても過言ではない。同時にこの曲は、彼らの進化を象徴した楽曲でもある。卓越したアレンジ・センスとそれをサウンド面に絶妙なバランスで落とし込み提示できる希有なバンドとして、彼らの存在感は増すばかりだ。(text by 浜公氣)
11位 FKA twigs / LP1
プロデュースにアルカ+映像作家のジェシー・カンダという布陣の「EP2」によって一気に注目を集め、ネットを介し、そのヴィジュアル戦略を含めた表現によって、2014年の歌姫としてシーンにくっきりと強烈すぎるその痕跡を残したFKAツイッグス。インディR&Bシーンにおいて頭ひとつ抜けた存在感に。(text by 河村祐介)
12位 大野由美子+AZUMA HITOMI+Neat's+Maika Leboutet / Hello, Wendy!
Buffalo Daughterの大野由美子と3人の”宅録女子”で結成されたシンセサイザー・カルテットの処女作。シンセ4台だけで古今の名曲をカヴァーした、ありそうでなかった好企画だ。ウェンディ・カルロスへのオマージュとして収録された「ブランデンブルク協奏曲」をはじめ、電子音楽の歴史をなぞる選曲にこだわりを感じる。(text by 長島大輔)
大野由美子+AZUMA HITOMI+Neat's+Maika Leboutetの特集ページはこちら
13位 Yogee New Waves / PARAISO
ジャンルにとらわれることのない、ポップ・ミュージックを生み出す彼らによる待望の初アルバムは、現行インディー・シーンに埋もれることのない、まさにオールタイム・ベスト。シティ・ポップという一言に落とし込むことが野暮なくらい、彼らの“音楽的反射神経”は素早く、とにかく驚かされた。バンド結成わずかに1年にして、ツボをついたアレンジと多岐にわたるジャンルの楽曲を1つの作品にパッケージングしてみせたのだから。(text by 浜公氣)
14位 OGRE YOU ASSHOLE / ペーパークラフト
無類のディープ・リスナーである彼らの最新作は、バンド史上もっともレア・グルーヴに接近した内容。ミニマル・メロウというワードを軸に、アナログ機材を多用した楽曲のアンサンブルが、彼らに影響を与えた数々の音楽を物語っているかのよう。やむことのない音楽的探究心により、彼らはロック・シーンにおいて唯一無二な存在感を放つバンドとなった。(text by 浜公氣)
15位 Flying Lotus / You're Dead!
現在、一大潮流となっているロバート・グラスパー以降の新たなジャズの流れを取り入れた新作。しかし、ゲスト陣の音楽家たちの豊かさ、そしてフライローがこうしたサウンドへと変化したことは、そうしたジャズの流れが、現在のLAシーンのリアリティを象徴するアーティストたちの流れでもあることを証明している。(text by 河村祐介)
16位 febb / THE SEASON
いろいろなスタイルや個性がある中でベストを決めるのは本当に苦しいのだが、誰がどの時代に聴いても常に存在するであろうヒップホップらしさを、真っ直ぐ体現したのがFebbの『The Season』であった。クレジットは豪華でも、ラップはほぼFebb1人で、ここまでタイムレスな作品が作れるのか。今年生まれた最高のラップ・アルバムである。(text by 斎井直史)
17位 ソウル・フラワー・ユニオン / アンダーグラウンド・レイルロード
東日本大震災、原発事故以降増えた社会問題に対する話題は、年を重ねるごとに減ってしまった。沖縄の基地問題、レイシズム等、解決しない問題は山積みなのに。だからこそ、ソウル・フラワー・ユニオンは、歌うことをやめなかった。闘うことをやめなかった。本作のタイトルは、アンダーグラウンド・レイルロード=地下鉄道。「自由」を称揚する価値観の象徴だ。結成20周年のSFUが高らかに叫ぶ歌は、自由を勝ちとる可能性を持つ。そのことを強く意識させるあまりにもロックな一作!(text by 飯田仁一郎)
18位 ARCA / Xen
カニエ・ウェストやFKAツイッグスなどのプロデュースをつとめ、2014年もっとも旬なインダストリアル・サウンドを生み出した彼のデビュー作。かのエイフェックスとクリス・カニンガムを思わせる、映像アーティスト、ジェシー・カンダとのコラボレーションは、これでもかと言わんばかりに両者のポテンシャルを発揮した名共演であろう。 ビョークによる次回作のプロデュースも決定している彼に、2015年もめが離せないであろう。(text by 浜公氣)
19位 上原れな / Emergence
初のワンマン・ライヴやベスト・アルバムのリリース、そしてはじめて地上波アニメの主題歌を担当するなど、2013年にターニング・ポイントを迎えた上原れなが今年はじめに出した4作目。大きくなっていく自身の存在を受け止めた彼女の歌声は格段に深みが増した。まさしくEmergence(羽化)といえる作品。(text by 梶山春菜子)
20位 NATURE DANGER GANG / THE BEST OF NDG NONSTOP MEGAMIX
ライヴを観た人たちの意見が「めちゃくちゃ楽しい〜!!」か「恐くて無理〜」みたいにぱっくり分かれる、東京出身の破天荒でイカしたクルーによるメガ・ミックス。フュージョン系などの元ネタのBPMを早めたり、JUKEのビートを取り入れデジタルハードコア化するなど、現代東京のフロア向けにアップデートしている。とはいえ、このメガ・ミックスはフロアにおらずともテンションMAXにさせてくれるのがヤヴァい。ラスト「オレたち!」では耳馴染みのあるメロディが飛び込んでくるが、そんなの関係ねえとばかりに一体を産み出すパワーと雰囲気は異常なほどクレイジー!!(text by 西澤裕郎)
OTOTOY AWARD 2014 BEST SINGLE 10
1. TVアニメーション「のうりん」挿入歌&エンディングテーママキシシングル
声優として不動の人気を得る田村ゆかり初のハイレゾ作品、そしてOTOTOYでアニソン・ハイレゾに力を入れるきっかけとなった作品でした。TVアニメ「のうりん」に登場する”宇宙一かわいいアイドル”草壁ゆかのキャラソンでありながら、PVでは田村ゆかりのライヴをパロっていて、実際にライヴで歌ってほしいな〜と思わせるつくり。しかもハイレゾでは臨場感が抜群。アニメが終わってもロング・セラーなのは全てが良い方向に噛み合わさった証拠です。(text by 梶山春菜子)
2. cero / Orphans / 夜去
EX THEATERで観たceroのライヴは、川村亘平斎の影絵パフォーマンス+11人の特殊サポーターと共に、幻想的で、かつ都会的な新しいceroワールドをうちだしていた。ファースト『WORLD RECORD』からセカンド『My Lost City』へと変化は止まず、『Orphans/夜去』ではメロウで儚げな、また新たな表情を見せた。音源でもライヴでも一環して漂うのは、ceroの『今』感! それは、日本の2010年代のロック・シーンを彼らが引っぱっていることを意味する。(text by 飯田仁一郎)
3. Negicco / 光のシュプール
結成12年目にして、初めてオリコン週間シングルランキング・トップ10入り(5位を獲得!!)した、Negiccoにとっても、彼女たちを支えてきたファンにとっても超重要なシングル。西寺郷太、小西康陽、矢野博康、田島貴男といった音楽評価の高い作家陣のフックアップを経ながらも、ここ一番ではNegiccoを初期から支えてきたサウンド・プロデューサー・connieの楽曲で勝負し、見事トップ10位入りを果たした。ようやく実った結果に笑顔で涙を流したファンも多いのでは? 2015年は、Negiccoの真価が問われる1年となりそうだ。(text by 西澤裕郎)
4. 坂本慎太郎 / あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団
『ナマで踊ろう』のなかでも、とびきり明るくポップな楽曲で管理社会の怖さを寓話的に描いた表題曲を、神奈川は三浦の個性派合唱団、かもめ児童合唱団に歌わせる。するとプロパガンダ・ソング風のディストピア童謡に。むしろ、冷静に世相も考えると怖すぎる! カップリングは野口五郎 x 筒美京平によるフィリー歌謡を、サイケデリックにカヴァー。7インチ・オンリー + 配信のみで、OTOTOYは唯一のロスレス配信ですよ。(text by 河村祐介)
5. ゆるめるも! / Electric Sukiyaki Girls
前作でノイ! を意識した10分越えのクラウト・ロックをオマージュした80’sニューウェイヴをモチーフにしたアイドル・グループ、ゆるめるも! が、本作では箱庭の室内楽のハシダカズマを作曲・編曲に迎え、ESGをオマージュ。それだけにとどまらず、アイドル・ソング、ニュー・オーダー、そしてFACTORY FLOORへのアイドルからの返答ともいえる楽曲も収録。アイドルという枠組みを存分に活かしたバラエティに富んだ作品に脱帽!!(text by 西澤裕郎)
6. Suara / Fly away -大空へ-
OTOTOYのセールス・チャート常連のSuaraだが、意外にも今年リリースされた新譜はこのシングルと『Suara at 求道会館』のみ。疾走感溢れるリズムにわくわくさせられるタイトル曲、そして彼女の真骨頂であるエモーショナルなミドル・バラード「promise」を収録し、Suaraの魅力をシンプルに凝縮した1作だ。(text by 長島大輔)
7. 新田恵海 / 笑顔と笑顔で始まるよ!
『ラブライブ!』の高坂穂乃果として、そしてμ'sの活動で脚光を浴びる声優・新田恵海のアーティスト・デビュー作。表題曲は作曲をElements Garden、作詞を畑亜貴という万全の布陣で制作。声優としてはやはりキャラクターを演じるので声の表情の幅が決まるが、アーティスト”新田恵海”として歌うとここまで様々な表情で魅せてくれるとは。”声の表現力”という部分では彼女を超える人はなかなかいないかも。(text by 梶山春菜子)
8. 堀込泰行 / ブランニュー・ソング
キリンジ脱退後の堀込泰行ソロ一発目に放たれたのは、また新たに歩み始めた彼の歴史の1ページ目にふさわしい曲に。緻密な音の作り方は初期キリンジ時代のプロデューサー、冨田恵一とのタッグのたまもの。でもこの音はもうキリンジじゃない、正真正銘、「堀込泰行」の音だ。随所に奏でるホーン・セクションは堀込の歌声に華を添え、楽曲すべてが喜びであふれている。さあ、みんなで「新しい季節と踊ろう」!(text by 田尻菜穂子)
9. 平賀さち枝とホームカミングス / 白い光の朝に
「日本ポップ音楽史に残る幸福なコラボレーション」とライターの田中亮太が特集冒頭で語ってくれたとき、まさしくそのとおりと思いました。東京で暮らすシンガー・ソングライター平賀さち枝と京都の4人組バンドHomecomings、相思相愛の2組によるコラボ。想像以上の親和性を発揮したことはもちろん、2番パートを日本語詩で歌う畳野彩加(Homecomings)の初々しさが、図らずともポップ・ソングの理想に近づけてくれた気がします。幸福の余韻がいつまでもつづくような名ポップ・ソング。(text by 梶山春菜子)
10. world's end girlfriend / ゆでちゃん
2014年、1番斬新だったジャンルは、ポエムコアだったのではないでしょうか? 「ナイフのような自意識 」「スケベ心」「闇」をテーマにしたポエムに、BGM的にトラックメイカーがサウンドを加えていく。おもしろいのは、サウンドはあとまで後付けで、あくまでもポエムがメインというところ。本作は、ポエムコアを世に広める第一歩となったシングル。歌詞はポエムコアのオリジネーターBOOLが、楽曲はworld's end girlfriendが担当し、タッグを組んでおります。(text by 西澤裕郎)
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